アッシャー症候群は6000人に1人に起こる難聴と失明を伴う先天性疾患であり、臨床的にも遺伝学的にも異種性の劣性遺伝から起こる。重度のアッシャー症候群の場合、患者は出生時から難聴を煩い、思春期の辺りから網膜変性症が見られるようになり、最終的には全盲になる。これらの患者は日常生活に多大な問題を抱えることになる。 

2020年5月1日CytoDyn社WEBINARにおけるレロンリマブに関する質問(ログインするとQ&Aを表示):• この薬は COVID-19 の単剤治療に使用できますか?それとも最終的な分析に役立つ併用薬物療法を想定していますか?• FDAがレロンリマブを使用することで何人の命を救うことができるのかを理解するのが難しいのはなぜですか?• レロンリマブは、主に免疫系の回復または何らかの新しいメカニズムによる血漿ウイルス負荷を軽減する能力がありますか?• 血液検査の結果は、重度から重症のCOVID患者に報告されている凝固の問題をどのように説明するのに役立ちますか?• レロンリマブを投与された患者の入院期間の改善は何でですか? 後に患者はIgMまたはIgGのレベルが上昇しますか?• レロンリマブとレムデシビルを組み合わせるように求められた場合、CytoDynの立場はどうか?• COVID-19の結果が非常に悪いのに、なぜGilead社は注目を集めているのか?• MOAは健康な細胞のCCR5受容体を阻害することでしょうか?• 主な長期的な副作用は何か?• Gilead社のレムデシビルやGenentech社のアクテムラとは、どう違うのですか?• RANTESの過剰発現は、どのような直接的または間接的なメカニズムによって、SARS-CoV2によって引き起こされると考えているか?

 Covid-19 の決定的な特徴の1つは、重症例で発生する可能性のある過剰な免疫応答だ。 この免疫過剰反応のバーストは、サイトカインストームとも呼ばれ、肺に損傷を与え、致命的となる可能性がある。MITの研究チームは、これらの過剰なサイトカインを吸収するために、抗体と構造が類似した特殊なタンパク質を開発した。 「アイデアは、体内に注入され、サイトカインストームによって生成された過剰なサイトカインに結合し、過剰なサイトカインを取り除き、感染症から症状を緩和できるということだ」と、研究論文の著者の一人でMITの研究者であるRui Qing博士は述べた。研究者らは、最初の発見を Quarterly Review of Biophysics (QRB) Discovery で報告しており、現在、ヒト細胞およびサイトカイン放出とコロナウイルス感染の動物モデルでタンパク質のテストを開始したいと考えている。 この論文は「QTYコードで設計された水溶性Fc-Fusionサイトカイン受容体がそれぞれのリガンドに結合する(QTY Code-Designed Water-Soluble Fc-Fusion Cytokine Receptors Bind to Their Respective Ligands.)」と題されている。

ポルフィリン症は、8種の血液疾患の総称で、酸素運搬タンパク質のヘモグロビンを構成するヘムをつくる体の分子的メカニズムが不調を来す疾患である。ヘムが鉄と結合すると血液独特の赤色になる。ヘム産生に影響する遺伝的変異のタイプによって、現れるポルフィリン症の臨床症候群も異なっている。吸血鬼伝説が生まれた原因になったと考えられる症候群もその一つである。子供に発生するもっとも一般的なポルフィリン症は骨髄性プロトポルフィリン症 (EPP) と呼ばれるもので、患者の皮膚が光に対して異常に敏感になるという特徴があり、長時間陽光にさらされると痛みを伴う醜い火ぶくれになることがある。Dana-Farber/Boston Children's Cancer and Blood Disorders CenterのBarry Paw MD, PhDは、「EPP患者は慢性的な貧血症のため、常に疲労感を抱えており、しかも光感受性が高まっていて日光に当たることができないため、非常に青白い外貌になる。曇りの日でも体の露出した部分、耳、鼻などに火ぶくれや皮膚の変形を起こすのに十分な紫外線が届いている。日中は屋内で過ごし、十分な量のヘムを含んだ輸血でこの疾患の症状を一部緩和することはできる。大昔なら動物の血を飲み、夜の間だけ出歩くことで同じ効果が得られただろうが、吸血鬼伝説を広げることにもなったはずである。2017年9月5日付PNASオンライン版に掲載された研究論文で、Dr. Pawと国際的な研究チームは、EPPを引き起こす遺伝変異を新しく発見したと述べている。その論文では、「吸血鬼伝説」の原因になったと思われる、これまで知られていなかった生物学的機序に光を当て、EPPの治療標的を突き止めている。

Information Genomique et Structurale laboratory (CNRS/AMU)、Biologie a Grande Echelle laboratory (CEA/INSERM/Universite Joseph Fourier)、Genoscope (CEA/CNRS)、Russian Academy of Sciences合同の研究チームがシベリア最北東部で永久凍土の中から「ピソウイルス」と名付けられた巨大ウイルスの新種を発見した。 

New York University (NYU) Langone Medical Centerの研究者が主導するアメリカとベネズエラの多施設間研究チームの調査で、ベネズエラ南部のアマゾンのジャングルで、他の人類から孤絶して暮らす南米先住民族のヤノマミ族の腸内細菌叢が、これまでに知られている人間の腸内細菌叢の中でもっとも多様性に富んでいることが突き止められた。それに比べると、研究チームの推定では、工業化社会の人間の腸内細菌叢の多様性は40%低い。研究チームは、この研究結果を2015年4月17日付Science Advancesのオープン・アクセス研究論文で発表している。 

人間は年を取るにつれて器官の機能が衰えるだけでなく、細胞レベルでも損傷が徐々に増えていく。その理由の一つとして、DNAのエラーが累積され、欠陥のある細胞が作られるようになることが挙げられる。ドイツのケルン所在Max Planck Institute for Biology of AgeingのDr. Nils-Goran Larsson率いる研究チームが、老化は生活の間のDNA損傷の累積によって決まるだけでなく、母体から受け継いだ損傷によるところもあることを突き止めた。 

遠く離れた太平洋のたった一つの島にだけ茂る植物、Amborella trichopodaは一科一属一種の植物である。また、この植物は、2億年前に他の植物から分かれたもっとも古い顕花植物の一つでもある。Indiana University、U.S. Department of Energy Joint Genome Institute (DOE JGI)、Penn State University、ニュー・カレドニアのInstitute of Research for Developmentの合同研究チームは、この植物のエネルギー生成構造を支える異常なほどのゲノムの規模を突き止めた。 

アラバマ大学バーミンガム校(UAB)と共同研究機関の新しい発表によると、過度の飲酒が原因とされる肝臓障害を、抗酸化物質で予防できる可能性がある。研究結果は、脂肪症の進行阻止もしくは、肝硬変や肝癌に至る可能性のある肝臓の脂肪沈着を治療可能な道筋を示すような知見が、「Journal Hepatology」(2011年5月号)に発表された。UAB 校のDr. Victor Darley-Usmar 病理学教授が率いる研究チームは、ヒトにとって過剰摂取に相当するアルコール量を、ラットのミトコンドリアに5〜6週間にわたって毎日注入した。 

植物、動物の細胞には2つのゲノムがある。一つは細胞核に、もう一つはミトコンドリアに含まれている。それぞれゲノムで突然変異が起きた場合、互いに異なる配列の変異を呈し、それが原因で病気になる場合がある。最近、ブラウン大学とインディアナ大学の科学者チームが、その病気をさらによく知るため、ショウジョウバエを対象として、個々のヌクレオチドの逸脱やショウジョウバエが発病する機序までを研究した。単一のゲノムの突然変異による発病だけでも十分に複雑だが、細胞核のDNAとミトコンドリアのDNAという2つのゲノム同士の相互作用の逸脱で引き起こされる病気もある。 

University of Pittsburgh Cancer Institute (UPCI, ピッツバーグ大学がん研究所) の研究チームはがん細胞の成長を止める方法を発見した。この発見が新しい抗がん治療法に結びつく可能性がある。ある種のがん細胞は重要なタンパクを奪われると正しく分裂できなくなるという研究報告であり、Journal of Cell Scienceの2013年2月号の巻頭記事を飾っている。この報告論文は2012年9月26日付同誌初出。 

タマゴテングタケ(テングタケ属)は猛毒である。 ただし、その毒素の一部は適切に使用すれば治癒に役立つこともある。たとえば、毒素のひとつであるアマニチンは抗体ベースの癌治療の必須要素だ。2019年12月17日にドイツの雑誌Angewandte Chemieにオンラインで公開された論文で、科学者たちは現在、α-アマニチンの新しい合成経路について説明している。このオープンアクセスの論文は、「デスキャップ毒素α‐アマニチンの収束的全合成(A Convergent Total Synthesis of the Death Cap Toxin α‐Amanitin.)」と題されている。彼らの方法は大規模生産に適しているようであり、最終的にさらなる研究のための十分な毒素を利用可能にする。 アマニチンは酵素RNAポリメラーゼIIを高い選択性で阻害し、細胞死を引き起こす。 抗体によって腫瘍細胞に輸送されると、毒素は腫瘍と戦うことができる。 しかし、最近まで、アマニチンの唯一の供給源はキノコ(テングタケ)自体であり、実験の可能性を制限していた。少し前に、最も強力なアマニチンであるα-アマニチンの全合成が報告された。 ベルリン工科大学のRoderich D.Süssmuth博士と協力者は、完全に液相で発生する大規模の全合成の代替ルートを紹介した。

今年初めNature Medicineに発表されたミネソタ大学医学部教授のPaul D. Robbins博士とLaura J. Niedernhofer博士、メイヨー・クリニックの研究者James L. Kirkland博士とTamara Tchkonia博士の研究成果は、老化細胞と呼ばれる損傷細胞の負担を軽減し、生涯末期に治療が開始されても寿命を延ばし、健康を改善することが可能であることを示した。彼らは現在、多くの果物や野菜に見られる天然産物のフィセチン(fisetin)による高齢マウスの治療も、健康と寿命に有意な正の効果を有することを示している。 

レロンリマブ要約:- COVID-19 の三拍子揃った薬-レロンリマブはサイトカインストームを静め、免疫学的ホメオスタシスを回復し、ウイルス量を減らす-Gileadの抗ウイルス薬レムデシビルとGenetechの抗IL-6 アクテムラは、「非常に複雑な発病への断片的アプローチ」と呼ばれている-腎不全、肝不全、および凝固の問題を含む、関連するすべての併存疾患を含む、COVID-19感染のすべての側面に広く一般的に適用できる-レロンリマブの幅広いアプローチは、PDL-1および癌におけるチェックポイント阻害剤封鎖の幅広い非特異的アプローチと類似している-レロンリマブは、他のウイルスに対しても有効であり、また将来の新たな脅威となる可能性がある現在知られていないウイルスに対しても有効であると予測されている--RANTES(マスター免疫調節分子)がCOVID-19の病因を促進--RANTESレベルは、重症のCOVID-19患者で100倍正常--RANTESは、免疫細胞上のCCR5受容体に結合し、免疫細胞の動員(T細胞およびマクロファージ)の悪循環を開始し、サイトカインおよびより多くのRANTESの局所放出、より多くの免疫細胞の流入、より多くのサイトカインおよびより多くのRAANTESの放出などを行う-身体が炎症により大量の複数臓器システムの問題を引き起こす文字通り「炎上」は、レロンリマブによってブロックできる可能性がある-レロンリマブはケモカインのCCR5細胞表面受容体をブロックし、RANTES結合を防止する-レロンリマブは皮下注射により週2回投与される-ギリアドのレムデシビルは、1時間に4回のIV注射で毎日投与される--CytoDynの科学者は、レロンリマブは単独で非常に効果的であり、レムデシビルとの併用は不要であると主張している--CytoDynの科学者は、COVID-19ウイルスが患者の血漿中に存在することを初めて発見したときに、血液供給について警告を発する-最近、1人の致命的な病気の患者がレロンリマブによる治療後にECMO心肺バイパス生命維持装置から外され、その後まもなくリハビリセンターに解放された-レロンリマブによる治療の5日後に、重症の11人のCOVID-19患者のうち4人が人工呼吸器から取り出されて病院から退院した。ギリアドのレムデシビルは入院期間を15日から11日に短縮しただけ-6年間にわたるさまざまなレロンリマブ試験で800人以上の患者に深刻な有害事象は観察されなかった-レロンリマブは、HIV、癌、NASH、Gvh病、および多発性硬化症におけるその有効性についてCytoDynによってすでに研究されている2020年5月1日金曜日、CytoDyn,Inc.(OTC.QB:CYDY)は、適応症– HIV / AIDS、癌、COVID-19、GvHD(移植片対宿主病)、およびNASH(非アルコール性脂肪性肝炎(NASH))を含む複数の治療法の可能性を秘めたCCR5拮抗薬であるレロンリマブ(PRO 140)を開発しているワシントン州バンクーバー市を拠点としたバイオテクノロジー企業だ。ウォールストリートレポーターの「次のスーパーストック」と呼ばれている。CytoDynの取締役、社長、最高経営責任者であるNader Pourhassan博士、およびCytoDynの病理学者であり顧問であり、診断サービスプロバイダーであるIncellDxの最高経営責任者兼創設者であるBruce Patterson博士は、 COVID-19の治療薬としてのレロンリマブ(Vyrologix)について緊急IND下、および第2相および第2b / 3相のCOVID-19試験における最新情報を提供した。Patterson博士は、COVID-19の作用機序とレロンリマブの効果に関する彼の最新の発見について話した。 Patterson博士は、COVID-19患者ではマスター免疫調節剤RANTESのレベルが通常の100倍であることを示しており、COVID-19は完全にRANTESに起因する疾患であると考えている。 レロンリマブはRANTESの正常な受容体(CCR5)を遮断し、RANTESの影響を効果的に低減し、「サイトカインストーム」の鎮静、免疫恒常性の回復、および血漿ウイルス量の減少を可能にする。 この三拍子揃った改善により、肺機能が回復し、多くの場合、重症で換気の良い患者を抜管し、わずか5日で病院から退院させることができるという。Patterson博士が説明した結果は、COVID-19の治療において、レロンリマブがギリアドのレムデシビルよりもはるかに優れていることを示唆している。CytoDynは現在、COVID-19の2つの臨床試験、米国の軽度から中等度のCOVID-19集団を対象とした第2相ランダム化臨床試験、重症および重症COVID-19を対象とした第2b / 3相ランダム化臨床試験に患者を登録している。この紹介の下には、Pourhassan博士とPatterson博士によって提供された金曜日(5月1日)のプレゼンテーションと、それに続くQ&Aセッションでの29の質疑応答の筆記録である。これらの質問は、ウェビナーで出た200を超える質問から選択された。この文字起こしは、CytoDynのプレゼンテーションとその後の35分間のQ&AセッションをモニタリングしたBioQuickニュースのMike O’Neill編集長が作成した。

