専門家コラム


各分野の専門家によるコラム記事を掲載しています:

  

著者: 中山 登
中山 登
このセクションは、(株)Spectro Decypher 取締役&CTO(元・中外製薬株式会社研究本部化学部分析グループ長)中山 登 氏による創薬研究コラムです。
長年、創薬研究に携わってこられた中山氏が、創薬研究の潮流についての雑感や、創薬研究者が直面している課題の解決法などを体験談を踏まえて語っていただきます。
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【中山 登 氏 ご略歴】
昭和48年3月 立命館大学理工学部卒業
昭和48年5月~
昭和56年4月 電気通信大学材料科学科、コロンビア大学化学部研究員
昭和56年6月 日本ロシュ株式会社研究所 入社
平成8年4月 日本ロシュ株式会社研究所天然物化学部、機器分析グループ長
平成16年10月 中外製薬株式会社研究本部化学部分析グループ長
平成21年4月 中外製薬株式会社 定年 シニア職
平成26年4月 中外製薬株式会社 退職
平成26年5月~現在 株式会社バイオシス・テクノロジーズ 取締役&チィーフ・テクニカル・オフサー(CTO)
平成27年4月~平成31年3月 聖マリアンナ医科大学分子病態情報研究講座講師
平成31年1月~現在 株式会社Spectro Decypher 取締役&チィーフ・テクニカル・オフサー(CTO)
 

 

 

著者: 髙橋 豊

髙橋 豊

このセクションは、質量分析に関する技術コンサルティングを提供するエムエス・ソリューションズ株式会社 髙橋 豊 氏によるLC-MS講座です。

バイオ研究者向けにLC-MSに関する様々な話題やLC-MSの操作で注意すべき点などを分かりやすくご紹介します。

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【髙橋 豊 氏 ご略歴】
1987年3月 国立群馬工業高等専門学校卒業
1990年3月 群馬大学大学院工学研究科修士課程修了
1990年4月 日本電子株式会社入社 応用研究センターMSG研究員
2002年4月 NEDOマイクロ化学プロセス技術研究組合出向
2005年4月 解出向 同社開発本部研究員
2008年4月 横浜国立大学客員教授(~2009年3月)
2010年6月 日本電子株式会社退職
2010年8月 エムエス・ソリューションズ株式会社設立、代表取締役
2011年4月 横浜市立大学非常勤講師
2019年2月 株式会社プレッパーズ(浜松医科大学発ベンチャー)設立 代表取締役社長

【主な著書】
LC/MS定量分析入門(情報機構)
液クロ虎の巻シリーズ(丸善)
分析試料前処理ハンドブック(丸善)
液クロ実験 How to マニュアル(医学評論社)
LC/MS, LC/MS/MSの基礎と応用(オーム社)
現代質量分析学(化学同人)

【受賞歴】
2004年 日本質量分析学会奨励賞

【資格】
日本分析化学会認証 LC分析士二段、LC/MS分析士五段

【趣味】
トライアスロン、マラソン、ウルトラマラソン、ソフトボール、テニス、スキー(全日本スキー連盟指導員)、サッカー審判員(3級)

【HP】
エムエス・ソリューションズのホームページ
アメブロ

 

 

大海 忍

このセクションは、元・東京大学医科学研究所 疾患プロテオミクスラボラトリ 准教授 大海 忍 先生による抗体入門講座です。

抗体に関する様々な話題や抗体実験で注意すべき点などを分かりやすくご紹介します。

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【大海 忍 先生 ご略歴】
1977年 東京大学理学部物理学科卒業
1978年 聖マリアンナ医科大学研究員
1983年 東京都臨床医学総合研究所 技術員
1987年 東京大学医科学研究所 助手
1992年 東京大学医科学研究所 助教授(准教授) 疾患プロテオミクスラボラトリ
2015年 バイオアソシエイツ株式会社 科学顧問に就任

【主な著書】
抗ペプチド抗体実験プロトコール(秀潤社)
細胞工学連載:ラボラトリーひとくちメモ(秀潤社)
抗ペプチド抗体ベーシック 立体構造情報から抗原を設計する(細胞工学 別冊)

KAKEN

 

