分析目的と質量分析計の種類について-2:イオン化編
サイエンス出版部 発行書籍
質量分析屋の髙橋です。前回に引き続き、分析目的と質量分析計の種類について書いてみます。今回は、予告通りイオン化にフォーカスします。つまり、どんな分析の時にどのイオン化を使うのが良いか、という内容です。本論に入る前の前提として、イオン化は試料導入法と密接に関係している事を知っておく必要があります。例えば電子イオン化(electron ionization, EI)は、直接試料導入やGCを介する試料導入(GC/MS)には使えますが、LC/MSには現在は使えません(以前はLC/MSに用いるEIが市販されていたが)。また、LC/MSに用いられているエレクトロスプレーイオン化(electrospray ionization, ESI)や大気圧化学イオン化(atmospheric pressure chemical ionization, APCI)は、GC/MSには一般的には使えません(GC/MSにAPCIを組み合わせた装置を販売しているメーカーはある)。 つまり、最初に書いた事をひっくり返すようで恐縮ですが、分析目的に応じてイオン化を選択するというよりは、先ずは試料導入法を選択してその上でイオン化法を選択する、と言う事になります。試料導入に関しては、前回の記事を参考にしてください。今回は、各試料導入について、どのイオン化を選択すれば良いか、について解説していきます。 1.直接試料導入(DI) DIについては前回の記事でも少し解説しましたが、現在市販されている全てのイオン化法で用いる事が可能です。DIによる試料導入において、イオン化法に何を選択するかは、試料の形態によって大きく変わります。例えば単離精製された試料の分子質量を確認したり、またそのマススペクトルを標品と比較して同定したりする場合、FAB(fast atom bombardment、高速原子衝撃法)のように、[M
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著者: 髙橋 豊
このセクションは、質量分析に関する技術コンサルティングを提供するエムエス・ソリューションズ株式会社 髙橋 豊 氏によるLC-MS講座です。
バイオ研究者向けにLC-MSに関する様々な話題やLC-MSの操作で注意すべき点などを分かりやすくご紹介します。
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【髙橋 豊 氏 ご略歴】
1987年3月 国立群馬工業高等専門学校卒業
1990年3月 群馬大学大学院工学研究科修士課程修了
1990年4月 日本電子株式会社入社 応用研究センターMSG研究員
2002年4月 NEDOマイクロ化学プロセス技術研究組合出向
2005年4月 解出向 同社開発本部研究員
2008年4月 横浜国立大学客員教授(~2009年3月)
2010年6月 日本電子株式会社退職
2010年8月 エムエス・ソリューションズ株式会社設立、代表取締役
2011年4月 横浜市立大学非常勤講師
2019年2月 株式会社プレッパーズ(浜松医科大学発ベンチャー)設立 代表取締役社長
【主な著書】
LC/MS定量分析入門(情報機構)
液クロ虎の巻シリーズ(丸善)
分析試料前処理ハンドブック(丸善)
液クロ実験 How to マニュアル(医学評論社)
LC/MS, LC/MS/MSの基礎と応用(オーム社)
現代質量分析学(化学同人)
【受賞歴】
2004年 日本質量分析学会奨励賞
【資格】
日本分析化学会認証 LC分析士二段、LC/MS分析士五段
【趣味】
トライアスロン、マラソン、ウルトラマラソン、ソフトボール、テニス、スキー(全日本スキー連盟指導員)、サッカー審判員(3級)