Information Genomique et Structurale laboratory (CNRS/AMU)、Biologie a Grande Echelle laboratory (CEA/INSERM/Universite Joseph Fourier)、Genoscope (CEA/CNRS)、Russian Academy of Sciences合同の研究チームがシベリア最北東部で永久凍土の中から「ピソウイルス」と名付けられた巨大ウイルスの新種を発見した。
New York University (NYU) Langone Medical Centerの研究者が主導するアメリカとベネズエラの多施設間研究チームの調査で、ベネズエラ南部のアマゾンのジャングルで、他の人類から孤絶して暮らす南米先住民族のヤノマミ族の腸内細菌叢が、これまでに知られている人間の腸内細菌叢の中でもっとも多様性に富んでいることが突き止められた。それに比べると、研究チームの推定では、工業化社会の人間の腸内細菌叢の多様性は40%低い。研究チームは、この研究結果を2015年4月17日付Science Advancesのオープン・アクセス研究論文で発表している。
人間は年を取るにつれて器官の機能が衰えるだけでなく、細胞レベルでも損傷が徐々に増えていく。その理由の一つとして、DNAのエラーが累積され、欠陥のある細胞が作られるようになることが挙げられる。ドイツのケルン所在Max Planck Institute for Biology of AgeingのDr. Nils-Goran Larsson率いる研究チームが、老化は生活の間のDNA損傷の累積によって決まるだけでなく、母体から受け継いだ損傷によるところもあることを突き止めた。
遠く離れた太平洋のたった一つの島にだけ茂る植物、Amborella trichopodaは一科一属一種の植物である。また、この植物は、2億年前に他の植物から分かれたもっとも古い顕花植物の一つでもある。Indiana University、U.S. Department of Energy Joint Genome Institute (DOE JGI)、Penn State University、ニュー・カレドニアのInstitute of Research for Developmentの合同研究チームは、この植物のエネルギー生成構造を支える異常なほどのゲノムの規模を突き止めた。
University of Pittsburgh Cancer Institute (UPCI, ピッツバーグ大学がん研究所) の研究チームはがん細胞の成長を止める方法を発見した。この発見が新しい抗がん治療法に結びつく可能性がある。ある種のがん細胞は重要なタンパクを奪われると正しく分裂できなくなるという研究報告であり、Journal of Cell Scienceの2013年2月号の巻頭記事を飾っている。この報告論文は2012年9月26日付同誌初出。
タマゴテングタケ(テングタケ属)は猛毒である。 ただし、その毒素の一部は適切に使用すれば治癒に役立つこともある。たとえば、毒素のひとつであるアマニチンは抗体ベースの癌治療の必須要素だ。2019年12月17日にドイツの雑誌Angewandte Chemieにオンラインで公開された論文で、科学者たちは現在、α-アマニチンの新しい合成経路について説明している。このオープンアクセスの論文は、「デスキャップ毒素α‐アマニチンの収束的全合成(A Convergent Total Synthesis of the Death Cap Toxin α‐Amanitin.)」と題されている。彼らの方法は大規模生産に適しているようであり、最終的にさらなる研究のための十分な毒素を利用可能にする。 アマニチンは酵素RNAポリメラーゼIIを高い選択性で阻害し、細胞死を引き起こす。 抗体によって腫瘍細胞に輸送されると、毒素は腫瘍と戦うことができる。 しかし、最近まで、アマニチンの唯一の供給源はキノコ(テングタケ)自体であり、実験の可能性を制限していた。少し前に、最も強力なアマニチンであるα-アマニチンの全合成が報告された。 ベルリン工科大学のRoderich D.Süssmuth博士と協力者は、完全に液相で発生する大規模の全合成の代替ルートを紹介した。
今年初めNature Medicineに発表されたミネソタ大学医学部教授のPaul D. Robbins博士とLaura J. Niedernhofer博士、メイヨー・クリニックの研究者James L. Kirkland博士とTamara Tchkonia博士の研究成果は、老化細胞と呼ばれる損傷細胞の負担を軽減し、生涯末期に治療が開始されても寿命を延ばし、健康を改善することが可能であることを示した。彼らは現在、多くの果物や野菜に見られる天然産物のフィセチン(fisetin)による高齢マウスの治療も、健康と寿命に有意な正の効果を有することを示している。
貧血その他の鉄欠乏症の新しい治療法になる可能性を持った重要な化学物質が研究者によって突き止められた。Science誌掲載の新論文の共同首席著者で、Harvard Medical School、Dana Farber Cancer Institute、Brigham and Women’s Hospital、Boston Children’s Hospitalの准教授を務めるBarry Paw, MD, PhD.は、「鉄がなければ生命体も存在できない。
テキサス大学(UT)サウスウエスタン校の研究者らは早期老化を防ぐ新しい遺伝子パスウェイを同定した。2019年2月8日にeLifeでオンライン公開されたこの研究は、ロングノンコーディングRNAをコードする遺伝子NORADの活性を調べた。この論文は「PUMILIOの多動性がノルアド欠乏マウスの早期老化を促進する(PUMILIO Hyperactivity Drives Premature Aging of Norad-Deficient Mice.)」と題されている。「DNA損傷により活性化されるノンコーディングRNA(noncoding RNA activated by DNA damage)」を表すNORADは、多くの哺乳動物に存在し、細胞分裂時に適切な数の染色体を維持するのに役立つ。細胞内の多くのRNAは、タンパク質を構築するための指示書またはコードとして機能するが、ノンコーディングRNAはタンパク質をコードしない。「哺乳類の生理機能と開発におけるノンコーディングRNAの重要性に関して、科学界には多くの疑問がある。我々の細胞はこれらのRNAを何千も生産しているが、動物の重要な機能に関係しているのはごくわずかなものだけだ。」とUTサウスウエスタンの分子生物学教授であり、この研究の著者であるJoshua T. Mendell博士は述べた。2015年に彼らはNORADの発見を報告し、ヒト細胞の染色体の正しい数を維持する上でこのノンコーディングRNAの重要性を実証した。研究室で成長した細胞に限った彼らの以前の研究で、研究者は次に哺乳動物生理学における遺伝子の機能をよりよく理解するために生きた動物におけるNORADの役割を調べた。これを達成するために、Mendell研究室のポスドク研究者でeLife研究の筆頭著者であるFlorian Kopp博士は、マウスゲノムからNORADを削除することによってマウスを遺伝子操作した。 ヒト細胞において以前に見出されたように、NORAD喪失はマウスにおいて染色体異常を引き起こした。 しかし、細胞のエネルギー原動力のミトコンドリアでいくつかの予想外の変化があった。「我々は、NORADが取り除かれたとき、ミトコンドリア機能が非常に異常になったことを見て驚いた。 これらのマウスはまた、非常に急速に老化するようだった。」とハワードヒューズメディカルインスティテュート(HHMI)研究者およびテキサス州癌研究研究所(CPRIT)の癌研究者であり、ハモン再生医療科学研究センターおよびハロルドC.シモンズ総合癌センターの両メンバーであるMendell博士は述べた。