貧血その他の鉄欠乏症の新しい治療法になる可能性を持った重要な化学物質が研究者によって突き止められた。Science誌掲載の新論文の共同首席著者で、Harvard Medical School、Dana Farber Cancer Institute、Brigham and Women’s Hospital、Boston Children’s Hospitalの准教授を務めるBarry Paw, MD, PhD.は、「鉄がなければ生命体も存在できない。 

テキサス大学(UT)サウスウエスタン校の研究者らは早期老化を防ぐ新しい遺伝子パスウェイを同定した。2019年2月8日にeLifeでオンライン公開されたこの研究は、ロングノンコーディングRNAをコードする遺伝子NORADの活性を調べた。この論文は「PUMILIOの多動性がノルアド欠乏マウスの早期老化を促進する(PUMILIO Hyperactivity Drives Premature Aging of Norad-Deficient Mice.)」と題されている。「DNA損傷により活性化されるノンコーディングRNA(noncoding RNA activated by DNA damage)」を表すNORADは、多くの哺乳動物に存在し、細胞分裂時に適切な数の染色体を維持するのに役立つ。細胞内の多くのRNAは、タンパク質を構築するための指示書またはコードとして機能するが、ノンコーディングRNAはタンパク質をコードしない。「哺乳類の生理機能と開発におけるノンコーディングRNAの重要性に関して、科学界には多くの疑問がある。我々の細胞はこれらのRNAを何千も生産しているが、動物の重要な機能に関係しているのはごくわずかなものだけだ。」とUTサウスウエスタンの分子生物学教授であり、この研究の著者であるJoshua T. Mendell博士は述べた。2015年に彼らはNORADの発見を報告し、ヒト細胞の染色体の正しい数を維持する上でこのノンコーディングRNAの重要性を実証した。研究室で成長した細胞に限った彼らの以前の研究で、研究者は次に哺乳動物生理学における遺伝子の機能をよりよく理解するために生きた動物におけるNORADの役割を調べた。これを達成するために、Mendell研究室のポスドク研究者でeLife研究の筆頭著者であるFlorian Kopp博士は、マウスゲノムからNORADを削除することによってマウスを遺伝子操作した。 ヒト細胞において以前に見出されたように、NORAD喪失はマウスにおいて染色体異常を引き起こした。 しかし、細胞のエネルギー原動力のミトコンドリアでいくつかの予想外の変化があった。「我々は、NORADが取り除かれたとき、ミトコンドリア機能が非常に異常になったことを見て驚いた。 これらのマウスはまた、非常に急速に老化するようだった。」とハワードヒューズメディカルインスティテュート(HHMI)研究者およびテキサス州癌研究研究所(CPRIT)の癌研究者であり、ハモン再生医療科学研究センターおよびハロルドC.シモンズ総合癌センターの両メンバーであるMendell博士は述べた。

10年前の偶然の発見により、スペイン国立癌研究センター(CNIO)の研究者は、その種で通常よりもはるかに長いテロメアをもつ最初のマウスを作製した。テロメアと老化(テロメアは生涯を通じて短くなるため、古い生物はテロメアが短くなる)の関係を考えて、100%の細胞が非常に長いテロメアを持つマウスを生み出す研究を開始した。この研究成果は、2019年10月17日にNature Communicationsでオンラインで公開され、より良い健康状態で癌や肥満から解放されたとの肯定的な結果のみが示されている。 

食塩摂取量が増えると、自己免疫疾患の原因になる侵襲性の強い免疫細胞グループを誘発する可能性があるという研究結果が発表された。この研究を手がけたのは、Yale University、Broad Institute、MIT、 Harvard University、Vanderbilt University、ベルリンのMax-Delbruck Center for Molecular Medicine、University of Erlangen-Nurembergなどを含む数多くの研究機関から参加した国際的な科学者グループで、2013年3月6日付の「Nature」誌オンライン版に掲載された論文の著者には、Dr. Markus Kleinewietfeld、Professor David Hafler、Dr. Ralf Linker、Professor Jens Titze、Professor Dominik N. Mullerらが名を連ねている。同日付で「Nature」誌オンライン版に掲載された第二論文では、食塩を感知する酵素が自己免疫疾患の誘発に関わっている可能性が記述されている。これも同日付で「Nature」誌オンライン版に掲載された第三論文では、ヘルパーT細胞に関わる分子経路が自己免疫疾患につながる可能性が記述されている。この3本の「Nature」の論文をあわせて、自己免疫疾患の起源についてさらに理解が深まることが考えられるが、ここでは食塩の過剰摂取の影響を述べた第一論文を中心にして紹介したい。

ヒトと微生物との関係は複雑である。どこのスーパーマーケットに行っても、抗菌性セッケンと体に良い細菌の増殖を助けるヨーグルトという相反するような商品が並んでいる。細菌には病気の原因になるものもたくさんあるが、Caltechの生物学と生体工学の教授、Dr. Sarkis Mazmanianと彼の研究チームは、人体内に棲み着いて、われわれを健康に保つ働きのある何千という種類の細菌に注目している。 

Weill Cornell Medical Collegeの研究グループを中心とする国際的な研究チームは、膵臓がんが肝臓に転移する分子レベルの正確な過程を明らかにした。この過程こそ発生率の高い膵臓がんの死亡率を押し上げている要因である。研究チームは、「私達の研究成果によってこの過程の理解を通し、転移を遅らせることを中心とする治療法を確立し、新しいバイオマーカーを提示することで膵臓がんの早期発見に役立てることができるだろう」と述べている。 

ロッテルダムで開かれていた第5回国際細胞外小胞学会 (ISEV 2016) 年次総会金曜日全体会議では、著名な免疫学者で細胞生物学者のFrancisco Sanchez-Madrid, PhDが、「Immune Cell-Cell Communication: Mechanisms of MicroRNA and Protein Sorting into Exosomes (免疫細胞間情報伝達: microRNAやタンパク質がエキソソームに入り込むメカニズム)」のタイトルで講演した。Dr. Sanchez-Madridは、Universidad Autonoma de Madridの教授であり、マドリッドのLa Princesa Hospital, Immunology Departmentの長も務めている。ひな段会議室をぎっしりうめた800余人の参加者を前に、博士の講演は2つの主題を中心にして行われた。一つは、免疫シナプスを通してエキソソームによって行われる遺伝子とミトコンドリアの構成物質の輸送(免疫シナプスとは、抗原提示細胞または標的細胞と、エフェクターT細胞またはナチュラル・キラー細胞などのリンパ球との接点のインターフェース。また、免疫シナプスは、免疫細胞間の情報伝達のために、その接触面に一時的に構成される膜とも定義される)。もう一つは、miRNAやタンパク質がエキソソームに収まるメカニズムについてだった。

オランダのロッテルダムで2016年5月4日から7日までの4日間開催された国際細胞外小胞学会総会 (ISEV 2016) の最終日土曜日は半日の閉会会議で、興味深い新しい研究や4日間の会期中に発表されたいくつかの優れた研究の授賞式などが行われた。総会はJan Lotvall前会長が、オーストラリアのLa Trobe University, Department of Biochemistry & Geneticsの学部長を務めるAndy Hill氏 (写真) に会長職を引き渡す挨拶を行い、ISEV 2017年次総会は、カナダのトロントで開かれることを発表して閉幕した。この2つの発表に先立ち、アメリカのMedical School of Brown UniversityのOncology & Medicine教授を務めるPeter Quesenberry, MDと、同じくアメリカのVanderbilt University Medical CenterでCancer BiologyとCell and Developmental Biology教授を務めるAlise Weaver, MD, PhDが、臨床と科学研究の2つの面の総括講演を行った。この総会を成功させた、ハンガリーのEdit BuzasをリーダーとするISEV国際地域組織委員会の素晴らしい努力も絶賛された。また、口頭とポスターによる優れたプレゼンテーションにも賞が与えられた。また、ISEVが、5月中にEV(Extracellular Vesicles)に関するオンライン・コースを立ち上げるとの発表もあった。総会の最終日午前中は、「Experts Meet」小部会が、血液、母乳、尿という3種の生体液をテーマに3箇所に分かれて同時に開かれた。その後、最新の研究の口頭プレゼンテーションが3部会で同時に行われた。この3部会のハイライトとして、脊髄負傷の修復にエキソソームが何らかの役割を果たしていることや、ピコルナ・ウイルスの一種であるメンゴウイルスのような非エンベロープ型ウイルスによる感染にEVが果たしている役割に関する講演があった。

ボストンのタフツ大学の生物学者が率いる研究チームは、発生中の胚にある脳が、感染を防ぐのに役立つシグナルを発生期の免疫系に提供し、細菌の挑戦を生き抜く胚の能力を大幅に改善することを発見した。 研究者たちは、脳を取り除いた状態で発達し続けるカエルの胚を使用して、脳のない胚は免疫細胞の力を傷害または感染部位に集結させることができず、胚をより迅速に感染に陥れることを発見した。対照的に、脳の存在は、細菌の脅威を克服するために損傷部位に免疫細胞を誘導するのに非常に役立つ。 

テキサス大学アーリントン校(UTA)の研究者らは、免疫応答を調節し、髄膜炎や敗血症などの中枢神経系の炎症性疾患を潜在的に制御する新しいパスウェイを発見した。「このプロセスを調整するためには、細菌感染に対する炎症反応がどのような調節を引き起こすかを知る必要がある。そうすることができれば、敗血症や髄膜炎、癌や筋ジストロフィーなどの今まで治療が困難だった中枢神経系の炎症性疾患をコントロールすることができる。」とUTA准教授のSubhrangsu Mandal博士は語る。Mandal博士のチームの研究成果は、2018年10月23日にScientific Reportsにオンラインで掲載された。 このオープンアクセスの論文は、「LncRNA HOTAIRは、リポ多糖によって誘導されるサイトカインの発現およびマクロファージにおける炎症反応を調節する(LncRNA HOTAIR Regulates Lipopolysaccharide-Induced Cytokine Expression and Inflammatory Response in Macrophages.)」と題されている。研究者らは、白血球に存在するロングノンコードRNA(lncRNA)分子HOTAIRが、細菌の存在下で細胞に免疫応答を活性化するようシグナルを送る能力を有することを見出した。RNAは全ての生細胞に存在する。 その主な役割は、DNAからの指示を運ぶことだ。 「HOTAIRがシグナル伝達経路に関与していることを知ることは、それを細菌感染のバイオマーカーとして利用できることを意味している。」とMandal博士は付け加えた。 「シンプルな血液検査は、感染症をはるかに迅速に発見し、今まで治療が難しかった敗血症性ショックや髄膜炎などの急速に容態が変化する患者の治療を改善する可能性がある。」

カリフォルニア大学サンディエゴ校(UCSD)の研究者チームは、膵臓がんの存在を示す手がかりを探すための血液サンプルを分析する新戦略を評価した研究を発表した。ACS Nanoに掲載されたこの論文は、「交流電気動力学チップ上のエキソソームタンパク質バイオマーカーの統合解析が患者血液中の膵臓がんの迅速な検出を可能にする(Integrated Analysis of Exosomal Protein Biomarkers on Alternating Current Electrokinetic Chips Enables Rapid Detection of Pancreatic Cancer in Patient Blood)」と題されている。早期に膵がんと診断された患者は、長期生存の可能性が高く、手術を含む治療オプションへのアクセスが増加する。 しかし、現在のところ、膵臓がんのための標準スクリーニングプログラムまたは効果的早期検出戦略は存在しない。PanCAN(膵臓がんアクションネットワーク)のような研究者や組織では、早期に疾患を効果的に診断し、改善する方法の特定に取り組んでいる。

現在、アルツハイマー病の治療法は無く、効果的な介入には遅すぎる段階でしか診断することができないという現実が薬物研究を妨げているとしばしば論じられている。アルツハイマー病は、患者が記憶喪失のような典型的な症状を示すよりもずっと前から始まると考えられている。 アルツハイマー病の患者に最初の症状が現れるずっと前に病気の早期指標を検出できる血液検査が開発された。 

Weill Cornell Medicineの科学者が発見した新しい細胞メッセンジャーは、がん細胞が体内の細胞間送達をどのように行うのかを明らかにするのに役立つかもしれない。 2018年2月19日にNature Cell Biologyに掲載された論文では、非対称フローフィールドフロー分画(asymmetric flow field-flow fractionation : AF4)という最先端の技術が、がん細胞が分泌するDNA、RNA、脂肪、およびタンパク質を含むエキソソームを効率よく分画できることを示している。 

Johns Hopkins Kimmel Cancer Centerの研究チームが、ただ1回の血液検査で8種の一般的ながん種を検出し、がんの部位も判定できる方法を開発した。このCancerSEEKと呼ばれる検査法はユニークな非観血性の多検体検査法であり、8種のがんタンパク質のレベルを同時に測定し、血中循環DNAのがん遺伝子変異を検出することができる。この検査法は、アメリカでがん死の60%以上を占めるもっとも一般的ながん8種を検出することを目的としている。 

パーキンソン病(Parkinson's disease)は、進行性の脳細胞死および運動機能の広範な喪失をもたらす神経変性疾患である。 この疾患に関して多くの研究が行われているにもかかわらず、現在利用可能な決定的診断試験法は無い。マンチェスター大学(英国)の研究者らは、パーキンソン病を匂いで感じ取ることができる女性の助けを借り、この疾患の特徴的な臭いを構成する化合物の同定について報告した。2019年3月20日に、American Chemical Societyから出版されたACS Central Scienceでこの発見は報告された。 このオープンアクセスの論文は「皮脂からパーキンソン病の揮発性バイオマーカーの発見(Discovery of Volatile Biomarkers of Parkinson’s Disease from Sebum.)」と題されている。ヒポクラテス、ガレヌス、そしてアビチェンナなど古代の医師らは、診断ツールとして匂いを使った。嗅覚検査は現代医学では一般的ではないが、糖尿病のような病気はしばしば特定の匂いに関連している。 しかし、匂いと神経変性疾患とを結び付ける証拠はほとんど無かった。超人的な嗅覚を持つ女性、Joy Milneさん(写真)は、1986年に亡き夫のLesがパーキンソン病と診断された。彼女は非常に敏感な嗅覚を持っており、普通の嗅覚能力では検出されない匂いを検出して、区別することが可能だ。Milneさんは臨床症状が現れるよりずっと前にパーキンソン病の独特の皮脂の臭いを区別することができる。そこで、マンチェスター大学のマンチェスターバイオテクノロジー大学院マススペクトロメトリー教授のPerdita Barran博士は、Milneさん協力の元、どの化学物質がパーキンソン病患者の皮脂の匂いを構成しているのかを判断したいと考えた。

