遺伝子解析
【2026年決定版】遺伝子解析シーケンサー徹底比較|NovaSeq X・AVITI・PacBio・Nanoporeの「買い」はどれだ?
かつて「NGSといえばIllumina一択」だった時代は終わりました。2026年現在、遺伝子解析市場は「多様化」と「特化」の時代に突入しています。研究者にとって最大の課題は、爆発的に増えた選択肢の中から、自身のプロジェクトに最適な「解」を見つけ出すことです。
選択肢の増加は歓迎すべきことですが、同時に選定ミスによる「オーバースペックな投資」や「解析精度のミスマッチ」というリスクも増大させました。例えば、超ハイスループット機を導入してもサンプルが集まらず稼働率が上がらない「バッチ効果の罠」や、ショートリードでは見えない構造変異を見落とすリスクなどです。本ガイドでは、カタログ値だけでは見えない「現場での使い勝手」や「トータルコスト」に焦点を当て、あなたの研究を加速させる最適なプラットフォーム選びをサポートします。
製品選定の決定的な5要素:スペック表の「裏」を読む
機種選定で失敗しないためには、単なる「最大出力」や「カタログ価格」以外の指標を持つことが重要です。2026年のトレンドを反映した5つの重要基準を解説します。特に注目すべきは「実効スループット」と「精度の質」の変化です。
- 実効スループットと柔軟性: 最大出力よりも「必要な時にすぐ流せるか」が重要です。NovaSeq Xのような大型機は大量の検体が必要ですが、Element AVITIやMGI DNBSEQ-T7はフローセルの独立駆動により、小規模プロジェクトでも待ち時間なく解析を開始できる柔軟性があります。
- 精度の質(Q30からQ40へ): 業界標準はQ30(正解率99.9%)からQ40(99.99%)へシフトしました。PacBio OnsoやElement AVITIが実現するQ40以上の精度は、がんの微小変異(MRD)検出や、解析後のデータフィルタリングによるロスを減らすために不可欠な要素となりつつあります。
- マルチオミクス対応: シーケンサーは単に配列を読むだけの装置ではなくなりました。AVITI24のように、細胞形態やタンパク質発現を同時に解析できる「5Dオミクス」機能は、創薬研究や細胞生物学において新たなスタンダードになりつつあります。
- ランニングコストの真実: 試薬代だけでなく、ライブラリ調製費、失敗率、データ保管コスト(サーバー代)を含めたTCO(総保有コスト)で比較する必要があります。特に円安傾向が続く日本市場では、試薬価格の変動リスクも考慮すべきです。
- サポートとエコシステム: 故障時のエンジニア派遣の速さや、サードパーティ試薬(ライブラリキット)の互換性は、ラボの稼働率に直結します。日本国内に強固なサポート拠点を持つメーカーを選ぶことが、長期的な安心につながります。
【2026年最新】主要シーケンサー製品比較表
複雑な仕様を削ぎ落とし、各機種の「立ち位置」と「強み」を一目で比較できるように整理しました。ショートリード機とロングリード機を用途に合わせて検討してください。
ショートリード(高精度・低コスト・汎用)
| メーカー / 製品 | 分類 | 決定的な強み | 精度 | 実行時間 |
|---|---|---|---|---|
| Illumina NovaSeq X Plus |
ウルトラ ハイエンド |
圧倒的実績と規模 年間2万ゲノム以上の解析能力と標準化された解析フロー。大規模プロジェクトのデファクトスタンダード。 |
>Q30 | 24-48時間 |
| Element Biosciences AVITI / AVITI24 |
ハイエンド 卓上 |
Q40超の高精度とマルチオミクス 細胞観察とシーケンスを1台で完結。極めて低いランニングコスト($1-2/Gb)を実現。 |
>Q40 | ~24時間 |
| MGI DNBSEQ-T7 |
ウルトラ ハイエンド |
コストパフォーマンス 4フローセル独立駆動で柔軟かつ安価に解析。受託解析センターでの採用実績多数。 |
>Q30 | ~24時間 |
| Illumina MiSeq i100 |
コンパクト 卓上 |
スピードと手軽さ 常温試薬対応で、準備から解析完了まで最速4時間。クリニックや緊急検査に最適。 |
>Q30 | ~4時間 |
| PacBio Onso |
高精度 卓上 |
極限の精度 (SBB技術) Q40-Q50の超低エラーで微量変異を見逃さない。リキッドバイオプシー特化。 |
>Q40-Q50 | 32-48時間 |
ロングリード(構造変異・完全長解析)
| メーカー / 製品 | 技術方式 | 決定的な強み | 精度 |
|---|---|---|---|
| PacBio Revio |
HiFi (光学) |
高精度ロングリード ショートリード並みの精度(HiFi)で構造変異やメチル化を正確に検出。完全長ゲノム解析に必須。 |
>Q30 (HiFi) |
