エクソソーム はガン細胞を含む多種多様な細胞から作成される極小の亜細胞系膜結合型小胞である。元の細胞を模する膜や細胞タンパク質、DNA、そしてRNA(mRNAやmiRNA含む)を保有する。今、細胞間における情報のやり取りにエクソソームが活用出来るのではないか、と示唆されているのだ。免疫システムを抑制して血管生成を活性化する分子をガン細胞から伝達することによって、エクソソームはガンを進行させることが分かっている。 高性質のRNAやDNAの詳細までもがエクソソームから分離可能な事から、エクソソームの生体分子がガンやその他の疾患におけるバイオマーカーとして活用出来るのではないか、と推測されている。 エクソソームは通常下でも疾患状態においても、細胞により生体液中に放出される。疾患状態下にあるは、濃縮されエクソソームた完全な状態の疾患特有の核酸とタンパク質を保有する。ガンの場合においては通常の健康な細胞よりも更に速いレートで放出されることが観察されている。 超遠心分離や濾過によってエクソソームを体液から分離することは可能である。これらは観血的なバイオプシーを行なうよりも遥かに魅力的な方法であるではないか。前述したとおり、エクソソームは元の細胞を模しており、エクソソーム"カーゴ"は過剰または過少に再現される分子を保有する。このことから、エクソソームをロードするには選択的なパッケージングが行われていると考えられる。 しかしながらこのメカニズムは未だ解明されていない。RNAの"ZIPコード"に埋め込まれているのではないかという説が有力だが、この仮説はまだ研究中である。 Exosome Diagnostics社やExosome Sciences社など複数の企業がガンやその他の疾患用の診断ツールやモニタリングツールの開発に力を入れている。これらはエクソソーム中のバイオマーカーを活
ブレイクフィールド博士によると、細胞外RNA(EC RNA)にはリボ核タンパク質などを含む様々な細胞外小胞がある。細胞外にあるRNAの殆どは非翻訳の小さな(200塩基以下)のもので、「単独であることはない」とブレイクフィールド博士は言う。タンパク質と一緒である場合や、細胞外安定性を高める小胞内で発見されることが多い。 細胞外にある非翻訳RNAはマイクロRNA(miRNA)、低分子干渉(siRNA)、小核小体(snoRNA)、長非翻訳 (nc) RNA、piwi結合RNA(piRNA)、リボスイッチ、そしてレトロトランスポゾンを含む。EC RNA中にも少量の機能性mRNAは存在するが、「フラグメントは山ほどある」と彼女は言う。博士は、EVが細胞内コミュニケーションに深く関係していると考えるが、これを立証することは現時点では難しいという。博士の研究所ではグリオブラストーマの研究を主とし、最近のマウス実験ではグリオブラストーマ細胞から作成されたエキソソームで多量のmiRNAとmiR−21を含むものはマイクログリア細胞に取り込まれ、細胞活性化とターゲットであるc–Myc RNAのレベルまでの抑制をすることが観察された。ブレイクフィールド博士はEC RNAを単離し精製する方法を一律化する重要性を強調し、サイズや濃度をマーカーとして使用することは好ましくないと述べた。
次に、ガビン・ライト博士(Wellcome Trust Sanger Institute社)によるCARIS発見の講義が行われた。ライト博士が発表したのは、1つ以上の精子によって卵子膜のブロックを多精受精可能にするプロセスを促す2種のタンパク質の発見についてであった。精子のタンパク質はイズモ1(縁結びの神様、出雲大社より命名)、卵子のタンパク質は最初葉酸レセプター4(Folr4)と名付けられたが、実際には葉酸と結合することが無いため、その後Junoに名前を代えられた。Sanger Institute社チームによる研究が行われる以前に同定されていた卵子受精レセプター・リガンドの対などなかったのだから驚きだ。 ライト博士はまた、卵子のJunoタンパク質は、受精後エキソソーム中に解放されることを説明した。そのためエキソソームが"囮卵子"のような働きをするのではないかと示唆している。エキソソームをベースとしたこのようなシステムは、不妊治療法に役立つのではないかと博士は説明した。