マラソンの練習をしている人なら誰でも、個々のランニングトレーニングが時間の経過とともに体力の大幅な向上をもたらすことを知っているのでトレーニングが認知機能に効果があると聞いても驚くことはないだろう。しかし、これまでのところ、その根底にある神経生物学を説明し支持するための研究はほとんどなされていなかった。2019年3月23日から26日にサンフランシスコで開催されCognitive Neuroscience Society(CNS)で、運動が脳に及ぼす影響について、1回のトレーニングの後に起こる脳の変化は、長期にわたる継続的な身体トレーニングで起こることを予測できることが報告された。CNSでこのトピックに関するシンポジウムを主催したニューヨーク大学(NYU)の神経科学教授であるWendy Suzuki博士 は、「身体活動とあなたの脳がどのように機能するかには強い直接的な関係がある。」と語った。この論文は「ヒトにおける運動の即時的および長期的な影響のイメージング」と題されている。1500人以上の科学者がCNS年次総会に参加し、このシンポジウムでは、Michelle Voss博士とMichelle Carlson博士、そしてMichael Yassa博士とEmrah Duzel博士が講演を行った。「人々はまだ身体的健康を脳や認知的健康に結びつけていない。彼らは痩せることに関心が向いている。」しかし、さまざまなタイプ、量、強度の身体活動が脳機能をどのように改善するかを明らかにする新研究が出てくるにつれて、認知神経科学者は、社会経済的に恵まれない地域社会において、身体活動のプラスの影響についての一般世論に大きな変化をもたらすことを期待している。2回目のシンポジウムで話題になった新研究では、「通常、短期的および長期的の影響は異なる研究で検討されているため、エクササイズミラーによる即時の認知的影響は短期的なものとして扱われてきた」と、アイオワ大学心理脳科学部の助教授で健康・脳・認知研究室所長のMichelle Voss博士 はシンポジウムで講演を行った。彼女のチームの最初の発見は、認知神経科学の分野にとっては朗報だ。単一のトレーニング研究の後に観察された脳の変化は、長期トレーニングのためのある種のバイオマーカーになり得ることを示唆している。研究参加者は、軽度および中等度の強度の運動の単一セッションの前後および12週間のトレーニングプログラムの後に、fMRI脳スキャンおよびワーキングメモリテストを受けた。 研究者らは、適度な強度の身体活動の単一セッション後に認知および機能的脳の連結性において最大の改善が見られた人々もまた、認知および連結性において最大の長期的増加を示したことを見出した。

心筋の強化や他の疾患を治療する幹細胞療法は、ヒト臨床試験で有望視され始めている。 しかし、臨床成果の観察以外に、標的臓器内の移植細胞の有効性を評価するうえで再現性の欠如や使用期限、非侵襲的なツールの欠如は、幹細胞分野の進歩を遅らせてきた。メリーランド大学医学部(UMSOM)、ペンシルバニア大学、およびエモリー大学の研究者らは、移植された幹細胞の有効性を追跡するのに血液検査が使用できると理論づけた。 彼らは、移植幹細胞からレシピエントの血液に分泌される エクソソーム と呼ばれる微小な細胞成分を分析した。 研究者らは、2種類のヒト心臓幹細胞を移植し、循環するエクソソームをモニターした後、げっ歯類の心臓発作モデルまたは心筋梗塞モデルで自らの理論を検証した。この研究者らは、循環するエクソソームが細胞成分を標的の心筋細胞に送達し、心臓の修復をもたらすことを発見した。 彼らの研究成果は、2019年5月22日にScience Translational Medicineにオンラインで発表された。 この論文は「移植された前駆細胞由来の循環エクソソームが虚血性心筋の機能回復を助ける(Circulating Exosomes Derived from Transplanted Progenitor Cells Aid the Functional Recovery of Ischemic Myocardium.)」と題されている。

レイク・エリー大学オステオパシー医学部の研究者らは、3匹のビーグル犬が肺癌を匂いで識別できることを明らかにした。これは、この病気特有のバイオマーカーを識別するための最初のステップだ。研究者らは、犬の能力が集団癌検診のための効果的で安全で安価な手段の開発につながるかもしれないと言う。 

時折エンジンルームの中を覗かないと、車の修理が必要かどうかを予測することは困難だ。 同様に、予防心臓専門医は、現在治療を受けていない人の初期段階の心臓病を検出する方法を探している。 テキサス大学(UT)サウスウェスタンメディカルセンターの予防心臓病研究者は、タンパク質バイオマーカーの新しい血液検査でこれらの個人を特定できると考えている。 2019年11月11日にCirculationでオンラインで公開された彼らの新しい研究では、多民族の合計13,000人近くを含む3つの主要な患者集団からなる患者データを蓄積した。研究チームは、2つのバイオマーカー(血中タンパク質)のレベルを測定することで、治療が必要な人を特定できるかどうかを調べた。 研究者は、現在治療に推奨されていない軽度の高血圧の成人の約3分の1が、これら2つのバイオマーカーのいずれかが僅かに上昇していることを発見した。 これらの個人は、今後10年間で心臓発作、脳卒中、またはうっ血性心不全を発症する可能性が高くなった。 言い換えれば、これらの患者は「レーダーの下を飛んで」おり、心血管イベントのリスクが高いことを知らない。このCirculationの論文は、「2017 ACC / AHA高血圧ガイドラインによるプールされたコホート分析による降圧薬の配分のためのリスク評価へのバイオマーカーの組み込み(Incorporation of Biomarkers Into Risk Assessment for Allocation of Antihypertensive Medication According to the 2017 ACC/AHA High Blood Pressure Guideline: A Pooled Cohort Analysis.)」と題されている。Ambarish Pandey博士(写真左)とParag Joshi博士(写真右)は、心臓病のリスクがある一部の患者はバイオマーカー血液検査によって助けられると考えている。

敗血症の発見と治療は数十年に渡りほとんど進歩していないが、やっと前進するかもしれない。敗血症は身体全体に病原体感染の急増をもたらす致命的な医学的合併症だ。 シンシナティ小児病院医療センターの研究者は、5つのバイオマーカーを測定し、どの患者が敗血症(血液中毒とも呼ばれる)による死亡における低・中または高リスクであるかを正確に予測する新しい高速血液アッセイを開発し、テストが成功したことを報告している。この研究の上級調査員でシンシナティ・チルドレンズのクリティカルケア医学部長である Hector Wong 博士(写真)によると、このPERSEVEREと呼ばれるこの新しい検査法により、医師は敗血症を早期に発見して層別化することができるという。どの5つのタンパク質/遺伝子がアッセイの血液パネルの5つのバイオマーカーを構成するかを知ることにより、医師ははるかに早く、より正確に医療介入を開始できる様になる。患者を低リスク、中リスク、高リスクのグループに階層化できるだけでなく、バイオマーカー検査により、医師は特定の患者に対して適切な介入を選択できる。Science Translational Medicine誌の2019年11月13日号に掲載されたこの論文は「小児敗血症バイオマーカーリスクモデルの前向き臨床試験と実験的検証(Prospective Clinical Testing and Experimental Validation of the Pediatric Sepsis Biomarker Risk Model.)」と題されている。

英国のフランシスクリック研究所とシャリテー – ベルリン医科大学の研究者、および他機関の同僚は、 COVID-19 の患者が重症になる可能性が高いかどうかの予測に使用できる27のタンパク質バイオマーカーを特定した。COVID-19を引き起こすRNAウイルスであるSARS-CoV-2に感染した人々は、異なる反応を示す。 この病気は症状が出ない人もいれば、入院が必要な致命的な人もいる。この研究では、2020年6月1日にCell Systems誌でオンラインで公開され、COVID-19患者のさまざまな症状の重症度に応じた、27のバイオマーカー候補を発見したことが発表された。このバイオマーカーは、医師が患者の病気を予測し、科学者に医薬品開発の新しいターゲットを提供するのに役立つ。 このオープンアクセスCell Systemsの論文は「超ハイスループットの臨床プロテオミクスがCOVID-19感染の分類子を明らかにする(Ultra-High-Throughput Clinical Proteomics Reveals Classifiers of COVID-19 Infection.)」と題されている。

香港科学技術大学(HKUST)の科学者チームは最近、SARS-CoV-2コロナウイルスの潜在的なワクチンターゲットのセットを特定する重要な発見を行い、ウイルスによって引き起こされた新規肺炎(COVID-19)に対するワクチン開発に向けた実験的取り組みを導く重要なガイダンスを提供した。2003年にSARS(重症急性呼吸器症候群)の大流行を引き起こしたSARS-CoVと同様に、SARS-CoV-2は同じベータコロナウイルス属に属している。SARS-CoV-2とSARS-CoVの遺伝的類似性を検討することにより、チームは実験的に決定された免疫学的データを活用して、SARS-CoV-2に完全に一致するSARS-CoV由来B細胞およびT細胞エピトープのセットを特定した。 エピトープは、ウイルスに対するアクションをトリガーするために免疫系によって認識されるバイオマーカーだ。 利用可能なSARS-CoV-2遺伝子配列の中で同定されたエピトープに変異は観察されていないため、これらのエピトープの免疫ターゲティングは、新規肺炎COVID-19に対する防御に役立つ可能性がある。データ科学者のMatthew McKay 教授とAhmed Abdul Quadeer 博士が率いるチームは、彼らの研究がSARS-CoV-2に対する効果的なワクチンの開発に向けた実験的研究を導く助けになると期待した。 McKay 教授は、HKUSTの電子コンピューター工学および化学および生物工学の学部の教授である。 Quadeer博士は、同じくHKUSTの電子コンピューター工学科のポスドク研究員だ。彼らの調査結果は、2020年2月25日にオープンアクセスジャーナルVirusesにオンラインで公開された。 この論文は、「SARS-CoV免疫学的研究に基づいたCOVID-19コロナウイルス(SARS-CoV-2)の潜在的なワクチン標的の予備同定(Preliminary Identification of Potential Vaccine Targets for the COVID-19 Coronavirus (SARS-CoV-2) Based on SARS-CoV Immunological Studies.)」と題されている。

膵臓の持続性炎症(慢性膵炎)は、米国で3番目に致命的な癌である膵臓癌を発症する既知の危険因子だ。 房細胞(通常、腸や気道で見られる化学的変化に敏感な細胞)は以前に膵臓で発見されていたが、その機能はほとんど謎のままだった。現在、ソーク研究所のGeoffrey Wahl 博士、およびスタッフの科学者であるKathleen DelGiorno 博士が率いる研究チームは、膵炎のマウスモデルを用いて、膵炎における房細胞の形成と免疫における房細胞の驚くべき役割を明らかにした。2020年2月14日に Frontiers in Physiology のオンラインで公開された研究結果は、膵炎および膵臓癌をテストするための新しいバイオマーカーの開発につながる可能性がある。このオープンアクセス論文は、「タフト細胞の形成は膵臓損傷における上皮可塑性を反映する:ヒト膵炎のモデル化への影響(Tuft Cell Formation Reflects Epithelial Plasticity in Pancreatic Injury: Implications for Modeling Human Pancreatitis.)」と題されている。 

マウントサイナイ医科大学の研究者は、筋萎縮性側索硬化症(ALS)やルーゲーリック病と呼ばれる、退行性でしばしば致命的な神経疾患について、小児期に見られるバイオマーカーを同定したと2020年5月21日に米国科学誌「Annals of Clinical and Translational Neurology」のオンラインで発表した。このオープンアクセスの論文は、「筋萎縮性側索硬化症における早期生命金属異常調節(Early Life Metal Dysregulation in Amyotrophic Lateral Sclerosis.)」と題されている。研究者らは、成人になってALSを発症した患者の「歯」にバイオマーカーを発見した。 彼らはレーザーを使用して毎日歯に形成される年輪をマッピングし、ALSの患者がそうでない患者と比べ、出生時および生後10年以内に異なる方法で金属を代謝したことを示す年輪の形成をエビデンスとして発見した。ALSは通常、50代または60代で発症することが多い。

テキサス大学メディカルブランチ(UTMB)のRamkumar Menon博士が率いる研究者グループは、まだ確実ではないが分娩のタイミングにおけるキープレイヤーについて新たな洞察を見出した。この新しい情報によって、科学者たちは早産を防ぐことができるようになるかもしれない。

2017年10月9日、ASEMV(American Society for Exosomes and Microvesicles) 年次大会の2日目、Harvard Univesityの1年生、Indrani Dasさん (18) が自身のエキソソーム研究を発表し、200名の名声のある研究者達を釘付けにした。この研究にはRegeneron 2017 United States Science Talent Search Grand Prizeと賞金$250,000が贈られている。 

University of SydneyのBrain and Mind CentreとRoyal Prince Alfred Hospitalが中心となって行った画期的な研究で、多発性硬化症 (MS) の患者の血液中に疾患特有の物質が含まれていることを発見、若年成人の神経障害としてはもっとも一般的なこの疾患を確実に診断するバイオマーカーになるという結果を得た。2017年10月30日付Scientific Reportsオンライン版に掲載された研究論文は、簡単な血液検査だけで、「調節異常」のmicro-RNAの微小分子を発見し、それによってMSを正確に診断し、また患者の疾患の段階の違いも判定できたと記述している。オープンアクセス論文として掲載されたこの論文は、「Exosomal MicroRNA Signatures in Multiple Sclerosis Reflect Disease Status (多発性硬化症固有のエキソソーム由来MicroRNAが疾患状態の指標に)」と題されている。現在のところ、MSを確実に発見する検査法はなく、疾患の診断と観察は、臨床診察、MRI、脳脊髄液検査、電気生理検査などに頼っている。MSは慢性疾患であり、しかも現行の診断、観察検査は金がかかる上に疾患の異なる段階を判定するにもその能力には限界がある。同研究チームは、健康人とMS患者を識別するバイオマーカーを発見しただけでなく、再発寛解型多発性硬化症 (RRMS) と進行型多発性硬化症という2種のMS亜型を判別する9種の固有なmicro-RNA分子を見つけている。MS患者の70%ほどが再発寛解型多発性硬化症 (RRMS) であり、これはしばしば二次進行型MSに発達することがある。MS患者の10%から15%は、発症当初から進行型と診断される一次性進行型MSである。研究チームはさらに研究の対象にされなかった他の進行型MS患者グループでも9種のmicro-RNA分子のうち8種の検証に成功し、この研究結果の再現性を実証した。RPA HospitalのDepartment of NeuropathologyとUniversity of SydneyのBrain and Mind Centreの長を兼任するAssociate Professor Michael Bucklandは、「この研究で、血中循環エキソソーム由来のmicro-RNAがMS診断のバイオマーカーとして優れているだけでなく、MSの亜型を高い精度で予測するのにも優れていることが初めて確認された」と述べている。

