DDSキャリアを用いた医薬品開発の問題点

DDSキャリアを用いた医薬品開発の問題点

サイエンス出版部 発行書籍

 皆様、前回の最後に、次回からは医薬品をDDS化して、疾患部位に送達されるため必要な疾患の標的分子の探索、疾患部位への送達のメカニズムと患者の層別に関して説明すると書きました。しかし、その後DDSキャリアに関して実際に研究をしている方と話す機会があり、DDSキャリアを用いた医薬品開発にもまだまだ問題があることがわかりました。更に、同時期にプロテインのアミノ酸配列からAT技術を用いた高次構造解析の技術を開発した、デイヴィッド・ベイカー教授(ワシントン大学)、デミス・ハサビスCEO(DeepMind社)、ジョン・ジャンパー氏(DeepMind社)が、2024年ノーベル化学賞に選ばれたこともあり、もう少し創薬のついて話した方が良いと思いました。そのため、考え方をまとめるのに時間が掛かってしまい、投稿が遅れて申し訳ございませんでした。  それでは、DDSキャリアを用いた医薬品開発の問題点から話すことにします。以前に説明しましたが、DDSキャリアにはウイルスベクターと非ウイルスベクターが存在し、ウイルスベクターはウイルスの感染力を利用して細胞に薬物を送達する方法でした。コロナウイルスなどの感染症のワクチンに多く使用されていますが、特にコロナウイルスの様にmRNAを用いたワクチンは副作用が強いことが問題になっています。しかし、副作用の多くはワクチン製造の際に出る、空のウイルスベクターやmRNAが目的の場所に送入されないなどの副生成物に起因するのではないかと言われており、ワクチンなどの遺伝子DDS創薬の純度が重要になって来ています。最近、大阪大学蛋白質研究所の内山進教授たちは、アデノ随伴ウイルスベクター(AAV)とレンチウイルスベクター(LVV)を利用し、遺伝子創薬をDDS化する方法と純度を上げる方法を開発し、ウイルスベクターの副作用を軽減出来ているようです。そこで内山教授たちはウ

著者: 中山 登
中山 登
このセクションは、(株)Spectro Decypher 取締役&CTO(元・中外製薬株式会社研究本部化学部分析グループ長)中山 登 氏による創薬研究コラムです。
長年、創薬研究に携わってこられた中山氏が、創薬研究の潮流についての雑感や、創薬研究者が直面している課題の解決法などを体験談を踏まえて語っていただきます。
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【中山 登 氏 ご略歴】
昭和48年3月 立命館大学理工学部卒業
昭和48年5月~
昭和56年4月 電気通信大学材料科学科、コロンビア大学化学部研究員
昭和56年6月 日本ロシュ株式会社研究所 入社
平成8年4月 日本ロシュ株式会社研究所天然物化学部、機器分析グループ長
平成16年10月 中外製薬株式会社研究本部化学部分析グループ長
平成21年4月 中外製薬株式会社 定年 シニア職
平成26年4月 中外製薬株式会社 退職
平成26年5月~現在 株式会社バイオシス・テクノロジーズ 取締役&チィーフ・テクニカル・オフサー(CTO)
平成27年4月~平成31年3月 聖マリアンナ医科大学分子病態情報研究講座講師
平成31年1月~現在 株式会社Spectro Decypher 取締役&チィーフ・テクニカル・オフサー(CTO)