2020年5月1日CytoDyn社WEBINARにおけるレロンリマブに関する質問(ログインするとQ&Aを表示):• この薬は COVID-19 の単剤治療に使用できますか?それとも最終的な分析に役立つ併用薬物療法を想定していますか?• FDAがレロンリマブを使用することで何人の命を救うことができるのかを理解するのが難しいのはなぜですか?• レロンリマブは、主に免疫系の回復または何らかの新しいメカニズムによる血漿ウイルス負荷を軽減する能力がありますか?• 血液検査の結果は、重度から重症のCOVID患者に報告されている凝固の問題をどのように説明するのに役立ちますか?• レロンリマブを投与された患者の入院期間の改善は何でですか? 後に患者はIgMまたはIgGのレベルが上昇しますか?• レロンリマブとレムデシビルを組み合わせるように求められた場合、CytoDynの立場はどうか?• COVID-19の結果が非常に悪いのに、なぜGilead社は注目を集めているのか?• MOAは健康な細胞のCCR5受容体を阻害することでしょうか?• 主な長期的な副作用は何か?• Gilead社のレムデシビルやGenentech社のアクテムラとは、どう違うのですか?• RANTESの過剰発現は、どのような直接的または間接的なメカニズムによって、SARS-CoV2によって引き起こされると考えているか? 講演者の経歴NADER Z. POURHASSAN、PhD; CYTODYNのディレクター、社長、CEOPourhassan 博士は、1985年にユタ州立大学で理学士号を、1990年にブリガムヤング大学で理学修士号を、1998年にユタ大学で機械工学の博士号を取得している。Pourhassan 博士は3冊の本を執筆している。彼の20年間のビジネス開発経験は、破産の危機に瀕している上場のバイオテクノロジー

Covid-19 の決定的な特徴の1つは、重症例で発生する可能性のある過剰な免疫応答だ。 この免疫過剰反応のバーストは、サイトカインストームとも呼ばれ、肺に損傷を与え、致命的となる可能性がある。MITの研究チームは、これらの過剰なサイトカインを吸収するために、抗体と構造が類似した特殊なタンパク質を開発した。 「アイデアは、体内に注入され、サイトカインストームによって生成された過剰なサイトカインに結合し、過剰なサイトカインを取り除き、感染症から症状を緩和できるということだ」と、研究論文の著者の一人でMITの研究者であるRui Qing博士は述べた。研究者らは、最初の発見を Quarterly Review of Biophysics (QRB) Discovery で報告しており、現在、ヒト細胞およびサイトカイン放出とコロナウイルス感染の動物モデルでタンパク質のテストを開始したいと考えている。 この論文は「QTYコードで設計された水溶性Fc-Fusionサイトカイン受容体がそれぞれのリガンドに結合する(QTY Code-Designed Water-Soluble Fc-Fusion Cytokine Receptors Bind to Their Respective Ligands.)」と題されている。 MITメディアラボの分子アーキテクチャ研究所の主任研究科学者であるShuguang Zhang博士も、この論文の上級著者だ。 MITの客員科学者であるShilei Hao博士は、この研究の筆頭著者であり、Avalon GloboCareのCEO兼社長であるDavid Jin医学博士も著者である。サイトカインストームの遮断に関する研究者の研究は、Zhang 博士が10年前に膜に埋め込まれたタンパク質の修飾版を開発するために始めたプロジェクトから生まれた。 これらの

ポルフィリン症は、8種の血液疾患の総称で、酸素運搬タンパク質のヘモグロビンを構成するヘムをつくる体の分子的メカニズムが不調を来す疾患である。ヘムが鉄と結合すると血液独特の赤色になる。ヘム産生に影響する遺伝的変異のタイプによって、現れるポルフィリン症の臨床症候群も異なっている。吸血鬼伝説が生まれた原因になったと考えられる症候群もその一つである。 子供に発生するもっとも一般的なポルフィリン症は骨髄性プロトポルフィリン症 (EPP) と呼ばれるもので、患者の皮膚が光に対して異常に敏感になるという特徴があり、長時間陽光にさらされると痛みを伴う醜い火ぶくれになることがある。Dana-Farber/Boston Children's Cancer and Blood Disorders CenterのBarry Paw MD, PhDは、「EPP患者は慢性的な貧血症のため、常に疲労感を抱えており、しかも光感受性が高まっていて日光に当たることができないため、非常に青白い外貌になる。曇りの日でも体の露出した部分、耳、鼻などに火ぶくれや皮膚の変形を起こすのに十分な紫外線が届いている。日中は屋内で過ごし、十分な量のヘムを含んだ輸血でこの疾患の症状を一部緩和することはできる。大昔なら動物の血を飲み、夜の間だけ出歩くことで同じ効果が得られただろうが、吸血鬼伝説を広げることにもなったはずである。2017年9月5日付PNASオンライン版に掲載された研究論文で、Dr. Pawと国際的な研究チームは、EPPを引き起こす遺伝変異を新しく発見したと述べている。その論文では、「吸血鬼伝説」の原因になったと思われる、これまで知られていなかった生物学的機序に光を当て、EPPの治療標的を突き止めている。 この論文は、「ヒトCLPXの突然変異はδ-アミノレブリン酸合成酵素レベルを上昇させ、赤血球生成プロトポルフィリ