食塩摂取量が増えると、自己免疫疾患の原因になる侵襲性の強い免疫細胞グループを誘発する可能性があるという研究結果が発表された。この研究を手がけたのは、Yale University、Broad Institute、MIT、 Harvard University、Vanderbilt University、ベルリンのMax-Delbruck Center for Molecular Medicine、University of Erlangen-Nurembergなどを含む数多くの研究機関から参加した国際的な科学者グループで、2013年3月6日付の「Nature」誌オンライン版に掲載された論文の著者には、Dr. Markus Kleinewietfeld、Professor David Hafler、Dr. Ralf Linker、Professor Jens Titze、Professor Dominik N. Mullerらが名を連ねている。同日付で「Nature」誌オンライン版に掲載された第二論文では、食塩を感知する酵素が自己免疫疾患の誘発に関わっている可能性が記述されている。これも同日付で「Nature」誌オンライン版に掲載された第三論文では、ヘルパーT細胞に関わる分子経路が自己免疫疾患につながる可能性が記述されている。この3本の「Nature」の論文をあわせて、自己免疫疾患の起源についてさらに理解が深まることが考えられるが、ここでは食塩の過剰摂取の影響を述べた第一論文を中心にして紹介したい。
Weill Cornell Medical Collegeの研究グループを中心とする国際的な研究チームは、膵臓がんが肝臓に転移する分子レベルの正確な過程を明らかにした。この過程こそ発生率の高い膵臓がんの死亡率を押し上げている要因である。研究チームは、「私達の研究成果によってこの過程の理解を通し、転移を遅らせることを中心とする治療法を確立し、新しいバイオマーカーを提示することで膵臓がんの早期発見に役立てることができるだろう」と述べている。
ロッテルダムで開かれていた第5回国際細胞外小胞学会 (ISEV 2016) 年次総会金曜日全体会議では、著名な免疫学者で細胞生物学者のFrancisco Sanchez-Madrid, PhDが、「Immune Cell-Cell Communication: Mechanisms of MicroRNA and Protein Sorting into Exosomes (免疫細胞間情報伝達: microRNAやタンパク質がエキソソームに入り込むメカニズム)」のタイトルで講演した。Dr. Sanchez-Madridは、Universidad Autonoma de Madridの教授であり、マドリッドのLa Princesa Hospital, Immunology Departmentの長も務めている。ひな段会議室をぎっしりうめた800余人の参加者を前に、博士の講演は2つの主題を中心にして行われた。一つは、免疫シナプスを通してエキソソームによって行われる遺伝子とミトコンドリアの構成物質の輸送(免疫シナプスとは、抗原提示細胞または標的細胞と、エフェクターT細胞またはナチュラル・キラー細胞などのリンパ球との接点のインターフェース。また、免疫シナプスは、免疫細胞間の情報伝達のために、その接触面に一時的に構成される膜とも定義される)。もう一つは、miRNAやタンパク質がエキソソームに収まるメカニズムについてだった。
オランダのロッテルダムで2016年5月4日から7日までの4日間開催された国際細胞外小胞学会総会 (ISEV 2016) の最終日土曜日は半日の閉会会議で、興味深い新しい研究や4日間の会期中に発表されたいくつかの優れた研究の授賞式などが行われた。総会はJan Lotvall前会長が、オーストラリアのLa Trobe University, Department of Biochemistry & Geneticsの学部長を務めるAndy Hill氏 (写真) に会長職を引き渡す挨拶を行い、ISEV 2017年次総会は、カナダのトロントで開かれることを発表して閉幕した。この2つの発表に先立ち、アメリカのMedical School of Brown UniversityのOncology & Medicine教授を務めるPeter Quesenberry, MDと、同じくアメリカのVanderbilt University Medical CenterでCancer BiologyとCell and Developmental Biology教授を務めるAlise Weaver, MD, PhDが、臨床と科学研究の2つの面の総括講演を行った。この総会を成功させた、ハンガリーのEdit BuzasをリーダーとするISEV国際地域組織委員会の素晴らしい努力も絶賛された。また、口頭とポスターによる優れたプレゼンテーションにも賞が与えられた。また、ISEVが、5月中にEV(Extracellular Vesicles)に関するオンライン・コースを立ち上げるとの発表もあった。総会の最終日午前中は、「Experts Meet」小部会が、血液、母乳、尿という3種の生体液をテーマに3箇所に分かれて同時に開かれた。その後、最新の研究の口頭プレゼンテーションが3部会で同時に行われた。この3部会のハイライトとして、脊髄負傷の修復にエキソソームが何らかの役割を果たしていることや、ピコルナ・ウイルスの一種であるメンゴウイルスのような非エンベロープ型ウイルスによる感染にEVが果たしている役割に関する講演があった。
カリフォルニア大学サンディエゴ校(UCSD)の研究者チームは、膵臓がんの存在を示す手がかりを探すための血液サンプルを分析する新戦略を評価した研究を発表した。ACS Nanoに掲載されたこの論文は、「交流電気動力学チップ上のエキソソームタンパク質バイオマーカーの統合解析が患者血液中の膵臓がんの迅速な検出を可能にする(Integrated Analysis of Exosomal Protein Biomarkers on Alternating Current Electrokinetic Chips Enables Rapid Detection of Pancreatic Cancer in Patient Blood)」と題されている。早期に膵がんと診断された患者は、長期生存の可能性が高く、手術を含む治療オプションへのアクセスが増加する。 しかし、現在のところ、膵臓がんのための標準スクリーニングプログラムまたは効果的早期検出戦略は存在しない。PanCAN(膵臓がんアクションネットワーク)のような研究者や組織では、早期に疾患を効果的に診断し、改善する方法の特定に取り組んでいる。
