生体内化学反応に応答する機能性リボソーム

生体内化学反応に応答する機能性リボソーム

サイエンス出版部 発行書籍

 DDSは標的部位に到達するまで薬物を保持して、標的部位で薬物を放出する必要があります。そこで、前回も話したようにDDSは、温度などの物理的刺激やpH変化などの環境の刺激に応答して薬物を制御する必要があり、更に薬物の作用部位が細胞内の場合は、薬物を細胞内に到達させる必要があります。そこで、DDSナノキャリアとして注目されたのが、A.D.Banghamによって発見されたリボソームです。  リボソームは、リン脂質からなる数10~数100nmの粒径を持つ微小なカプセルで、その内部に様々な分子を封入でき、生体適合性や生分解性にも優れています。そのため、発見されてから、薬物や生理活性物質の理想的な運搬体と考えられてきました。更に、薬の効果を最大限引き出すために、臓器・組織レベルあるいは細胞の内部まで薬物送達させ、正確なコントロールを実現する新しいリポソームテクノロジーが必要とされています。薬物送達システムとしてのリポソームの有用性をより高めるために、高度な機能をもつリポソームとして、温度感受性リポソームおよび、膜融合能をもったリポソームなどの開発と応用についての研究が進められています。  そこで、今回はリボソームを用いたDDS研究の第一人者である河野健司教授の研究例を紹介します(Kenji Kono, Drug Delivery System 31-4, 2016, 331)。 河野教授らは下記の図に示すように、リポソームの機能はポリマーとリポソーム膜との相互作用によって発現するため、リポソームにさまざまな機能の分子鎖構造を持つポリマーを複合させることにより、多様な機能性と鋭敏な応答性を持った高機能・高性能リポソームの作成が可能になると考えました。 その中で、今回はPH応答性ポリマーの複合化による機能性リポソームについて説明します。 まず、機能性ポリマーにポリグリシド

著者: 中山 登
中山 登
このセクションは、(株)Spectro Decypher 取締役&CTO(元・中外製薬株式会社研究本部化学部分析グループ長)中山 登 氏による創薬研究コラムです。
長年、創薬研究に携わってこられた中山氏が、創薬研究の潮流についての雑感や、創薬研究者が直面している課題の解決法などを体験談を踏まえて語っていただきます。
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【中山 登 氏 ご略歴】
昭和48年3月 立命館大学理工学部卒業
昭和48年5月~
昭和56年4月 電気通信大学材料科学科、コロンビア大学化学部研究員
昭和56年6月 日本ロシュ株式会社研究所 入社
平成8年4月 日本ロシュ株式会社研究所天然物化学部、機器分析グループ長
平成16年10月 中外製薬株式会社研究本部化学部分析グループ長
平成21年4月 中外製薬株式会社 定年 シニア職
平成26年4月 中外製薬株式会社 退職
平成26年5月~現在 株式会社バイオシス・テクノロジーズ 取締役&チィーフ・テクニカル・オフサー(CTO)
平成27年4月~平成31年3月 聖マリアンナ医科大学分子病態情報研究講座講師
平成31年1月~現在 株式会社Spectro Decypher 取締役&チィーフ・テクニカル・オフサー(CTO)