Information Genomique et Structurale laboratory (CNRS/AMU)、Biologie a Grande Echelle laboratory (CEA/INSERM/Universite Joseph Fourier)、Genoscope (CEA/CNRS)、Russian Academy of Sciences合同の研究チームがシベリア最北東部で永久凍土の中から「ピソウイルス」と名付けられた巨大ウイルスの新種を発見した。   ヒトや動物には無害と判断されているこの巨大ウイルスは地中に埋もれたまま3万年以上も凍土の中で生き延びてきたもので、そのサイズや古代の陶製広口壷に似た形からパンドラウイルスを思わせるが、ゲノムや複製メカニズムの解析からピソウイルスはパンドラウイルスとは全く異なることが証明されている。 この研究の結果、巨大ウイルスの科が3つになった。この発見は2014年3月3日付PNASオンライン版に掲載されている。 これまで、メガウイルス科 (2003年に発見されたミミウイルスがその代表) とパンドラウイルス科の発見で、様々な巨大ウイルス (いずれも直径が0.5ミクロンを超えるため、光学顕微鏡でも識別できる数少ないウイルス) をすべて分類できたと考えられていた。この種のウイルスはアカントアメーバなどのアメーバに感染し、一般的なウイルス (遺伝子10個程度のインフルエンザやAIDSのウイルス) に比べるとかなり多数の遺伝子を持っている。そのゲノムは細菌のほとんどと比べても同じ規模かあるいはもっと大きいことがある。研究チームはシベリア北東端にあるチュクチ自治管区の永久凍土層で採取したサンプルを調べていて、3万年以前 (ネアンデルタール人が絶滅した時期) の巨大ウイルスの新種を発見、彼らはそのウイルスを「ピソウイル

New York University (NYU) Langone Medical Centerの研究者が主導するアメリカとベネズエラの多施設間研究チームの調査で、ベネズエラ南部のアマゾンのジャングルで、他の人類から孤絶して暮らす南米先住民族のヤノマミ族の腸内細菌叢が、これまでに知られている人間の腸内細菌叢の中でもっとも多様性に富んでいることが突き止められた。それに比べると、研究チームの推定では、工業化社会の人間の腸内細菌叢の多様性は40%低い。研究チームは、この研究結果を2015年4月17日付Science Advancesのオープン・アクセス研究論文で発表している。   研究チームは、「この研究結果は、人間の体内に住み着き、人間の健康への重要な役割が認識され始めている何兆個という数の細菌の群、ヒト・マイクロバイオームの多様性の低下と現代社会の抗生物質の多用や加工食品の普及という変化の間に何らかの関係があることを示している」と述べている。この研究の対象になったヤノマミ族の村人は何百世代にもわたって狩猟採集生活を続けてきており、2009年に医学学術調査団が初めて接触するまで外界から孤絶して暮らしていた。 村人は、近代的な抗生物質にさらされたことのない希有な人口グループとして、ヒト・マイクロバイオームの貴重な手がかりになっている。この論文の首席著者で、NYU Langone Medical CenterのMedicine准教授を務めるMaria Dominguez-Bello, Ph.D.は、「ヤノマミ族の村人の糞便、皮膚、口腔唾液のサンプルから今まで見たことがないほど多様なマイクロバイオームを発見した」と述べている。さらに、「細菌の多様性低下、食事の加工食品化、現代の抗生物質などと肥満、喘息、アレルギー、糖尿病など免疫学的な疾患や代謝病との関連を示すデータが増えている

人間は年を取るにつれて器官の機能が衰えるだけでなく、細胞レベルでも損傷が徐々に増えていく。その理由の一つとして、DNAのエラーが累積され、欠陥のある細胞が作られるようになることが挙げられる。ドイツのケルン所在Max Planck Institute for Biology of AgeingのDr. Nils-Goran Larsson率いる研究チームが、老化は生活の間のDNA損傷の累積によって決まるだけでなく、母体から受け継いだ損傷によるところもあることを突き止めた。   同研究チームは、マウスを使った研究で母体から受け継ぐミトコンドリアDNAの突然変異が、生まれた瞬間から子供の老化過程に影響することを実証したのである。この研究論文は、2103年8月21日付「Nature」オンライン版に掲載されている。老化は複雑なプロセスであり、歳月を経るうちに身体の組織、細胞、分子の損傷が累積していき、最終的に器官の機能が衰え、死亡のリスクが高くなる。なぜ人によって老化の速さが異なるのかという疑問に対しては未だに解き明かされていない理由がいくつもある。それでも、細胞のエネルギー源であるミトコンドリアに起きる損傷は老化に対して特に重要と見られている。Dr. Larssonは、ケルンのMax Planck Institute for Biology of AgingでDirectorを務め、ストックホルムのKarolinska Institute所属の研究者でもある。そのDr. Larssonが、同じKarolinska InstituteのDr. Lars Olsonとともにこの研究を指導した。Dr. Larssonは、「ミトコンドリアは、ミトコンドリアDNAまたはmtDNAと呼ばれる独自のDNAを持っており、細胞核中のDNAよりも変化が速い。これが老化プロセスに大きく影響しており、

遠く離れた太平洋のたった一つの島にだけ茂る植物、Amborella trichopodaは一科一属一種の植物である。また、この植物は、2億年前に他の植物から分かれたもっとも古い顕花植物の一つでもある。Indiana University、U.S. Department of Energy Joint Genome Institute (DOE JGI)、Penn State University、ニュー・カレドニアのInstitute of Research for Developmentの合同研究チームは、この植物のエネルギー生成構造を支える異常なほどのゲノムの規模を突き止めた。   なんと、この植物は、細胞中のエネルギー生成小器官である ミトコンドリアが遺伝子の水平伝播と呼ばれる特異な現象で他種植物のDNAの6種に相当するゲノムを獲得していたのである。1種はコケ、3種の緑藻、2種の顕花植物のゲノムだった。細胞小器官が他種生物のゲノムをまるまま取り込んだことを確認されたのは初めてであり、陸上植物が緑藻の遺伝子を吸収していることを確認されたのも初めてだった。2013年12月20日付Science誌に掲載された研究論文の首席著者、Indiana UniversityのDr. Palmerは、「Amborella trichopodaのミトコンドリアは、他の植物や藻類のゲノムをまるまま呑み込み、そればかりか、そのゲノムを長い歳月にわたって保存してきた」と述べ、論文もAmborellaのゲノム大食癖の規模を明らかにしている。 このミトコンドリア・ゲノムに関する研究の報告には、Amborella Genome ProjectによるAmborella trichopoodaの核ゲノムに関する研究論文、他の研究グループによるAmborella trichopodaの質の高いゲノム

