質量分析イメージングについて-2

質量分析イメージングについて-2

サイエンス出版部 発行書籍

量分析屋の髙橋です。暫く空いてしまってもう4月ですが、2025年も質量分析に関するコラムを書いていきます。前回、質量分析イメージングについて、その概要を解説しました。少し復習しておきましょう。質量分析イメージング(mass spectrometry imaging, MSI)とは、生体組織切片など平面状の試料に対して、レーザー照射などによって直径数µm~100 µmの微小領域から試料表面に存在する分子をイオン化してマススペクトルを測定し、イオン化の位置を少しずつ変えながら二次元的に万遍なく繰り返す事で、イオンのm/z情報から試料中の分子の分布情報を可視化する技術です。 MSIでは平面状試料表面の微小領域からイオンを発生させるという特性上、用いられるイオン化法は限られます。有機分子を壊さずにそのままイオン化出来る、MSIで用いられるイオン化法として、MALDI (matrix laser desorption/ionization)とDESI (desorption electrospray ionization)があるという事を解説しました。 今回は、それぞれについてもう少し詳しく解説します。両者ともMSIに用いられるようになったのは比較的最近ですが、その前からMSのイオン化法として用いられていました。世に登場してからMSIに用いられるようになった期間は、DESIの方がはるかに短いと思います。 ・MALDI  測定試料とイオン化促進剤としてのマトリックスを溶液の状態で混合し、金属製の板(ターゲットプレート)に滴下・乾燥させた後、パルスレーザーを照射すると、試料中の分子がイオンとなって脱離します。生成し易いイオンは、正イオン検出では[M+H]+や[M+Na]+、負イオン検出では[M-H]-などです。マトリックスは、通常試料に対して大過剰(例えばモル比で1,

著者: 髙橋 豊

髙橋 豊

このセクションは、質量分析に関する技術コンサルティングを提供するエムエス・ソリューションズ株式会社 髙橋 豊 氏によるLC-MS講座です。

バイオ研究者向けにLC-MSに関する様々な話題やLC-MSの操作で注意すべき点などを分かりやすくご紹介します。

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【髙橋 豊 氏 ご略歴】
1987年3月 国立群馬工業高等専門学校卒業
1990年3月 群馬大学大学院工学研究科修士課程修了
1990年4月 日本電子株式会社入社 応用研究センターMSG研究員
2002年4月 NEDOマイクロ化学プロセス技術研究組合出向
2005年4月 解出向 同社開発本部研究員
2008年4月 横浜国立大学客員教授(~2009年3月)
2010年6月 日本電子株式会社退職
2010年8月 エムエス・ソリューションズ株式会社設立、代表取締役
2011年4月 横浜市立大学非常勤講師
2019年2月 株式会社プレッパーズ(浜松医科大学発ベンチャー)設立 代表取締役社長

【主な著書】
LC/MS定量分析入門(情報機構)
液クロ虎の巻シリーズ(丸善)
分析試料前処理ハンドブック(丸善)
液クロ実験 How to マニュアル(医学評論社)
LC/MS, LC/MS/MSの基礎と応用(オーム社)
現代質量分析学(化学同人)

【受賞歴】
2004年 日本質量分析学会奨励賞

【資格】
日本分析化学会認証 LC分析士二段、LC/MS分析士五段

【趣味】
トライアスロン、マラソン、ウルトラマラソン、ソフトボール、テニス、スキー(全日本スキー連盟指導員)、サッカー審判員(3級)

【HP】
エムエス・ソリューションズのホームページ
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