ニューヨーク・ワイルコーネル医科大学の研究員二人がマウスの網膜の神経コードを解読し、その情報を元に盲目のマウスの視力を回復する新たな人工器具を開発した。研究者達はまた、サルの網膜――ヒトの網膜と基本的に同一である――のコードも解読し事を明らかにし、それにより盲目者用の器具も開発し、テストする予定である。 

1998年に東南アジアの豚や養豚農家の間で感染し大流行したニパウィルスに対するワクチンが、サルによる前臨床テストまで開発が進んでいる。この開発は、同じワクチンで猫をニパウィルスから、そして馬やフェレットを近種のヘンドラウィルスから守る事が出来る事を発見した研究チームによって進められている。 

ドイツ・ライプチヒにあるマックスプランク進化人類学研究所のスヴァンテ・ペーボ博士に率られる研究チームが、デニソバ人のゲノム変異の解析を行い、それが極めて低いことを明らかにした。これは即ち、デニソバ人が今ではアジア全体に広く分布しているにしても、昔はそれほど人口が多くなかった事を示唆している。更には、ゲノムの総目録から明らかなのは、遺伝子の変異は古代の祖先の時代ではなく現代人の世代に見受けられる事である。これらの変異の状況から推察されることは、それが脳機能や神経システムの発達に関係しているのではないかという事である。 

Massachusetts General Hospital (MGH) の研究チームががん診断のために開発した手持ちサイズの診断装置が、ヒト型結核菌 (TB) その他の主要感染細菌による感染の即時診断に利用されるようになった。「Nature Communications」と「Nature Nanotechnology」の2誌に掲載された2件の研究論文は、マイクロ流体技術と核磁気共鳴法 (NMR) を組み合わせた携帯装置は、このような重大な感染を診断するだけでなく、耐性菌株の存在まで判定することができると述べている。 

アフリカ東部の砂漠地域に生息するハダカデバネズミは興味深い身体的特徴を有しており、それによって厳しい自然環境の中を長年に渡り生き抜いてきた。皮膚に痛覚を持たず新陳代謝率が低い為、酸素供給量が少ない地下で生息する事が出来る。英国ノーウイックのリバプール大学とゲノム解析センター(TGAC) の科学者グループが最初にハダカデバネズミの遺伝子情報を解析し、長寿と老化疾患へ耐性を有する理由を検討した。 

ヘビースモーカーが肺がんに罹らない一方で、何故一度も煙草を吸わない人間が肺がんに罹るのだろうか?これは何十年も研究者たちを悩ませてきた課題だが、この度、セントルイスのワシントン大学医学部の研究で明らかになったのは、肺がんの感受性を決定する重要な免疫細胞があるという事だ。マウス実験により、腫瘍細胞を探し出して駆逐するナチュラルキラー細胞が、遺伝子の多様性を有しており、マウスに肺がんを発生させるか否かのカギとなっている事が実証された。この研究結果はCancer Research誌の2012年9月1日号に掲載された。 

ヒトおよび他の哺乳類における胚発生時には、精子と卵子のエピジェネティックマークと呼ばれるDNAの化学修復がきれいに拭き取られる。これらはその後、受精を待つために予備として置いておかれるのだ。このシナリオは顕花植物では全く異なる。胚細胞など胚生期後にしか現れず、数年後になることもある。 

朝、目覚まし時計のけたたましい音が無くても目が覚める事について、不思議に思ったことはあるだろうか?ソーク生物学研究所の研究者達が、この疑問を解決するカギとなる生物時計の新しい構成要素を同定した。この要素とは、生物時計を静止状態からスタートする役目を果たす遺伝子である。体内時計は、体が起きるための合図である重要な生理機能を誘導し、毎朝早くから私たちの代謝を高めている。この新しい遺伝子の発見と、この遺伝子が生物時計をスタートさせるメカニズムを解明することによって、不眠や老化、また、癌や糖尿病などの慢性疾患の遺伝的基盤を説明することが可能になるであろう。 

プリンストン大学の研究チームが、酵母菌において、抗うつ剤ゾロフトに依拠する自己分解反応を確認した事により、抗うつ剤の作用機序のみならず、うつ病は神経伝達物質のセロトニンのみが関与しているのではないのではないかという、これまで長く続いてきた研究者間の議論に、決着が付きそうな様相を呈してきた。2012年4月18日付けPLoS ONE誌のオンライン版に発表された論文によると、プリンストン大学ルイス・シグラー総合ゲノム研究所の研究員であり分子生物学の講師であるエタン・パールステイン博士の研究チームが、抗うつ剤のセルトラリン(商品名ゾロフト)は、パン酵母菌の細胞内膜に蓄積する事を、報告している。 

変異がん遺伝子の発現によって、主要な代謝パスウエイの「送電線」が継続的に確保されなければ、進行性膵臓がんは増殖を続けられないことを、ダナ・ファーバーがん研究所の研究チームが明らかにした。 2012年4月27日付けのセル誌に発表された論文によれば、この代謝パスウエイを標的にすれば、致死性の高い膵臓がんの新たな治療法の開発に繋がるという。マウスのKrasがん遺伝子を操作し発現を止めた場合、膵臓がんは即座に縮小し、腫瘍が目視できないくらい小さくなったケースも見受けられた。 

肺ガンの最も一般的な形成とその致命的な転移を促進する単一の遺伝子が、フロリダ州メイヨークリニック研究チームのマウスモデルによって発見された。マトリックスメタロ-10(MMP-10)と呼ばれるこの遺伝子は、他形態のガンも促進していると研究チームは考える。2012年4月24日付けのPLoS ONE誌に掲載された本研究は、MMP-10が癌幹細胞によって分泌され、生命維持のために使用される増殖因子であることを示している。 

複雑な神経ネットワークパターンは、ほんの一握りの重要な遺伝子によってプログラミングされている。この早期脳神経ネットワーク発生における特徴を発見したのは、ソーク研究所の研究チームである。2012年2月3日付けのセル誌に記載された本研究は、筋萎縮性側索硬化症(ALS)などの神経疾患のための新しい治療法の開発、および特定のガンへの新たな研究戦略の提示となるであろう。 

ベルリン・ビュッヒにあるマックス・デルブルーク分子医学センター(MDC)のイギリスチームが、世界で最も希少な哺乳類の部類に入るアフリカハダカデバネズミ(Heterocephalus glaber)が、どうして酸に曝露しても痛みを感じないかを解明した。アフリカハダカデバネズミは暗い穴倉に密集して生息し、そこでは住環境中の二酸化炭素濃度が、大変高い。体組織中では、二酸化炭素は酸に変換され、それが痛覚神経を継続的に刺激する。 

新薬候補の一つであるJ147が、アルツハイマー病による精神的な衰退を止める最初の薬になるかもしれない。2011年12月14日付けでPLoS ONE誌に掲載されたこの研究では、J147をアルツハイマー病のマウスに投与した所、記憶力が改善され、疾患に由来する脳損傷を防止した。この新薬はソーク生物学研究所の研究チームによって開発され、近い将来人間の治療に使用されるだろう。「J147は正常のマウスとアルツハイマー病のマウス両方の記憶力を改善し、脳をシナプス結合の損失から守ることが出来るのです。」と、ソーク細胞生物学研究所所長であり、今回の新薬を開発したチームのデイビッド・シューベルト博士は語る。 

中国の内蒙古と深川にある、内蒙古農芸大学(IMAU)と内蒙古民族大学(IMUN)と世界最大のゲノムセンターである北京ゲノムセンター(BGI)とが共同で、モンゴリアンの全ゲノムの配列解析を完了した事を発表した。このゲノム研究は、アフリカから発祥してアジアへ広がったモンゴリアンとその子孫の進化と民族移動の解明に大きく寄与し、ヒトの遺伝性疾患の研究の為の重要な基盤となる。 