アラバマ大学バーミンガム校(UAB)と共同研究機関の新しい発表によると、過度の飲酒が原因とされる肝臓障害を、抗酸化物質で予防できる可能性がある。研究結果は、脂肪症の進行阻止もしくは、肝硬変や肝癌に至る可能性のある肝臓の脂肪沈着を治療可能な道筋を示すような知見が、「Journal Hepatology」(2011年5月号)に発表された。UAB 校のDr. Victor Darley-Usmar 病理学教授が率いる研究チームは、ヒトにとって過剰摂取に相当するアルコール量を、ラットのミトコンドリアに5〜6週間にわたって毎日注入した。   そして、このミトコンドリアに、ミトコンドリア標的ユビキノンもしくはMitoQと呼ばれる抗酸化物質を導入した。 毎日過度に飲酒する慢性アルコール依存症では、肝細胞に脂肪蓄積が起こる。肝臓でのアルコール代謝の際にフリーラジカル(遊離活性基)を発生し、これが肝細胞中のミトコンドリアに損傷を与え、エネルギー産生に必要な酸素量の取り込みを妨げる。「低酸素症」と呼ばれる低酸素状態は、ミトコンドリアの損傷を悪化させ、肝硬変へ進行する可能性のある脂肪沈着の形成を促進する。Dr. Victor Darley-Usmar教授や共同研究者は,次のように語る。「抗酸化物質MitoQは、フリーラジカルがミトコンドリアを損傷する前にフリーラジカルを迎え撃ち、中和することができる。そして最終的に脂肪症につながるという一連の反応のカスケードを防ぐ可能性がある。「過度の飲酒から生じる肝臓のアルコール沈着に伴う慢性的な損傷の予防や症状の好転にアプローチする有望な医薬品は今まで存在しなかった。」さらに彼は語る。「私達の研究結果から、MitoQは長期間の習慣的なアルコール摂取に起因する肝臓障害の治療に有効な製剤になるかもしれないことが示唆された。」「今までの研究で、MitoQはヒ

植物、動物の細胞には2つのゲノムがある。一つは細胞核に、もう一つはミトコンドリアに含まれている。それぞれゲノムで突然変異が起きた場合、互いに異なる配列の変異を呈し、それが原因で病気になる場合がある。最近、ブラウン大学とインディアナ大学の科学者チームが、その病気をさらによく知るため、ショウジョウバエを対象として、個々のヌクレオチドの逸脱やショウジョウバエが発病する機序までを研究した。単一のゲノムの突然変異による発病だけでも十分に複雑だが、細胞核のDNAとミトコンドリアのDNAという2つのゲノム同士の相互作用の逸脱で引き起こされる病気もある。   科学者は、そのようなゲノム同士の変異の違いが原因で発病する過程を調べようと考えた。そこで、ブラウン大学とインディアナ大学の科学者チームは、ショウジョウバエのゲノムが異なる配列の突然変異を引き起こす過程を個々のヌクレオチドの突然変異の水準まで追求し、二つの遺伝子の同時的な突然変異でショウジョウバエが発病する機序を突き止めた。ブラウン大学の生物学教授で、この研究論文の筆頭著者でもあるDr. David Randは、「この機序は人間の病気にもあてはまるが、この2つのゲノムはすべての動物、植物に存在するため、すべての有機体にあてはまるというべきだ」と語っている。この研究論文は、「PLOS Genetics」の2013年1月31日付オンライン版に掲載された。博士はさらに、「ミトコンドリアを原因とする代謝病がたくさんあり、いずれも固有の遺伝的痕跡を示している。これは2つに分けて考えた方がいいかも知れない」 と述べている。 5年前、Dr. Randと、2人の博士研究員、1人はブラウン大学とインディアナ大学のDr. Colin Meiklejohn、もう1人は現在インディアナ大学で准教授を務めるDr. Kristi Montoothの3人が、研

University of Pittsburgh Cancer Institute (UPCI, ピッツバーグ大学がん研究所) の研究チームはがん細胞の成長を止める方法を発見した。この発見が新しい抗がん治療法に結びつく可能性がある。ある種のがん細胞は重要なタンパクを奪われると正しく分裂できなくなるという研究報告であり、Journal of Cell Scienceの2013年2月号の巻頭記事を飾っている。この報告論文は2012年9月26日付同誌初出。   UPCIの分子薬理学Richard M. Cyert記念教授を務め、研究報告論文筆頭著者のBennett Van Houten博士は、「細胞再生という重要な段階でこのタンパクを変化させることで、がん細胞の成長を止めることができるのか、私たちがその機序を初めて説明できた。現在、私たちが望むのは、今回の発見で新しいタイプのがん治療薬の開発が促進され、既存の医薬と相乗効果をもたらすようになることだ」と語っている。細胞はすべてミトコンドリアのネットワークを持っている。このミトコンドリアは細胞内にある微小な構造で細胞のエネルギー生産と新陳代謝に欠かすことができない。Dynamin-related protein 1 (Drp1) はミトコンドリアの分裂を助ける物質で、ミトコンドリアは分裂して2つの新しいミトコンドリアになる。ところが、乳がんや肺がんではDRP1の欠乏が頻繁に起こり、ひどく融け合ったミトコンドリアの巨大なネットワークが観察される。このようながん細胞は、G2/Mと呼ばれる細胞分裂の途中段階で分裂が停止したように思われる。新しく2つの細胞に分裂することができないためにがんの成長が止まったわけである。このような細胞は、分裂しようとして文字通り染色体を引き裂き、細胞のストレスをさらに高めることになる。 Journal o