ニュース&コラム
10月 23, 2024

質量分析イメージングについて-1

620
質量分析屋の髙橋です。 今までLC/MSに関する内容を中心に、基礎的な内容について書いて来ましたが、今回から何回かに分けて、質量分析としては比較的新しい技術として、質量分析イメージングについて解説します。質量分析イメージング(mass spectrometry imaging, MSI)とは、生体組織切片など平面状の試料に対して、レーザー照射などによって直径数µm~100…
8月 01, 2024

天然のDDSと言われるエクソソーム

3157
DDSの具体的な研究例の最後にエクソソームを取り上げます。最近の研究で細胞が分泌するナノサイズの小胞であるエクソソームが、タンパク質や核酸を内封して、細胞間にコミニケションツールとして働いていることが明らかになりました。更に、エクソソームには臓器などの体内組織の特定の細胞に、分子を送達する機能も有している可能性が示されていて、このことはエクソソームが生体に備わっている天然のDDSであり、高分子ミセルやリボソームよりも有効なDDSにつながる可能性があると考えられます。…
5月 22, 2024

生体内化学反応に応答する機能性リボソーム

571
 DDSは標的部位に到達するまで薬物を保持して、標的部位で薬物を放出する必要があります。そこで、前回も話したようにDDSは、温度などの物理的刺激やpH変化などの環境の刺激に応答して薬物を制御する必要があり、更に薬物の作用部位が細胞内の場合は、薬物を細胞内に到達させる必要があります。そこで、DDSナノキャリアとして注目されたのが、A.D.Banghamによって発見されたリボソームです。…
3月 25, 2024

高分子ミセルを利用したDDSナノキャリア

727
 高分子ミセルやリポソームを利用したDDSナノキャリアは抗癌剤などの薬物を内包した第一世代のナノDDSと言われていて、既に一部が実用化され、また臨床試験中です。これらの第一世代ナノDDSの組織への集積は、癌組織などにおける血管透過性の亢進と未発達なリンパ系の構築を利用したenhanced permeability…
2月 06, 2024

マススペクトル解析に知っていると役立つマスディフェクト値について-2

958
質量分析屋の髙橋です。大分前になりますが、このコラムでマスディフェクト値について解析しました。今回は、その具体的な例を、実際のマススペクトルを見ながら解説していきます。 図1に正イオン検出のエレクトロスプレーイオン化で得られたペプチド(ロイシン・エンケファリン)とシロキサンのマススペクトルを示します。両方とも高分解能質量分析計を用いて得られたデータであり、m/zの確度は高いです。
2月 06, 2024

核酸医薬のDDS技術に必要なDDSナノキャリア

857
今まで話してきたように、核酸医薬はそのまま体内に投与しても、体内で分解され易く、更に細胞への導入効率が非常に悪く、殆どの場合効能を発揮できません。そこで、薬物の安定性を保ち、細胞に効率よく輸送するための運び屋が必要となります。この運び屋はウイルスベクターと非ウイルスベクターに大きく分類されます。…
12月 01, 2023

なぜ核酸医薬にDrug Delivery System(DDS)が重要なのか

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核酸医薬品はアンチセンスのヴィトラミューンが1998年に承認されて、その後2004年にRNAアプタマーのマキュジェンが承認されましたが、その後ヴィトラミューンが発売中止になり、それ以降核酸医薬はあまり開発が進んできませんでした。このことは、前から話しているように核酸医薬の安定性に問題があったからです。そして、このころから急速に開発が進んだ競合品の抗体医薬の市場導入により、核酸医薬は医薬市場で厳しい状態になり、更に核酸医薬の多くが臨床試験で有効性を証明できませんでした。そこで、siRNAに関してAlnylam社と資本…
10月 08, 2023

多価イオンの電荷数の求め

1490
質量分析屋の髙橋です。ペプチドやタンパク質など、分子内にアミノ基などプロトン受容性の官能基を複数もつ物質を正イオン検出のエレクトロスプレーで測定すると、1つの分子に対して複数のプロトンが付加した多価イオンが生成し易い事は良く知られています。 マススペクトルの横軸はm/z(mはイオンの質量を統一原子質量単位で割った値、zはイオンの電荷数)で表され、zが1の時つまりは1価イオンでは、m/zはイオンの質量と等しくなり、イオンのm/z値とイオン種から元の分子の質量を推測する事が出来ます。
6月 25, 2023