Johns Hopkins Kimmel Cancer Centerの研究チームが、ただ1回の血液検査で8種の一般的ながん種を検出し、がんの部位も判定できる方法を開発した。このCancerSEEKと呼ばれる検査法はユニークな非観血性の多検体検査法であり、8種のがんタンパク質のレベルを同時に測定し、血中循環DNAのがん遺伝子変異を検出することができる。この検査法は、アメリカでがん死の60%以上を占めるもっとも一般的ながん8種を検出することを目的としている。
パーキンソン病(Parkinson's disease)は、進行性の脳細胞死および運動機能の広範な喪失をもたらす神経変性疾患である。 この疾患に関して多くの研究が行われているにもかかわらず、現在利用可能な決定的診断試験法は無い。マンチェスター大学(英国)の研究者らは、パーキンソン病を匂いで感じ取ることができる女性の助けを借り、この疾患の特徴的な臭いを構成する化合物の同定について報告した。2019年3月20日に、American Chemical Societyから出版されたACS Central Scienceでこの発見は報告された。 このオープンアクセスの論文は「皮脂からパーキンソン病の揮発性バイオマーカーの発見(Discovery of Volatile Biomarkers of Parkinson’s Disease from Sebum.)」と題されている。ヒポクラテス、ガレヌス、そしてアビチェンナなど古代の医師らは、診断ツールとして匂いを使った。嗅覚検査は現代医学では一般的ではないが、糖尿病のような病気はしばしば特定の匂いに関連している。 しかし、匂いと神経変性疾患とを結び付ける証拠はほとんど無かった。超人的な嗅覚を持つ女性、Joy Milneさん(写真)は、1986年に亡き夫のLesがパーキンソン病と診断された。彼女は非常に敏感な嗅覚を持っており、普通の嗅覚能力では検出されない匂いを検出して、区別することが可能だ。Milneさんは臨床症状が現れるよりずっと前にパーキンソン病の独特の皮脂の臭いを区別することができる。そこで、マンチェスター大学のマンチェスターバイオテクノロジー大学院マススペクトロメトリー教授のPerdita Barran博士は、Milneさん協力の元、どの化学物質がパーキンソン病患者の皮脂の匂いを構成しているのかを判断したいと考えた。
時折エンジンルームの中を覗かないと、車の修理が必要かどうかを予測することは困難だ。 同様に、予防心臓専門医は、現在治療を受けていない人の初期段階の心臓病を検出する方法を探している。 テキサス大学(UT)サウスウェスタンメディカルセンターの予防心臓病研究者は、タンパク質バイオマーカーの新しい血液検査でこれらの個人を特定できると考えている。 2019年11月11日にCirculationでオンラインで公開された彼らの新しい研究では、多民族の合計13,000人近くを含む3つの主要な患者集団からなる患者データを蓄積した。研究チームは、2つのバイオマーカー(血中タンパク質)のレベルを測定することで、治療が必要な人を特定できるかどうかを調べた。 研究者は、現在治療に推奨されていない軽度の高血圧の成人の約3分の1が、これら2つのバイオマーカーのいずれかが僅かに上昇していることを発見した。 これらの個人は、今後10年間で心臓発作、脳卒中、またはうっ血性心不全を発症する可能性が高くなった。 言い換えれば、これらの患者は「レーダーの下を飛んで」おり、心血管イベントのリスクが高いことを知らない。このCirculationの論文は、「2017 ACC / AHA高血圧ガイドラインによるプールされたコホート分析による降圧薬の配分のためのリスク評価へのバイオマーカーの組み込み(Incorporation of Biomarkers Into Risk Assessment for Allocation of Antihypertensive Medication According to the 2017 ACC/AHA High Blood Pressure Guideline: A Pooled Cohort Analysis.)」と題されている。Ambarish Pandey博士(写真左)とParag Joshi博士(写真右)は、心臓病のリスクがある一部の患者はバイオマーカー血液検査によって助けられると考えている。
敗血症の発見と治療は数十年に渡りほとんど進歩していないが、やっと前進するかもしれない。敗血症は身体全体に病原体感染の急増をもたらす致命的な医学的合併症だ。 シンシナティ小児病院医療センターの研究者は、5つのバイオマーカーを測定し、どの患者が敗血症(血液中毒とも呼ばれる)による死亡における低・中または高リスクであるかを正確に予測する新しい高速血液アッセイを開発し、テストが成功したことを報告している。この研究の上級調査員でシンシナティ・チルドレンズのクリティカルケア医学部長である Hector Wong 博士(写真)によると、このPERSEVEREと呼ばれるこの新しい検査法により、医師は敗血症を早期に発見して層別化することができるという。どの5つのタンパク質/遺伝子がアッセイの血液パネルの5つのバイオマーカーを構成するかを知ることにより、医師ははるかに早く、より正確に医療介入を開始できる様になる。患者を低リスク、中リスク、高リスクのグループに階層化できるだけでなく、バイオマーカー検査により、医師は特定の患者に対して適切な介入を選択できる。Science Translational Medicine誌の2019年11月13日号に掲載されたこの論文は「小児敗血症バイオマーカーリスクモデルの前向き臨床試験と実験的検証(Prospective Clinical Testing and Experimental Validation of the Pediatric Sepsis Biomarker Risk Model.)」と題されている。