ハイデルベルク大学病院の研究者が、マウスモデルを使用して初めて、糖代謝が異常を来す重度の先天性疾患の治療に成功した。クリスチャン・ケルナー教授率いるチームは、雌マウスが交尾前および妊娠中に飲料水と共にマンノースを与えられた場合、その子孫は先天性疾患の遺伝的変異を持っていたとしても、正常に発達することを証明した。ケルナー教授は、児童医学センターのグループリーダーでもある。 

肺癌研究に関する国際学会の公式月刊誌「The Journal of Thoracic Oncology」(2011年4月号)の中で、ダイズ中の物質が肺癌細胞を死滅させる放射線の能力を高めることがわかった。とウェイン州立大学によって発表された。ウェイン州立大学の医学部Dr. Gilda Hillman准教授(Karmanos癌研究所)は次のように語った「私たちは肺癌の放射線治療能力を向上させるためにダイズイソフラボンと呼ばれる天然のダイズの非毒性物質について研究している。 これらが癌細胞に対する放射線の効果を高めて正常な肺細胞を放射線傷害から保護する。」彼はこの研究チームを導いたが、さらに続けて述べている「癌細胞には細胞自身を防御するメカニズムを活性化して生き残ろうとする機能が備わっている。しかし天然のダイズイソフラボンは、癌細胞の生き残る機能を阻害して放射線治療の効果を高める。」

マサチューセッツ総合病院(MGH)の研究グループは、血管の形成を阻害する全く新しい種類の血管新生薬を世界で初めて発見した。PNAS誌の2011年6月27日Early Editionに掲載された報告には、その活性成分をどうやって南米の樹木から抽出し、動物モデルにおいて血管の正常な形成と創傷の治癒と腫瘍の成長がどのように阻害されるかという新規的な機序が紹介されている。 

お酒に含まれるアルコールであるエタノールは、僅かな量であれば、Cエレガンスとして知られている小さな虫−この虫は老化の研究で実験モデルとして頻繁に使用される−の寿命が、2倍に延びる事を、UCLAの生化学研究チームが発表した。但し、それを科学的に説明するのは、どうやら難しそうだ。この研究結果は2012年1月18日付けのPLoS ONE誌のオンライン版に発表されたが、「この結果はショッキングであり、私達を悩ませています。」とUCLAの化学科と生化学科の教授であり、本論文の上席著者でもあるスティーブ・クラーク博士は話す。アルコールの摂取は人においては一般的に害をなし、Cエレガンスも多量のアルコールを摂取すれば神経系を損傷し死に至る事は、他の研究で明らかになっていると、クラーク博士は話す。「私達は非常に少量のエタノールを投与しました。そうするとCエレガンスには効用があるのです。」と付け加えるクラーク博士は、老化の研究に関する生化学の専門家である。Cエレガンスは卵から成虫まで僅か数日で成長し、世界中どこでも土壌中に生息し、バクテリアを食餌としている。クラーク博士の研究チームのパオラ・カストロ、シルピ・カーレ博士、ブライアン・ヤング博士等は、生後数時間のまだ幼生であるCエレガンスを、何千匹も研究してきた。この虫の寿命は凡そ15日で、何も食べなくても10日から12日間は生きる。「しかし、私達の研究では、微量のエタノールを与えると、20日から40日に寿命が延びます。」とクラーク博士は話す。研究チームが最初にやろうとした事は、コレステロールがCエレガンスに与える影響を観察することであった。「コレステロールは人間にとって必須の成分です。細胞膜には欠かせません。但し、血流には悪影響を与えます。」とクラーク博士は説明する。Cエレガンスにコレステロールを与えたところ、寿命が延びたため、明らかにコレステロールの影響であると当初は考えられた。コレステロールはエタノールに1000倍濃度に溶解されていたが、エタノールはよく使われる溶媒である。「それは溶媒に過ぎないのですが、その溶媒こそ、寿命を延ばす作用がある事が判ったのです。コレステロールは何の関係もありませんでした。エタノールは1000倍希釈で作用するだけでなく、20,000倍希釈でも活性を持って至る事が判りました。ほんの僅かな量であれば適当に調合しても、その効き目に変わりはありません。」と同博士は言う。

若年期の男性に発症し、家系に遺伝する前立腺がんの遺伝因子について、20年来研究されてきたが、遂にこの疾患リスクが非常に高くなる、珍しい遺伝性の遺伝子変異が発見された。この発見は、ジョン・ホプキンス大学医学部とミシガン大学(U-M)ヘルス・システム研究所の研究チームによって、2012年1月12日付けのニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディシン誌に発表された。発表によると、この変異を有する男性は、前立腺がんを発症するリスクが変異の無い男性に比べて10倍から20倍も高いと考えられる。前立腺がんの症例全体から見れば、この遺伝子変異のケースは一部に過ぎないが、健康診断項目に追加するか早期スクリーニングを実施することにより、この変異に依拠する高いリスクグループを発見できるメリットがある。 

なぜ細胞は老化するのか。これは生物学における謎の一つであるが、今回ソーク生物学研究所の研究チームが、脳内で起こる老化プロセスの謎を解明する脳細胞の構成要素の弱点を発見したと報告した。研究チームが発見したのは、ELLPs (Extremely Long-Lived Proteins) と呼ばれる非常に長命なタンパク質で、これはニューロンの核の表面で見られる。ほとんどのタンパク質の寿命が合計2日以下なのに対し、ラットの脳内で発見されたELLPsはラットとほぼ同じ年齢であることが分かった。本研究は2012年2月2日付けのサイエンス誌に記載され、これほど長命なタンパク質を含む必須細胞内マシーンが発見されたのは今回が初めてである。本研究は、タンパク質が置換されることなく生涯にわたって持続するものであることを示唆している。ELLPsは核表面の輸送チャンネルを構成している。このチャンネルは出入りする物質をコントロールするゲートのようなものである。ELLPsが時間とともに消耗しなければ、このタンパク質が長命であることはメリットである。しかし、ELLPsは他のタンパク質と異なり、異常な化学修飾や損傷を受けた際に、新しいものに入れかわることはない。そのためELLPsが損傷を受けると、毒素から細胞核を保護するための三次元輸送チャンネルの能力を弱める場合があると、本研究を率いたソーク大学分子細胞生物学研究所教授、マーチン・ヘッツァー博士は推測する。結果、これらの有害物質は細胞のDNA、そして遺伝子活性を変化させ、細胞老化を引き起こすことが示唆されている。エリソン医学基金およびグレン医学研究基金から資金提供されているヘッツァー博士の研究チームは、NPCと呼ばれるこの輸送チャンネルの老化における役割を研究している、世界で唯一のグループである。DNA損傷を起こす有害物質が核内に侵入出来ることは、哺乳類のNPCの弱点である。以前の研究で、遺伝子発現の変化が老化現象の起因であることは解明されていたが、ヘッツァー研究チームがこの弱点を発見するまで、化学業界において遺伝子変化がどのように起きるのかを説明する確たる要素は存在していなかったのである。「老化の 基本的機能の定義は、心臓や脳などさまざまな臓器における機能的能力の低下です。この低下は臓器の構成細胞内のホメオスタシス、または内部安定性の劣化により起こります。最近行われたいくつかの研究は、タンパク質のホメオスタシスの崩壊と細胞の機能低下と関連づけています。」と、ヘッツァー博士は語る。ヘッツァー博士と研究チームが発表した本研究結果は、ニューロンの機能低下が時間とともに劣化するELLPsに由来する可能性を示唆している。「ニューロン以外の細胞の多くは、タンパク質のターンオーバーの過程で障害のある部分を新しいコピーと交換し、タンパク質の機能低下を阻止します。我々の研究結果は、核膜孔の劣化が老化現象の一部で、遺伝子発現プログラムなどの核機能の低下に繋がるのではないか、と示唆しています。」と、ヘッツァー博士は説明を続ける。本研究は、アルツハイマー病およびパーキンソン病などの神経性疾患の分子原因の理解に役立つかもしれない。ヘッツァー博士と研究チームは以前行った研究で、年をとったラットのニューロン核内に、細胞質から起源したと考えられる大きなフィラメントを発見した。このようなフィラメントはパーキンソン病など様々な神経性疾患と関連しているが、置き違えられた分子が疾患の原因なのか結果なのかは未だ定かではない。また以前の研究で、年をとった健康なラットのニューロンNPCにおける老化関連の機能低下も記録している。ラットおよびマウスはヒトの生物学を研究するのに適した実験モデルである。ヘッツァー博士の研究チームはソーク研究所の研究員およびスクリップス研究所化学生理学教授、ジョン•イェイツ•?氏を含む。3年前、NPCが老化および特定の神経性疾患の発症に関連しているのか否かの研究を始める時、ヘッツァー博士は化学業界の一部のメンバーからそのような大胆な研究は物理的にも金銭的にも行うのが難しいと忠告を受けていた。しかしヘッツァー博士の決心は固く、研究は開始された。基金無しでは本研究の結果までたどり着くことは出来なかっただろう、とヘッツァー博士は語る。[BioQuick News: Extremely Long-Lived Proteins May Provide Insight into Cell Aging">