タマゴテングタケ(テングタケ属)は猛毒である。 ただし、その毒素の一部は適切に使用すれば治癒に役立つこともある。たとえば、毒素のひとつであるアマニチンは抗体ベースの癌治療の必須要素だ。2019年12月17日にドイツの雑誌Angewandte Chemieにオンラインで公開された論文で、科学者たちは現在、α-アマニチンの新しい合成経路について説明している。このオープンアクセスの論文は、「デスキャップ毒素α‐アマニチンの収束的全合成(A Convergent Total Synthesis of the Death Cap Toxin α‐Amanitin.)」と題されている。 彼らの方法は大規模生産に適しているようであり、最終的にさらなる研究のための十分な毒素を利用可能にする。 アマニチンは酵素RNAポリメラーゼIIを高い選択性で阻害し、細胞死を引き起こす。 抗体によって腫瘍細胞に輸送されると、毒素は腫瘍と戦うことができる。 しかし、最近まで、アマニチンの唯一の供給源はキノコ(テングタケ)自体であり、実験の可能性を制限していた。少し前に、最も強力なアマニチンであるα-アマニチンの全合成が報告された。 ベルリン工科大学のRoderich D.Süssmuth博士と協力者は、完全に液相で発生する大規模の全合成の代替ルートを紹介した。 「我々は収束ルートを使用することにした。つまり、いくつかの成分が最初に独立して合成され、最後にまとめられて標的分子を形成することを意味する」とSüssmuth 博士は説明した。 ビルディングブロックは、5、1、および2つのアミノ酸で構成される3つのペプチドフラグメントだ。 研究者は、彼らの方法を[5+1+2"> 合成と呼んでいる。アマトキシンは、トリプタチオニンとして知られているアミノ酸トリプトファンとシステインの間に追加の内部交差環結合を

今年初めNature Medicineに発表されたミネソタ大学医学部教授のPaul D. Robbins博士とLaura J. Niedernhofer博士、メイヨー・クリニックの研究者James L. Kirkland博士とTamara Tchkonia博士の研究成果は、老化細胞と呼ばれる損傷細胞の負担を軽減し、生涯末期に治療が開始されても寿命を延ばし、健康を改善することが可能であることを示した。彼らは現在、多くの果物や野菜に見られる天然産物のフィセチン(fisetin)による高齢マウスの治療も、健康と寿命に有意な正の効果を有することを示している。   人々は年をとるにつれて、損傷した細胞を蓄積する。 細胞が一定レベルの損傷を受けると、細胞老化と呼ばれる老化過程を経る。細胞はまた、免疫系にそれらの損傷した細胞を除去するように指示する炎症因子を放出する。若い人の免疫系は健康で、損傷した細胞を除去することができる。しかし、人が老化するにつれて、これらの損傷した細胞は効果的に消失しない。 したがって、それらは蓄積し始め、低レベルの炎症を引き起こし、組織を分解する酵素を放出する。Robbins博士らと仲間の研究者らは、フィセチンと呼ばれる天然産物が体内のこれらの損傷細胞のレベルを低下させることを発見した。 彼らは、この化合物でマウスを終末に向けて治療し、健康と寿命の改善を見出した。このオープンアクセスの論文「フィセチンは健康と寿命を延ばす細胞老化療法である(Fisetin Is a Senotherapeutic That Extends Health and Lifespan)」は、2018年9月29日にEBioMedicineに掲載された。 「これらの結果は、健康な期間を終わりに向かって延長することができることを示唆している。しかし、適切な投与量を含めて、まだ対処すべき

レロンリマブ要約:- COVID-19 の三拍子揃った薬-レロンリマブはサイトカインストームを静め、免疫学的ホメオスタシスを回復し、ウイルス量を減らす-Gileadの抗ウイルス薬レムデシビルとGenetechの抗IL-6 アクテムラは、「非常に複雑な発病への断片的アプローチ」と呼ばれている-腎不全、肝不全、および凝固の問題を含む、関連するすべての併存疾患を含む、COVID-19感染のすべての側面に広く一般的に適用できる-レロンリマブの幅広いアプローチは、PDL-1および癌におけるチェックポイント阻害剤封鎖の幅広い非特異的アプローチと類似している-レロンリマブは、他のウイルスに対しても有効であり、また将来の新たな脅威となる可能性がある現在知られていないウイルスに対しても有効であると予測されている--RANTES(マスター免疫調節分子)がCOVID-19の病因を促進--RANTESレベルは、重症のCOVID-19患者で100倍正常--RANTESは、免疫細胞上のCCR5受容体に結合し、免疫細胞の動員(T細胞およびマクロファージ)の悪循環を開始し、サイトカインおよびより多くのRANTESの局所放出、より多くの免疫細胞の流入、より多くのサイトカインおよびより多くのRAANTESの放出などを行う-身体が炎症により大量の複数臓器システムの問題を引き起こす文字通り「炎上」は、レロンリマブによってブロックできる可能性がある-レロンリマブはケモカインのCCR5細胞表面受容体をブロックし、RANTES結合を防止する-レロンリマブは皮下注射により週2回投与される-ギリアドのレムデシビルは、1時間に4回のIV注射で毎日投与される--CytoDynの科学者は、レロンリマブは単独で非常に効果的であり、レムデシビルとの併用は不要であると主張している--CytoDynの科学者は、COVID-19ウイルスが

貧血その他の鉄欠乏症の新しい治療法になる可能性を持った重要な化学物質が研究者によって突き止められた。Science誌掲載の新論文の共同首席著者で、Harvard Medical School、Dana Farber Cancer Institute、Brigham and Women’s Hospital、Boston Children’s Hospitalの准教授を務めるBarry Paw, MD, PhD.は、「鉄がなければ生命体も存在できない。   鉄分は血中の酸素運搬、主要代謝活動、DNA複製などに重要な役割を果たしており、その鉄分の運搬そのものも非常に重要である」と述べている。2017年5月12日付Science誌に掲載された研究論文は、University of Illinois、Dana-Farber/Boston Children's Cancer and Blood Disorders Center、Brigham and Women's Hospital、Northeastern Universityなど複数研究機関の合同研究チームによる研究成果であり、鉄欠乏性貧血から鉄過剰性肝臓障害まで様々な鉄障害に新しい治療法が開ける可能性がある。この研究チームは、ヒノキの葉に含まれるヒノキチオールという小さな天然の化学物質が動物の鉄障害を回避できることを突き止めた。このScience誌掲載論文の共同首席著者で、Dana-Farber/Boston Children'sの医師を務めるDr. Pawと彼の研究室の研究者は、ゼブラフィッシュを使った疾患モデルの鉄欠乏症と鉄過剰症の改善に成功した。この研究の成果からヒノキチオールは優れた薬効を有望視されている。この研究論文は、「Restored Iron Transport by a Small Molecule Pr