香港科学技術大学(HKUST)の科学者チームは最近、SARS-CoV-2コロナウイルスの潜在的なワクチンターゲットのセットを特定する重要な発見を行い、ウイルスによって引き起こされた新規肺炎(COVID-19)に対するワクチン開発に向けた実験的取り組みを導く重要なガイダンスを提供した。2003年にSARS(重症急性呼吸器症候群)の大流行を引き起こしたSARS-CoVと同様に、SARS-CoV-2は同じベータコロナウイルス属に属している。SARS-CoV-2とSARS-CoVの遺伝的類似性を検討することにより、チームは実験的に決定された免疫学的データを活用して、SARS-CoV-2に完全に一致するSARS-CoV由来B細胞およびT細胞エピトープのセットを特定した。 エピトープは、ウイルスに対するアクションをトリガーするために免疫系によって認識されるバイオマーカーだ。 利用可能なSARS-CoV-2遺伝子配列の中で同定されたエピトープに変異は観察されていないため、これらのエピトープの免疫ターゲティングは、新規肺炎COVID-19に対する防御に役立つ可能性がある。データ科学者のMatthew McKay 教授とAhmed Abdul Quadeer 博士が率いるチームは、彼らの研究がSARS-CoV-2に対する効果的なワクチンの開発に向けた実験的研究を導く助けになると期待した。 McKay 教授は、HKUSTの電子コンピューター工学および化学および生物工学の学部の教授である。 Quadeer博士は、同じくHKUSTの電子コンピューター工学科のポスドク研究員だ。彼らの調査結果は、2020年2月25日にオープンアクセスジャーナルVirusesにオンラインで公開された。 この論文は、「SARS-CoV免疫学的研究に基づいたCOVID-19コロナウイルス(SARS-CoV-2)の潜在的なワクチン標的の予備同定(Preliminary Identification of Potential Vaccine Targets for the COVID-19 Coronavirus (SARS-CoV-2) Based on SARS-CoV Immunological Studies.)」と題されている。
マウントサイナイ医科大学の研究者は、筋萎縮性側索硬化症(ALS)やルーゲーリック病と呼ばれる、退行性でしばしば致命的な神経疾患について、小児期に見られるバイオマーカーを同定したと2020年5月21日に米国科学誌「Annals of Clinical and Translational Neurology」のオンラインで発表した。このオープンアクセスの論文は、「筋萎縮性側索硬化症における早期生命金属異常調節(Early Life Metal Dysregulation in Amyotrophic Lateral Sclerosis.)」と題されている。研究者らは、成人になってALSを発症した患者の「歯」にバイオマーカーを発見した。 彼らはレーザーを使用して毎日歯に形成される年輪をマッピングし、ALSの患者がそうでない患者と比べ、出生時および生後10年以内に異なる方法で金属を代謝したことを示す年輪の形成をエビデンスとして発見した。ALSは通常、50代または60代で発症することが多い。
2017年10月9日、ASEMV(American Society for Exosomes and Microvesicles) 年次大会の2日目、Harvard Univesityの1年生、Indrani Dasさん (18) が自身のエキソソーム研究を発表し、200名の名声のある研究者達を釘付けにした。この研究にはRegeneron 2017 United States Science Talent Search Grand Prizeと賞金$250,000が贈られている。
University of SydneyのBrain and Mind CentreとRoyal Prince Alfred Hospitalが中心となって行った画期的な研究で、多発性硬化症 (MS) の患者の血液中に疾患特有の物質が含まれていることを発見、若年成人の神経障害としてはもっとも一般的なこの疾患を確実に診断するバイオマーカーになるという結果を得た。2017年10月30日付Scientific Reportsオンライン版に掲載された研究論文は、簡単な血液検査だけで、「調節異常」のmicro-RNAの微小分子を発見し、それによってMSを正確に診断し、また患者の疾患の段階の違いも判定できたと記述している。オープンアクセス論文として掲載されたこの論文は、「Exosomal MicroRNA Signatures in Multiple Sclerosis Reflect Disease Status (多発性硬化症固有のエキソソーム由来MicroRNAが疾患状態の指標に)」と題されている。現在のところ、MSを確実に発見する検査法はなく、疾患の診断と観察は、臨床診察、MRI、脳脊髄液検査、電気生理検査などに頼っている。MSは慢性疾患であり、しかも現行の診断、観察検査は金がかかる上に疾患の異なる段階を判定するにもその能力には限界がある。同研究チームは、健康人とMS患者を識別するバイオマーカーを発見しただけでなく、再発寛解型多発性硬化症 (RRMS) と進行型多発性硬化症という2種のMS亜型を判別する9種の固有なmicro-RNA分子を見つけている。MS患者の70%ほどが再発寛解型多発性硬化症 (RRMS) であり、これはしばしば二次進行型MSに発達することがある。MS患者の10%から15%は、発症当初から進行型と診断される一次性進行型MSである。研究チームはさらに研究の対象にされなかった他の進行型MS患者グループでも9種のmicro-RNA分子のうち8種の検証に成功し、この研究結果の再現性を実証した。RPA HospitalのDepartment of NeuropathologyとUniversity of SydneyのBrain and Mind Centreの長を兼任するAssociate Professor Michael Bucklandは、「この研究で、血中循環エキソソーム由来のmicro-RNAがMS診断のバイオマーカーとして優れているだけでなく、MSの亜型を高い精度で予測するのにも優れていることが初めて確認された」と述べている。
スペインのマドリッドにあるカルロス3世 国立循環器研究センター(CNIC)の研究者らは、ウイルスやバクテリアなどの病原体に早期に対応する免疫システムの防御機構に関する貴重な情報を提供している。2018年7月9日にネイチャーコミュニケーションズのオンラインで公開されたこの研究データは、免疫系の異なる細胞コンポーネントがどのようにして病原体に効果的な反応を起こすかを説明している。CNICの研究者らは、ある種のナノベシクルに含まれるミトコンドリアDNAが、抗ウイルス遺伝子プログラムの活性化を引き起こすレセプター細胞に警戒状態を引き起こすと特定した。エキソソームとして知られるこれらのナノベシクルは、Tリンパ球によって産生され、細胞間接触を介して樹状細胞によって捕捉される。病原体に対する免疫応答は、Tリンパ球と抗原提示細胞、特に樹状細胞との間の特異的相互作用を必要とし、免疫シナプスとして知られるプロセスである。 この過程で、細胞表面に存在するレセプター結合とそのリガンド、およびエキソソームの移動の両方によって、細胞間情報が交換されることが、研究者らによって説明されている。今まで、免疫シナプス後のT細胞における活性化経路が研究されてきた。 しかしながら、受容されたシグナルの同一性および樹状細胞に対するそれらの機能的効果は、あまり注目されてこなかった。プリンセサ病院長、マドリード自治大学免疫学教授であるCNICの細胞間コミュニケーショングループのFrancisco Sánchez-Madridk教授は、以前、免疫シナプスの間にエキソソームを樹状細胞に転移させるT細胞の能力を述していた。この論文は、「抗原接触を介した活性化T細胞からのDNA含有細胞外ベシクルによる樹状細胞のプライミング(Priming of Dendritic Cells by DNA-Containing Extracellular Vesicles from Activated T Cells Through Antigen-Driven Contacts.)」と題されている。