世界最大の遺伝子研究所である中国BGI研究所が、ネイチャー・バイオテクノロジー誌2012年2月12日付けオンライン版で、ヒトセルラインのRNAシーケンスデータを精査し、RNAが広範に修正をかけている事を実証した。そしてこの重要な転写後の修正イベントを同定するには、大変高度な解析方法が必要となることも明らかにした。RNAの修正については良く知られているが、詳細はまだ不明である。 

ヒト生物学を構成する原則が過去2500万年もの間、実質的に無変化のまま存在している。と、判明した場合、それはこれからも変わらないと自信をもって言えるだろう。ホワイトヘッド研究所の科学者たちが行った最新のヒトY染色体進化論の研究結果は、Y染色体が無くなる事はないと証明している。「Y染色体消滅論」の支持者たちは、Y染色体が将来絶滅するであろうと予測している。 

リー症候群では乳児は健康体で生まれたかのように見えるが、時間の経過と共に悪化していく運動や呼吸障害を発症し、ほとんどの場合3歳で死に至る。これは、細胞内のミトコンドリアが、脳が発達していくために必要なエネルギーの需要についていけないからである。この度、この病気の原因である遺伝子の欠陥が見つかったと、Cell Press出版のCell Metabolism誌9月号に発表された。今回の研究結果は、二人のリー症候群患者の、ミトコンドリアで活性化しているタンパク質をコードする約1000の遺伝子の一部を配列決定して得たものである。 

プルツワルスキー馬として知られる絶滅危惧種のウマが、研究者たちが予測していた以上に家畜ウマとの系統的関係がかなり離れている事が、ペンシルバニア州立大学生物学部のカタリーナ・マコバ博士率いる研究チームにより報告された。4血統のプルツワルスキー馬について、母から子に排他的に遺伝するゲノム情報部分−ミトコンドリアDNA−に特化して、家畜ウマ(学名Equus caballus)のDNA情報との比較検討が成された。 

RTS, Sマラリア・ワクチン候補の大規模臨床第III相試験結果が2012年11月9日付New England Journal of Medicineオンライン版に掲載された。この結果報告によれば、RTS, Sマラリア・ワクチン候補がアフリカの乳幼児をマラリアから守ることができるとしている。対照ワクチンによる免疫を受けた乳幼児 (生後6週間から12週間で第1回の接種) と比較した場合、RTS, Sワクチンを接種した乳幼児では、臨床マラリア、重症マラリアの双方で3分の1ほど発症率が低く、また注射に対する副反応もほぼ同じ比率で発生した。また、この試験では、RTS, Sワクチン候補は、安全性と忍容性プロファイルも許容範囲だった。 

ミシガン大学の神経科医ジョセフ・コリー医学博士は、自分のクリニックで毎週のように、患者の神経組織が病気や傷害のために死滅あるいは消失するのを見てきた。コリー博士は、神経組織を破壊する病気や傷害が患者に痛みや身体能力の低下など様々な影響を与えるのを見てきて、治療も現在よりもっと効果的な方法がないものか、あるいはできれば神経組織そのものを再生することができないかと考えてきた。 

科学者グループは、小児の腎臓に発生するがんの一種、ウィルムス腫瘍の成長に関与するがん幹細胞を分離し、さらに分離したがん幹細胞を使って新しい治療法を試した。将来、この治療法は進行性がより強いタイプのウィルムス腫瘍治療に役立つようになるかも知れない。この研究結果が、2012年12月13日付オンラインのEMBO Molecular Medicineに掲載された。 

同性愛が遺伝的なものであることは知られていたが、なぜどのようにして遺伝するのかが分からなかった。しかし、エピジェネティクスの研究で、エピマークと呼ばれる、遺伝子の発現を制御する一時的遺伝子スイッチが、同性愛の発生に大きく関わっていながらこれまで見過ごされてきたという説が発表された。 

シェフィールド大学とカリフォルニア大学サン・ディエゴ分校の科学者は、合成発泡タイプの素材を用いて自然の細胞外基質(ECM)の生成過程を模倣する研究を進めているが、幹細胞が正しく接着するために必要なランダムな接着性を再現することに成功した。この成果は、世界中の科学者にとって、幹細胞の成長に適した接着性のあるバイオマテリアルを創り出す上で非常に重要な手がかりとなるものだ。 

遺伝性或いは散発性メラノーマは皮膚がんのうちで最も致死性が高いが、この度、それらのリスクを高めると思われる遺伝子が、国際的な研究で同定された。この変異はMITFをコード化する遺伝子に起こる。MITFはメラノーマの生成元となる細胞であるメラノサイト内の、いくつかの重要なタンパク質の産生を誘導する転写因子である。以前の研究では、MITFがメラノーマの癌遺伝子として作用しうることを示唆していたが、現在の研究ではMITFの変異がメラノーマのリスクを高めるメカニズムを識別した。 

乳がんの悪性化の典型であるがん細胞の局所浸潤や転移を抑えるレセプタータンパクが、テキサス大学MDアンダーソンがんセンターの研究チームにより明らかにされた。Nature Medicine誌2012年9月23日のオンライン版に発表された論文によれば、他臓器にがんが広がる乳がんの転移を抑制する事で知られる、白血球抑制因子レセプター(LIFR)を同定するために、ハイスループットRNAシーケンシング技術が用いられている。「私たちの研究結果によれば、乳がん転移を抑制するLIFRのような、主要な転移抑制因子の発現や機能を回復させる事が有効だと考えられます。」とMDアンダーソン実験放射線オンコロジー学部准教で主著のリ・マー博士は語る。そして、「乳がん死撲滅の障害となっている転移現象に対する、臨床的に証明された予後マーカーや治療薬はまだありません。 

老化やがんを研究する生物医学研究者は、染色体の末端につながって、これを保護するテロメアに強い関心を持っている。カリフォルニア大学(UC)サンタ・クルス校での新研究では、科学者グループが新しいテクニックを用いて、テロメアの構造的・機械的特性を明らかにした。この成果は新しい抗がん剤開発の方向性を示すと考えられる。テロメアは、染色体の末端につながっており、長いDNA繰り返し配列が特徴である。 