スペインのマドリッドにあるカルロス3世 国立循環器研究センター(CNIC)の研究者らは、ウイルスやバクテリアなどの病原体に早期に対応する免疫システムの防御機構に関する貴重な情報を提供している。2018年7月9日にネイチャーコミュニケーションズのオンラインで公開されたこの研究データは、免疫系の異なる細胞コンポーネントがどのようにして病原体に効果的な反応を起こすかを説明している。CNICの研究者らは、ある種のナノベシクルに含まれるミトコンドリアDNAが、抗ウイルス遺伝子プログラムの活性化を引き起こすレセプター細胞に警戒状態を引き起こすと特定した。エキソソームとして知られるこれらのナノベシクルは、Tリンパ球によって産生され、細胞間接触を介して樹状細胞によって捕捉される。病原体に対する免疫応答は、Tリンパ球と抗原提示細胞、特に樹状細胞との間の特異的相互作用を必要とし、免疫シナプスとして知られるプロセスである。 この過程で、細胞表面に存在するレセプター結合とそのリガンド、およびエキソソームの移動の両方によって、細胞間情報が交換されることが、研究者らによって説明されている。今まで、免疫シナプス後のT細胞における活性化経路が研究されてきた。 しかしながら、受容されたシグナルの同一性および樹状細胞に対するそれらの機能的効果は、あまり注目されてこなかった。プリンセサ病院長、マドリード自治大学免疫学教授であるCNICの細胞間コミュニケーショングループのFrancisco Sánchez-Madridk教授は、以前、免疫シナプスの間にエキソソームを樹状細胞に転移させるT細胞の能力を述していた。この論文は、「抗原接触を介した活性化T細胞からのDNA含有細胞外ベシクルによる樹状細胞のプライミング(Priming of Dendritic Cells by DNA-Containing Extracellular Vesicles from Activated T Cells Through Antigen-Driven Contacts.)」と題されている。

癌細胞は、制御不能になっている細胞の塊ではない。 彼らは自分の生存のために免疫システムとの積極的な戦闘に参加する。免疫系を回避できることは癌の特徴である。 ペンシルベニア大学(Penn)の研究者によると、癌細胞は、血液中を循環する生物学的な"ドローン"であるエキソソームとPD-L1と呼ばれるタンパク質により、腫瘍に到達して戦いをする前にT細胞を疲弊させることを報告した。2018年8月8日Natureに掲載されたこの研究は、School of Arts and Sciences生物学のWei Guo博士とPerelman School of Medicine病理学研究所のXiaowei Xu博士の共同研究である。主に転移性メラノーマに焦点を当てていたが、チームは乳癌と肺癌もPD-L1を持つエキソソームを放出することを発見した。この論文は、「Exosomal PD-L1は免疫抑制に寄与し、抗PD-1応答に関連する(Exosomal PD-L1 Contributes to Immunosuppression and Is Associated with Anti-PD-1 Response.)」と題されている。 この研究は、癌が免疫系を抑制するために全身的にどのようにアプローチするかについてのパラダイムシフトの絵を提供する。さらに、それはまた、腫瘍と戦うために免疫抑制を中断する抗PD1療法にどの癌患者が応答するかを予測する新たな方法を指し示し、その有効性を追跡する手段となる。「免疫療法は転移性メラノーマ患者の多くにとっての救命措置ですが、これらの患者の約70%が反応しません。」「これらの治療法は費用がかかり、毒性の副作用があるため、どの患者が反応するのかを知ることは非常に有益である。血流中のバイオマーカーを同定することで、どの患者が反応するかを早期に予測でき、 患者さんとその医師に、彼らの治療がどれほどうまく機能しているかモニターする方法を提供できる。」とGuo博士は語った。

細菌は、私たちが呼吸するあらゆる空気の中に存在する。気道がこれらの細菌の感染からどのように保護されるのか、今まで謎のままだった。細菌を吸入すると、細菌を直接攻撃する細胞から直ちに エクソソーム が分泌され、鼻の前部から気道に沿って抗菌タンパク質を送り、細菌が体の奥に入る前に防御する。

2018年9月5日にParkinson's Disease Todayに掲載された研究コラムニストのAlice Melao氏の記事によれば、血液中を自然循環するエクソソームは脳を含む中枢神経系に効果的に薬を運搬することができ、マウスでの初期の研究ではパーキンソン病の影響を受けた脳の特定の領域にドーパミンを直接的に送達することができたことを示唆しているという。中国の四川大学の研究者らによるこの論文は、「パーキンソン病のより良い治療のために脳にターゲティングされたドーパミン負荷血液エクソソーム(Dopamine-Loaded Blood Exosomes Targeted to Brain for Better Treatment of Parkinson’s Disease)」と題され、Journal of Controlled Releaseの2018年10月10日号に掲載された。パーキンソン病は、ドーパミンを産生する脳における神経細胞(ドーパミン作動性ニューロンと呼ばれる)の進行性変性および死によって特徴付けられる。 ドーパミンは、脳細胞の活性および機能を調節する重要なシグナル伝達分子である。Melao氏は、この病気の進歩的な性質を考えると、ドーパミン作動性ニューロンの死滅を防ぐ方法や、脳のドーパミンレベルを回復させる方法の研究に焦点を当てているという。しかし、主要な課題は、脳を保護する半透過性の膜である血液脳関門を越えて標的治療領域に到達する可能性のある治療薬を獲得することであった。四川大学の研究者らは、 エクソソーム をドーパミン輸送手段として使用する可能性について検討した。 チームはマウスの血液からエクソソームを単離して精製し、それらを容易に追跡できるように緑色の蛍光タグで標識した。 研究者らは、実験室で増殖させたマウス脳細胞でこれらのエクソソームを使用したとき、小胞が細胞膜と合体し、その内容物が細胞内に放出されて緑色に変わることを確認した。 次に、Melao氏によると、研究者らはエクソソームを生きたマウスに注射し、蛍光色素が脳に蓄積していることを発見したという。

Cell Host&Microbeに発表された研究において、ケンタッキー州のルイビル大学微生物免疫学部 James Graham Brown癌センターの研究者らは、植物由来 エクソソーム 様ナノ粒子(ELNs: exosome-like nanoparticles)が腸内微生物叢によって取り込まれ、マイクロバイオーム組成および宿主の生理機能を変化させるRNAを含むことをマウスで実証した。2018年11月14日号に掲載されたこの論文は「植物由来エクソソームMicroRNAが腸内微生物叢を形成する(Plant-Derived Exosomal MicroRNAs Shape the Gut Microbiota.)」と題されている。

乳癌患者の中には、腫瘍が手術で取り除かれる前に化学療法を受ける人もいる。 ネオアジュバント療法と呼ばれるこのアプローチは、乳房温存手術を容易にするために腫瘍のサイズを縮小するのを助け、外科医が除去するための癌性細胞をほとんどまたは全く残さずに腫瘍を根絶することさえできる。 そのような場合、患者は手術後の生涯に渡り癌のないまま過ごせる可能性が高い。しかし、すべての腫瘍が化学療法で縮小するわけではない。 腫瘍が術前療法に抵抗すると、転移性疾患を発症するリスクが高くなる可能性がある。これは、腫瘍が骨や肺などの他の臓器に再発することを意味している。化学療法に抵抗し、原発腫瘍を治療する間に他の臓器に広がる癌性細胞が原因の可能性がある。スイスのEPFL(Ecole Polytechnique FédéraleDe Lausann)のMichele De Palma博士が率いる国際研究者チームが、このプロセスに新たな光を投げかけている。 腫瘍モデルを用いて、研究者らは、患者に頻繁に使用される2つの化学療法薬、パクリタキセルとドキソルビシンが、乳腺腫瘍を誘発して エクソソーム を放出することを発見した。 化学療法の下では、エクソソームはタンパク質アネキシンA6を含み、これは未治療の腫瘍から放出されたエクソソームには存在しない。「アネキシンA6のエクソソームへのローディングは化学療法に反応して有意に増強されるようだ」と筆頭著者のIoanna Keklikoglou博士は説明する。エクソソームは化学療法治療を受けた腫瘍から放出された後、血中を循環する。 肺に到達すると、エクソソームはアネキシンA6を含むそれらの内容物を放出する。 これは肺細胞を刺激して、単球と呼ばれる免疫細胞を引き付ける別のタンパク質CCL2を放出させる。 単球が肺における癌性細胞の生存および増殖を促進する可能性があることをこれまでの研究が示しているように、この免疫反応は危険であり、転移における初期段階の1つである。 「要するに、我々の研究では化学療法と乳がんの転移との間に新たな関連があることが明らかになった」とDe Palma博士は述べた。この論文は、2018年12月31日にNature Cell Biologyにオンライン掲載された。 この論文は、「化学療法は乳癌モデルにおいて前転移性細胞外小胞を誘発する(Chemotherapy Elicits Pro-Metastatic Extracellular Vesicles in Breast Cancer Models.)」と題されている。

米国ルイジアナ州立大学公衆衛生学(LSU Health)のSuresh K Alahari博士は、乳癌細胞の遊走や動きの制御など、さまざまな生物学的プロセスに関与する新規タンパク質、Nischarinを発見した。 彼の研究室は、Nischarinが腫瘍抑制因子として機能することを示した。この研究はより良い癌治療につながるかもしれない。現在の研究で研究チームは エクソソーム 放出におけるNischarinの機能を調べた。 エクソソームは、タンパク質を含むナノサイズの小胞であり、生理学的および病理学的プロセスの両方に関与する遺伝的および他の物質を含む。腫瘍由来のエクソソームは、腫瘍の進行および癌の転移に関与する細胞間コミュニケーションのための様々なシグナル伝達メッセンジャーを含む。 腫瘍エクソソームは、腫瘍の微小環境内の様々な種類の細胞の相互作用に影響を及ぼし、腫瘍の発生、進行、および転移を制御する。 原発腫瘍はエクソソームを放出し、それが転移性癌細胞の播種および増殖を増強する。この新しい論文は、2019年1月11日にCancer Researchに掲載され「Nischarin発現細胞由来のエクソソームは乳癌細胞の運動性と腫瘍増殖を減少させる(Exosomes from Nischarin-Expressing Cells Reduce Breast Cancer Cell Motility and Tumor Growth)」と題されている。

カンザス大学、カンザス大学癌センター、およびKUメディカルセンターの研究者によって発明された新しい超高感度診断装置は、医師が血液または血漿の小滴から癌を迅速に検出することを可能にし、患者のためのより迅速な対処とより良い結果につながるだろう。この エクソソーム を検出するリキッドバイオプシー(liquid biopsy)分析のためのラボオンチップは、2019年2月25日にNature Biomedical Engineering誌にオンラインで報告された。エクソソームは、すべての細胞から放出されるが、特に癌細胞によって大量に産生される傾向がみられる。この論文は「3Dナノパターンマイクロ流体チップを用いた循環エクソソームの超高感度検出(Ultrasensitive Detection of Circulating Exosomes with a 3D-Nanopatterned Microfluidic Chip.)」と題されている。

チェックポイント阻害剤として知られている免疫療法薬は癌の治療に革命をもたらした。最近まで治療不可能と考えられていた悪性腫瘍を持つ多くの患者が長期寛解を経験している。 しかし、多数の患者がこれらの薬には反応せず、特定の癌で他のものより遥かによく効くことに科学者は混乱してきた。現在、カリフォルニア大学サンフランシスコ校(UCSF)の研究者、およびカリフォルニア大学バークレー校の共同研究者は、なぜ多くの癌がこれらの薬に反応しないのかを説明する驚くべき現象を特定し、病気に対する免疫システムを解き放つ新しい戦略を示唆している。

ジェット機の下から荷降ろしされるたくさん詰め込まれたスーツケースのように、 エクソソーム と呼ばれる生物学的小包は、体内のすべての細胞から継続的に展開され、これらを送り出すことによって細胞はタンパク質および遺伝物質を介して互いに通信をする。 単に細胞の「ゴミ」の微小な袋であると考えられていたエクソソームは、今や我々の健康にとって非常に重要なものであると理解されている。

健康な心筋組織を保護することで損傷を減らす心臓発作の直後に服用できる薬があると想像して欲しい。 心臓発作が起きた場合、心臓の専門医は、「時は筋肉なり」と言うと、バージニア工科大学カリリオン心臓医療センター・フラリン生物医学研究所のディレクターであるRobert Gourdie博士(写真)は語った。血流によって酸素が供給されないと、心臓細胞はすぐに死ぬ。 しかし、心臓発作は血液と酸素を心臓細胞の隔離された部分だけしか減らすことができず低酸素性虚血性傷害を引き起こすが、死にかけている細胞は隣の細胞に信号を送る。「問題は、死にかけている組織の領域は隔離されていないことだ。損傷した心臓細胞は健康な細胞に信号を送り始め、損傷はさらに大きくなる。」そうバージニア工科大学のGourdie博士(心臓再生医学研究、生物医学工学および機械学科の教授)は述べた。科学者は、この損傷信号が近くの健康な組織に広がることを「バイスタンダー効果」と呼ぶ。しかし、もし近くの心筋細胞が無傷のまま、低酸素性虚血性損傷によって直接影響を受けた細胞グループの損傷を局所化して維持する方法があったらどうだろうか?アメリカ心臓学会誌に2019年8月19日にオンラインで公開された研究では、Gourdie博士が率いる研究者チームによって開発された新しい分子が、心臓発作中およびその後でも心臓組織の維持に役立つことが明らかにされた。オープンアクセス論文は、「αカルボキシル末端1ペプチドとコネキシン43カルボキシル末端との相互作用は、虚血再灌流傷害後の左心室機能を維持する。(Interaction of α Carboxyl Terminus 1 Peptide with the Connexin 43 Carboxyl Terminus Preserves Left Ventricular Function After Ischemia‐Reperfusion Injury)」と題されている。10年程前、Gourdie博士は、研究室のポスドク博士であるGautam Ghatnekar博士と共同で、有望な発見に遭遇した。 Gourdie博士のチームは、バイスタンダー効果の重要な側面の制御に関与する細胞膜チャネルの活性を標的とする化合物を発見した。しかし、alphaCT1と呼ばれるこの化合物は、特に皮膚創傷治癒に関して、予期せぬ有益な効果ももたらした。