癌細胞は、制御不能になっている細胞の塊ではない。 彼らは自分の生存のために免疫システムとの積極的な戦闘に参加する。免疫系を回避できることは癌の特徴である。 ペンシルベニア大学(Penn)の研究者によると、癌細胞は、血液中を循環する生物学的な"ドローン"であるエキソソームとPD-L1と呼ばれるタンパク質により、腫瘍に到達して戦いをする前にT細胞を疲弊させることを報告した。2018年8月8日Natureに掲載されたこの研究は、School of Arts and Sciences生物学のWei Guo博士とPerelman School of Medicine病理学研究所のXiaowei Xu博士の共同研究である。主に転移性メラノーマに焦点を当てていたが、チームは乳癌と肺癌もPD-L1を持つエキソソームを放出することを発見した。この論文は、「Exosomal PD-L1は免疫抑制に寄与し、抗PD-1応答に関連する(Exosomal PD-L1 Contributes to Immunosuppression and Is Associated with Anti-PD-1 Response.)」と題されている。 この研究は、癌が免疫系を抑制するために全身的にどのようにアプローチするかについてのパラダイムシフトの絵を提供する。さらに、それはまた、腫瘍と戦うために免疫抑制を中断する抗PD1療法にどの癌患者が応答するかを予測する新たな方法を指し示し、その有効性を追跡する手段となる。「免疫療法は転移性メラノーマ患者の多くにとっての救命措置ですが、これらの患者の約70%が反応しません。」「これらの治療法は費用がかかり、毒性の副作用があるため、どの患者が反応するのかを知ることは非常に有益である。血流中のバイオマーカーを同定することで、どの患者が反応するかを早期に予測でき、 患者さんとその医師に、彼らの治療がどれほどうまく機能しているかモニターする方法を提供できる。」とGuo博士は語った。
Cell Host&Microbeに発表された研究において、ケンタッキー州のルイビル大学微生物免疫学部 James Graham Brown癌センターの研究者らは、植物由来 エクソソーム 様ナノ粒子(ELNs: exosome-like nanoparticles)が腸内微生物叢によって取り込まれ、マイクロバイオーム組成および宿主の生理機能を変化させるRNAを含むことをマウスで実証した。2018年11月14日号に掲載されたこの論文は「植物由来エクソソームMicroRNAが腸内微生物叢を形成する(Plant-Derived Exosomal MicroRNAs Shape the Gut Microbiota.)」と題されている。
米国ルイジアナ州立大学公衆衛生学(LSU Health)のSuresh K Alahari博士は、乳癌細胞の遊走や動きの制御など、さまざまな生物学的プロセスに関与する新規タンパク質、Nischarinを発見した。 彼の研究室は、Nischarinが腫瘍抑制因子として機能することを示した。この研究はより良い癌治療につながるかもしれない。現在の研究で研究チームは エクソソーム 放出におけるNischarinの機能を調べた。 エクソソームは、タンパク質を含むナノサイズの小胞であり、生理学的および病理学的プロセスの両方に関与する遺伝的および他の物質を含む。腫瘍由来のエクソソームは、腫瘍の進行および癌の転移に関与する細胞間コミュニケーションのための様々なシグナル伝達メッセンジャーを含む。 腫瘍エクソソームは、腫瘍の微小環境内の様々な種類の細胞の相互作用に影響を及ぼし、腫瘍の発生、進行、および転移を制御する。 原発腫瘍はエクソソームを放出し、それが転移性癌細胞の播種および増殖を増強する。この新しい論文は、2019年1月11日にCancer Researchに掲載され「Nischarin発現細胞由来のエクソソームは乳癌細胞の運動性と腫瘍増殖を減少させる(Exosomes from Nischarin-Expressing Cells Reduce Breast Cancer Cell Motility and Tumor Growth)」と題されている。
カンザス大学、カンザス大学癌センター、およびKUメディカルセンターの研究者によって発明された新しい超高感度診断装置は、医師が血液または血漿の小滴から癌を迅速に検出することを可能にし、患者のためのより迅速な対処とより良い結果につながるだろう。この エクソソーム を検出するリキッドバイオプシー(liquid biopsy)分析のためのラボオンチップは、2019年2月25日にNature Biomedical Engineering誌にオンラインで報告された。エクソソームは、すべての細胞から放出されるが、特に癌細胞によって大量に産生される傾向がみられる。この論文は「3Dナノパターンマイクロ流体チップを用いた循環エクソソームの超高感度検出(Ultrasensitive Detection of Circulating Exosomes with a 3D-Nanopatterned Microfluidic Chip.)」と題されている。
健康な心筋組織を保護することで損傷を減らす心臓発作の直後に服用できる薬があると想像して欲しい。 心臓発作が起きた場合、心臓の専門医は、「時は筋肉なり」と言うと、バージニア工科大学カリリオン心臓医療センター・フラリン生物医学研究所のディレクターであるRobert Gourdie博士(写真)は語った。血流によって酸素が供給されないと、心臓細胞はすぐに死ぬ。 しかし、心臓発作は血液と酸素を心臓細胞の隔離された部分だけしか減らすことができず低酸素性虚血性傷害を引き起こすが、死にかけている細胞は隣の細胞に信号を送る。「問題は、死にかけている組織の領域は隔離されていないことだ。損傷した心臓細胞は健康な細胞に信号を送り始め、損傷はさらに大きくなる。」そうバージニア工科大学のGourdie博士(心臓再生医学研究、生物医学工学および機械学科の教授)は述べた。科学者は、この損傷信号が近くの健康な組織に広がることを「バイスタンダー効果」と呼ぶ。しかし、もし近くの心筋細胞が無傷のまま、低酸素性虚血性損傷によって直接影響を受けた細胞グループの損傷を局所化して維持する方法があったらどうだろうか?アメリカ心臓学会誌に2019年8月19日にオンラインで公開された研究では、Gourdie博士が率いる研究者チームによって開発された新しい分子が、心臓発作中およびその後でも心臓組織の維持に役立つことが明らかにされた。オープンアクセス論文は、「αカルボキシル末端1ペプチドとコネキシン43カルボキシル末端との相互作用は、虚血再灌流傷害後の左心室機能を維持する。(Interaction of α Carboxyl Terminus 1 Peptide with the Connexin 43 Carboxyl Terminus Preserves Left Ventricular Function After Ischemia‐Reperfusion Injury)」と題されている。10年程前、Gourdie博士は、研究室のポスドク博士であるGautam Ghatnekar博士と共同で、有望な発見に遭遇した。 Gourdie博士のチームは、バイスタンダー効果の重要な側面の制御に関与する細胞膜チャネルの活性を標的とする化合物を発見した。しかし、alphaCT1と呼ばれるこの化合物は、特に皮膚創傷治癒に関して、予期せぬ有益な効果ももたらした。
