天然のDDSと言われるエクソソーム

天然のDDSと言われるエクソソーム

サイエンス出版部 発行書籍

DDSの具体的な研究例の最後にエクソソームを取り上げます。最近の研究で細胞が分泌するナノサイズの小胞であるエクソソームが、タンパク質や核酸を内封して、細胞間にコミニケションツールとして働いていることが明らかになりました。更に、エクソソームには臓器などの体内組織の特定の細胞に、分子を送達する機能も有している可能性が示されていて、このことはエクソソームが生体に備わっている天然のDDSであり、高分子ミセルやリボソームよりも有効なDDSにつながる可能性があると考えられます。  エクソソームをDDSのキャリアとして利用するには、エクソソームがどのような特性をもっているのかを理解する必要があります。エクソソームは細胞が分泌する100nmほどの脂質二重膜を有する、細胞外小胞の一種です。エクソソームの分泌機構については完全に解明されているわけではありませんが、一般的にエンドソーム由来と考えられています。後期エンドソームは内側にくびれて腔内膜小胞(intraluminal membrane vesicle;ILV)を形成します。このILVを多数含む多胞性エンドソーム(multivesicular body;MVB)が細胞膜と融合して、細胞外へと放出される小胞がエクソソームと考えられています。そのエクソソームの内容物には、細胞に由来するmicroRNA(miRNA)やmRNAなどの核酸やさまざまなタンパク質が内包されています。そして、脂質二重膜にも膜タンパク質が存在しています。 あらゆる細胞がこのような小胞(エクソソーム)を分泌しており、細胞間にコミニケションツールとして働いているのです。(Y.Yosioka & T.Ochiya, Drug Delivery System, 35-1, 35,2020)近年、エクソソームに含まれているmiRNAは、人の全遺伝子の60

著者: 中山 登
中山 登
このセクションは、(株)Spectro Decypher 取締役&CTO(元・中外製薬株式会社研究本部化学部分析グループ長)中山 登 氏による創薬研究コラムです。
長年、創薬研究に携わってこられた中山氏が、創薬研究の潮流についての雑感や、創薬研究者が直面している課題の解決法などを体験談を踏まえて語っていただきます。
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【中山 登 氏 ご略歴】
昭和48年3月 立命館大学理工学部卒業
昭和48年5月~
昭和56年4月 電気通信大学材料科学科、コロンビア大学化学部研究員
昭和56年6月 日本ロシュ株式会社研究所 入社
平成8年4月 日本ロシュ株式会社研究所天然物化学部、機器分析グループ長
平成16年10月 中外製薬株式会社研究本部化学部分析グループ長
平成21年4月 中外製薬株式会社 定年 シニア職
平成26年4月 中外製薬株式会社 退職
平成26年5月~現在 株式会社バイオシス・テクノロジーズ 取締役&チィーフ・テクニカル・オフサー(CTO)
平成27年4月~平成31年3月 聖マリアンナ医科大学分子病態情報研究講座講師
平成31年1月~現在 株式会社Spectro Decypher 取締役&チィーフ・テクニカル・オフサー(CTO)