分析目的と質量分析計の種類について-3:質量分析部(QTOF & Orbitrap)編

1834
質量分析屋の髙橋です。この仕事をしていると、QTOFと(Q-)Orbitrapはどちらが良いですか? と聞かれる事がよくあります。両者とも、現在MS/MS(プロダクトイオン分析)可能な高分解能質量分析計として、プロテオミクスやメタボロミクス、天然物中の未知化合物の構造推定などの用途に双璧をなす装置だからでしょう。今日は、両者について一緒に書いてみたいと思います。
6月 06, 2023

抗炎症剤・抗菌剤の応用に期待されるデコイ型核酸とリボスイッチ

877
現在、医薬品として承認されている核酸医薬は、AIDS 患者におけるサイトメガロウィルス(CMV)性網膜炎に適用されるアンチセンス、Vitravene(fomivirsen)と、血管新生型(滲出型)加齢性黄斑変性症に用いられるアプタマー、Macugen(pegaptanib)の2つのみである。Macugenは、2008 年7…
4月 03, 2023

「核酸抗体」とも言われるアプタマー

875
核酸アプタマーは一本鎖のDNAやRNAから構成された核酸医薬ですが、細胞内でmRNAやゲノムDNAとのハイブリダイゼーションで薬効を発揮する他の核酸医薬の作用機序と異なり、抗体と同じように標的タンパク質や細胞と結合し、細胞膜上や細胞外で薬効作用を発揮します。すなわち、一本鎖のDNA/RNAが熱的に安定な立体構造の分子内相補鎖を形成することで、標的分子に特異的に結合する物質になります。この原理から、この物質を標的に特異的に結合する分子を指す、ラテン語のaptus(結合)とギリシャ語のmeros(部分)を合わせてアプタ…
4月 03, 2023

分析目的と質量分析計の種類について-3:質量分析部(飛行時間)編

892
質量分析屋の髙橋です。前回から質量分析部の話を書き始めていて、先ずは“イオントラップ”を取り上げました。前回予告した通り、先ずは定性分析向けの質量分析部を取り上げていこうと思いますので、今回は“飛行時間質量分析部”を取り上げます。飛行時間は英語ではtime of flightなので、飛行時間質量分析計は通常TOFMSと略されます。タイトルは質量分析部としていますが、ここでは書きやすいので、略語ではMSを使う事にします。
1月 19, 2023

ノーベル賞の成果を利用した核酸医薬siRNA

1526
皆様、新年あけましておめでとうございます。今年もよろしくお願いいたします。コロナ禍が一向に終息の兆しが見えませんが、今年はWithコロナの生活が昨年以上に定着していくのではないでしょうか? それでは、今回は予定どおりsiRNAを紹介しましょう。siRNAは2006年のノーベル賞生理学・医学賞を受賞したスタンフォード大学のProf. Andrew Z. Fireとマサチューセッツ大学のProf. Craig C. Melloが発見した、2本鎖RNAによる遺伝子発現制御現象のRNA…
1月 13, 2023

分析目的と質量分析計の種類について-3:質量分析部(イオントラップ)編

1362
質量分析屋の髙橋です。前々回・前回に引き続き、分析目的と質量分析計の種類について書いてみます。今回は、質量分析部についてです。質量分析部は、イオン化部で生成したイオンを、そのm/zに応じて分離する場です。真空中でイオンに何らかの力を加えて運動させる訳ですが、イオンのm/zの大きさに依って、その運動の仕方(スピードや運動の軌道など)が変わるため、イオンをm/zに応じて分離する事が出来ます。現在市販されている質量分析計には、様々な質量分析部が使われています。二重収束(磁場&電場)、四重極、三連四重極、飛行時間、イオント…
10月 24, 2022

承認された「核酸医薬」の中で一番多いアンチセンスについて

1896
ここで核酸医薬のメリットを少し話すことにします。疾病の原因となるタンパク質に作用し、その機能を阻害する低分子医薬品や抗体医薬と異なり、核酸医薬は疾病の原因となる遺伝子発現を制御しており、従来の医薬品と異なり遺伝子選択性が高く、標的に直接作用します。そのため今まで開発が困難とされた難病の治療にも期待されており、更に薬物の副作用も軽減されると考えられます。現在承認されている核酸医薬は、国立医薬品食品衛生研究所遺伝子医薬部のホームページで確認すると2022年8月時点では以下のようになっています。…
9月 07, 2022

