Drug Delivery System(DDS)の過去と現状

Drug Delivery System(DDS)の過去と現状

サイエンス出版部 発行書籍

 Drug Delivery System(DDS)についは、核酸医薬との関連を中心に話したいと思いますが、その前にDDSが考えられた経緯について少し話してみたいと考えています。  低分子創薬が盛んな2000年以前は、レセプターとリガンドの創薬のスクリーニングで、天然物などや合成化合物をスクリーニングすることで、生理活性物質を探索してきました。しかし、見つかった生理活性物質が直ぐに薬になるかと言うと、以前にも話したように生体に投与した際の体内動態などの問題で殆どの生理活性物質は薬になりません。そこで、経口投与薬の場合、体内吸収や体内動態を良くするために発展したのが製剤の技術です。生理活性物質にポリエチレンオキシドとポリエチレングリコールなどを加え、混合した徐放性製剤にすることにより体内での放出を制御し、薬物の血中濃度を治療領域に長時間一定に維持することで、体内での薬効作用をコントロールできました。私はこれがDDSの考え方の始まりと考えています。  その後、2000年代に入り、低分子薬の副作用を軽減するために、疾患部位に選択的に薬物を送る薬物ターゲティングの技術が出てきました。一方、このころ創薬の分野にも大きな変革があり、生体高分子、特に抗体が医薬品として利用されるようになってきました。開発段階で、抗体の中には薬効は示さないがターゲットの疾患部位の細胞に取り込まれる抗体があることがわかり、低分子薬に運び屋のこの抗体を付けて疾患部位に薬物を送り込む方法(Antibody-drug conjugate)が考えられました。詳しくは以前に「低分子・中分子創薬の新しい考え方であるAntibody-drug conjugate(ADC)製剤」の項目で紹介したので、そこをお読み頂ければ幸いです。  その後、ペプチドドリーム社が提案した中分子のペプタイドをDDSに利用するPepti

著者: 中山 登
中山 登
このセクションは、(株)Spectro Decypher 取締役&CTO(元・中外製薬株式会社研究本部化学部分析グループ長)中山 登 氏による創薬研究コラムです。
長年、創薬研究に携わってこられた中山氏が、創薬研究の潮流についての雑感や、創薬研究者が直面している課題の解決法などを体験談を踏まえて語っていただきます。
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【中山 登 氏 ご略歴】
昭和48年3月 立命館大学理工学部卒業
昭和48年5月~
昭和56年4月 電気通信大学材料科学科、コロンビア大学化学部研究員
昭和56年6月 日本ロシュ株式会社研究所 入社
平成8年4月 日本ロシュ株式会社研究所天然物化学部、機器分析グループ長
平成16年10月 中外製薬株式会社研究本部化学部分析グループ長
平成21年4月 中外製薬株式会社 定年 シニア職
平成26年4月 中外製薬株式会社 退職
平成26年5月~現在 株式会社バイオシス・テクノロジーズ 取締役&チィーフ・テクニカル・オフサー(CTO)
平成27年4月~平成31年3月 聖マリアンナ医科大学分子病態情報研究講座講師
平成31年1月~現在 株式会社Spectro Decypher 取締役&チィーフ・テクニカル・オフサー(CTO)