膵臓ガン細胞から作成されたエキソソームは唾液腺まで運ばれる、と立証したのはULCA歯学科教授、歯学博士、医学博士、そしてULCA頭首ガン研究センター代表のデイビット・ウォング博士である。唾液腺でエキソソームは吸収され、小腸に届き、パイエル板を含む免疫システムと共に働くと考えられている。免疫反応を抑制し、膵臓腫瘍の生長を促進するのである。また、唾液腺から作成されたエキソソームは様々な疾患のバイオマーカーとして使用出来るのではないかとウォング博士は述べた。
ジョン・ホプキンズ大学医学部准教授のフロリン・セラルー博士によって発表されるはずであった本プレゼンテーションは、諸事情によりASEMV代表のゴールド博士によって発表された。トピックは小胞を介した胆管癌(CCA)の抑制である。CCAは肝臓ガンの種類では2番目に多く、生存率も数ヶ月と芳しくない。 ホプキンズグループは以前の研究で癌関連繊維芽細胞(CAFs)中で抑制されるmiRNAを発見している。インビトロ実験ではこれらCAFsのmiRNAの活性化が腫瘍の成長を抑えることを示し、CAFsが重要な役割を持つことを改めて立証した。研究グループは次にCAFsとガンの間でのシグナリングがどのようにして行われるのかを調査した。実験ではガン細胞とCAFsの間ではEVの交換が著しく見られた。最後に、グループはインビボ動物実験を行い、miRNAを多量に含むEVを肝臓腫瘍に入れることで腫瘍の成長を抑え、生存率を上げられることは見せた。グループの研究はCAFsとガン細胞間におけるEV交換が治療の分野で活用出来ることを改めて実証した、とゴールド博士は述べた。 このような実験結果を無駄にしないためにも、今後ヒトのCCAに必要とされるmiRNAの構造を見つけるための研究が必要である。
PhD)が発表した研究は エクソソーム を心筋梗塞(MI)後の治療に使用するというものであった。Cardiosohere由来細胞(CDC)のエクソソームがMI後の瘢痕化を抑え、また心臓組織の再建に役立つというのだ。MI後に起る瘢痕化は消えることがなく、一度失われた組織は二度と戻らないのが心臓学の常識である、と彼は述べた。 しかしCDCエクソソームを活用 すれば、この常識を覆せるかもしれない。米国では年間1.1億人にも及ぶMI患者を助けることが可能になるかもしれないのである。マルバン博士はCDC由来エクソソームを直ちに臨床実験の場に用いることへの意欲を示した。これらのエクソソームは硬皮症や筋萎縮性側索硬化症(ALS)などにも応用出来るはずである、と博士は言う。 マルバン博士は、人間では初となるCADUCEUS実験を行ったことでもよく知られている。心臓発作によって受けた「修繕不可能」なはずの組織ダメージを、細胞セラピーを用いて修復することが可能であることを見せたのだ。ALLSTAR実験が開始されたのも、マルバン博士による同種異系間心幹細胞の発見のおかげである。カリフォルニアをベースとするバイオテクノロジー会社Capricorn Therapeuticsをスポンサーにもつ本研究は既に2段階目に突入している。 マルバン博士はNIHおよびカリフォルニア州サンフランシスコにあるCalifornia Institute for Regenerative Medicineを自身の研究のメインサポーターであると話した。