以前から研究者は、侵襲性の強いタイプの乳がん患者のがん細胞にはミトコンドリアDNAが少ないという観察結果に注目していた。しかし、そのような特徴ががん進行にどのように影響するのかということについては誰にも分からなかった。最近になってようやく、University of Pennsylvaniaの研究チームが、ミトコンドリアDNAの減少で人間の乳がん細胞が侵襲性の強い転移性を獲得することを明らかにした。
現在、多発性硬化症 (MS) の治療方法には髄鞘再形成を促進するようなタイプのものはない。しかし、2013年5月10日、サンディエゴで開かれていたSociety for Neuroscience 2013年総会において、取材に対して、University of Chicago Medicine, Director of the Migraine Headache ClinicでProfessor in Neurosciencesを務めるRichard Kraig, M.D., Ph.D.は、「血液中に存在する免疫細胞の一種、樹状細胞を骨髄から採取培養し、刺激を与えることで エクソソーム (画像参照) と呼ばれる小粒子を放出させることができる」と述べた。
Henry Ford Hospitalの研究チームは、動物を使った新しい研究で、卒中発作後に幹細胞から放出される エクソソーム と呼ばれる微小な (50nm) 脂質性の細胞内器官に内包されるRNA (リボ核酸) 塩基配列のごく短いmicroRNAのうち、特定のものが神経的な回復に一役買っていることを突き止めた。研究チームのラットを用いた実験では、この特定のmicroRNAが幹細胞からエクソソームを使って脳細胞に送られ、卒中発作後の機能回復を強化していた。
2013年4月17日から20日までボストンで開かれた年次恒例のInternational Society for Extracellular Vesicles (ISEV)において、アムステルダムのVU University Medical Center、Pathology Departmentの免疫学者、Michiel Pegtel, Ph.D.が、「包括的なディープ・シーケンシングで、特定のRNA小片が腫瘍の エクソソーム に組み込まれていることを突き止めた。この発見から、新しくバイオマーカーとして応用することも考えられる」と口頭発表した。エクソソーム (写真) は、細胞より小さな膜結合性の小胞 (直径30nmから150nm) で、様々なタイプの正常細胞からもがん細胞からも放出され、小胞内に膜タンパク質、細胞タンパク質、microRNA (miRNA)、その他、mRNA断片を含む様々なタイプのRNAを含んでおり、その内容はエクソソームを放出した細胞によって異なる。
2020年6月17日にNature Outlookでオンラインで公開された記事で、 イェール大学医学部のリウマチ学および臨床免疫学およびイェール大学医学部の元アレルギーおよび臨床免疫学のチーフであるPhilip Askenase教授(写真)は、「エクソソームはセンセーショナルな生物学的発見である」と述べている。膜に囲まれた小さな細胞内小胞は、研究されてきたすべての動物種のすべての細胞によって生産・分泌され、植物や細菌によっても放出される。 オープンアクセスのNatureの記事は「人工ナノ粒子は本物ほど良くない(Artificial Nanoparticles Are Not As Good As The Real Thing.)」と題されている。Askenase博士によれば、エクソソームの主な機能は、血流を通過した後、近くまたは全身に他の細胞に入り、最も重要なのはアクセプター細胞のDNAに変化を引き起こす可能性があるマイクロRNA(miRNA)である貨物を運ぶことだ。発現は、タンパク質機能の変化につながり、最終的にはアクセプター細胞の挙動の変化につなががる。Askenase博士は、「エクソソームは、これまでに発見されていない生物学的プロセスを媒介し、細胞や生物全体の分子経路や代謝経路を変える可能性がある予期しないユニバーサル・ナノ粒子だ」と述べている。彼は、エクソソームは医学的に非常に重要であると信じている。 「それらは、研究者に疾患メカニズムのより良い理解を提供し、新しい診断テストにつながり、そしておそらく最も重要なことは、新しい治療法を提供するための天然ナノ粒子手段を提供するだろう」とAskenase博士は言う。 しかし、これは研究者がエクソソームをより集中的に研究した場合にのみ起こると彼は信じている。Askenase博士は、残念ながらこれまで生物医学のエンジニアは別のあまり有望ではないアプローチに焦点を当ててきたと考えている。 彼は、エクソソームは数十億年の進化を経て最適な組成物を進化させてきたと主張し、比較すると、操作されたナノ粒子には多くの相対的な欠点があるという。Askenase博士は、エクソソームは血液脳関門などの組織障壁を容易に通過でき、投与後4〜5日間効果を発揮して血流に入ることができると指摘している。 一方、人工ナノ粒子は、血液脳関門を通過することができず、それらを外来粒子として認識する自然の体のメカニズムによって急速に排除される。
VIB-UGent Center for Inflammation Researchとゲント大学の研究グループによる共同研究により大腸癌を引き起こす新しいメカニズムが明らかになった。 研究者らは、タンパク質Zeb2(ジンクフィンガーEボックス結合ホメオボックス2)の異常な発現が、腸壁または『上皮』の完全性に影響を与えることを発見した。この上皮は通常、腸内微生物による浸潤を防ぐバリアとして機能する。 Zeb2はこの障壁を弱め、浸潤性細菌が癌の進行を引き起こす炎症を引き起こすことを可能にする。 科学者らは免疫系の操作または微生物相の除去が癌の発生を防ぐことができることを実証した。 これらの調査結果は新しい治療法につながる可能性がある。
2020年5月21日、シンガポールのAustrianova社とチリのCells for Cells社は、カプセル化された間葉系幹細胞(mesenchymal stem cells :MSC)から細胞外小胞(extracellular vesicles :EV)を生成するための、コストと時間を節約する方法についての、新規で画期的な査読済み科学論文を学術パートナーと共に発表した。 これらの細胞外小胞は、幹細胞治療効果に寄与することが知られている。著者は、Cells for Cellsの独自の間葉系幹細胞を使用して実証し、Austrianova独自のCell-in-a-Box®カプセル化技術を使用して、カプセル化された間葉系幹細胞から細胞外小胞を製造および提供できることを示している。この論文は、チリのアンデス大学とオーストリア・ウィーンの獣医学大学の学術パートナーと共同執筆したもので、2020年5月21日にFrontiers in Pharmacologyに掲載された。 このオープンアクセス論文は、「半透過性セルロースビーズにより、カプセル化された細胞からの小さな細胞外小胞の選択的かつ継続的な放出を可能にする(Semipermeable Cellulose Beads Allow Selective and Continuous Release of Small Extracellular Vesicles from Encapsulated Cells.)」と題されている。