コロラド-ボルダー大学バイオフロンティアズ研究所の科学者、トム・チェック博士とレスリー・ラインワンド博士は、Nature誌が2012年10月24日付オンラインで発表した研究論文で、「抗がん薬開発の標的分子は私たちのDNAの末端領域にある」と書いている。2人の科学者の所属するラボの研究者は、特定のアミノ酸パッチを探して共同研究を進めてきた。 

Laser Scissors顕微鏡と最新のシーケンサーを組み合わせて、ドイツ・ルール大学ボーフム(RUB)の研究チームは、真菌の全ゲノムの遺伝子活性を一挙に解析する方法を開発した。これによってミリサイズの生物体の困難であった小細胞の研究に道が開ける。RUB総合&分子植物学部の研究チームは、小サイズで多細胞真菌の発生や成長の研究に、この方法を適用している。この研究成果はオープンアクセス形式のBMS Genomics誌2012年9月27日号に発表された。多細胞生物では、どの細胞にも同様の遺伝子が含まれているが、活性化(発現)している遺伝子はほんの一部である。この遺伝子発現の差異によって細胞の構造や生理学の多様性が生じるのである。 

自閉症を引き起こす遺伝子を突き止めるため、新しいスキームと新しい方法論で取り組んできた研究グループが、いくつかの免疫系関連遺伝経路に撹乱が起きた場合に自閉症スペクトラム障害が起きやすいという証拠を発見した。2012年12月4日付のオープン・アクセス学術誌「PLos ONE」で発表された研究報告は、自閉症に関連するDNA塩基配列変異の分析と自閉症児のいる家族の研究で突き止められたマーカーの分析とを統合することで、自閉症における免疫機能の役割を裏付けている。 

Walter and Eliza Hall 研究所の科学者が、世界で初めて、細胞死を誘導するアポトーシス調節タンパクの分子変化を画像に捉えた。この成果は、細胞死の過程について重要な理解の手がかりになるもので、将来には、病気にかかった細胞の生死を管理する新しい種類の医薬の開発につながるかもしれない。管理された細胞死、アポトーシスは、体内の細胞の数の管理調節に重要な役割を果たしている。 

スーパーのレジ係りが、商品パッケージに付いているバーコードをスキャンして客の買い物を処理するように、研究者は高性能の顕微鏡と独自に作成したバーコードを用いて、膨大な数の細胞の同定や疾患部位のマーカー分子の同定の管理に利用する。しかし、そのバーコードは僅かなパターンしかないので、細胞の研究を行う様な一度に多くの情報のラベリングが必要な場合には、対応できない。 

片側性巨脳症は稀な疾患であるが、通常対称性を保つ脳の形状が異常化し、片側だけが肥大化する。重度の癲癇を持つ子供によく見受けられるが、その原因は判っておらず、且つ治療法は極めて苛烈であり、肥大化した脳の一部や全てを切り取る手術が行なわれる。カルフォルニア大学(UC)サンディエゴ医学校とハワード・ヒューズ医学研究所の研究者らが主宰する、臨床医と科学者で構成されるチームが、ネイチャー・ジェネティクス誌2012年6月24日のオンライン版に、興味深い論文を発表した。 

正常細胞と比べて、ガン細胞は並外れた量のグルコースを欲しがるので、それによる細胞代謝の変化は、好気性解糖とか「ワールブルク効果」として現れる。研究者は、ガン治療の標的にこの効果を利用できないかと着目しており、代謝状態が変化したガン細胞において、生化学的シグナルがどのように現れるのかを解析している。興味深い研究として、UCLAの分子生物学と臨床薬理学教授である、トーマス・グレーバー博士に率いられる研究チームが、これまでと逆のやり方を採用している事だ。 

通常若いミツ蜂が行う巣作りを、年を取ったミツ蜂が引き受ける場合、脳の老化が逆行、つまり若返る事を、アリゾナ州立大学(ASU)の研究チームが明らかにした。人の加齢性認知症についての現在の研究トレンドは新しい治療薬の開発にシフトしているが、今回の発見が示唆するのは、社会活動への参加が加齢性認知症の進展を遅らせたり、治療効果を発揮したりする可能性である。Experimental Gerontology誌2012年5月21日号のオンライン版に発表された報告によれば、ASU生命科学部の准教であるグロ・アムダム博士に率いられる、ASUとノルウェー大学生命科学部の研究チームは、老齢の働き蜂を巣の内部で”社会的”な仕事をさせた場合、脳内の分子構造が変化することを実証した。「以前の研究で、蜂が巣内で蜂の赤ん坊である幼虫の世話をする時は、観察している期間を通して知的能力を維持していました。しかし、養育期間が終了し、巣外へ食料を採取に行き始めると急速に老化するのです。わずか2週間で羽が退化し体毛が抜け、重要な事は、脳の機能−学習機能テストで診断しましたが−が低下するのです。」とアマダム博士は語る。

DNAだけのせいで、私たちの病気に成りやすさや、影響を受けやすくさが決まる訳ではない。昨今の研究によれば、DNAの配列の変化には関連しないようなDNAの変化、つまりエピジェネティクスと呼ばれる変化によっても、配列変化と同じくらいの大きな影響を受ける事が、明らかになってきている。カルフォルニア大学(UC)サンディエゴ医学校・リューマチ・アレルギー・免疫学部の教授であるギャリー・S・ファイアーステイン博士に率いられる研究チームが、通常はガンや胎児発達の分野で研究対象となる、DNAメチル化と呼ばれるメカニズムが、関節リュウマチ(RA)の進行に大きく関与している事を突き止めた。 

アメリカモデル生物遺伝学会(MOHB):ワシントンD.C.ガン遺伝学会議で、ポストゲノム時代におけるガン治療薬開発には、パスウエイの理解がより重要であることが確認された。パウウエイとは、細胞内で複数の信号が種々の経路を辿りながら最終的な指示を完了するまでの、順序付けられた一連の機序を指す。モデル生物―ショウジョウバエ、回虫、イーストやゼブラフィッシュなど−はヒトのそれと関連を持つ多くのパスウエイを共有しており、一方で構造が平易なので研究に使い易い。 

スタンフォード大学医学部の研究チームが世界で初めて、母親の血液サンプルから胎児のゲノムを解析する事に成功した。この新規的な試みはNature誌2012年7月4日のオンライン版に発表されたが、これは1ヶ月前にワシントン大学から報告された研究と深く関連している。 

RGS9-2と呼ばれる脳タンパク質が体重を調節する役割を有することを、ロードアイランド大学薬学科准教授のアブラハム・コボー博士が発見した。コボー博士は、パーキンソン病および結合失調症の治療薬の副作用であるジスキネジアとRGS9-2との関係の研究中に、今回の発見に至った。ジスキネジアとは、身体が無意識かつランダムに動いてしまう運動障害である。研究結果は2011年11月23日付けのPLoS ONE誌に掲載された。 

最良の健康状態時と最悪の健康状態時の両極端で患者のDNAを比較することで、耐性および感受性遺伝子を同定することが出来る。このアプローチによって、早期の慢性気道感染症を発症しやすい嚢胞性線維症患者間のDCTN4遺伝子変異が発見された。DCTN4遺伝子はダイナクチンをコードする。このタンパク質は、問題となる微生物を死滅させる為に、分子ベルトコンベアでリソソームと呼ばれる極小の化学タンクに移動する、分子モーターの一部分である。 

中国サイエンスアカデミーのゲノム&発生生物学研究所と、世界最大の遺伝子研究所であるBGIとに率いられる国際研究チームが、野生の塩生植物であるソルトクレス(Thellungiella salsuginea)のゲノムシーケンスと解析に成功した。ソルトクレスのゲノム情報は、適応進化のメカニズム解明と、植物の非生物的ストレスへの耐性の底流を成す遺伝子機能の理解に、新たな道標となるものだ。 