スタンフォード大学医学部博士研究員、金田正光博士(PhD)は、エキソソームとMVは構造も機能も異なるものであることを発表した。この結果が確証され、認められれば、現時点ではまだ謎の多い本問題に光を指すこととなるであろう。金田博士はまず、エキソソームのサイズは40nmから300nmであることに対し、MVのサイズは90nmから600nmであることを指摘した。 また、両小胞は積量や表面電位においても異なることが説明された。MVの殆どがホスファチジルセリン(PS)を外面化するのに対し、エキソソームでは僅か10%ほどしかされない。両ベシクルとも受容細胞によって取り込まれるが、細胞内でルシフェラーゼ発現を誘発するのはMVだけである。MVはプラスミドDNAを受容細胞に送ることによってこれを可能にしているのではないか、と金田博士は考えている。エキソソームは機能上、mRNAを被包するが核酸は運ばないのに対し、MVはmRNAとcAMP応答配列発現pDNAの両方を被包しDNAだけを運ぶ。金田博士の研究からは、MVはインビボとインビトロの両方でcAMP応答配列発現pDNAを機能的に運搬することを示すデータも見られた。 これらの結果は細胞間連絡におけるEVの役割を理解し、運搬ツールを開発する上で最も重要であると博士は述べた。また、一過性遺伝子導入細胞におけるEVの研究は、卓越したpDNAの移動によって混同される可能性もあるため注意が必要だ。
ネブラスカ・リンコーン大学分子栄養学教授、イェナス・ゼンプレーニ博士(PhD)は、牛のmiRNAがヒトおよびマウスの遺伝子発現に影響を及ぼす事について討論した。健康な大人が栄養的に適切な牛乳を飲み、食後の濃度を時間に対したグラフにして比較したのである。 結果、有意義な量のmiR-29b及びmiR-200cが吸収されたのに対し、血漿miR-1濃度(ネガティブ・コントロール)は変わらなかった。miR-29bのターゲットとして知られるRUNX2の発現は、牛乳摂食後、血液単核細胞内で31%上昇した。ヒトのHEK-293腎臓細胞において、食後のmiR-29bおよびmiR-200c濃度を模擬した細胞カルチャに牛乳エキソソームを追加したところ、レポーター遺伝子はコントロールのそれと比べて共に44%と17%減少した。ゼンプレーニ博士は、自身の研究グループの見解では175に及ぶ牛乳のmiRNAは約10,000ものヒト遺伝子をターゲットとしている、と述べた。C57BL/6JマウスにmiRNAを枯渇した食事を4週間施したところ、充分なmiRNAを含む食事のものと比べて血漿miR-29b濃度が61%減少した。つまり、内因性合成で食事中不十分なものは補えないということである。 ヒトがブロッコリースプラウトを摂食すると、植物特有のmiR-167aもアブラナ属特有のmiR-824も血漿レベルでは上昇しないことが研究では判明している。牛乳由来のエキソソームはバイオアベイラビリティが高く、ヒトの遺伝子発現に影響をおよぼすことが出来る、と自身の研究結果を元にゼンプレーニ博士は述べた。
ワシントン州立大学科学部大学院生ブランドン・クック氏は、 エクソソーム の取り込みのためにはシンプルかつ直接的でグローバルな方法が必要であることを強調した。これは確かに、全ミーティングを通して言われてきたことである。 クック氏の研究グループは、選択的な類似性またはアニオン性リン脂質ナノベシクルを有するペプチドを固型支持体上に固定してエクソソームを取り込むことが出来るという仮説に基づき、本研究の方法(特許)に至ったのだと言う。これはタンパク質標識から独立したものである。ペプチドの小型ライブラリーはBiotage Initiatorとマイクロ波反応装置、そして質量分析を駆使して設計された。ビオチンはペプチドと接合され、エクソソームを擬態するためにリポソームのモデルシステムが使用された。リポソーム(30nm、100nm、そして400nm;0-20%ホスファチジルセリン)はエクソソームのサイズと表面電位を模擬するようにデザインされた。分析の結果、リポソームは形態的に球形で、エクソソームと擬態していることが明らかになった。たぶんさ多分散指数は0.07-0.02と小さく、バッチ間の変動は軽微であった。ゼータ電位測定によると、どのバッチの表面電位のアニオン作用も特定のリポソームモデルに望ましいものであった。 またFRET測定においては、ペプチドは表面局在にとどまらず脂質二重層にも挿入する。カチオン性および芳香族アミノ酸残基が脂質ナノ小胞の認識および結合において重要な役割を果たすこともBLI(生物発光イメージング)によって解った。解離定数はナノモル範囲であった。 ペプチドは、才蔵と表面電位共にエクソソーム模擬するリポソームモデルにおける選択を披露 した。また、大きいリポソームや中立表面電位を有するものには軽微な接合しか見せなかった。クック氏はこれらの発見を、ガン由来のエクソソー