視力を失うほとんどの大人にとって、失明は、脳が無傷のままである一方で、目または視神経の損傷が原因となっている。 何十年もの間、研究者たちは、損傷した目を迂回して視覚情報をカメラから脳に直接届けることで視力を回復できるデバイスの開発を提案してきた。2020年5月14日にCellで発表された論文で、テキサス州ヒューストンのベイラー医科大学の調査チームは、彼らがこの目標に一歩近づいていると報告している。 このオープンアクセスの論文は、「視覚皮質の動的刺激によって、視覚障害者と視覚障害者のフォームビジョンが生成される(Dynamic Stimulation of Visual Cortex Produces Form Vision in Sighted and Blind Humans.)」と題されている。著者らは、埋め込まれた電極が動的シーケンスで刺激されるアプローチを説明し、参加者が「見る」ことができた視覚皮質の表面上の形状を本質的に「追跡」した。「電気刺激を使用して患者の脳の文字を直接動的に追跡したところ、意図した文字の形状を『確認』でき、さまざまな文字を正しく識別できた」と著者であるベイラー医科大学 脳神経外科のDaniel Yoshor医学博士(写真右)は述べた。 「彼らは、飛行機による空中文字のように、光る点や文字を形成する線を見たことを説明した。」視覚皮質を刺激する以前の試みはあまり成功していない。 以前の方法では、各電極を視覚的ディスプレイのピクセルのように扱い、それらの多くを同時に刺激していた。 参加者は光のスポットを検出できたが、視覚的なオブジェクトやフォームを識別するのは困難だった。
2020年5月8日にCMAJ(Canadian Medical Association Journal)でオンライン公開された多国間の調査によると、気温と緯度は新型コロナウイルス( COVID-19 )の蔓延とは関連していないようだ。しかし学校の閉鎖やその他の公衆衛生対策がプラスの効果をもたらしているという。 この論文は「COVID-19パンデミックに対する気候と公衆衛生の介入の影響:前向きコホート研究(Impact of climate and public health interventions on the COVID-19 pandemic: A prospective cohort study.)」と題されている。「我々の研究は、COVID-19の流行のグローバルデータを使用して、これらの公衆衛生の介入により流行の成長が減少したことを示す重要な新しい証拠を提供するものだ。 」とトロント大学健康政策・管理・評価研究所、オンタリオ州トロントの聖ミカエル病院の Peter Jüni博士は述べた。
カナダのサスカチュワン大学(USask)の研究チームは、コウモリが病気になることなく中東呼吸器症候群(MERS)コロナウイルスを運び、ヒトや他の動物にどのようにしてジャンプするのかを解明した。これらのウイルスは深刻な、そしてしばしば致命的な病気を引き起こす可能性があるが、コウモリには無害のようだ。Scientific Reportsで発表されたこのオープンアクセス論文は「中東呼吸器症候群コロナウイルスによる食虫性コウモリ細胞の持続感染時のウイルス変異体の選択」と題されている。カナダのサスカチュワン大学(USask)の研究チームは、コウモリが病気になることなく中東呼吸器症候群(MERS)コロナウイルスを運び、ヒトや他の動物にどのようにしてジャンプするのかを解明した。MERS、重症急性呼吸器症候群(SARS)、および最近ではCOVID19を引き起こすSARS-CoV-2ウイルスなどのコロナウイルスは、コウモリに由来すると考えられている。 これらのウイルスは深刻な、そしてしばしば致命的な病気を引き起こす可能性があるが、コウモリには無害のようだ。このことは今まで十分に理解されていなかった。「コウモリはウイルスを排除せず、病気にもならない。MERSウイルスがヒトのようにコウモリの免疫応答を遮断しない理由を理解したかった」と、USaskの微生物学者Vikram Misra博士は述べた。Scientific Reportsで発表された研究で、チームは初めて、食虫性ブラウンバットの細胞が、コウモリとウイルスの両方からの重要な適応により、数ヶ月間MERSコロナウイルスに持続的に感染する可能性があることを実証した。このオープンアクセス論文は「中東呼吸器症候群コロナウイルスによる食虫性コウモリ細胞の持続感染時のウイルス変異体の選択(Selection of Viral Variants During Persistent Infection of Insectivorous Bat Cells with Middle east Respiratory Syndrome Coronavirus.)」と題されている。 論文の著者であるMisra 博士は、「ウイルスがコウモリ細胞を殺す代わりに、コウモリのユニークな『スーパー』免疫システムによって維持され、宿主との長期的な関係に入っている」と述べた。 「SARS-CoV-2は同じように動作すると考えられている。」Misra 博士は、チームの作業はコウモリへのストレス(市場、他の病気、そしておそらく生息地の喪失)が、他の種にこぼれるコロナウイルスに役割を果たす可能性があることを示唆していると言う。 「コウモリがその免疫系にストレスを感じると、免疫系とウイルスのバランスが崩れ、ウイルスが増殖することが可能になる」この研究は、ウサスクのウエスタン獣医大学およびVIDO-InterVacの研究者チームによって、世界最大のバイオセーフティーレベル3の研究施設の1つである、ウサスクのワクチンおよび感染症機構である国際ワクチンセンター(VIDO-InterVac)で行われた。
2020年4月10日に全米科学アカデミー(PNAS)のオンライン抄録で公開された最近の研究で、カリフォルニア大学(UC)サンディエゴ校の研究者は、細胞培養でヘパリンを製造する能力に一歩近づいたことを報告している。 この論文は「ZNF263はヘパリンとヘパラン硫酸の生合成の転写調節因子である。(ZNF263 Is a Transcriptional Regulator of Heparin and Heparan Sulfate Biosynthesis.)」と題されている。ヘパリンは強力な抗凝固剤であり、病院で最も処方されている薬物だが、細胞培養による製造は現在までのところ不可能だ。 特に、研究者らはヘパリン生合成において重要な遺伝子であるZNF263(亜鉛フィンガータンパク質263)を発見した。 研究者たちは、この遺伝子調節因子がヘパリンの工業生産への道における重要な発見であると信じている。