テキサス大学(UT)サウスウエスタン校の研究者らは早期老化を防ぐ新しい遺伝子パスウェイを同定した。2019年2月8日にeLifeでオンライン公開されたこの研究は、ロングノンコーディングRNAをコードする遺伝子NORADの活性を調べた。この論文は「PUMILIOの多動性がノルアド欠乏マウスの早期老化を促進する(PUMILIO Hyperactivity Drives Premature Aging of Norad-Deficient Mice.)」と題されている。 「DNA損傷により活性化されるノンコーディングRNA(noncoding RNA activated by DNA damage)」を表すNORADは、多くの哺乳動物に存在し、細胞分裂時に適切な数の染色体を維持するのに役立つ。細胞内の多くのRNAは、タンパク質を構築するための指示書またはコードとして機能するが、ノンコーディングRNAはタンパク質をコードしない。「哺乳類の生理機能と開発におけるノンコーディングRNAの重要性に関して、科学界には多くの疑問がある。我々の細胞はこれらのRNAを何千も生産しているが、動物の重要な機能に関係しているのはごくわずかなものだけだ。」とUTサウスウエスタンの分子生物学教授であり、この研究の著者であるJoshua T. Mendell博士は述べた。2015年に彼らはNORADの発見を報告し、ヒト細胞の染色体の正しい数を維持する上でこのノンコーディングRNAの重要性を実証した。研究室で成長した細胞に限った彼らの以前の研究で、研究者は次に哺乳動物生理学における遺伝子の機能をよりよく理解するために生きた動物におけるNORADの役割を調べた。これを達成するために、Mendell研究室のポスドク研究者でeLife研究の筆頭著者であるFlorian Kopp博士は、マウスゲノムからNORADを

10年前の偶然の発見により、スペイン国立癌研究センター(CNIO)の研究者は、その種で通常よりもはるかに長いテロメアをもつ最初のマウスを作製した。テロメアと老化(テロメアは生涯を通じて短くなるため、古い生物はテロメアが短くなる)の関係を考えて、100%の細胞が非常に長いテロメアを持つマウスを生み出す研究を開始した。この研究成果は、2019年10月17日にNature Communicationsでオンラインで公開され、より良い健康状態で癌や肥満から解放されたとの肯定的な結果のみが示されている。   著者にとって最も関連性の高い結果は、遺伝子組み換えなしで初めて寿命が大幅に延長されたことだ。 「この発見は、寿命を決定する際に、遺伝子だけが考慮されるべきではないという考えを裏付けている」と CNIOテロメアおよびテロメラーゼグループ長、スペイン国立がん研究センター所長のMaria Blasco 博士は述べている。このオープンアクセスの論文は「ハイパーロングテロメアをもつマウスは代謝の老化が少なく寿命が長い(Mice with Hyper-Long Telomeres Show Less Metabolic Aging and Longer Lifespans.)」と題されている。 テロメアは、体内の各細胞の核で染色体の末端を形成する。 それらの機能は、DNAの遺伝情報の完全性を保護することだ。 細胞が分裂するたびに、テロメアは少し短くなる。そのため、老化の主な特徴の1つは、細胞内の短いテロメアの蓄積だ。「テロメアの短縮は、短いテロメアが生物の老化を引き起こし、寿命を縮めることを考えると、老化の主な原因の1つと考えられている」とNature Communicationsで発表された論文で説明されている。CNIOテロメアおよびテロメラーゼグループは、テロメア伸長酵素であるテロ

食塩摂取量が増えると、自己免疫疾患の原因になる侵襲性の強い免疫細胞グループを誘発する可能性があるという研究結果が発表された。この研究を手がけたのは、Yale University、Broad Institute、MIT、 Harvard University、Vanderbilt University、ベルリンのMax-Delbruck Center for Molecular Medicine、University of Erlangen-Nurembergなどを含む数多くの研究機関から参加した国際的な科学者グループで、2013年3月6日付の「Nature」誌オンライン版に掲載された論文の著者には、Dr. Markus Kleinewietfeld、Professor David Hafler、Dr. Ralf Linker、Professor Jens Titze、Professor Dominik N. Mullerらが名を連ねている。 同日付で「Nature」誌オンライン版に掲載された第二論文では、食塩を感知する酵素が自己免疫疾患の誘発に関わっている可能性が記述されている。これも同日付で「Nature」誌オンライン版に掲載された第三論文では、ヘルパーT細胞に関わる分子経路が自己免疫疾患につながる可能性が記述されている。この3本の「Nature」の論文をあわせて、自己免疫疾患の起源についてさらに理解が深まることが考えられるが、ここでは食塩の過剰摂取の影響を述べた第一論文を中心にして紹介したい。 過去何十年かの間、研究者は欧米で自己免疫疾患発症例が着実に増えてきていることに気づいている。しかし、その着実な増加が遺伝子要因だけでは説明がつかないため、仮説として、この疾患を環境要因に結びつけて考えている。もっとも疑われている原因として、高度に加工された食品やファースト・