癌性腫瘍における2種類の抑制因子の関係を明らかにする上で初となる、包括的研究が発表された。発表したのはケンタッキー大学(UK)毒物学およびジェームス・グラハム・ブラウン寄付講座教授、ダレット・セント・クレア博士である。本研究結果は発ガンにおける転写機構への理解を深めることとなるであろう。 

どうしてティーンエイジャーの中には、同年代の周りの人間がそうしなくても、喫煙を始めたり、薬物に手を出したてみたりするケースが出てくるのだろうか? 過去最大規模で行なわれたヒトの脳の大規模イメージング研究によって−1,896人の14歳のイメージングも含まれている−これまで判らなかった多くの脳内ネットワークの解明に繋がる知見が得られた。ベルモント大学のロバート・ウェラン博士とヒュー・ギャラバン博士は、海外の研究者達の協力も得て、脳内ネットワークの違いによって、一部のティーネイジャーは特異的に薬物やアルコールに走る高いリスクを抱えている事を実証した。単純に脳の働きが他のティーンエイジャーとは違うことが原因で、極めて簡単に衝動的行動を起こすように働くのである。 

卵巣ガン再発の際に腫瘍検体を分析する必要がある、ということが2012年2月号のMolecular Cancer Therapeutics誌に掲載された研究で明らかになった。本研究チームは分子プロファイリングと呼ばれる診断技術を使い、原発および再発卵巣腫瘍における分子特性の違いを調べた所、特定のバイオマーカーにおいて著しい違いを発見した。 

肌の老化防止のために皮膚に塗ったり、運動選手が疲労回復のために服用されたりするビタミンEの本来の身体に対する機能が最近の研究によって明らかになってきた。ビタミンEは強力な酸化防止剤として多くの食品に使用されており、細胞膜の損傷を修復する作用を助ける機能がある。細胞膜は外部の刺激から細胞を護り、細胞への物質の出入りをスクリーニングする機能を有しているが、このあたりの本来的な機能がジョージア健康科学大学(GHSU)の研究チームによって明らかにされ、2011年12月20日付けのネイチャー・コミュニケーション誌に発表された。食事をしたり、運動したりする日常の活動によって、細胞膜は様々な損傷を被り、ビタミンEがその修復に重要な役目を果す事が最近の研究で解ってきた。もし筋肉細胞が修復されなければ、筋肉は筋ジストロフィーで観察されるのと同じように、衰弱し死滅する。細胞膜の修復が覚束無い事に起因する他の疾病例には糖尿病があり、筋肉の脆弱化が主訴の一つとなっている。「特に意識しなくても、私達は毎日ビタミンEを体の中で使っていますが、それがどのような役割なのかは、よく知られていません。」とGHSUの細胞生物学者で本論文の主筆であるポール・マックネール博士は語る。少なくとも役割の一つは明らかになったのだ。「1世紀前の動物実験ではビタミンE欠乏症が筋肉疾患に関係していることは分かったのですが、それがどのようにして起こるのかは今まで謎のままでした。」と、マックネール博士は言う。細胞膜の修復不足が筋消耗や筋壊死を引き起こすということが、マックネール博士がビタミンEの研究に興味を持った理由である。ビタミンEが修復を助ける方法は複数存在する。一つ目は酸化防止剤として、体内での酸素の使用に由来し、修復作用を阻害する副産物の産生を防ぐ事に役立つ。二つ目は、脂溶性の性質により、細胞膜内に潜り込む事が出来るので、フリーラジカルからの攻撃を防ぐ事が出来る。三つ目は、細胞膜の主要成分であるリン脂質を保持するのに役立つため、損傷部位を修復する機能を促進する。例えば、運動をすると細胞の動力室であるミトコンドリアは通常以上の酸素を燃やす。「この結果として、活性酸素種が生産されるのは避けられません。」と、マックネール博士は説明する。運動の物理的な力が細胞膜を損傷するのである。ビタミンEは酸化物質の攻撃を受けても、細胞膜の損傷を修復しながら状態の維持を行なう。フリーラジカルを生成する過酸化水素を使用して運動時の状態をモデル化したところ、骨格筋細胞の損傷はビタミンEを投与しなければ治癒しないことが明らかになった。

患者のゲノムをシーケンシングし、疾患の原因を突き止める。このようなルーティンは未だ実施されてはいないが、遺伝学者チームはこれに近づきつつある。2012年2月2日付けのAmerican Journal of Human Genetics誌に掲載されたケース・レポートの研究チームは、血液検査をゲノムの“エグゼクティブ・サマリー”スキャンと組み合わせて行うことにより、重度の代謝性疾患を診断することが可能であると示している。 

急性リンパ性白血病(ALL)における最初のセラノスティック薬が開発された。開発したのはケースウェスタンリザーブ大学医学部の研究チームであり、2012年3月5日付けのACS Chemical Biology誌に掲載された。ALLは小児がんの最も一般的なタイプであり、米国で新たに診断される数は毎年約5000人にものぼる。本研究知見は、小児腫瘍学における新たなセラノスティック薬の開発の提示となるであろう。 

生細胞におけるタンパク制御機構の最も重要なメカニズムについて、アメリカ・エネルギー省ローレンス・バークレー国立研究所(バークレー研究所)とカルフォルニア大学(UC)バークレー校とが、新たな研究成果を発表した。プロテアソームとして知られるタンパク質は、除去するようにマーキングされたタンパク質類を、同定し破壊する機能を有している、タンパク制御装置とも言える物質である。研究チームは、そのメカニズムに使用されている「制御因子」に至るまで、詳細な解析を行なった。 

カンジダ・アルビカンスのような日和見感染を起こす菌体が、宿主細胞の免疫応答状態を感知し、それに対応することで、宿主の免疫防護システムから首尾よく逃れていることを明らかにしたのは、ルイジアナ州立大学(LSU)ヘルスサイエンスセンター・ニューオリンズ校の微生物学・免疫学・寄生虫学の准教授であるグレン・パルマー博士だ。同博士はイタリアのペルージャ大学のルイジナ・ロマーリ博士が率いる国際研究チームのメンバーでもあった。 

90%以上の人は、エプスタイン・バーウイルス(EBV)に対する抗体を有している。そうでない人にとってこのウイルスは、短核球症や「キス病」の病因としてよく知られているが、その他にもこのウイルスは、ホジキンスリンパ腫、非ホジキンスリンパ腫、そしてバーキットリンパ腫等のより重篤な疾病にも関与している。このEBVがリンパ腫の発症にどのように関与しているのかは未だ明らかにはされていないが、このたび、ペンシルバニア大学獣医学部とペンズ・ペレルマン医科大の研究チームが、「人間の最も良き友人」に対してエプステイン・バーウイルスが感染し、リンパ腫の発症に関与していることを実証した。 

大型類人猿のものでは最後となる、ゴリラのゲノム配列がデコードされ、2012年3月7日付けのNature誌オンライン版に掲載された。今まで、人間に最も近い動物はチンパンジーであると確信されていた。しかし、本研究チームがデコードした結果、ヒトゲノムにより近いのはゴリラのゲノムであることが明らかになった。大型類人猿の4種(ヒト、チンパンジー、ゴリラ、そしてオランウータン)全てのゲノムを比較することが可能になったのは、今回が初めてある。本研究は、ヒトの起源についてユニークな見方を提供すると同時に、ヒトの進化および生物学の研究、またゴリラの生物学および保全のための重要なリソースになる。 

ラパマイシン(免疫抑制薬)を投与された一部の患者が糖尿病の様な症状を発症する理由を、Dana-Farberガン研究所の科学者チームが発見した。ラパマイシンは臓器拒絶反応を防ぐために幅広く使用され、さらに抗がん作用もあり、老化を遅らせる可能性もあるため、ガン治療への使用を臨床治験中でもある。しかし、患者の約15%は薬剤服用後にインスリン抵抗性およびグルコース不耐性を発症し、この理由は今まで不明瞭なままであった。 