カリフォルニア州オレンジ郡にある非営利の地域医療提供ネットワークのHoag Memorial Hospital Presbyterianは、癌診断、癌の進行、および治療抵抗性の初期疾患マーカーの可能性を特定および特徴付ける研究の開始を発表した。 Exosome Sciences社および、Aethlon Medical社の子会社との提携により、癌の遺伝的リスクが高い癌患者の エクソソーム 研究を開始する。エクソソームは、癌細胞から豊富に放出されるナノ粒子であり、腫瘍の遺伝的およびタンパク質カーゴのスナップショットを提供できるため、癌の非侵襲的な液体生検の重要な標的となる。Hoag Memorial Hospital PresbyterianのPrecision Medicineのプログラムディレクターであり、Hoagの主任研究者であるMichael Demeure医学博士は、次のように述べている。「液体生検には、癌の早期発見と潜在的な治療の有効性の評価をリアルタイムで実施できる可能性がある。Hoagには、癌を発症するリスクの高い多数の個人および家族を支援する積極的な遺伝性がんプログラムがあり、癌の発見において可能な限り早期かつ最も治療可能な段階でのブレークスルーの達成に取り組んでいる。」

以前から研究者は、侵襲性の強いタイプの乳がん患者のがん細胞にはミトコンドリアDNAが少ないという観察結果に注目していた。しかし、そのような特徴ががん進行にどのように影響するのかということについては誰にも分からなかった。最近になってようやく、University of Pennsylvaniaの研究チームが、ミトコンドリアDNAの減少で人間の乳がん細胞が侵襲性の強い転移性を獲得することを明らかにした。 

現在、多発性硬化症 (MS) の治療方法には髄鞘再形成を促進するようなタイプのものはない。しかし、2013年5月10日、サンディエゴで開かれていたSociety for Neuroscience 2013年総会において、取材に対して、University of Chicago Medicine, Director of the Migraine Headache ClinicでProfessor in Neurosciencesを務めるRichard Kraig, M.D., Ph.D.は、「血液中に存在する免疫細胞の一種、樹状細胞を骨髄から採取培養し、刺激を与えることで エクソソーム (画像参照) と呼ばれる小粒子を放出させることができる」と述べた。

Henry Ford Hospitalの研究チームは、動物を使った新しい研究で、卒中発作後に幹細胞から放出される エクソソーム と呼ばれる微小な (50nm) 脂質性の細胞内器官に内包されるRNA (リボ核酸) 塩基配列のごく短いmicroRNAのうち、特定のものが神経的な回復に一役買っていることを突き止めた。研究チームのラットを用いた実験では、この特定のmicroRNAが幹細胞からエクソソームを使って脳細胞に送られ、卒中発作後の機能回復を強化していた。

2013年4月17日から20日までボストンで開かれた年次恒例のInternational Society for Extracellular Vesicles (ISEV)において、アムステルダムのVU University Medical Center、Pathology Departmentの免疫学者、Michiel Pegtel, Ph.D.が、「包括的なディープ・シーケンシングで、特定のRNA小片が腫瘍の エクソソーム に組み込まれていることを突き止めた。この発見から、新しくバイオマーカーとして応用することも考えられる」と口頭発表した。エクソソーム (写真) は、細胞より小さな膜結合性の小胞 (直径30nmから150nm) で、様々なタイプの正常細胞からもがん細胞からも放出され、小胞内に膜タンパク質、細胞タンパク質、microRNA (miRNA)、その他、mRNA断片を含む様々なタイプのRNAを含んでおり、その内容はエクソソームを放出した細胞によって異なる。

最初の脳卒中薬が承認されてからほぼ四半世紀が経つが、現在承認されている薬は1つだけだ。2019年12月6日にTranslational Stroke Researchで公開されたオープンアクセスの論文で、NIHの資金提供を受けた動物科学者は、重度の脳卒中の人に見られるのと同じ神経変性パターンでモデル化されたブタの完全な回復をサポートした新しい脳卒中治療の脳画像データを提示した。このオープンアクセスの論文は、「神経幹細胞の細胞外小胞がブタの虚血性脳卒中モデルにおける正中線シフトの予測結果を分裂させる。(Neural Stem Cell Extracellular Vesicles Disrupt Midline Shift Predictive Outcomes in Porcine Ischemic Stroke Model.) 」と題されている。ジョージア大学(UGA)農業環境科学大学のブルックス特別教授で、ジョージア・リサーチ・アライアンスの著名な学者であるSteven Stice 博士は、次のように述べている。Stice博士はArunA Biomedical Inc.の最高科学責任者でもあり、UGAに入る前は、Advanced Cell Technologyの共同設立者であり、CSOとその会社のCEOを務めていた。 「恐らく最も奇なる発見は、 エクソソーム 治療後に回復することができたことだ。」Stice博士とUGAの再生バイオサイエンスセンター(RBC)の同僚は、脳が片側に押しやられている正中線シフト中の最初の観察証拠を報告し、低侵襲および非手術のエクソソーム治療が現在のところ重度の脳卒中による損傷を修復できることを示唆している。エクソソームは、腫瘍と隣接細胞の挙動を変えることができる長距離の細胞間コミュニケーションの強力なメディエーターであると考えられている。 この研究の結果は、同じ認可されたエクソソーム技術を使用した他の最近のRBCの研究からの知見を反映している。 脳卒中に苦しむ多くの患者は、脳の中心線、つまり脳の左右の部分の間の谷を越えた脳のシフトを示す。 病変または腫瘍は、脳に圧力または炎症を誘発し、通常直線として現れるものをシフトさせる。

世界牛乳の日(6月1日)に、米国農務省(USDA)は、ネブラスカ大学リンカーン校栄養健康科学部・分子栄養学のJanos Zempleni博士のコメントを発表した。Zempleni博士は乳児用調合乳に、牛乳からの小さく利益が豊富なナノ粒子( エクソソーム )を補うことの潜在的な利点について主張している。以下、Zempleni博士のコメントを紹介する。USDAの経済調査サービスのデータによると、米国では牛乳の平均年間消費量は1人あたり約64リットルである。牛乳は生後6か月までの乳児にとって唯一の栄養源であるため、子供のうち大部分は乳児が占めている。

2020年6月17日にNature Outlookでオンラインで公開された記事で、 イェール大学医学部のリウマチ学および臨床免疫学およびイェール大学医学部の元アレルギーおよび臨床免疫学のチーフであるPhilip Askenase教授(写真)は、「エクソソームはセンセーショナルな生物学的発見である」と述べている。膜に囲まれた小さな細胞内小胞は、研究されてきたすべての動物種のすべての細胞によって生産・分泌され、植物や細菌によっても放出される。 オープンアクセスのNatureの記事は「人工ナノ粒子は本物ほど良くない(Artificial Nanoparticles Are Not As Good As The Real Thing.)」と題されている。Askenase博士によれば、エクソソームの主な機能は、血流を通過した後、近くまたは全身に他の細胞に入り、最も重要なのはアクセプター細胞のDNAに変化を引き起こす可能性があるマイクロRNA(miRNA)である貨物を運ぶことだ。発現は、タンパク質機能の変化につながり、最終的にはアクセプター細胞の挙動の変化につなががる。Askenase博士は、「エクソソームは、これまでに発見されていない生物学的プロセスを媒介し、細胞や生物全体の分子経路や代謝経路を変える可能性がある予期しないユニバーサル・ナノ粒子だ」と述べている。彼は、エクソソームは医学的に非常に重要であると信じている。 「それらは、研究者に疾患メカニズムのより良い理解を提供し、新しい診断テストにつながり、そしておそらく最も重要なことは、新しい治療法を提供するための天然ナノ粒子手段を提供するだろう」とAskenase博士は言う。 しかし、これは研究者がエクソソームをより集中的に研究した場合にのみ起こると彼は信じている。Askenase博士は、残念ながらこれまで生物医学のエンジニアは別のあまり有望ではないアプローチに焦点を当ててきたと考えている。 彼は、エクソソームは数十億年の進化を経て最適な組成物を進化させてきたと主張し、比較すると、操作されたナノ粒子には多くの相対的な欠点があるという。Askenase博士は、エクソソームは血液脳関門などの組織障壁を容易に通過でき、投与後4〜5日間効果を発揮して血流に入ることができると指摘している。 一方、人工ナノ粒子は、血液脳関門を通過することができず、それらを外来粒子として認識する自然の体のメカニズムによって急速に排除される。

VIB-UGent Center for Inflammation Researchとゲント大学の研究グループによる共同研究により大腸癌を引き起こす新しいメカニズムが明らかになった。 研究者らは、タンパク質Zeb2(ジンクフィンガーEボックス結合ホメオボックス2)の異常な発現が、腸壁または『上皮』の完全性に影響を与えることを発見した。この上皮は通常、腸内微生物による浸潤を防ぐバリアとして機能する。 Zeb2はこの障壁を弱め、浸潤性細菌が癌の進行を引き起こす炎症を引き起こすことを可能にする。 科学者らは免疫系の操作または微生物相の除去が癌の発生を防ぐことができることを実証した。 これらの調査結果は新しい治療法につながる可能性がある。 

ロシアのウラジオストクにある極東連邦大学(FEFU:Far Eastern Federal University)の科学者は、ドイツおよびロシアの同僚とともに、化学療法抵抗性の前立腺癌と戦うためのリード化合物を開発した。 アイディアは、ウニの色素とグルコース分子を組み合わせた生物活性分子で、活性原薬を腫瘍細胞に送達することから生まれた。この論文は、Marine Drugs誌で最高の研究論文として認められた。 2020年5月11日にオンラインで公開たこの論文は「ウニにインスパイアされた:前立腺癌における新規合成非グリコシド11,4-Naphthoquinone-6S-Glucose コンジュゲートのWarburg効果媒介選択性(Inspired by Sea Urchins: Warburg Effect Mediated Selectivity of Novel Synthetic Non-Glycoside 1,4-Naphthoquinone-6S-Glucose Conjugates in Prostate Cancer.)」と題されている。 

食物アレルギーや薬物アレルギーのある人にとって、生命を脅かすアナフィラキシーショックのリスクは隅々に潜んでいる。 新しいNorthwestern Medicineの研究は、原因に関わらず、軽度から生命を脅かすアナフィラキシーまでを予防するために、予防的に服用できる錠剤があるかもしれないことを示している。この新しい研究の成果は、2020年6月2日にJournal of Clinical Investigationのオンラインで発表された。 この論文は、「ブルトン型チロシンキナーゼ阻害は、ヒトIgE媒介アナフィラキシーを効果的に保護する。(Bruton’s Tyrosine Kinase Inhibition Effectively Protects Against Human IgE-Mediated Anaphylaxis.)」と題されている。アナフィラキシーは、アレルゲンへの暴露から数秒または数分以内に発生する可能性のある、重篤で生命にかかわる可能性がある全身性アレルギー反応だ。 アメリカの喘息およびアレルギー財団によると、それはアメリカ人の約50人に1人に発生するが、多くの人はその率はより高いと考えている(20人に1人)。 アナフィラキシーの間に血圧が非常に低くなるか、気道が閉じて臓器に十分な酸素を得ることができない場合、アナフィラキシーショックに至る。この研究で使用される薬はBTK阻害剤として知られている。 BTKは、マスト細胞を含む細胞内に見られるブルトン型チロシンキナーゼ(画像)と呼ばれる酵素の略だ。 BTK阻害剤がアレルギー反応を阻止するように機能する理由は、BTK酵素を阻害または阻止することにより、マスト細胞がアレルゲンおよびアレルギー性抗体によって誘発されてヒスタミンおよび他のアレルギー性メディエーターを放出できないためだ。

最初は肺炎の形で肺に大きく影響すると考えられていた COVID-19 だが、2020年4月にCOVID-19に起因する多くの謎の症状の1つとして血栓が浮上した。 この直後、コロナウイルス関連の脳卒中が原因で若者が亡くなったという報告が出され、その次に、COVIDつま先という、痛みを伴う赤または紫の指が報告された。これらの症状のすべてに共通するものは何か? 血液循環の障害だ。

健康な脳細胞を破壊するアルツハイマー病の有毒な粒子を特定する抗体の設計法が発見された。この悲惨な病気との戦いにおける潜在的な進歩と言える。 新しい方法は、アミロイドベータオリゴマーとして知られている有毒な粒子を認識できる(画像はアミロイドベータペプチド1-42の溶液での形を示している)。この抗体はアルツハイマー病および他の形態の認知症の新しい診断方法の開発につながる可能性がある。ケンブリッジ大学、ロンドン大学ユニバーシティカレッジ、およびルンド大学のチームは、毒性のあるオリゴマーの検出とその数の定量化において非常に正確な抗体を設計した。 この結果はPNASで報告された。「オリゴマーを認識する定量的方法の緊急のアンメットニーズがある-これはアルツハイマー病で主要な役割を果たすが、標準的な抗体発見戦略にはとらえどころのないものだ」と英国で研究を主導したケンブリッジのミスフォールディング病センターのMichele Vendruscolo 博士は述べた。 「我々は革新的な設計戦略を通じて、これらの毒性粒子を認識する抗体を発見した。」認知症は英国の主要な死因の1つであり、毎年260億ポンド(約3.4兆円)以上の費用がかかる。これは、今後25年間で2倍以上になると予測されている。 推定によれば、世界経済に対する現在のコストは年間1兆ポンド近く(約131兆円)とされている。認知症の最も一般的な形態であるアルツハイマー病は、脳全体の神経細胞の死および組織の喪失を引き起こし、その結果、記憶障害、人格の変化、および日常的な活動を行う際の問題を引き起こす。 オリゴマーと呼ばれるタンパク質の異常な塊は、認知症の原因として科学者に認識されている。 アミロイド仮説によると、タンパク質は通常、重要な細胞プロセスを担っているが、人々がアルツハイマー病を患っている場合、これらのタンパク質(特に、アミロイドベータタンパク質を含む)は不正になり、健康な神経細胞を殺してしまう。タンパク質が適切に機能するには、厳密に調節される必要がある。 この品質管理プロセスが失敗すると、タンパク質が誤って折りたたまれ、連鎖反応が始まり、脳細胞が死に至る。 誤って折りたたまれたタンパク質は、脳細胞間に蓄積するプラークと呼ばれる異常なクラスターを形成し、それらが適切に信号を送るのを停止する。 死にかけている脳細胞にはもつれ、タンパク質のねじれた鎖も含まれており、生命維持に不可欠な細胞輸送システムを破壊する。つまり、栄養素やその他の必須供給物が細胞内を移動できなくなる。アルツハイマー病の臨床試験は400件を超えているが、病気の経過を変える薬は承認されていない。 英国では、認知症は死亡原因の上位10位に入っている。