ヒトと微生物との関係は複雑である。どこのスーパーマーケットに行っても、抗菌性セッケンと体に良い細菌の増殖を助けるヨーグルトという相反するような商品が並んでいる。細菌には病気の原因になるものもたくさんあるが、Caltechの生物学と生体工学の教授、Dr. Sarkis Mazmanianと彼の研究チームは、人体内に棲み着いて、われわれを健康に保つ働きのある何千という種類の細菌に注目している。   Dr. Sarkis Mazmanianの過去のマウスを使った研究でも、善玉菌を増やすことで、炎症性腸疾患、多発性硬化症や自閉症でさえ症状を緩和できることが示されている。博士の研究チームは、血中の免疫細胞が悪玉菌感染と戦うために、善玉菌が役立っていることを突き止めた。 2014年3月12日付「Cell Host & Microbe」に掲載された最近の研究で、侵入者の病原菌に対して防衛前線の役目を果たす先天免疫細胞という特殊化した白血球の成長にとって善玉菌が必要不可欠であることを突き止めている。免疫細胞は血中を循環するだけでなく、脾臓や骨髄にも備蓄されている。 研究チームが、腸内細菌を持たずに生まれた無菌マウスと、正常な腸内細菌数を持っている健康なマウスのこれらの器官での免疫細胞数を調べたところ、無菌マウスでは免疫細胞独特のマクロファージ、単球、好中球などの数が健康なマウスに比べてかなり少ないことが突き止められた。また、無菌マウスは、いくつかの成熟免疫細胞に分化することのできる幹細胞に似た顆粒球や単球の前駆細胞もかなり少なかった。さらに、脾臓に備蓄されている先天免疫細胞には欠陥があり、様々な腸内細菌を持った健康なマウスに比べるとかなり数が少なかった。Dr. Mazmanian研究室の大学院生、Arya Khosraviは、「このような微生物が自分たちの棲んでいる腸内に留

Weill Cornell Medical Collegeの研究グループを中心とする国際的な研究チームは、膵臓がんが肝臓に転移する分子レベルの正確な過程を明らかにした。この過程こそ発生率の高い膵臓がんの死亡率を押し上げている要因である。研究チームは、「私達の研究成果によってこの過程の理解を通し、転移を遅らせることを中心とする治療法を確立し、新しいバイオマーカーを提示することで膵臓がんの早期発見に役立てることができるだろう」と述べている。   2015年5月18日付Nature Cell Biologyオンライン版に掲載されたこの研究論文は、がん細胞から放出される小さな球形のエキソソーム (画像) と呼ばれる梱包の役割に焦点を当てている。エキソソームはがん由来のタンパク質を含んでおり、肝臓の微小環境を膵臓がん転移に適した条件に変えることができるのである。American Cancer Societyの推定によると、アメリカ合衆国では年間49,000人近い人が膵臓がんと診断され、そのうち40,000人以上がこの病気で亡くなっている。膵臓がんはがんの中でももっとも死亡率の高い病気で、がん宣告から5年生存率はわずか6%、メディアンの生存率はわずか6か月にとどまる。 Nature Cell Biology掲載の論文は、「Pancreatic Cancer Exosomes Initiate Pre-Metastatic Niche Formation in the Liver」と題されており、論文の首席著者で、Weill Cornell Medical College, Department of PediatricsのStavros S. Niarchos Professor in Pediatric CardiologyとProfessor of Pediatricsを務め

ロッテルダムで開かれていた第5回国際細胞外小胞学会 (ISEV 2016) 年次総会金曜日全体会議では、著名な免疫学者で細胞生物学者のFrancisco Sanchez-Madrid, PhDが、「Immune Cell-Cell Communication: Mechanisms of MicroRNA and Protein Sorting into Exosomes (免疫細胞間情報伝達: microRNAやタンパク質がエキソソームに入り込むメカニズム)」のタイトルで講演した。 Dr. Sanchez-Madridは、Universidad Autonoma de Madridの教授であり、マドリッドのLa Princesa Hospital, Immunology Departmentの長も務めている。ひな段会議室をぎっしりうめた800余人の参加者を前に、博士の講演は2つの主題を中心にして行われた。一つは、免疫シナプスを通してエキソソームによって行われる遺伝子とミトコンドリアの構成物質の輸送(免疫シナプスとは、抗原提示細胞または標的細胞と、エフェクターT細胞またはナチュラル・キラー細胞などのリンパ球との接点のインターフェース。また、免疫シナプスは、免疫細胞間の情報伝達のために、その接触面に一時的に構成される膜とも定義される)。もう一つは、miRNAやタンパク質がエキソソームに収まるメカニズムについてだった。 博士は、まず免疫シナプスにおいて、miRNAを含んだエキソソームが活性T細胞から一方通行で放出されることについて語り、ついで、このエキソソームにはmtDNA結合タンパク質も含まれている証拠を提示した。事実、次世代シーケンシングにより、エキソソームの中にはミトコンドリア・ゲノム全体を含んでいるものもあることが示されている。さらに博士は、mtDNAが受容細胞のシ

オランダのロッテルダムで2016年5月4日から7日までの4日間開催された国際細胞外小胞学会総会 (ISEV 2016) の最終日土曜日は半日の閉会会議で、興味深い新しい研究や4日間の会期中に発表されたいくつかの優れた研究の授賞式などが行われた。 総会はJan Lotvall前会長が、オーストラリアのLa Trobe University, Department of Biochemistry & Geneticsの学部長を務めるAndy Hill氏 (写真) に会長職を引き渡す挨拶を行い、ISEV 2017年次総会は、カナダのトロントで開かれることを発表して閉幕した。この2つの発表に先立ち、アメリカのMedical School of Brown UniversityのOncology & Medicine教授を務めるPeter Quesenberry, MDと、同じくアメリカのVanderbilt University Medical CenterでCancer BiologyとCell and Developmental Biology教授を務めるAlise Weaver, MD, PhDが、臨床と科学研究の2つの面の総括講演を行った。この総会を成功させた、ハンガリーのEdit BuzasをリーダーとするISEV国際地域組織委員会の素晴らしい努力も絶賛された。また、口頭とポスターによる優れたプレゼンテーションにも賞が与えられた。また、ISEVが、5月中にEV(Extracellular Vesicles)に関するオンライン・コースを立ち上げるとの発表もあった。総会の最終日午前中は、「Experts Meet」小部会が、血液、母乳、尿という3種の生体液をテーマに3箇所に分かれて同時に開かれた。その後、最新の研究の口頭プレゼンテーションが3部会で同時に行われた。この3部会