特定の遺伝子が自殺行為と関連することが、やカナダ嗜癖・精神保健センター(CAMH)の最新の調査で実証され、複雑多岐に渡る自殺の要因について新たな知見が得られた。これにより将来的には医師が遺伝子治療によって自殺予防措置を講じる事が出来るようになるであろう。これまでの研究では、神経システムの構築に関与している脳由来神経栄養因子(BDNF)が自殺行為と関連していると考えられてきた。 

腸内細菌がヒトの健康や代謝および疾患を調節する上で重要であることが、様々な証拠と共に注目されてきている。しかし、細菌はその役割の一部でしかない。これらの細菌に感染するウィルスもまた、ヒトを形成していくと言っても過言ではない。2012年3月6日付けのPNAS誌に掲載された本研究は、ペンシルベニア大学医学部ペレルマン学校微生物学教授、フレドリック・D・ブッシュマンが主導したものだ。健常者の腸内に存在するウィルスのDNA(virome:ヴィロム)をシーケンシングした本研究では、12人の便から約480億個のDNA塩基、または遺伝子のビルディングブロックが収集された。 

XRCC2遺伝子に稀に起こる突然変異が、乳がんのリスクを高めることが判明した。2012年3月29日付けのAmerican Journal of Human Genetics誌に掲載された本研究は、乳がんの病歴をもち、なおかつ現在知られている乳がん感受性遺伝子変異を持たない家系を調べたものである。本研究はハンツマンがん研究所(HCI)研究員およびユタ大学(U of U)腫瘍医学准教授、ショーン・タブチギアンPh.D.、ユタ大学皮膚学教授およびHCI研究員、デイビッド・ゴルガーPh.D.、そしてオーストラリア、メルボルン大学病理学教授、メリッサ・サウジー教授の3人の共同主任研究者によって行われた。 

2012年3月18日付のネイチャー誌オンライン版に、レット症候群モデルにおける免疫機能が障害された細胞を、骨髄移植(BMT)によって置き換える試みの結果が掲載された。レット症候群マウスモデルを用いた研究結果では、小児期症例の重篤な症状の多くが改善され、例えば、呼吸障害や動作障害の改善や寿命の延長などが観察された。小グリア不全におけるMecp2タンパクの機能を精査し、「レット遺伝子」にコードされる事を明らかにしたのは、バージニア大学医学部の主任研究者ジョナサン・キプニス博士とその研究チームである。彼らは神経学的症候群に対処する初めての研究手法の提唱者といえる。 

2012年3月付けのVirology誌に掲載された研究によると、膵管腺癌マウスにウィルスを腫瘍内投与した所、膵腫瘍の成長が阻害され、根絶された。ただし、いくつかの腫瘍はこの治療にかかわらず成長を続けたため、ウィルスに対する耐性も証明された。膵臓ガンの約95%は膵管腺癌(PDAs)である。PDAは最も致命的な悪性腫瘍の一つで、患者の5年生存率は8-20%でしかない。ノースカロライナ大学シャーロット校のバレリー・Z・ゼリシュビリ教授率いる研究チームは、膵腫瘍に対する数種類のウィルス、特に水疱性口内炎ウイルス(VSV)の実験を行った。 

UCLAの研究チームが、T細胞を活性化させる機能の新たなメカニズムを正確に同定した。T細胞とは、感染源と闘う事が主たる役目である白血球の一種だ。2012年3月25日付けのネイチャー・メディシン誌のオンライン版に掲載された論文によると、感染箇所に現れる免疫細胞である樹状細胞が、ハンセン病の病原菌と言われるMycobacterium leprae(ハンセン病菌)と闘うために、より特異的な機能を獲得する様子が、論じられている。 

ワイルコーネル医科大の研究グループが、βサラセミア症と鎌状赤血球貧血とを遺伝子治療するための新規的な方法のデザインを完成させた。更に、治療前に各患者の治療応答を予め予測する診断方法も、このチームは開発しているのだ。2012年3月27日付けのPLoS ONE誌に発表された研究成果によると、重篤な赤血球不全症に関連する疾病に対して、新しい治療戦略を提供するものだ。 

母親の卵子に存在するタンパク質、TRIM28が受精後特定の化学修飾、または特定の遺伝子上エピジェネティック・マーカーを保存するために必要不可欠であると、A*STAR医学生物学研究所(IMB)の国際研究チームが発表した。本研究は2012年3月23日付けのScience誌に掲載され、不妊症におけるエピジェネティクスの働きを研究するスタート地点になると思われる。これまでの研究では、核の初期化およびインプリンティングの両方が、胚の生存および成長にとって不可欠であると示されてきた。 

パーキンソン病の原因と考えられる遺伝子の変異が新たに発見された。この変異はパーキンソン病の罹患者が多いスイスの大家系を対象として最新のDNA配列解析技術を用いて調査研究した結果判明した。この研究はフロリダのメイヨクリニックキャンパスの神経医学者グループが主宰し、米国・カナダ・欧州・英国・アジア・中東等の共同研究グループを加えて行なわれ、American Journal of Human Genetics誌2011年7月15日号に発表された。「この発見はパーキンソン病の研究に新しい道を作ったのです。私達が発見した新たな遺伝子変異はどれもがこの複雑な疾患を読み解く助けとなるし、新たな治療法の可能性も秘めているのです。」と共同執筆者のズビグニュー・ゾレック博士は話す。 

ロヨラ大学シカゴストリッチ医学部の研究チームが、ショウジョウバエの遺伝子の特徴を生かした抗がん薬を開発している。新しく発見されたショウジョウバエの遺伝子は、癌発生およびいくつかの先天性欠損症において、重要な役割を持つ二つのヒト遺伝子の複合体に対応しているものである。このショウジョウバエの遺伝子が進化し、二つに分化されたのだ。 

副作用の非常に少ない新抗がん薬が、他の治療に失敗して後がないホジキンリンパ腫患者の生存率を劇的に改善している。ロヨラ大学医療センター腫瘍内科医、スコット・E・スミス博士(M.D., Ph.D.)が、この新薬ブレンツキシマブベドチン (Adcetris®)の生存データを17回欧州血液学会で発表した。スミス博士はロヨラ血液系腫瘍研究プログラムのディレクターである。この多施設共同研究は、幹細胞移植後に再発した102例のホジキンリンパ腫患者を含む。 

乳ガンのリスクが50歳以上の女性において劇的に増加することは周知の事実であるが、増加における細胞生物学的な原因は謎であった。この謎に対するいくつかの答えが、米国エネルギー省(DOE)ローレンス・バークレー国立研究所(バークレー研究所)の研究チームによって発表され、将来的な予防対策の可能性も出てきたのである。 

生物学的遺伝はDNA複製を基盤とし、何百何千もの異なるDNAサイトを、同時に正確に複製する工程である。もしこの複製工程が予定通り行なわれない場合、細胞に必要な材料が欠けたり不要な材料が増加したりし、不完全な遺伝子複製の特質として、出生異常や発ガンが見受けられる。ノースカルフォルニア大学(UNC)医学部の研究チームは、DNA複製に必要なタンパクであるCdt1が、細胞分裂後期の有糸分裂に重要な役割を果たしていることを明らかにした。この発見により何故多くの発ガンが、遺伝子の不完全さだけでなく、通常46個の染色体数の増減にも起因するのかが説明できる。 

