ノーベル賞の成果を利用した核酸医薬siRNA

ノーベル賞の成果を利用した核酸医薬siRNA

サイエンス出版部 発行書籍

皆様、新年あけましておめでとうございます。今年もよろしくお願いいたします。コロナ禍が一向に終息の兆しが見えませんが、今年はWithコロナの生活が昨年以上に定着していくのではないでしょうか? それでは、今回は予定どおりsiRNAを紹介しましょう。siRNAは2006年のノーベル賞生理学・医学賞を受賞したスタンフォード大学のProf. Andrew Z. Fireとマサチューセッツ大学のProf. Craig C. Melloが発見した、2本鎖RNAによる遺伝子発現制御現象のRNA interference(RNA干渉)の現象を利用した核酸医薬です。 その方法は、ゲノムはDNAの塩基配列として書き込まれており、これがRNAに転写され(mRNA)、タンパク質に翻訳されます。この遺伝子発現機構を阻害し、機能を制御する手段の一つとして、注目を集めているのがRNA干渉です。RNA干渉とは二本鎖RNAによって塩基配列特異的にmRNAが制御され、タンパク質への翻訳が阻害されて、最終的に遺伝子発現が制御される現象です。  Prof. FireとProf. Melloらは標的mRNAと同じ配列を有する二本鎖RNAを線虫の細胞内に導入したところ、一本鎖RNAの場合と比較して効果的に遺伝子発現を阻害することを明らかにしました[Nature 1998, 391 (6669) : 806-811]。このRNA干渉は哺乳類を含めた殆どの生物に共通で見られる現象であることが明らかになり、RNA干渉は遺伝子発現を制御することから、疾患に関わる遺伝子の機能を制御する治療薬(siRNA)として、またsiRNAは一本鎖RNAのアンチセンスと比較して活性が極めて高いことから期待が高まったのです。 それでは、siRNAがどのように遺伝子発現を制御するのかに関して少し説明します。siRNAは細胞内に入るとAr

著者: 中山 登
中山 登
このセクションは、(株)Spectro Decypher 取締役&CTO(元・中外製薬株式会社研究本部化学部分析グループ長)中山 登 氏による創薬研究コラムです。
長年、創薬研究に携わってこられた中山氏が、創薬研究の潮流についての雑感や、創薬研究者が直面している課題の解決法などを体験談を踏まえて語っていただきます。
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【中山 登 氏 ご略歴】
昭和48年3月 立命館大学理工学部卒業
昭和48年5月~
昭和56年4月 電気通信大学材料科学科、コロンビア大学化学部研究員
昭和56年6月 日本ロシュ株式会社研究所 入社
平成8年4月 日本ロシュ株式会社研究所天然物化学部、機器分析グループ長
平成16年10月 中外製薬株式会社研究本部化学部分析グループ長
平成21年4月 中外製薬株式会社 定年 シニア職
平成26年4月 中外製薬株式会社 退職
平成26年5月~現在 株式会社バイオシス・テクノロジーズ 取締役&チィーフ・テクニカル・オフサー(CTO)
平成27年4月~平成31年3月 聖マリアンナ医科大学分子病態情報研究講座講師
平成31年1月~現在 株式会社Spectro Decypher 取締役&チィーフ・テクニカル・オフサー(CTO)