なぜ核酸医薬にDrug Delivery System(DDS)が重要なのか

なぜ核酸医薬にDrug Delivery System(DDS)が重要なのか

サイエンス出版部 発行書籍

核酸医薬品はアンチセンスのヴィトラミューンが1998年に承認されて、その後2004年にRNAアプタマーのマキュジェンが承認されましたが、その後ヴィトラミューンが発売中止になり、それ以降核酸医薬はあまり開発が進んできませんでした。このことは、前から話しているように核酸医薬の安定性に問題があったからです。そして、このころから急速に開発が進んだ競合品の抗体医薬の市場導入により、核酸医薬は医薬市場で厳しい状態になり、更に核酸医薬の多くが臨床試験で有効性を証明できませんでした。そこで、siRNAに関してAlnylam社と資本提携をしていたRoche社が核酸医薬から完全撤退し、Novartis社もAlnylam社との提携を終了し、Merck社のsiRNA医薬からmiRNA医薬開発へのシフト、更にPfizer社は核酸医薬開発ユニットの解散など、メガファーマの核酸医薬からの撤退が相次ぎました。 しかし、最近は2013年に世界初の全身投与型のアンチセンス核酸医薬のホモ結合型家族性高コレステロール血症を対象としたmipomersenがアメリカで承認され、2016年にはDDS技術を利用せずに化学修飾により血中安定性を実現した、デュシャンヌ型筋ジストロフィーに対するeteplirsenなどが承認されてきました。更に2018年にAlnylam社より、DDS技術を導入したsiDNA医薬patisiranがアミロイドーシスの核酸原因遺伝子の標的治療薬としてアメリカで承認されました。このように、最近では合成アミノ酸や化学修飾などを用いて核酸医薬品の安定性が高められ、更にDrug Delivery System(DDS)により体内安定性とターゲットへの薬剤の輸送が可能となりました。これからは核酸医薬の分野でDDSが必要不可欠な技術になっていくと考えられます。それでは、標的細胞へのDDSを用いた核酸輸送

著者: 中山 登
中山 登
このセクションは、(株)Spectro Decypher 取締役&CTO(元・中外製薬株式会社研究本部化学部分析グループ長)中山 登 氏による創薬研究コラムです。
長年、創薬研究に携わってこられた中山氏が、創薬研究の潮流についての雑感や、創薬研究者が直面している課題の解決法などを体験談を踏まえて語っていただきます。
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【中山 登 氏 ご略歴】
昭和48年3月 立命館大学理工学部卒業
昭和48年5月~
昭和56年4月 電気通信大学材料科学科、コロンビア大学化学部研究員
昭和56年6月 日本ロシュ株式会社研究所 入社
平成8年4月 日本ロシュ株式会社研究所天然物化学部、機器分析グループ長
平成16年10月 中外製薬株式会社研究本部化学部分析グループ長
平成21年4月 中外製薬株式会社 定年 シニア職
平成26年4月 中外製薬株式会社 退職
平成26年5月~現在 株式会社バイオシス・テクノロジーズ 取締役&チィーフ・テクニカル・オフサー(CTO)
平成27年4月~平成31年3月 聖マリアンナ医科大学分子病態情報研究講座講師
平成31年1月~現在 株式会社Spectro Decypher 取締役&チィーフ・テクニカル・オフサー(CTO)