承認された「核酸医薬」の中で一番多いアンチセンスについて

承認された「核酸医薬」の中で一番多いアンチセンスについて

サイエンス出版部 発行書籍

ここで核酸医薬のメリットを少し話すことにします。疾病の原因となるタンパク質に作用し、その機能を阻害する低分子医薬品や抗体医薬と異なり、核酸医薬は疾病の原因となる遺伝子発現を制御しており、従来の医薬品と異なり遺伝子選択性が高く、標的に直接作用します。そのため今まで開発が困難とされた難病の治療にも期待されており、更に薬物の副作用も軽減されると考えられます。現在承認されている核酸医薬は、国立医薬品食品衛生研究所遺伝子医薬部のホームページで確認すると2022年8月時点では以下のようになっています。 これを見ると承認された核酸医薬品で一番多いのはアンチセンスで、次にsiRNAになります。そこで、初めにアンチセンスについて詳細を説明することにします。 アンチセンスは日常的に体内で行われている、DNAからmRNAができ、更にタンパク質が出来る遺伝子情報が伝達される流れの中で、途中の遺伝子レベルの機能であるDNAやmRNAに結合することで、疾病に関与するタンパク質の合成プロセスを阻害します。疾病の原因となるmRNAやDNAの塩基配列がわかっているとその部分を標的として、それに相補助な配列を有する短い核酸(アンチセンスRNA)を合成し、体内に投与することで、細胞内の疾病に関与する標的mRNAやDNAの標的位置にアンチセンスRNAがバインドすることで二重鎖を形成し、疾病に関与するタンパク質の生成を制御する方法です。特定の病原ウィルスの遺伝子やガン等の様に異常な遺伝子の働きで疾病を引き起こす場合は、遺伝子レベルで病気の治療にはアンチセンスRNA有効であると考えられます。 しかし、アンチセンス核酸の配列の選択をどのようにするかが問題です。普通mRNAは数百から数千塩基長とアンチセンス核酸に比べて非常に長く、mRNAのどの領域を標的にするかについての検討が必要です。一般にmRNAは一本鎖で

著者: 中山 登
中山 登
このセクションは、(株)Spectro Decypher 取締役&CTO(元・中外製薬株式会社研究本部化学部分析グループ長)中山 登 氏による創薬研究コラムです。
長年、創薬研究に携わってこられた中山氏が、創薬研究の潮流についての雑感や、創薬研究者が直面している課題の解決法などを体験談を踏まえて語っていただきます。
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【中山 登 氏 ご略歴】
昭和48年3月 立命館大学理工学部卒業
昭和48年5月~
昭和56年4月 電気通信大学材料科学科、コロンビア大学化学部研究員
昭和56年6月 日本ロシュ株式会社研究所 入社
平成8年4月 日本ロシュ株式会社研究所天然物化学部、機器分析グループ長
平成16年10月 中外製薬株式会社研究本部化学部分析グループ長
平成21年4月 中外製薬株式会社 定年 シニア職
平成26年4月 中外製薬株式会社 退職
平成26年5月~現在 株式会社バイオシス・テクノロジーズ 取締役&チィーフ・テクニカル・オフサー(CTO)
平成27年4月~平成31年3月 聖マリアンナ医科大学分子病態情報研究講座講師
平成31年1月~現在 株式会社Spectro Decypher 取締役&チィーフ・テクニカル・オフサー(CTO)