世界最大のゲノミクス機関であるBGIは、張家口農業科学アカデミーとの共同研究でアワのゲノムシーケンスおよび解析を完了した。アワはキビの中で二番目に最も広く植えられている種であり、本研究はアワおよびキビ作物の遺伝子改良のための貴重な資源となる。研究結果は2012年5月13日付けのNature Biotechnology誌に掲載された。アワは半乾燥地域において食料および飼料となる貴重な穀物であり、中国では最大の作物である。 

リーズ大学・生物科学部のジュリアン・ヒスコックス博士とジョン・バール博士は、ポルトン健康保健局(HPA)と共同で、細胞内のマーカー特性の変化によってウィルス感染の重症度を測る、ウイルスバーコードバンクを確立した。現在研究チームは、インフルエンザウイルスと幼少期の喘息発症の契機となるヒトRSウィルス(HRSV)とについて、それらの複数の異なる種をバーコードする研究を行なっている。 

近年明らかになって来た事だが、糖尿病患者にとって悪い知らせであるのは、糖尿病はアルツハイマーの高いリスクを有しているという事だ。ニューヨーク市立大学(CCNY)の研究チームがそのメカニズムを明らかにした。生物学教授のクリス・リー博士の研究チームは、一つの遺伝子がこの二つの疾患を関連させていることを明らかにした。 

グリーンアノールトカゲの全ゲノム配列解析が世界で初めて完了し、その敏捷で活動的な性質も遺伝子に帰する事が出来るようになった。哺乳類と爬虫類の祖先が3億2000年前に分化した後、爬虫類と対応する部分の遺伝子が人間や哺乳類でどのように進化してきたかを洞察する手掛かりとなるであろう。ゲノム解析プロジェクトの完了結果は2011年8月31日付のNatureオンライン誌に発表された。このグリーンアノールトカゲ(Anolis carolinensis)はアメリカ南東部に生息しており、鳥以外では爬虫類として初めてそのゲノム配列が明らかにされた。 

コウモリ狂犬病ウィルスの進化速度は宿主の生態に深く関わっている、と米国ジョージア大学(UGA)疾病管理・予防センターおよびベルギー・ルーベン、カトリック大学(KU)の研究チームが発表した。本研究は2012年5月17日付けのPLoS Pathogens誌に掲載され、宿主の地理的環境がウィルス進化率の最も正確な予測値であることを説明している。熱帯・亜熱帯のコウモリ種は、温帯地域に住むコウモリのウィルス変種よりも4倍速く進化するのである。「広く分布している種属は、地域によって異なる行動を見せます。 

靴の裏に装着された紙のように薄い発電機によって、歩きながら携帯電話が充電できれば素晴しいではないだろうか?この夢のようなシナリオに現実味が出てきたのだ。米国エネルギー省ローレンス・バークレイ国立研究所(バークレイ研究所)が、無毒性のウイルスを利用して機械的エネルギーを電気に変換する発電方法を開発した。 

miRNAとは、遺伝子の小片であり、遺伝子のオンとオフをどのタイミングで行なうかを調整しており、ヒト細胞は何千ものマイクロRNA(miRNA)を産生していると考えられている。miRNAは正常細胞のコントロールに重要な役割を持っている一方で、疾患にも関わっている。例えば、ある腫瘍では産生量が増加し細胞の増殖に関与する。 

血管新生を起因とする疾患の新規的な治療薬を開発しているスイスの企業Gene Signal社が、2012年5月8日、フロリダ州フォート・ローダーデイルで開催された2012 ARVO 年次大会において、脈絡網血管新生症の新薬候補aganirsen(GS-101, 点眼薬)の霊長類モデル試験が、良好な結果を示した事を発表した。Aganirsenの局所投与によって血管新生の成長と漏出を阻害出来る事が、このモデルにおいて確認され、加齢性黄斑変性症(AMD) や虚血性網膜症のようなヒトの脈絡網血管新生症における新薬候補の役割が強調された。 

ルイジアナ州立大学のマーク・バッザー博士が、研究員のジェリリン・ウォーカー博士と准教のミリアム・コンケル博士と共同で、現在のオランウータンがAluと呼ばれる1,600万年前の古代ジャンピング遺伝子のホストである事を解析した研究を発表した。この研究は、サイディエゴ動物学協会とシアトル・システムバイオロジー研究所との共同研究で、新しく公開型学術誌として出版されているMobile DNA誌の2012年4月30日号に発表された。 

不明瞭な原因により発達遅延や先天性異常を持つ小児患者12人中7人の診断法を見つけるため、最先端の高速遺伝子シーケンシングが使用された。「 我々は12人の患者から比較的確実な診断法を2つ程手に入れられると思っていました。そしてそれにより不確定ではあるが遺伝的な原因を持つ疾患において、シーケンシング法が有効であることを示すことが可能です。 

1976年8月26日、ザイール地方(現コンゴ民主共和国)の小さな村ヤンブクで時限爆弾が爆発した。エボラとして知られる糸のようなウィルスが出現し、感染者は出血熱と呼ばれる数々の恐ろしい症状を発症し、約90%が死に至った。地球上で最も致命的な天然由来の病原体の一つと認識されるまでに、時間はかからなかった。そして今、アリゾナ州立大学(ASU) Biodesign Institute(バイオデザイン研究所)のチャールス・アンツェン博士は、ASUとアリゾナ大学医学部(アリゾナ州フェニックス)、そして米国陸軍感染医学研究所(メリーランド州フォートデトリック)の研究者達と共に、この恐ろしいウィルスに対するワクチンの開発に向かって研究を進めている。 

いくつかの癌における制御不能な腫瘍増殖の主な原因は、細胞内の低酸素環境である可能性がある、とジョージア大学の研究が明らかにした。本発見は幅広く受け入れられている‘遺伝子変異が癌の成長の原因である’という説に逆らうものである。「低酸素症、または細胞内の低酸素レベルが、特定の癌タイプの主な原因だとしたら、悪性腫瘍の治療法が著しく変わることでしょう。」と、リージェンツ・ジョージア研究同盟学者、そしてフランクリン・カレッジの生物情報学および計算生物学教授、イン・ズー博士は語る。研究チームは公的データベース内の、七つの異なる癌タイプより集めたRNA(トランスクリプトーム)データを解析した。 

英国レスター大学循環器科学科の研究チームが、高血圧の原因について画期的な研究を行なった。2011年10月31日付けのHypertension誌オンライン版に発表された成果は、ヒトの腎臓内の遺伝子物質を探索し、高血圧に関与すると考えられる遺伝子を発見したというものだ。これにより今後、高血圧の原因を究明する研究に、新しい道が開かれるであろう。腎臓内にヒト高血圧に関与する重要な遺伝子とmRNA、そしてmicroRNAが存在することが明らかにされた。 

カンガルーは進化系統樹において特異な位置を占めているが、今日までそのDNA配列は解析されていなかった。この度、BioMed Central誌のオープンアクセスジャーナルGenome Biology 2011年8月19日付に、国際研究チームによるカンガルーのゲノムシーケンスが発表された。タマーワラビーと呼ばれるカンガルー種で、その遺伝子に隠されたカンガルー独特の「跳躍」に関与する遺伝子が見つかったようである。 

小児脳腫瘍の中には、稀に脳幹に発生し致死性が高い症例がある。この腫瘍を研究しているグループが、この小児脳腫瘍症例のほぼ80%に共通して見受けられる遺伝子の変異を明らかにしたが、その遺伝子は、これまで腫瘍とは関連していないと考えられてきたものだった。この遺伝子の変異は、他の悪性小児脳腫瘍にも積極的に関与していることが、初めて明らかになってきた。この新たな知見は、聖ユダ子供病院研究所で実施されている、ワシントン大学小児腫瘍遺伝子研究プロジェクト(PCGP)の研究結果である。 