日曜日の本ミーティング最後のプレゼンター、レオノーラ・バラヤ博士(PhD)は、サンドラ・ブレイクフィールド研究所神経科学科神経プログラム部准研究員、そしてマサチューセッツ総合病院およびハーバート医科大学でPhDを遂行している。博士もまた、液体バイオプシーの偉大なる可能性について触れた。様々な疾患における状態を、最低限に侵襲的な方法で特性分析可能になるからだ。 正常細胞由来のEVプールにおいて、疾患特定のEVの占める割合は少ないため、個々の腫瘍マーカーを識別するのは大変困難である。また、生体液別のEVおよびそのカーゴ間でも大きな違いがあるため、異なる生体液はおろか環境で行われた研究を比べることは難しいのであると博士は説明した。 バラヤ博士とチームが行った研究は、健康なドナーから集めた血漿および血清のmRNAおよびmiRNA濃度を比較し、それらのEV RNA値を調べるものであった。悪性腫瘍の場合、様々な経路が不具合を起こす。そのため、血清または血漿由来のEVの存在は原発巣がどのように進行しているのかを調べるあてになるのだ。バラヤ博士のグループはまたこのために、GBM(グリオブラストーマ)患者と健康な患者の血清由来のEVを集め比較した。血清と血漿の比較解析にはmiScript miRNA PCR Arrays (Qiagen)、そしてGBM患者と健康患者における血漿mRNAプロフィールの比較解析には RT2 Profiler™ PCR array Human Cancer Pathway Finder™が使用された。データ解析に使用されたのはPCR Array Data Analysis Software (Qiagen)である。 Human Cancer Pathway Finder™ array (Qiagen)に含まれる経路には、発癌現象においてよく見られる9つの
三橋マサト博士はカリフォルニア州アールバイン、NanoSomiXのチーフ研究員で、元日立化学研究所の主幹研究員(カリフォルニア州ロサンゼルス)である。彼は、炎症性胃腸炎のクローン病と潰瘍性大腸炎が如何に非侵襲的なバイオマーカーを必要としているかを力説した。三橋博士のグループは、炎症発症中である患者の腸管腔内EVを、健康体コントロールのそれと比較し、遺伝子発現上の違いの有無を調べた。 サンプルとして、11人の健康体患者、13人のCD患者、そして21人のUC患者から腸管腔液(ILF)が採取された。分離されたEVの平均サイズは、濃度5×1011粒子/mLで150nm(範囲:50ー400nm)であった。上皮防御遺伝子(EPCAM, MUC2, TFF1, DEFA3)および白血球活性化マーカー(CD45, TGFB1, S100A9)の発現は健康体とIBD患者では大いに異なっていた。多変量分析(Minitab)の使用により、mRNAは健康体のサンプルをUC患者 (予測精度83%) とCD患者(予測精度75%)から区別することば可能であった。便サンプル内からこれらのEV mRNAが非侵襲的に検知可能か否かを調べるため、グループはさらに便サンプル中のEV mRNAを数量化した。結果、EV mRNAがILF内および便中浮遊物内の両方に存在することが判明した。裸のRNAが検知されなかったのは、内因性リボヌクレアーゼによって消化されたためだと考えられる。 結果として、IBD患者の管腔液からEVを分離するのは可能であり、健康体のそれとは異なる遺伝子発現を有する、と三橋博士はまとめた。これらのEV中のmRNA量は炎症の度合いと関係する。EVをIBD用炎症バイオマーカーとして活用するためには、さらなる研究が必要である。
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