ボストンのタフツ大学の生物学者が率いる研究チームは、発生中の胚にある脳が、感染を防ぐのに役立つシグナルを発生期の免疫系に提供し、細菌の挑戦を生き抜く胚の能力を大幅に改善することを発見した。 研究者たちは、脳を取り除いた状態で発達し続けるカエルの胚を使用して、脳のない胚は免疫細胞の力を傷害または感染部位に集結させることができず、胚をより迅速に感染に陥れることを発見した。対照的に、脳の存在は、細菌の脅威を克服するために損傷部位に免疫細胞を誘導するのに非常に役立つ。   この研究は、2020年2月4日に NPJ Regenerative Medicine でオンラインで公開された。 このオープンアクセスの論文は「In Vivoの脳と細菌のインターフェース:自然免疫の重要な調節因子としての発達脳(An In Vivo Brain-Bacteria Interface:The Development Brain as a Key Regulator of Innate Immunity)」と題されている。  発生中の胚では、脳と免疫系の両方が完全には形成されていない。 免疫系は、その一部として、感染にすぐに反応し、トレーニングを必要とせず、抗体を産生することのない、細胞の「生得的な」システムで主に構成されている。 それにもかかわらず、これらの細胞は、感染部位に向かって動き、反応を引き起こすように促す信号を必要とする。研究チームは、脳が発生期の免疫システムを導く信号に寄与するように見えることを発見した。 脳のないカエルの胚が大腸菌に感染したとき、胚の約16%だけが生き残ったが、脳の存在は感染から50%以上を保護した。 免疫細胞のマーカーを追跡することで、免疫細胞の組成は脳の有無にかかわらず変わらないため、効果は脳が免疫系の発達を何らかの形で妨げることによるものではないことを確認し

テキサス大学アーリントン校(UTA)の研究者らは、免疫応答を調節し、髄膜炎や敗血症などの中枢神経系の炎症性疾患を潜在的に制御する新しいパスウェイを発見した。「このプロセスを調整するためには、細菌感染に対する炎症反応がどのような調節を引き起こすかを知る必要がある。そうすることができれば、敗血症や髄膜炎、癌や筋ジストロフィーなどの今まで治療が困難だった中枢神経系の炎症性疾患をコントロールすることができる。」とUTA准教授のSubhrangsu Mandal博士は語る。 Mandal博士のチームの研究成果は、2018年10月23日にScientific Reportsにオンラインで掲載された。 このオープンアクセスの論文は、「LncRNA HOTAIRは、リポ多糖によって誘導されるサイトカインの発現およびマクロファージにおける炎症反応を調節する(LncRNA HOTAIR Regulates Lipopolysaccharide-Induced Cytokine Expression and Inflammatory Response in Macrophages.)」と題されている。研究者らは、白血球に存在するロングノンコードRNA(lncRNA)分子HOTAIRが、細菌の存在下で細胞に免疫応答を活性化するようシグナルを送る能力を有することを見出した。RNAは全ての生細胞に存在する。 その主な役割は、DNAからの指示を運ぶことだ。 「HOTAIRがシグナル伝達経路に関与していることを知ることは、それを細菌感染のバイオマーカーとして利用できることを意味している。」とMandal博士は付け加えた。 「シンプルな血液検査は、感染症をはるかに迅速に発見し、今まで治療が難しかった敗血症性ショックや髄膜炎などの急速に容態が変化する患者の治療を改善する可能性がある。」 研究者らは、UTA

カリフォルニア大学サンディエゴ校(UCSD)の研究者チームは、膵臓がんの存在を示す手がかりを探すための血液サンプルを分析する新戦略を評価した研究を発表した。ACS Nanoに掲載されたこの論文は、「交流電気動力学チップ上のエキソソームタンパク質バイオマーカーの統合解析が患者血液中の膵臓がんの迅速な検出を可能にする(Integrated Analysis of Exosomal Protein Biomarkers on Alternating Current Electrokinetic Chips Enables Rapid Detection of Pancreatic Cancer in Patient Blood)」と題されている。 早期に膵がんと診断された患者は、長期生存の可能性が高く、手術を含む治療オプションへのアクセスが増加する。 しかし、現在のところ、膵臓がんのための標準スクリーニングプログラムまたは効果的早期検出戦略は存在しない。PanCAN(膵臓がんアクションネットワーク)のような研究者や組織では、早期に疾患を効果的に診断し、改善する方法の特定に取り組んでいる。 UCSDチームの新研究では、膵臓がんと診断された人々の血液サンプルを分析し、健常人の血液と比較した。 具体的には、血液サンプルからエキソソームと呼ばれる小さな粒子を分離した。以前、MDアンダーソンがんセンターで行われた研究プロジェクトでは、エキソソームをバイオマーカーまたは人体で何が起こっているかを示す測定可能物質としてフォーカスした。そして今年の初め、Johns Hopkinsでは血液中のタンパク質とDNAレベルを調べ、参加者のがんの存在と位置を調べる大規模な研究を発表した。UCSDの研究では、参加者の血液サンプル中に存在するエキソソームを単離し評価するため、技術的に進歩したマイクロチップ

