【2026年決定版】エクソソーム解析の製品セレクトガイド:試薬・キット・受託サービスの徹底比較と成功する選び方
1. はじめに:なぜ「分離法」の選択が研究の質を左右するのか
2026年現在、エクソソーム(細胞外小胞:EVs)研究において最も重要なファーストステップは、実験目的に合致した「分離・精製方法」の選択です。かつてゴールドスタンダードとされた超遠心法は、回収量のバラつきやタンパク質凝集の問題から、より再現性の高いキット利用へとシフトしています。
しかし、市場には「沈殿法」「アフィニティー法」「サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)」など多種多様な原理の製品が混在しており、選択を誤ると「純度が低すぎて質量分析ができない」「回収量が足りずmiRNAが検出できない」といった致命的な失敗を招きます。本ガイドでは、最新のMISEVガイドラインのトレンドも踏まえ、あなたの研究リソースと最終ゴール(バイオマーカー探索、機能解析、治療応用)に最適なソリューションを提示します。
2. 【原理別】主要3大キットの特性と最新トレンド
2.1 富士フイルム和光純薬「MagCapture™」:純度とインタクト性の最高峰
プロテオミクス解析や細胞への添加実験を行う場合、不純物の混入は許されません。ここで圧倒的な強みを発揮するのが、日本発の技術である「PSアフィニティー法」を採用したMagCaptureシリーズです。
エクソソーム膜表面のホスファチジルセリン(PS)を特異的に捕捉するため、超遠心法や沈殿法では除去しきれないリポタンパク質などを効果的に排除できます。最新の「Ver.2」では、反応時間が従来の3時間から約1時間に短縮され、回収効率も向上しました。中性バッファーで穏やかに溶出するため、EVの膜構造を壊さず(インタクト)、電子顕微鏡観察や機能解析に最適です。純度を最優先する研究者にとっての第一選択肢と言えるでしょう。
2.2 SBI「ExoQuick®」/ Thermo Fisher「Total Exosome Isolation」:圧倒的な回収量とスピード
「とにかくサンプル数が多い」「まずはmiRNA等の核酸スクリーニングを行いたい」というケースでは、ポリマー沈殿法が最強のツールです。代表格であるExoQuickやThermo FisherのTEIシリーズは、サンプルに試薬を混ぜて遠心するだけという簡便さで、ほぼ全てのEVを回収できます。
最大のメリットは、特別な装置(超遠心機やフラクションコレクター)が不要で、同時に数十検体を処理できるスループットの高さです。一方で、タンパク質やポリマーの持ち込みが多いため、質量分析には不向きとされてきましたが、近年ではリポタンパク質除去試薬を同梱した「ExoQuick-LP」などの改良版も登場しています。コストパフォーマンスと手軽さは2026年も健在です。
2.3 Izon Science「qEV」:物理的分離による「ありのまま」の回収
化学修飾やポリマーの混入を避けたい「治療用EV」の研究開発や、厳密な生物学的活性の評価には、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)のqEVカラムが推奨されます。
多孔質ビーズのカラムを通すことで、サイズの違いのみを利用してEVとタンパク質を分離します。化学試薬を使わないため、細胞毒性のリスクが極めて低く、生理的条件下での回収が可能です。2026年モデルの「Gen 2」カラムや自動フラクションコレクター(AFC)の普及により、従来の手作業によるバラつきや回収の手間が大幅に改善されました。導入コスト(自動化装置)はかかりますが、GMP準拠を見据えたプロセス開発には欠かせない選択肢です。
3. 2026年最新版 製品スペック比較表
各メーカーの主力製品について、最新の仕様と参考価格を整理しました。
| メーカー | 製品名 | 分離原理 | 純度 | 回収量 | 所要時間 | 2026参考価格(日本) | 推奨用途 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 富士フイルム和光 | MagCapture™ Kit PS Ver.2 | PSアフィニティー | 極高 | 中 | ~1時間 | 約20,000円 (2回分) 約80,000円 (10回分) |
質量分析、機能解析 |
| System Biosciences | ExoQuick® Family | ポリマー沈殿法 | 低~中 | 極高 | 30分~ | 約174,000円 (20回分) | miRNAスクリーニング |
| Thermo Fisher | Total Exosome Isolation | ポリマー沈殿法 | 低~中 | 極高 | 1時間~ | 約60,500円 (6mL/血清) | 核酸解析、多検体処理 |
| Izon Science | qEV Columns (Gen 2) | SEC (サイズ排除) | 高 | 中 | ~20分/本 | 約40,000円~ (カラム単体) | 治療用EV開発、機能解析 |
| Qiagen | exoRNeasy | メンブレンアフィニティー | (RNA用) | 高 | ~1時間 | 約250,000円 (50回分) | RNA抽出専用 |
※価格は2025-2026年時点のカタログ定価(税抜)の目安であり、代理店やキャンペーンにより変動します。
4. 目的別・推奨フローチャート
失敗しない選び方の鉄則は、「ダウンストリーム(解析手法)」から逆算することです。
- 「中身(miRNA/mRNA)」だけを見たいですか?
- YES: 迷わずExoQuickまたはTotal Exosome Isolationを選びましょう。多少の不純物はPCR感度に影響しません。RNA抽出まで一気通貫で行いたいならexoRNeasyも強力な選択肢です。
- 「表面タンパク質」や「機能」を見たい、あるいは「質量分析」をしますか?
- YES: MagCaptureが第一選択です。リポタンパク質やアルブミンを限界まで減らす必要があります。もし、化学物質(キレート剤など)の影響を完全に排除したい、あるいは大量(数L)の培養上清を処理したい場合は、qEV (SEC) またはTFF(接線流濾過)との組み合わせを検討してください。
- 「臨床検体(血清・尿)」ですか?
- 血清・血漿は粘性が高く詰まりやすいため、前処理(トロンビン処理やフィルタリング)が重要です。尿はTamm-Horsfallタンパク質の除去が必要なため、還元剤処理とMagCaptureの併用が効果的です。
5. 自社でやらない選択肢:受託解析サービスの活用
高額な機器導入や手技の習得にかかるコストを考慮すると、専門機関へのアウトソーシングが最も「安上がり」な場合があります。特にNGS(次世代シーケンサー)や質量分析は、データの質が受託会社のノウハウに依存します。
- 理研ジェネシス (Riken Genesis): 国内屈指のCLIAラボ認定施設を持ち、品質管理が厳格です。特にExosome RNA-seqにおいては、抽出からライブラリ調整、データ解析まで一貫した高品質なサービスを提供しており、バイオマーカー探索の信頼性を担保したい場合に最適です。
- Bertis: プロテオミクスに特化しており、独自技術による高感度なタンパク質定量が強みです。新規タンパク質マーカーの探索において、海外でも高い評価を得ています。
- スカイライト・バイオテック: エクソソーム中の「脂質」に着目するならここです。リポタンパク質研究で培った技術を応用したリピドミクス解析は、他社にはないユニークなデータを提供します。
- Cellid / タカラバイオ: 基礎研究から将来的なGMP製造・品質管理までを見据えた相談が可能です。
免責事項: 正確な価格や最新仕様については、各メーカーまたは正規代理店にお問い合わせください。