| Oxford Nanopore PromethION 2 |
ナノポア (電流) |
超長鎖・リアルタイム 数Mbのリード長と、RNA直接解析が可能。初期導入費が安く、スモールスタートが可能。 |
Q20-Q28 |
目的別おすすめ製品ランキング
「結局、うちのラボにはどれがいいの?」という疑問に対し、研究現場のリアルなニーズ(検索意図)に基づいて、2026年のベストチョイスをランキング形式で提案します。
👑 コストパフォーマンス重視(予算が限られるラボ向け)
- MGI DNBSEQ-T7 / G99: 試薬コストの安さは依然として最強クラスです。大量のサンプルを安く処理したい場合や、とにかくデータを大量に出したいプロジェクトでは第一候補となります。
- Element AVITI: 本体価格が競合の大型機より遥かに安く、ランニングコストも$2/Gb以下を実現しています。初期投資と運用のバランスが最も優れており、個別のラボ単位で導入しやすい機種です。
👑 解析精度・感度重視(リキッドバイオプシー・希少変異)
- PacBio Onso: 「絶対にミスが許されない」クリニカルシーケンスや、0.1%以下の希少変異探索において右に出るものはありません。ノイズを極限まで排除したい場合の唯一解です。
- PacBio Revio: ゲノムの「暗黒領域」を含めた完全なアセンブリを目指すなら、HiFiリードが必須です。構造変異を正確に捉える精度は、がんゲノム研究でも重宝されます。
👑 スピード・機動力重視(臨床・感染症)
- Illumina MiSeq i100: 「朝セットして昼に結果」が可能な唯一の選択肢です。常温試薬輸送に対応しており、試薬管理の手間も大幅に削減されています。クリニックや緊急検査に最適です。
- MGI DNBSEQ-G99: PE150を12時間で完了する中スループット機です。速度とデータ量のバランスが良く、中規模の検査室でのルーチンワークに向いています。
受託解析 vs 自社導入:損益分岐点はどこか?
「装置を買う」ことが常に正解ではありません。2026年の日本市場における受託解析サービスの相場と、自社導入の境界線を分析しました。運用コスト(人件費・保守費)を含めた冷静な計算が必要です。
損益分岐の目安
一般的に、年間300〜500検体(ヒト全ゲノム換算)が境界線と言われています。
- これ以下の場合: 減価償却や人件費を考慮すると受託解析の方が経済的かつ高品質です。特に、ライブラリ調製の失敗リスクを回避できる点は大きなメリットです。
- これを超える場合: あるいは即日データが必要な場合は、Element AVITIのようなミドルレンジ機の導入検討をお勧めします。ランニングコストを抑えつつ、自由度の高い研究が可能になります。
国内主要受託サービスの特徴
- 理研ジェネシス: 臨床検体やがんパネル検査(OncoGuide等)に強く、国内完結型で個人情報の取り扱いも安心です。クリニカルシーケンスの実績が豊富です。
- タカラバイオ: 独自のライブラリ調製技術を持ち、微量サンプルや特殊な検体(FFPE等)の解析で高い成功率を誇ります。難しい検体の相談先として最適です。
- BGI / MGI系: 圧倒的なコストメリットがあり、基礎研究での大量サンプルのスクリーニングに最適です。海外拠点を利用することで、大規模解析を安価に実現できます。
よくある質問 (FAQ)
導入検討者が最後に抱く疑問に対し、現場目線で回答します。
Q1. ロングリードがあればショートリードは不要ですか?
いいえ、完全な代替にはなりません。SNP(一塩基変異)の検出コストとスループットに関しては、依然としてショートリード(Illumina, AVITI等)が圧倒的に有利です。一方で、構造変異(SV)やリピート領域の解析にはロングリードが不可欠です。多くのプロジェクトでは、ショートリードで全体を浅く読み、重要領域をロングリードで深く読むなどのハイブリッドアプローチが推奨されます。
Q2. Element AVITIは既存のIlluminaライブラリを使えますか?
はい、可能です。Element Biosciencesは既存のIllumina用ライブラリをAVITI用に変換するキットを提供しており、またサードパーティ製キットもAVITI対応が進んでいます。これまでの資産やプロトコルを無駄にすることなく、スムーズに移行できます。
Q3. 日本でのサポート体制はどうなっていますか?
Illumina、PacBio、Oxford Nanoporeは日本法人を持ち、手厚いサポートを提供しています。MGIやElement Biosciencesなどの新興メーカーも、住商ファーマインターナショナルや理研ジェネシスといった国内有力代理店と提携し、日本語でのサポートや迅速なメンテナンス体制を構築しています。部品取り寄せのリードタイムなども改善されており、国内での運用リスクは低減しています。
免責事項: 正確な価格や最新仕様については、各メーカーまたは正規代理店にお問い合わせください。