質量分析イメージングについて-1
サイエンス出版部 発行書籍
質量分析屋の髙橋です。 今までLC/MSに関する内容を中心に、基礎的な内容について書いて来ましたが、今回から何回かに分けて、質量分析としては比較的新しい技術として、質量分析イメージングについて解説します。質量分析イメージング(mass spectrometry imaging, MSI)とは、生体組織切片など平面状の試料に対して、レーザー照射などによって直径数µm~100 µmの微小領域から試料表面に存在する分子をイオン化してマススペクトルを測定し、イオン化の位置を少しずつ変えながら二次元的に万遍なく繰り返す事で、イオンのm/z情報から試料中の分子の分布情報を可視化する技術です。MSIの分析イメージを図1に示します。 MSIは、薬物動態解析の分野では、投与した医薬品やその代謝物が狙った臓器に移行しているか確認できるため、ドラッグデリバリーシステム研究で注目されています。また、疾患に関連するマーカー物質の探索研究などにも使われ始めています。MSIによる薬物動態解析例として、抗うつ薬であるイミプラミンとその代謝物の、マウス腎臓における分布の様子を図2に示します。 MRI (magnetic resonance imaging)やPET (positron emission tomography) などは医療分野で用いられているイメージング技術ですが、MSIはこれらの技術に比べると、分子自身の情報(イオンの質量(m/z値))を使うという点が利点だと言えるでしょう。 MSIでは平面状試料の表面における微細領域からイオンを生成させる必要があり、イオン化の種類と空間分解能の間には密接な関係があります。LC/MSでは分析種の物理化学的な性質に応じてイオン化の種類(ESI, APCI, APPIなど)を選択します。MSIではそれに加え、あるいはそれ以
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著者: 髙橋 豊
このセクションは、質量分析に関する技術コンサルティングを提供するエムエス・ソリューションズ株式会社 髙橋 豊 氏によるLC-MS講座です。
バイオ研究者向けにLC-MSに関する様々な話題やLC-MSの操作で注意すべき点などを分かりやすくご紹介します。
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【髙橋 豊 氏 ご略歴】
1987年3月 国立群馬工業高等専門学校卒業
1990年3月 群馬大学大学院工学研究科修士課程修了
1990年4月 日本電子株式会社入社 応用研究センターMSG研究員
2002年4月 NEDOマイクロ化学プロセス技術研究組合出向
2005年4月 解出向 同社開発本部研究員
2008年4月 横浜国立大学客員教授(~2009年3月)
2010年6月 日本電子株式会社退職
2010年8月 エムエス・ソリューションズ株式会社設立、代表取締役
2011年4月 横浜市立大学非常勤講師
2019年2月 株式会社プレッパーズ(浜松医科大学発ベンチャー)設立 代表取締役社長
【主な著書】
LC/MS定量分析入門(情報機構)
液クロ虎の巻シリーズ(丸善)
分析試料前処理ハンドブック(丸善)
液クロ実験 How to マニュアル(医学評論社)
LC/MS, LC/MS/MSの基礎と応用(オーム社)
現代質量分析学(化学同人)
【受賞歴】
2004年 日本質量分析学会奨励賞
【資格】
日本分析化学会認証 LC分析士二段、LC/MS分析士五段
【趣味】
トライアスロン、マラソン、ウルトラマラソン、ソフトボール、テニス、スキー(全日本スキー連盟指導員)、サッカー審判員(3級)