2020年5月21日、シンガポールのAustrianova社とチリのCells for Cells社は、カプセル化された間葉系幹細胞(mesenchymal stem cells :MSC)から細胞外小胞(extracellular vesicles :EV)を生成するための、コストと時間を節約する方法についての、新規で画期的な査読済み科学論文を学術パートナーと共に発表した。 これらの細胞外小胞は、幹細胞治療効果に寄与することが知られている。著者は、Cells for Cellsの独自の間葉系幹細胞を使用して実証し、Austrianova独自のCell-in-a-Box®カプセル化技術を使用して、カプセル化された間葉系幹細胞から細胞外小胞を製造および提供できることを示している。この論文は、チリのアンデス大学とオーストリア・ウィーンの獣医学大学の学術パートナーと共同執筆したもので、2020年5月21日にFrontiers in Pharmacologyに掲載された。 このオープンアクセス論文は、「半透過性セルロースビーズにより、カプセル化された細胞からの小さな細胞外小胞の選択的かつ継続的な放出を可能にする(Semipermeable Cellulose Beads Allow Selective and Continuous Release of Small Extracellular Vesicles from Encapsulated Cells.)」と題されている。

2020年5月15日、英国政府は迅速な COVID-19 の非侵襲的検査が行える特別に訓練されたバイオ検出犬を見つけ出するために、500,000ポンド(約6500万円)以上を研究チームに授与したことを発表した。臨床試験の第1フェーズでは、ロンドン医療衛生熱帯大学(LSHTM:London School of Hygiene & Tropical Medicine)の世界をリードする疾患管理の専門家がMedical Detection Dogsおよび 英国のダーラム大学と協力して、犬が臭気サンプルから人間のコロナウイルスを検出できるかどうかを判断することを目指している。このチームは以前にも協力して、犬がマラリアに感染した人間の臭いを、世界保健機関(WHO)の診断基準を超えて非常に高い精度で検出できることを実証した。 この新しい試験では、人々が無症候性であっても、犬がコロナウイルスを検出するように訓練できるかどうかを調べる。 試験で十分な証拠が得られれば、最初の犬のチームを6か月以内に英国への入国の主要ポイントに配置して、海外から旅行する人々の迅速なスクリーニングを支援することができる。 成功した場合、これらの犬は、英国政府の堅牢な5本の柱の検査戦略とともに、1時間あたり最大250人をスクリーニングする迅速で非侵襲的な検出方法を提供できる可能性がある。これは、ウイルスに対し政府の対応を可能な限り広範囲にするために検討されている多くの検査手段のうちの1つだ。LSHTMの主任研究者であり、疾病管理部門の責任者であるJames Logan教授は、次のように述べている。

視力を失うほとんどの大人にとって、失明は、脳が無傷のままである一方で、目または視神経の損傷が原因となっている。 何十年もの間、研究者たちは、損傷した目を迂回して視覚情報をカメラから脳に直接届けることで視力を回復できるデバイスの開発を提案してきた。2020年5月14日にCellで発表された論文で、テキサス州ヒューストンのベイラー医科大学の調査チームは、彼らがこの目標に一歩近づいていると報告している。 このオープンアクセスの論文は、「視覚皮質の動的刺激によって、視覚障害者と視覚障害者のフォームビジョンが生成される(Dynamic Stimulation of Visual Cortex Produces Form Vision in Sighted and Blind Humans.)」と題されている。著者らは、埋め込まれた電極が動的シーケンスで刺激されるアプローチを説明し、参加者が「見る」ことができた視覚皮質の表面上の形状を本質的に「追跡」した。「電気刺激を使用して患者の脳の文字を直接動的に追跡したところ、意図した文字の形状を『確認』でき、さまざまな文字を正しく識別できた」と著者であるベイラー医科大学 脳神経外科のDaniel Yoshor医学博士(写真右)は述べた。 「彼らは、飛行機による空中文字のように、光る点や文字を形成する線を見たことを説明した。」視覚皮質を刺激する以前の試みはあまり成功していない。 以前の方法では、各電極を視覚的ディスプレイのピクセルのように扱い、それらの多くを同時に刺激していた。 参加者は光のスポットを検出できたが、視覚的なオブジェクトやフォームを識別するのは困難だった。

オックスフォード大学、英国王立産婦人科医協会、リーズ大学、バーミンガム大学、キングス・カレッジ・ロンドンの共同研究で、非妊婦より妊婦が COVID-19 重症になる可能性が低いことを示唆する新しい研究成果を発表した。 しかし、重症になった女性の大多数は妊娠後期であり、このグループにとってのソーシャルディスタンスの重要性を強調している。プレプリントとして2020年5月12日に発行されたこの調査では、2020年3月1日から2020年4月14日までに英国の病院に入院した427人の妊婦にCOVID-19が確認され(妊婦1,000人中4.9人) 、妊娠中の女性は深刻な病気を経験するリスクが高くないことを示唆している。研究のための情報は、コンサルタント主導の産科ユニットを備えた英国の194病院すべてから収集された。 黒人や少数民族の妊娠中の女性は、COVID-19のために入院する可能性が高かった。 ロンドン、ウェストミッドランド、ノースウェストの女性が分析から除外された場合でも、この不均等は変わらなかった。つまり、これらの地域でのCOVID-19感染率の高さで、この違いを説明することはできない。分析ではまた、高齢の妊婦、太りすぎまたは肥満の女性、および高血圧や糖尿病などの既存の医学的問題を抱えていた妊婦が、感染して病院に入院する可能性が高いことも示した。 妊娠中にCOVID-19で入院した女性は、比較の妊婦群よりも喫煙する可能性が低かった。この研究による他の重要な発見には以下を含んでいる。

2020年5月8日にCMAJ(Canadian Medical Association Journal)でオンライン公開された多国間の調査によると、気温と緯度は新型コロナウイルス( COVID-19 )の蔓延とは関連していないようだ。しかし学校の閉鎖やその他の公衆衛生対策がプラスの効果をもたらしているという。 この論文は「COVID-19パンデミックに対する気候と公衆衛生の介入の影響:前向きコホート研究(Impact of climate and public health interventions on the COVID-19 pandemic: A prospective cohort study.)」と題されている。「我々の研究は、COVID-19の流行のグローバルデータを使用して、これらの公衆衛生の介入により流行の成長が減少したことを示す重要な新しい証拠を提供するものだ。 」とトロント大学健康政策・管理・評価研究所、オンタリオ州トロントの聖ミカエル病院の Peter Jüni博士は述べた。

抗感染物質の豊富なレパートリーを備えた薬用植物は、常に人間が病原菌や寄生虫との戦いを生き残るための鍵となっている。 これが、新しい構造と効果を備えた植物薬の探索が、今日でも天然物研究の大きな課題の1つである理由だ。ドイツのライプチヒ大学(UL)、ライプニッツ植物生化学研究所(IPB)、ドイツ統合生物多様性研究センター(iDiv)の科学者らは、系統関係のデータ分析を使用して、生物活性天然化合物、空間分布および植物の二次代謝産物の検索を大幅に簡素化する方法を示した 。彼らの新しいアプローチは、どの植物群とどの地理的領域が薬効を有する種の高い密度を持っている可能性が高いかを予測することを可能にするものだ。 これにより、将来的には、より的を絞った新しい薬用植物の探索が可能になるという。現在使用されているすべての抗生物質の70%以上は、植物、真菌、細菌、および海洋生物から得られた天然物質に由来している。 病原体は絶えず変化し、新しい危険な菌株を生産しているため、感染症との戦いでは、人間は特に自然源からの新薬に依存している。同時に、我々は天然資源をまだ使いきれていない。 植物界だけでも、これまでにすべての維管束植物の約10%だけが適切な活性化合物についてスクリーニングされてきた。 現在、科学データベースに保存されている天然産物の構造は約250,000であり、植物だけで推定で最大500,000ある。 しかし、これまでのところ、研究者たちは植物界全体を体系的にテストしていない。 その代わり、一部は既知の薬効を持つ植物で、一部は優先する種または地理的領域で、または使用する検出方法の種類と感度に応じて、薬物の分離検索を実施してきた。さらに、これまでの薬用植物とその活性化合物の知識は一貫して文書化されていない。 植物には地域ごとに異なる名前が付けられているが、植物から分離された代謝産物には、文献では簡単な名前が付けられているだけだ。ライプツィヒとハレの科学者らは、この知識の収集と標準化に向けた最初のステップを踏み出した。 この目的のために、彼らは既知の二次代謝産物、系統学的関係、インドネシアのジャワ島の植物の分布に関する情報を収集した。 彼らは約7,500種の種子植物種を記録した。これには、物質データベースにリストされている約16,500の代謝産物が含まれていた。 既存の知識に基づいて、これらの代謝産物の約2,900は、ウイルス、細菌、真菌または寄生虫に対して抗感染作用を有する物質として識別された。 これらの2,900の活性化合物は、調査された7,500の植物種の合計1,600によって生成される。これは、すべての植物種が同じ方法で生物活性化合物を生成するわけではないことを示している。 「むしろ、個々の植物ファミリーで活性化合物を生成する種が集中する傾向があり、これらの種は通常密接に関連している」と、iDivのメンバーでもあるライプツィヒ大学 生物学研究所のAlexandra Muellner-Riehl 教授は述べた。活性化合物が豊富なこれらの植物群をさらに絞り込むために、科学者は遺伝データと代謝産物情報を組み合わせた。 これにより、抗感染物質が大幅に過剰出現する植物のグループ、およびこれまでに抗感染活性がほとんど記録されていない植物のグループを識別することが可能になった。

カナダのサスカチュワン大学(USask)の研究チームは、コウモリが病気になることなく中東呼吸器症候群(MERS)コロナウイルスを運び、ヒトや他の動物にどのようにしてジャンプするのかを解明した。これらのウイルスは深刻な、そしてしばしば致命的な病気を引き起こす可能性があるが、コウモリには無害のようだ。Scientific Reportsで発表されたこのオープンアクセス論文は「中東呼吸器症候群コロナウイルスによる食虫性コウモリ細胞の持続感染時のウイルス変異体の選択」と題されている。カナダのサスカチュワン大学(USask)の研究チームは、コウモリが病気になることなく中東呼吸器症候群(MERS)コロナウイルスを運び、ヒトや他の動物にどのようにしてジャンプするのかを解明した。MERS、重症急性呼吸器症候群(SARS)、および最近ではCOVID19を引き起こすSARS-CoV-2ウイルスなどのコロナウイルスは、コウモリに由来すると考えられている。 これらのウイルスは深刻な、そしてしばしば致命的な病気を引き起こす可能性があるが、コウモリには無害のようだ。このことは今まで十分に理解されていなかった。「コウモリはウイルスを排除せず、病気にもならない。MERSウイルスがヒトのようにコウモリの免疫応答を遮断しない理由を理解したかった」と、USaskの微生物学者Vikram Misra博士は述べた。Scientific Reportsで発表された研究で、チームは初めて、食虫性ブラウンバットの細胞が、コウモリとウイルスの両方からの重要な適応により、数ヶ月間MERSコロナウイルスに持続的に感染する可能性があることを実証した。このオープンアクセス論文は「中東呼吸器症候群コロナウイルスによる食虫性コウモリ細胞の持続感染時のウイルス変異体の選択(Selection of Viral Variants During Persistent Infection of Insectivorous Bat Cells with Middle east Respiratory Syndrome Coronavirus.)」と題されている。 論文の著者であるMisra 博士は、「ウイルスがコウモリ細胞を殺す代わりに、コウモリのユニークな『スーパー』免疫システムによって維持され、宿主との長期的な関係に入っている」と述べた。 「SARS-CoV-2は同じように動作すると考えられている。」Misra 博士は、チームの作業はコウモリへのストレス(市場、他の病気、そしておそらく生息地の喪失)が、他の種にこぼれるコロナウイルスに役割を果たす可能性があることを示唆していると言う。 「コウモリがその免疫系にストレスを感じると、免疫系とウイルスのバランスが崩れ、ウイルスが増殖することが可能になる」この研究は、ウサスクのウエスタン獣医大学およびVIDO-InterVacの研究者チームによって、世界最大のバイオセーフティーレベル3の研究施設の1つである、ウサスクのワクチンおよび感染症機構である国際ワクチンセンター(VIDO-InterVac)で行われた。

2020年4月10日に全米科学アカデミー(PNAS)のオンライン抄録で公開された最近の研究で、カリフォルニア大学(UC)サンディエゴ校の研究者は、細胞培養でヘパリンを製造する能力に一歩近づいたことを報告している。 この論文は「ZNF263はヘパリンとヘパラン硫酸の生合成の転写調節因子である。(ZNF263 Is a Transcriptional Regulator of Heparin and Heparan Sulfate Biosynthesis.)」と題されている。ヘパリンは強力な抗凝固剤であり、病院で最も処方されている薬物だが、細胞培養による製造は現在までのところ不可能だ。 特に、研究者らはヘパリン生合成において重要な遺伝子であるZNF263(亜鉛フィンガータンパク質263)を発見した。 研究者たちは、この遺伝子調節因子がヘパリンの工業生産への道における重要な発見であると信じている。 

Gilead Sciences社は、世界の保健当局と緊密に協力して、調査用化合物「Remdesivir(レムデシビル)」(画像)の実験的使用を通じ、新型コロナウイルス( COVID-19 )に対応していることを報告した。米国食品医薬品局(FDA)、疾病対策センター(CDC)、保健福祉省(DHHS)、米国立アレルギー感染症研究所(NIAID)、国防総省(DoD)- CBRN Medical、中国CDCおよび国家医療製品管理局(NMPA)、世界保健機関(WHO)、そして個々の研究者と臨床医と共同して、Gilead Sciences社は抗ウイルスの専門知識とリソースを提供し、COVID-19と闘う患者とコミュニティを支援することに焦点を当てている。

メルボルンの研究者らは、オーストラリアで最初の新型コロナウイルス(COVID-19)患者の1人から免疫反応をマッピングし、ウイルスと戦って感染から回復する人体の能力を示した。 メルボルン大学とロイヤルメルボルン病院の合弁会社であるピータードハティ感染症研究所(ドハティ研究所)の研究者らは、COVID-19を呈し、入院を必要とする軽度から中程度の症状があった 40代の健康な女性の4つの異なる時点での血液サンプルをテストすることができた。2020年3月16日にNature Medicineのオンラインで公開されたこの論文は、患者の免疫系がウイルスにどのように反応したかについて詳細に報告している。 このオープンアクセスの論文は、「患者の回復前の付随する免疫応答の幅:重症でないCOVID-19の症例報告(Breadth of Concomitant Immune Responses Prior to Patient Recovery: A Case Report of Non-Severe COVID-19.)」と題されている。