メルボルンの研究者らは、オーストラリアで最初の新型コロナウイルス(COVID-19)患者の1人から免疫反応をマッピングし、ウイルスと戦って感染から回復する人体の能力を示した。 メルボルン大学とロイヤルメルボルン病院の合弁会社であるピータードハティ感染症研究所(ドハティ研究所)の研究者らは、COVID-19を呈し、入院を必要とする軽度から中程度の症状があった 40代の健康な女性の4つの異なる時点での血液サンプルをテストすることができた。2020年3月16日にNature Medicineのオンラインで公開されたこの論文は、患者の免疫系がウイルスにどのように反応したかについて詳細に報告している。 このオープンアクセスの論文は、「患者の回復前の付随する免疫応答の幅:重症でないCOVID-19の症例報告(Breadth of Concomitant Immune Responses Prior to Patient Recovery: A Case Report of Non-Severe COVID-19.)」と題されている。
ニューロン機能を支援する転写因子は、すでに再発した癌をさらに致命的にする可能性のある前立腺の細胞変換を可能にするようだ。 転写因子BRN4は主に中枢神経系と内耳で発現するが、稀であるが神経内分泌前立腺癌の患者でも増幅され過剰発現する最初の証拠がClinical Cancer Researchジャーナルで公開された。この論文は「BRN4は去勢抵抗性前立腺癌における神経内分泌分化の新規ドライバーであり、BRN2を含む細胞外小胞で選択的に放出される(BRN4 Is a Novel Driver of Neuroendocrine Differentiation in Castration-Resistant Prostate Cancer and Is Selectively Released in Extracellular Vesicles with BRN2.)」と題されている。その名前が示すように、神経内分泌細胞は脳内の方が一般的だが、クルミサイズの前立腺にも少し存在し、強力なホルモン療法に直面するとより致命的なものになる。性ホルモンのアンドロゲンは前立腺癌の主な原因であり「化学療法去勢」と呼ばれるホルモン療法は、前立腺癌またはその受容体を抑制するための標準的な最前線療法だ、とジョージア医科大学 (MCG) 生化学科の癌生物学者である Sharanjot Saini博士(写真左) は語った。 それでも、患者の40%が数年以内に去勢抵抗性前立腺癌を発症する。このより侵攻性の癌は治療が難しく、患者はこの再発性前立腺癌に対して2012年に最初に承認されたエンザルタミドなどのより新しく強力なホルモン療法を受ける可能性がある。 Saini 博士は、前立腺で癌になり易いのは、はるかに一般的な管腔細胞型だと言う。 しかし、この追加のより積極的な治療に直面すると、これらの管腔細胞のサブセットは、さらに積極的な疾患である神経内分泌前立腺癌に分化すると、この研究の筆頭著者であるDivya Bhagirath 博士(写真右)は述べた。
癌を早期に発見するための根本的な新しい戦略と技術の開発は、大西洋横断研究アライアンスの大胆な野望であり、癌の早期発見のための国際同盟(Alliance for Cancer Early Detection:ACED)は、Cancer Research UKとのパートナーにより2019年10月21日に発足が発表された。今後5年間で78億円以上の資金が提供される。早期発見は、より多くの人が癌に打ち勝つために不可欠だ。癌が早期に発見され治療されると、患者が病気を生き残るチャンスが劇的に向上する。 早期癌と前癌状態の生物学を理解することで、医師は病気を早期に発見し、必要に応じて効果的に治療する正確な方法を見つけることができる。
最も致命的であるマラリア原虫がゴリラからヒトにジャンプする一連の出来事が発見された。 英国のウェルカムサンガー研究所とフランスのモンペリエ大学の研究者は、熱帯熱マラリア原虫の祖先によって取得された約50,000年前の遺伝子配列を再構築し、ヒト赤血球に感染する能力を与えた。PLOS Biologyで2019年10月15日に公開されたこの論文は、「先祖伝来のRH5侵略リガンドの復活が、ヒトの熱帯熱マラリアの起源の分子的説明を提供する。」と題されている。最も致命的であるマラリア原虫がゴリラからヒトにジャンプする一連の出来事が発見された。 英国のウェルカムサンガー研究所とフランスのモンペリエ大学の研究者は、熱帯熱マラリア原虫の祖先によって取得された約50,000年前の遺伝子配列を再構築し、ヒト赤血球に感染する能力を与えた。研究者らは、このrh5遺伝子が限られた時間で寄生虫がゴリラとヒトの両方に感染することを可能にし、分子レベルでジャンプがどのように行われたかを発見した。 この研究チームはまた、熱帯熱マラリア原虫をヒトに制限する特定のDNA突然変異を特定した。PLOS Biologyで2019年10月15日に公開されたこの研究は、最も致命的な感染症の1つがどのようにヒトに感染するようになったかについて信憑性のある説明を提供し、病原体が1つの種からどのように飛び出すことができるかを理解するために重要と言える。 この論文は、「先祖伝来のRH5侵略リガンドの復活が、ヒトの熱帯熱マラリアの起源の分子的説明を提供する。(Resurrection of the Ancestral RH5 Invasion Ligand Provides a Molecular Explanation for the Origin of P. Falciparum Malaria In Humans.)」と題されている。マラリアは依然として世界の主要な健康問題であり、年間推定435,000人の死者を出しており、61%が5歳未満の子供で発生している。 P. falciparumは、マラリアの最も致命的な形態の寄生虫種であり、2017年にマラリアの症例の99.7%を占めるアフリカで特に流行している。P. falciparumは、ラベラニアとして知られるファミリーでマラリアを引き起こす可能性のある7種の寄生虫の1つだ。この寄生虫は、アフリカの大型類人猿に起源があり、宿主種はチンパンジーとゴリラに限定される。約50,000年前に人獣共通感染症プロセスを介してゴリラから宿主を切り替えヒトに感染する。
脳下帯状回(SCC)と呼ばれる脳の領域への深部脳刺激(DBS)により、 他の治療に反応しなかった最も重度の鬱病患者である治療抵抗性鬱病の患者に長期間強力な抗鬱効果をもたらしたことがAmerican Journal of Psychiatryの2019年10月4日号にオンラインで公開された。この論文は「治療抵抗性うつ病に対する脳梁下帯状回深部脳刺激の長期転帰(Long-Term Outcomes of Subcallosal Cingulate Deep Brain Stimulation for Treatment-Resistant Depression.)」と題されている。