「Science」誌(2011年5月13日号)の記事に、自然界には存在しない新しい抗ウイルス性タンパク質の設計へのコンピュータの活用方法について記載された。この新規タンパク質は、風邪ウイルス分子の特異的な表面を標的とすることが可能である。このようなタンパク質設計が目指すゴールのひとつは、細胞侵入とウイルス再生に関与する分子メカニズムをブロックすることであろう。コンピュータ上で設計した表面を標的とする抗ウイルス性タンパク質には、感染ウイルスの同定や制圧に関連した診断ならびに治療の可能性が示唆された。 

2歳の時に脳性麻痺と診断された双子のノア・ビーリイとアレクシス・ビーリイの両親は、生まれた時から我が子に降りかかった苦難を取り除く答えを、ようやく手にする事が出来たと思っている。但しこの双子の問題を解決するには母親の遺伝情報が詳細に調査される事が不可欠であり、手にした答えは「道半端」でもあった。その遺伝子調査はBaylorヒトゲノム解析センターと国中から集まった専門家達の特殊なスキルによって行われる。 

フィッシュオイルから産生される化合物は、白血病幹細胞をターゲットにするため病気の治療法につながる可能性がある、とペンシルベニア州立大学の研究者は推測する。「Δ12プロスタグランジンJ3、またはD12-PGJ3と呼ばれるこの化合物は、マウス実験において慢性骨髄性白血病(CML)の幹細胞をターゲットにし、死滅させる事が実証されました。」と、獣医医科学部免疫分子毒物学准教授のサンディープ・プラーブ博士は語る。「D12-PGJ3は、魚やフィッシュオイルに含まれるω3脂肪酸のEPA(エイコサペンタエン酸)から生産されます。過去の研究では、脂肪酸は心血管系や脳の発達に良い影響をもたらし、特に乳幼児の健康に役立つものであると示されていました。 

推定150万種ある真菌は、生命樹系図最大のブランチの一つでもあり、日常の生活や生態系の機能に、大きな影響を与えている。これは、真菌が、病原体としての機能や物質を分解する作用の保有、また宿主との共生関係の構築など、様々な性質を有しているからである。真菌類を人類の利益のために使用するためには、これらの振る舞い、機能、自然環境や人工環境における相互作用などを、明確に理解せねばならない。カルフォルニア大学・植物病理微生物学の准教授であるジェイソン・スタージック博士は「真菌1000ゲノム」プロジェクト国際チームの一員でもある。 

バージニア海洋科学研究所(VIMS)によって成された「海洋法医学」における新たな発見により、アメリカ連邦シーフード管理局は、カジキマグロの代表格であるブルーマーリンを遺伝子検査して元来生息していた海域を、素早く且つ正確に割り出す事が出来るようになった。この検査は、アメリカのシーフード市場で販売されているブルーマーリンが、大西洋で獲れたものではない事を確認するために、必要なのである。 

過剰量のMeCP2タンパク質と関連する不安症や行動問題は、二つの遺伝子(Crh[コルチコトロピン放出因子]とOprm 1[μオピオイド受容体MOR 1])の過剰発現によるものであることが分かり、これらの問題を抱える患者の治療への道が開けるかもしれない。そう語るのは、ベイラー医科大学(BCM)の科学者達である。この研究レポートはNature Genetics誌オンライン版に掲載された。 

私たちの舌は脂肪に対して親和性を有するようだと、セントルイス、ワシントン大学医学部の研究チームが明らかにした。遺伝子の変化によって、人は脂肪の味に多少敏感になるのだ。本研究は、脂肪を感知するヒトのレセプターを始めて同定し、食品中の脂肪に敏感な人々もいるであろうことを示唆している。本研究は2011年12月31日付けのジャーナル・オブ・リピッド・リサーチ誌に掲載された。 

UCLAの幹細胞研究チームは ES細胞における5-ヒドロキシメチルシトシン(5hmC)によるDNA修飾の全ゲノム解析を世界で最初に完了し、主にオン状態或いは活性化状態の遺伝子上に観察される事を発見した。このUCLAイーディスブロードセンター再生医学・幹細胞研究所とイーライリリーの研究チームによる発見は、ガンのような疾患では、特定の遺伝子を制御する事で疾患をコントロールできる事を明らかにするものと考えられる。「ともかく、遺伝子のコントロールはヒトの疾患とガンに大変有用なのです。 

NIHの研究チームが、稀な免疫疾患を引き起こす遺伝子変異を同定した。この遺伝子変異は血縁でない3家族から見つかり、過度の免疫系障害が特徴的である。症状は免疫不全、自己免疫、炎症性皮膚疾患、および寒冷蕁麻疹が含まれる。本研究は、アメリカ国立アレルギー・感染症研究所(NIAID)アレルギー性疾患研究所、ジョシュア・ミルナー博士および国立ヒトゲノム研究所(NHGRI)所長、ダニエル・カスナー博士によって進められ、2012年1月11日付けのニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディシン誌に発表された。 

まるでマジシャンが奇術を見せるように、mitoNEETタンパク質(糖尿病や癌、そして老化において重要な役割をもつ、まだ謎の多い物質)は、1カ所で動きを見せたかと思うと、より重要な活動を別の箇所で行っていたりするのである。このタンパク質が鉄や硫黄など、有毒な物質の構造部をどのようにコントロールしているのかを理解するため、ライス大学およびサンディエゴ、カリフォルニア大学(UCSD)の研究チームは室内実験とコンピューターモデリングを駆使し、mitoNEETの活動の一部を解読した。 

アンデス地方やチベット高原などの高地に住む人々は、幾代にも渡り低酸素条件での生活に適応してきた。このような特徴的かつ強力な選択圧で生活をする様は、進化論において教科書のように良い例である。しかし、その遺伝子がどのようにして生存優位性を得ているのかは未だ解明されていない。この謎を解くため、ペンシルベニア大学の研究チーム(以下ペン・チーム)は、初となるゲノムワイドな高々度適応性の研究を始めた。 

乳房細胞が腺房と呼ばれる乳腺中の球状組織を形成する上で 重大な役割を持つ回転運動を発見した、と米国エネルギー省(DOE’S)ローレンス・バークレー国立研究所(Berkeley Lab)の研究チームが発表した。本研究は乳がんリサーチにはもちろん、基礎細胞生物学にも重要な意味を持つ。その接着性角運動のために、”CAMo”と呼ばれるこの回転運動は、細胞が球体を形成するのに必要不可欠なのである。 

National Institutes of Health (NIH) の研究チームは、ゲノム・シーケンシングを使って抗生物質耐性の (Klebsiella pneumoniae) 肺炎桿菌シーケンス・タイプ258 (ST258) の進化を追跡調査した。この菌は院内感染症を引き起こす菌としてごく一般的である。以前には、ST258 K. pneumoniae菌株は単一の祖先から広がったものと思われていたが、NIHの研究チームの研究から少なくとも2つの異なる系統があることが証明された。 

結核治療の初期段階で食物摂取のタイミングが治療効果に思わしくない影響を及ぼすことがある。2014年9月7日にドイツのミュンヘンで開催されたEuropean Respiratory Society (ERS) International Congressでプレゼンテーションされた新しい研究によると、結核治療薬服用直前に食物を食べると薬の効果が弱まる可能性がある。研究チームは、初めて結核の治療を受けるという患者20人を対象に簡単な研究を行った。患者にはisoniazid、rifampicin、pyrazinamide、ethambutolなど、ごく一般的な結核治療薬が与えられた。治療薬は初日は注射で、2、3日めは経口で、絶食中または高炭水化物食と一緒に投与した。各患者から血液サンプルを採取、LC/MS/MSと呼ばれる分析化学テクニックでサンプルを分離、サンプル中の化学物質を調べた。このテクニックは、医薬品の濃度と循環器系に届いた元のままの医薬品の比率を評価することができる。

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