シグナル伝達分子であるインターロイキン-2(IL-2)は、免疫系に強力な効果を及ぼすことが長い間知られているが、治療目的でそれを利用する取り組みは、深刻な副作用によって妨げられてきた。 現在、リオデジャネイロ連邦大学、スタンフォード大学そしてカリフォルニア大学サンタクルーズ校の研究者らは、IL-2と免疫細胞の受容体分子との複雑な相互作用の詳細を解明しており、癌や自己免疫疾患の治療を対象としたより的を絞った治療法を開発するための青写真を提供している。IL-2は、免疫応答中にT細胞集団の増殖を刺激する成長因子として機能する。 異なるタイプのT細胞は異なる役割を果たし、IL-2は、特定の抗原に対する免疫系の攻撃を導くエフェクターT細胞と、脅威がなくなった後に免疫系を抑制する役割を果たすT細胞の両方を刺激できる。 

我々の宇宙の 85%を占める神秘的な暗黒物質がある ように、何十年もの間、科学者を困惑させてきたヒ トゲノムの「暗い」部分がある。2020 年 3 月 6 日に Genome Research のオンライ ンで発表された研究は、これまでこれらの暗くて静 かな領域に隠されていたショウジョウバエのゲノム の新しい部分を特定している。 「Drosophila Genetic Reference Panel の遺伝子発現ネットワー ク(Gene Expression Networks in the Drosophila Genetic Reference Panel)」と題さ れた共同論文は、クレムソン大学の遺伝学者である Trudy Mackay 博士と Robert Anholt 博士による長年の研究の集大成だ。 

新型コロナウイルス( COVID-19 )と闘う国々は、感染から回復した人々の抗体を使用して症例を治療し、重要な医療従事者に短期免疫(数週間から数ヶ月)を提供することを検討する必要があると米国の2人の感染症専門家が主張している。 ボルティモアにあるジョンズホプキンスブルームバーグ公衆衛生学校の分子微生物学および免疫学科の部長であるArturo Casadevall医学博士とニューヨーク市にあるアルバートアインシュタイン医科大学の感染症部門の責任者であるLiise-anne Pirofski医学博士である。

シアナのカイザーパーマネンテワシントン健康研究所(KPWHRI)で、コロナウイルス2019(COVID-19)を予防するために設計された治験ワクチンを評価する第1相臨床試験が始った。国立衛生研究所の一部である国立アレルギー感染症研究所(NIAID)が試験に資金を提供している。KPWHRIはNIAIDの感染症臨床研究コンソーシアムの一部だ。このオープンラベル試験では、18歳から55歳までのシアトルを拠点とする45人の健康な成人ボランティアが約6週間に渡り協力する。2020年3月16日に治験ワクチンを最初の参加者に接種した。この研究では、安全性と参加者に免疫応答を誘発する能力について、実験用ワクチンのさまざまな用量を評価する。これは、ワクチンの潜在的な利点を評価するための臨床試験プロセスにおける複数ステップの最初である。このワクチンはmRNA-1273( COVID-19 スパイクタンパク質をコードするメッセンジャーRNA分子)と呼ばれ、マサチューセッツ州ケンブリッジに拠点を置くバイオテクノロジー企業Moderna社のNIAID科学者とその共同研究者によって開発された。流行準備革新(CEPI:The Coalition for Epidemic Preparedness Innovations)連合は、第1相臨床試験のワクチン候補の製造を支援した。

ジョンズ・ホプキンス・メディスンの科学者らは、研究室で成人のヒト細胞を元の状態に戻すように誘導し、糖尿病によって引き起こされた網膜の血管の損傷を置換および修復する可能性を解き放ち、生物学的な時計の針を元へ戻したと述べた。彼らは、この実験的研究から得られた知見は糖尿病性網膜症や他の失明性疾患の経過を逆転させることを目的とした再生医療技術を進歩させると言う。「我々の研究の結果は、再生医療において幹細胞をより広く使用することに一歩近づいた。そのような細胞を分化させ、癌になることを避けるために我々の分野が経験した歴史的な問題はない」と、ジョンズ・ホプキンス・キンメルがんセンターの腫瘍学およびジョンズ・ホプキンスの細胞工学研究所のメンバー であるElias Zambidis医学博士・准教授は述べた。ヒト細胞とマウスを使用した実験結果は、2020年3月5日にNature Communicationsでオンラインで公開された。 このオープンアクセスの論文は、「タンキラーゼ阻害剤によって制御されたナイーブ糖尿病ヒトiPSCから生成された血管前駆細胞が虚血性網膜の効率的な血行再建を促進する(Vascular Progenitors Generated from Tankyrase Inhibitor-Regulated Naïve Diabetic Human iPSC Potentiate Efficient Revascularization of Ischemic Retina.)」と題されている。国立眼病研究所によると、糖尿病性網膜症は、米国の成人の失明の主な原因である。 2050年までに約1460万人のアメリカ人がこの状態になり、網膜で異常な血管の成長が起こり、そこで光が視覚に変換されると推定している。 この研究のために、科学者らは、1型糖尿病の人から採取した線維芽細胞(結合組織細胞)で実験を始めた。再プログラムされた線維芽細胞は、「幹」細胞として機能し、血管を含む体内のすべての組織を生じさせる可能性がある。 ジョンズ・ホプキンスの研究員であるTea Soon Park 博士は、線維芽細胞幹細胞を再プログラムして、従来のヒト人工多能性幹細胞(iPSC)の状態よりも原始的な受精後約6日目の状態に戻した。これは、細胞が最も「ナイーブ」であるか、または従来のヒト人工多能性幹細胞よりもはるかに高い効率で特殊なタイプの細胞に発展する能力が高い場合である。 これを行うために、科学者は栄養素と化学物質のカクテルで細胞を浸した。 より良いナイーブ幹細胞を構築するためにカクテルに入れるべきものは、過去10年間で議論の対象となっている。

2020年2月5日にNatureが発行するジャーナルで、全ゲノムシーケンスと癌の統合分析に関するICGC / TCGAコンソーシアムの記念碑的な努力から生まれた21のオープンアクセス研究論文が同時にオンラインで公開された :Nature Communications(8)、Nature(6)、Nature Genetics(5)、Nature Biotechnology(1)、およびCommunications Biology(1)。 この作業は、全ゲノムの汎癌解析(PCAWG)として知られる37か国の1,300人を超える科学者と臨床医の国際協力に基づいている。 この取り組みには、38種類の腫瘍タイプの2,600を超えるゲノム解析が含まれ、原発癌ゲノムの膨大なリソースが作成された。 

赤ちゃんがまだあなたと話すことができなくても、赤ちゃんと遊んでつながりの感覚を感じたことはあるだろうか? 新しい研究は、あなたが文字通り「同じ波長で」同じ脳領域で同様の脳活動を経験しているかもしれないことを示唆している。 これはほとんどの母親が本能的に知っている可能性が高いものだが、今では科学的に非常に詳細に証明されている。プリンストン大学の研究者チームは、自然な遊びの中で赤ちゃんと大人の脳がどのように相互作用するかについての最初の研究を実施し、彼らの神経活動の測定可能な類似性を発見した。 言い換えれば、赤ちゃんと大人の脳の活動は、おもちゃとアイコンタクトを共有するにつれて、上下した。この研究は、Princeton Baby Labで行われた。大学の研究者は、赤ちゃんが世界を見て、話し、理解する方法を研究している。「以前の研究では、大人の脳は映画を見たり話を聞いたりすると同期することが示されたが、この『神経同期』が人生の最初の数年でどのように発達するかについてはほとんど知られていなかった」 プリンストン・ニューロサイエンス研究所(PNI)の準研究員であり、2019年12月17日にPsychological Scienceでオンライン公開された論文の筆頭著者であるElise Piazza博士はそう述べた。 この論文は「幼児と成人の脳は自然なコミュニケーションのダイナミクスで結びついている。(Infant and Adult Brains Are Coupled to the Dynamics of Natural Communication.)」と題されている。Piazza博士と彼女の共著者ら(PNIの準研究奨学生 のLiat Hasenfratz博士、心理学および神経科学の教授および大学院研究ディレクター のUri Hasson博士、そして心理学の准教授のCasey Lew-Williams博士)は、神経の同期性が社会開発と言語学習に重要な意味を持つと仮定した。 赤ちゃんと大人の間の実際の対面コミュニケーションを研究することは非常に困難だ。神経結合の過去の研究のほとんどは、その多くがHasson 博士の研究室で行われ、大人が横になって映画を見たり、物語を聞いたりするのを、機能的磁気共鳴イメージング(fMRI)を用い脳をスキャンした。しかし、リアルタイムのコミュニケーションを研究するために、研究者は、赤ちゃんと大人の脳から同時に脳の活動を記録できる、子供に優しい方法を用意する必要があった。

健康な心臓は老化するにつれて、心血管疾患の影響を受けやすくなる。 ピッツバーグ大学の研究者らは、インスリン様ホルモンであるRelaxinが老齢ラットの心房細動(AF)、炎症、および線維症を抑制することを発見した。この論文は「Relaxinは老化した心臓の不適応な変化をWntシグナル伝達によって逆転させる」と題されている。健康な心臓は老化するにつれて、心血管疾患の影響を受けやすくなる。 ピッツバーグ大学の研究者らは、インスリン様ホルモンであるRelaxinが老齢ラットの心房細動(AF)、炎症、および線維症を抑制することを発見した。これらのメカニズムはまだ解明されていない。ピッツバーグ大学の大学院生であるBrian Martin は、2019年12月6日のScientific Reportsのオンラインで公開されたオープンアクセスの論文で、Relaxinが体のシグナル伝達プロセスとどのように相互作用して、大きな治療可能性を秘めているかもしれない基本的なメカニズムを生み出すかについて議論している。この「Relaxinは老化した心臓の不適応な変化をWntシグナル伝達によって逆転させる(Relaxin Reverses Maladaptive Remodeling of the Aged Heart Through Wnt-Signaling)」と題された論文の研究は、ピッツバーグ大学の医学部教授であるGuy Salama博士と、工学部のスワンソン工学部の大学院生研究者であるMartin氏により行われた。「Relaxin は、20世紀初頭に発見された生殖ホルモンであり、心血管疾患の症状を抑制することが示されている」とMartin氏は述べた。 「この論文では、Relaxin 治療が、Relaxin の利点の背後にある基本的なメカニズムを明らかにする標準的なWntシグナル伝達を活性化することにより、動物モデルの電気的変化を逆転させることを示している。」Relaxinがどのように身体と相互作用するかについて理解することは、人間の心血管疾患を治療する治療法の有効性を改善することに繋がるかもしれない。 米国の人口が高齢化するにつれて、これらの加齢性疾患の発生率は上昇すると予想されており、この主要な死因に対するより良い治療が必要だ。米国心臓協会の報告書によると、心血管疾患の直接的な医療費の総額は2035年に749億ドルに増加すると予測されている。

世界の科学界は、癌に対して困難かつ長期にわたる戦争を繰り広げている。 免疫原性細胞死の分野における新研究では、薬物の応用分野を拡大でき、治療後の再発から患者を確実に保護しようとしている。 癌治療は、身体からの腫瘍細胞の除去と化学療法だけではなく、腫瘍細胞が増殖して新しい病気を引き起こすことを防ぐシナリオの提供も医師の努めだ。 

糖尿病のインスリンや血友病の凝固因子などの薬は治療用タンパク質であり、研究室で合成するのは困難だ。 そのため科学者は細菌を小さなタンパク質製造工場として加工して使用している。しかし、バクテリアや他の細胞の助けを借りたとしても、医療または商業用途のタンパク質を生産するプロセスは面倒で費用が掛かる。セントルイスにあるワシントン大学医学部の研究者が、タンパク質生産を最大で1000倍まで高める方法を発見した。 Nature Communicationsで2019年12月18日にオンラインで公開されたこの調査結果は、特定のタンパク質ベースの医薬品、ワクチン、診断薬、および食品、農業、生体材料、バイオエネルギー、化学工業で使用されるタンパク質の生産量を増やし、コストを削減するのに役立つという。このオープンアクセス論文のタイトルは「短い翻訳領域がタンパク質合成の効率を決定する(A Short Translational Ramp Determines the Efficiency of Protein Synthesis.)」と題されている。「医療または商業用途向けのタンパク質の製造プロセスは、複雑で、高価で、時間が掛る可能性がある」と、細胞生物学および生理学の准教授であり本研究論文の著者であるSergej Djuranovic 博士は述べた。 「各細菌が10倍のタンパク質を生産できるようになれば、仕事を完了するのに必要な細菌量は1/10になる。これにより、コストが大幅に削減される。 この手法は、あらゆる種類のタンパク質で機能する。なぜなら、この手法は普遍的なタンパク質合成機構の基本的な特徴だからだ。」タンパク質は、何百ものアミノ酸残基から構成されている。 Djuranovic 博士と筆頭著者である研究室の学部研究者のManasvi Verma氏は、研究者は、特定の遺伝子から生成されるタンパク質の量を制御する方法を探していたが、異なる研究の実験が期待通りに機能せず、最初の数個のアミノ酸の重要性でつまずいた。「最初の数個のアミノ酸配列を変更してもタンパク質発現に影響を及ぼさないと考えていたが、タンパク質発現を300%増加させた」とDjuranovic博士は述べた。 「それで、なぜそれが起こったのか調べ始めた。」

ピンク色をした生まれたてのジャイアントパンダの新生児の出生体重は通常たった約100グラムだ。この重さはバターの棒に相当する。 彼らの母親はそれより900倍も大きい。 長い間研究者はこの異常なサイズの違いに戸惑ってきた。ハリモグラやカンガルーなどの動物のいくつかの例外を除き、他の哺乳類の新生児は母親に比べてそれほど小さくはない。 理由は誰にも分からないが、10種のクマや他の動物の骨に関するデューク大学の研究では、現在の理論のいくつかが支持されていないことが分かる。 