分析目的と質量分析計の種類について-2:イオン化編

1451
質量分析屋の髙橋です。前回に引き続き、分析目的と質量分析計の種類について書いてみます。今回は、予告通りイオン化にフォーカスします。つまり、どんな分析の時にどのイオン化を使うのが良いか、という内容です。本論に入る前の前提として、イオン化は試料導入法と密接に関係している事を知っておく必要があります。例えば電子イオン化(electron ionization,…
7月 28, 2022

コロナウイルスのmRNAワクチンで注目を集めた「核酸医薬」

1348
この3年間のコロナ禍でワクチン接種の話が良く出ています。特に直近ではコロナウイルスオミクロン株亜系統BA5で、今まで以上に高い第7波の感染拡大に見舞われ、4回目のワクチン接種が勧められています。しかし、ウイルスは変異することにより薬に対する耐性も獲得するので、今のワクチンがBA5の感染予防にどれほど効果があるか疑問視されていますが、少なくても重症化を防ぐ効果は高いと考えられています。…
6月 08, 2022

分析目的と質量分析計の種類について-1

1371
質量分析屋の髙橋です。今回から数回に亘って、何かの試料を質量分析する時、その目的に応じてどのような質量分析計を使えば良いのか? という内容について解説します。なかなか広い話になるので、何回かに分けて、書き進めていこうと思います。この内容を解説するために、先ずは質量分析計の構成(図1)を確認しておきましょう。
5月 20, 2022

コロナウイルスなどの感染症と、癌や生活習慣病などの薬の違いと医薬品開発

920
人間の病気の殆どは感染症と癌・成人病(生活習慣病)や先天性心疾患などの個別化医療の疾患領域であり、薬の開発の考え方や手段など創薬が異なります。この中で癌の領域の創薬は、2000年以前は癌細胞殺すか細胞増殖を抑える薬の開発が殆どで、感染症と同じような考え方でしたが、2000年以降はバイオマーカーを用いた個別化医療の疾患領域の創薬の考え方に変わっています。…
4月 03, 2022

LCMSで観測されるバックグランドイオン-3

1667
LC/MSで頻繁に観測されるバックグランドイオンの代表例は、少し前の記事に書いた可塑剤由来のイオンですが、他にも色々と知られています。その1つは、シロキサン由来のイオンです。そのマススペクトルを図1に示します。これは、可塑剤由来のイオンと同様、正イオン検出で観測されます。
3月 08, 2022

LCMSで観測されるバックグランドイオン-2

1891
質量分析屋の髙橋です。前回に引き続き、LC/MSで観測されるバックグランドイオンについて紹介します。前回は正イオンの例でしたが、今回は負イオンの例です。負イオン検出のESIやAPCIで、m/z 255や283のイオンを見た事はないでしょうか?前者はパルミチン酸(C16H32O2、モノアイソトピック質量256.240234 Da)、後者はステアリン酸(C18H36O2、モノアイソトピック質量284.271515…
2月 14, 2022

私たち(Spectro Decypher)が考えている臨床バイオマーカー探索の手法

1787
前回、私たちのグループ(Spectro Decyphe & CaBNET)の臨床バイオマーカー探索の手法をもう少し詳しくお話ししたいと書きましたが、このグループは臨床医も参加しており、一昨年からのコロナ禍のためグループの具体化が進展していない状態です。早くコロナウイルス感染が収まることを期待しているところです。 そのため今回はグループの具体的な臨床バイオマーカー探索の手法では無く、私たち(Spectro Decypher)が考えている臨床バイオマーカー探索の手法をお話します。…
1月 30, 2022

バックグランドイオン-1

1703
質量分析屋の髙橋です。今回から数回にわたって、LC/MSで頻繁に観測されるバックグランドイオンについて解説します。 最初は、LC/MSに携わる多くの人が知っていると思いますが、フタル酸エステル由来のイオンです。フタル酸エステルは、プラスチックに可塑剤として含まれており、それが移動相溶媒等で微量に溶解されて、正イオン検出でバックグランドイオンとして観測されます。負イオンとして検出される事はありません。代表例は以下です。