BioQuick Newsの編集長・MIKE O'NEILLは、Laboratory for Advanced Medicine Inc.(LAM社)の技術部長であるDhruvajyoti Roy博士(写真)にインタビューを行った。LAM社 は簡便な採血からの早期癌検出テストの商業化に焦点を当てたAIヘルスケア企業である。 今回はLAM社 の技術とDNAメチル化分析の分野における最近の進歩について学び、癌の非侵襲的検出のためのDNAメチル化ベースの検査の普及について議論する。LAM社は、肝臓癌の早期発見と病気の再発の監視に使用できる血液ベースの肝臓癌テストを開発した。 Roy博士は、すべての肝臓癌の75%以上であり肝臓癌の最も一般的な形態である肝細胞癌(HCC)を検出するアッセイの能力について、2019年11月8日から12日までボストンで開催された、米国肝疾患研究協会(AASLD)が主催したThe LiverMeeting 2019でLAM社が実施した検証研究データを発表した。AASLDは、ポスター発表においてLAM社のデータを特別ポスターとして選択した。 特別ポスターは、採点されたポスターの抄録の上位10%に分類される。Roy博士へのインタビューは下記の通り;O'NEILL:なぜあなたのグループは、cfDNAのメチル化にフォーカスすることに決めたのですか?Roy博士:遺伝的変化と後成的変化の両方が、腫瘍の発生に関連していることが知られている。過去10年間、液体生検サンプルからの無細胞DNA(cfDNA)の分析は、腫瘍学において有望で潜在的に変革的で非侵襲的な診断アプローチとして浮上してきた。 cfDNAは、通常は細胞死の結果として、細胞によって血中に放出される断片化されたDNAで構成される。がん患者では、cfDNAの一部は、腫瘍細胞から放出されるDNAで構成され、多くの場合、循環腫瘍DNA(ctDNA)と呼ばれる。癌検出のためにcfDNAを利用している、または現在開発中のほとんどの検査は、癌関連遺伝子の突然変異の検出に焦点を合わせている。ただし、この早期癌検出のアプローチには、いくつかの重要な課題がある。

バクテリオファージ(ファージ)は、細菌を特異的に攻撃および破壊するウイルスだ。 20世紀初頭、研究者らはバクテリア感染を治療するための潜在的な方法としてファージを実験した。 しかし、その後抗生物質が出現し、ファージは不要になった。 しかし、抗生物質耐性感染の増加に伴い、研究者はファージ療法への関心を新たにした。 

スクリプス研究所とスタンフォード大学の研究チームは、リボソームの組み立てにおける重要なステップをリアルタイムで記録することに成功した。これは、細胞内でタンパク質を生成する、すべての生命形態に不可欠な複雑で進化的に古代の「分子機械」である。Cell誌で2019年11月21日に報告されたこの成果は、本質的に粘着性でミスフォールドしやすい細胞分子であるリボ核酸(RNA)の鎖が、リボソームタンパク質によって「シャペロン化」されて適切に折り畳まれ、リボソームの主要コンポーネントの1つを形成することを、前例のないほど詳細に明らかにした。 

ニューロン機能を支援する転写因子は、すでに再発した癌をさらに致命的にする可能性のある前立腺の細胞変換を可能にするようだ。 転写因子BRN4は主に中枢神経系と内耳で発現するが、稀であるが神経内分泌前立腺癌の患者でも増幅され過剰発現する最初の証拠がClinical Cancer Researchジャーナルで公開された。この論文は「BRN4は去勢抵抗性前立腺癌における神経内分泌分化の新規ドライバーであり、BRN2を含む細胞外小胞で選択的に放出される(BRN4 Is a Novel Driver of Neuroendocrine Differentiation in Castration-Resistant Prostate Cancer and Is Selectively Released in Extracellular Vesicles with BRN2.)」と題されている。その名前が示すように、神経内分泌細胞は脳内の方が一般的だが、クルミサイズの前立腺にも少し存在し、強力なホルモン療法に直面するとより致命的なものになる。性ホルモンのアンドロゲンは前立腺癌の主な原因であり「化学療法去勢」と呼ばれるホルモン療法は、前立腺癌またはその受容体を抑制するための標準的な最前線療法だ、とジョージア医科大学 (MCG) 生化学科の癌生物学者である Sharanjot Saini博士(写真左) は語った。 それでも、患者の40%が数年以内に去勢抵抗性前立腺癌を発症する。このより侵攻性の癌は治療が難しく、患者はこの再発性前立腺癌に対して2012年に最初に承認されたエンザルタミドなどのより新しく強力なホルモン療法を受ける可能性がある。 Saini 博士は、前立腺で癌になり易いのは、はるかに一般的な管腔細胞型だと言う。 しかし、この追加のより積極的な治療に直面すると、これらの管腔細胞のサブセットは、さらに積極的な疾患である神経内分泌前立腺癌に分化すると、この研究の筆頭著者であるDivya Bhagirath 博士(写真右)は述べた。

CRISPR / Cas9技術を使用してがん患者の免疫細胞を遺伝子編集し、それらの細胞を患者に注入することは、最初の臨床試験からの初期データに基づき米国で安全かつ実現可能であることが発表された。 ペンシルバニア大学アブラムソンがんセンターの研究者は、これまでの試験で3人の参加者(2人は多発性骨髄腫、1人は肉腫)に対し、編集されたT細胞が増加し、深刻な副作用なしに腫瘍標的に結合することを観察した。 

生細胞内では多くの重要なメッセージがタンパク質間の相互作用を介して伝達されている。これらのシグナルを正確に中継するためには、各タンパク質が特定のパートナーとのみ相互作用し類似のタンパク質との望ましくないクロストークを回避する必要がある。MIT の新研究では、これらタンパク質間のクロストークを細胞がどのように防いでいるかを明らかにし、また、細胞がシグナル伝達に使用していない膨大な数のタンパク質相互作用が残っていることを示した。 これは、合成生物学者が細胞の既存のシグナル伝達経路に干渉することなく、疾患の診断などのアプリケーション応用可能な新しいタンパク質の組み合わせを選び出せることを意味している。「ハイスループットアプローチを使用すると、特定の相互作用の多くの直交バージョンを生成でき、そのタンパク質複合体のさまざまな独立バージョンをいくつ構築できるかを確認できる」と、MIT の大学院生であり、 この論文の著者の Conor McClune 氏は述べた。2019 年 10 月 23 日に Nature でオンラインで公開されたこの論文は、シグナル伝達タンパク質の新しいペアを作成し、特定の植物ホルモンに遭遇すると黄色の蛍光を発する大腸菌細胞を操作することで、それらがどのように 新しいシグナルを新しい出力にリンクするために使用できるか実証した。 この論文は、「直交シグナル伝達経路を設計することで配列空間の疎な占有を明らかにする。(Engineering Orthogonal Signaling Pathways Reveals the Sparse Occupancy Of Sequence Space.)」と題されている。MIT の生物学教授である Michael Laub 博士(写真)はこの研究の上級著者だ。 その他著者として、Aurora Alvarez-Buylla 氏、Christopher Voigt 博士、そして Daniel I.C. Wang 教授が含まれている。

老化は人体のすべての機能、特に脳機能に影響を与えるプロセスだが、ライフスタイルの変化(運動、カロリー摂取の制限など)により老化を遅らせることができる。パスツール研究所とCNRS(フランス国立科学研究センター)の研究者は、血液中の分子 GDF11(図)のこれまで知られていなかった特性を解明した。 マウスモデルで GDF11 が、食事療法によるカロリー制限の利点(心血管疾患を減らし、癌を防ぎ、脳の神経発生を高める)を模倣できることを解明した。この研究の結果は、2019年10月22日にAging Cell誌に掲載された。このオープンアクセスの論文は、「全身GDF11がアディポネクチンの分泌を刺激し高齢マウスのカロリー制限様表現型を誘導(Systemic GDF11 Stimulates the Secretion of Adiponectin and Induces a Calorie Restriction-Like Phenotype in Aged Mice.)」と題されている。今日、長期に健康な脳を維持することは可能だ。 過去30年間、断続的な絶食などの特定の食事制限がいくつかの種の認知能力を改善し、平均寿命を延ばすことができると一般に認められてきた。 また、カロリー制限(栄養の質を維持しながら20%から30%のカロリー摂取量を減らすこと)が心血管疾患や癌のリスクを減らし、脳内の新しいニューロンの生産を増加させることも証明されている。マウスモデルを使用した以前の研究では、研究者は、老齢マウスに若いマウスの血液を注入すると、脳の血管が若返り、その結果、脳の血流が改善し、神経新生と認知が増加することを観察した。知覚記憶ユニット(パスツール研究所/ CNRS)の研究者は、カロリー制限と若い血液の補充が臓器の若返りに効果的であることから、特定のメカニズムが共通している可能性が高いという理論を提唱した。そこで彼らは、GDF(Growth Differentiation Factor)タンパク質ファミリーに属し、胚発生に関与する分子GDF11を調べた。 GDF11は、老化した脳を若返らせる能力があることですでに研究者に知られていた。

癌を早期に発見するための根本的な新しい戦略と技術の開発は、大西洋横断研究アライアンスの大胆な野望であり、癌の早期発見のための国際同盟(Alliance for Cancer Early Detection:ACED)は、Cancer Research UKとのパートナーにより2019年10月21日に発足が発表された。今後5年間で78億円以上の資金が提供される。早期発見は、より多くの人が癌に打ち勝つために不可欠だ。癌が早期に発見され治療されると、患者が病気を生き残るチャンスが劇的に向上する。 早期癌と前癌状態の生物学を理解することで、医師は病気を早期に発見し、必要に応じて効果的に治療する正確な方法を見つけることができる。 

カナダのトロントにある病気の子供のための病院(SickKids)のフェノゲノミクスセンター科学技術開発部長の Lauryl Nutter博士(写真)を含む研究者らは、CRISPR酵素Cas9の使用を改善し、実験マウスの標的外変異誘発の可能性を減らすための新しい方法を見つけた。研究者の遺伝子編集に関連する共通の懸念である精度を改善するための新戦略に役立つこの調査結果は、ヒューストンで開催された米国人類遺伝学会2019年次総会(ASHG2019)で2019年10月18日に発表された。

ミネソタ大学の研究者は、アルツハイマー病などの疾患の治療法の研究で、マウス版のアルツハイマー病関連MAPT遺伝子がヒト版の遺伝子に完全に置き換えられたマウスの系統を開発した。 完全な遺伝子置換モデルとしてこの新しい動物モデルは、MAPT遺伝子はヒトと同じように機能し、研究者は遺伝子治療をより正確に開発および評価できるようになる。 

最も致命的であるマラリア原虫がゴリラからヒトにジャンプする一連の出来事が発見された。 英国のウェルカムサンガー研究所とフランスのモンペリエ大学の研究者は、熱帯熱マラリア原虫の祖先によって取得された約50,000年前の遺伝子配列を再構築し、ヒト赤血球に感染する能力を与えた。PLOS Biologyで2019年10月15日に公開されたこの論文は、「先祖伝来のRH5侵略リガンドの復活が、ヒトの熱帯熱マラリアの起源の分子的説明を提供する。」と題されている。最も致命的であるマラリア原虫がゴリラからヒトにジャンプする一連の出来事が発見された。 英国のウェルカムサンガー研究所とフランスのモンペリエ大学の研究者は、熱帯熱マラリア原虫の祖先によって取得された約50,000年前の遺伝子配列を再構築し、ヒト赤血球に感染する能力を与えた。研究者らは、このrh5遺伝子が限られた時間で寄生虫がゴリラとヒトの両方に感染することを可能にし、分子レベルでジャンプがどのように行われたかを発見した。 この研究チームはまた、熱帯熱マラリア原虫をヒトに制限する特定のDNA突然変異を特定した。PLOS Biologyで2019年10月15日に公開されたこの研究は、最も致命的な感染症の1つがどのようにヒトに感染するようになったかについて信憑性のある説明を提供し、病原体が1つの種からどのように飛び出すことができるかを理解するために重要と言える。 この論文は、「先祖伝来のRH5侵略リガンドの復活が、ヒトの熱帯熱マラリアの起源の分子的説明を提供する。(Resurrection of the Ancestral RH5 Invasion Ligand Provides a Molecular Explanation for the Origin of P. Falciparum Malaria In Humans.)」と題されている。マラリアは依然として世界の主要な健康問題であり、年間推定435,000人の死者を出しており、61%が5歳未満の子供で発生している。 P. falciparumは、マラリアの最も致命的な形態の寄生虫種であり、2017年にマラリアの症例の99.7%を占めるアフリカで特に流行している。P. falciparumは、ラベラニアとして知られるファミリーでマラリアを引き起こす可能性のある7種の寄生虫の1つだ。この寄生虫は、アフリカの大型類人猿に起源があり、宿主種はチンパンジーとゴリラに限定される。約50,000年前に人獣共通感染症プロセスを介してゴリラから宿主を切り替えヒトに感染する。

台湾のChang Gung Memorial Hospitalによる新研究は、重度の睡眠時無呼吸が、失明や失明を引き起こす可能性のある糖尿病の合併症である糖尿病性黄斑浮腫を発症する危険因子であることを示している。 糖尿病性黄斑浮腫も、重度の睡眠時無呼吸の患者では治療がより困難であった。 初期の研究では2つの状態の関連性が弱いことが示されていたが、睡眠時無呼吸は基礎疾患を悪化させるという証拠が増えている。 

脳下帯状回(SCC)と呼ばれる脳の領域への深部脳刺激(DBS)により、 他の治療に反応しなかった最も重度の鬱病患者である治療抵抗性鬱病の患者に長期間強力な抗鬱効果をもたらしたことがAmerican Journal of Psychiatryの2019年10月4日号にオンラインで公開された。この論文は「治療抵抗性うつ病に対する脳梁下帯状回深部脳刺激の長期転帰(Long-Term Outcomes of Subcallosal Cingulate Deep Brain Stimulation for Treatment-Resistant Depression.)」と題されている。 

生命を脅かす病気との闘いにおける画期的プロジェクトが、英国で2019年9月11日に始動した。 2億ポンド(約264億円)の全ゲノム配列決定プロジェクトが形成され、英国ストックポートに本拠地を置くUK Biobankで約50万人のボランティアの遺伝子コードを調べ配列決定する。UK Biobankは製薬会社や専門機関とパートナーシップを形成している。英国のBoris Johnson 首相は次のように述べている。「英国には、国際的な協力と発見の中心に自らを置くという誇りのある歴史がある。 60年以上前、我々は国際的な研究者チームによってケンブリッジでDNAの発見に至ったが、今日はさらに進んでいる。 現在、我々は世界中の専門家を集めて、英国で世界最大の遺伝学研究プロジェクトに取り組み、生命にかかわる病気の治療を改善し、最終的には命を救おうとしている。 この種の突破には、英国で勉強や働くために世界中から集まる最も光り輝く最高の人材に開かれていなければ不可能だ。 だからこそ、留学生が潜在的な可能性を解き放ち、英国でのキャリアを開始するための新ルートを発表する。」ゲノミクス研究は、真に予測可能で、よりパーソナライズされたヘルスケアシステムを作成する可能性があり、英国はこの分野の研究が提供する機会を掴みたいと望んでいる。そのため、政府は2024年までに500万件のDNA分析を行うことを約束した。新しいプロジェクトは、遺伝子研究を通じて健康を改善し、癌、心臓病、糖尿病、関節炎、認知症を含む広範囲の重篤で生命を脅かす病気の予防、診断、治療を改善することを目指している。

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