現在、アルツハイマー病の治療法は無く、効果的な介入には遅すぎる段階でしか診断することができないという現実が薬物研究を妨げているとしばしば論じられている。アルツハイマー病は、患者が記憶喪失のような典型的な症状を示すよりもずっと前から始まると考えられている。 アルツハイマー病の患者に最初の症状が現れるずっと前に病気の早期指標を検出できる血液検査が開発された。   この血液検査は危険にさらされている患者を特定する機会を提供し、それによって創薬における新たな道への扉を開くかもしれない。この研究は、2018年4月6日にEMBO分子医学でオンラインで公開された。 オープンアクセスの記事は、「アミロイド血液バイオマーカーがアルツハイマー病を検出する(Amyloid Blood Biomarker Detects Alzheimer's Disease.)」と題されている。 アルツハイマー病の特徴の1つは、患者の脳内のアミロイドβプラークの蓄積である。 ドイツのRuhr University BochumのDr. Klaus Gerwert博士と彼のチームが開発した血液検査は、血液中の病的状態と健康な形態のアミロイドβの相対量を測定することによって判定するものである。病理学的形態は、この分子のミスホールドのバージョンであり、脳内に有毒なプラークの形成を開始することが知られている。 毒性アミロイドβ分子は、疾患発症の15〜20年前に患者の体内に蓄積し始める。 現在の研究でGerwert博士らは、病気の初期段階で血液検査が病理学的アミロイドβの適応症を見つけることができるかどうかを検討した。研究者らは、Oskar Hanson博士が実施したスウェーデンのBioFINDERコホートから、病気の早期、いわゆる「前駆」段階にある患者に最初に焦点を合わせた。 彼らは、軽度の認知障害を有する参加者の

Weill Cornell Medicineの科学者が発見した新しい細胞メッセンジャーは、がん細胞が体内の細胞間送達をどのように行うのかを明らかにするのに役立つかもしれない。 2018年2月19日にNature Cell Biologyに掲載された論文では、非対称フローフィールドフロー分画(asymmetric flow field-flow fractionation : AF4)という最先端の技術が、がん細胞が分泌するDNA、RNA、脂肪、およびタンパク質を含むエキソソームを効率よく分画できることを示している。   この技術により、研究者は2つの別個のエキソソームサブタイプを分離し、「エクソメア(Exomeres)」と名付けた新しいナノ粒子を発見することができた。この論文は「非対称フローフィールドフロー分画による細胞外小胞のサブセットと識別のためのナノパーティクルの同定(Identification of Distinct Nanoparticles and Subsets of Extracellular Vesicles by Asymmetric Flow Field-Flow Fractionation.)」と題されている。また、2018年2月19日にはナノ粒子を識別するためのプロトコルをオンラインで公開した。「エクソメアが癌細胞によって分泌される最も優勢な粒子であることを発見した。」とシニア著者のDavid Lyden博士、Stavros S. Niarchos小児心臓学教授、Sandra and Edward Meyer Cancer Centerの科学者は語った。 「それらはより小さく、構造的にも機能的にもエキソソームとは異なる。 エクソメアは主に、骨髄や肝臓の細胞と融合し、薬物の免疫機能や代謝を変えることができる。後者の発見は、多くのがん患者が少量の

Johns Hopkins Kimmel Cancer Centerの研究チームが、ただ1回の血液検査で8種の一般的ながん種を検出し、がんの部位も判定できる方法を開発した。このCancerSEEKと呼ばれる検査法はユニークな非観血性の多検体検査法であり、8種のがんタンパク質のレベルを同時に測定し、血中循環DNAのがん遺伝子変異を検出することができる。この検査法は、アメリカでがん死の60%以上を占めるもっとも一般的ながん8種を検出することを目的としている。   この8種のうち、5種はこれまでスクリーニング検査法がなかったものである。この論文の首席著者で、腫瘍学と病理学の教授を務めるNickolas Papadopoulos, PhDは、「がんの早期発見に特定のバイオマーカーの組み合わせを用いる方法はがんスクリーニング検査法を大きく変える可能性があり、もともとはがんの治療に複数の薬剤の組み合わせを用いるのと同じ原理だ」と述べている。この論文は、2018年1月18日付Scienceオンライン版に掲載された。論文は、「Detection and Localization of Surgically Resectable Cancers with a Multi-Analyte Blood Test (多検体血液検査による外科的切除可能ながんの発見と部位判定)」と題されている。 この論文の第一著者で、Johns Hopkins University School of MedicineのMD, PhD課程に所属するJoshua Cohenは、「この固有の特異性を利用するため、大量のがん中の突然変異を少なくとも一つは検出できる小さくしかも強力なパネルの開発を考えた。事実、擬陽性判定を防ぎ、スクリーニング検査を安価にするためには突然変異パネルを小さくすることが求められる」と述べてい

パーキンソン病(Parkinson's disease)は、進行性の脳細胞死および運動機能の広範な喪失をもたらす神経変性疾患である。 この疾患に関して多くの研究が行われているにもかかわらず、現在利用可能な決定的診断試験法は無い。マンチェスター大学(英国)の研究者らは、パーキンソン病を匂いで感じ取ることができる女性の助けを借り、この疾患の特徴的な臭いを構成する化合物の同定について報告した。 2019年3月20日に、American Chemical Societyから出版されたACS Central Scienceでこの発見は報告された。 このオープンアクセスの論文は「皮脂からパーキンソン病の揮発性バイオマーカーの発見(Discovery of Volatile Biomarkers of Parkinson’s Disease from Sebum.)」と題されている。ヒポクラテス、ガレヌス、そしてアビチェンナなど古代の医師らは、診断ツールとして匂いを使った。嗅覚検査は現代医学では一般的ではないが、糖尿病のような病気はしばしば特定の匂いに関連している。 しかし、匂いと神経変性疾患とを結び付ける証拠はほとんど無かった。超人的な嗅覚を持つ女性、Joy Milneさん(写真)は、1986年に亡き夫のLesがパーキンソン病と診断された。彼女は非常に敏感な嗅覚を持っており、普通の嗅覚能力では検出されない匂いを検出して、区別することが可能だ。Milneさんは臨床症状が現れるよりずっと前にパーキンソン病の独特の皮脂の臭いを区別することができる。そこで、マンチェスター大学のマンチェスターバイオテクノロジー大学院マススペクトロメトリー教授のPerdita Barran博士は、Milneさん協力の元、どの化学物質がパーキンソン病患者の皮脂の匂いを構成しているのかを判断したいと考えた。 皮脂

マラソンの練習をしている人なら誰でも、個々のランニングトレーニングが時間の経過とともに体力の大幅な向上をもたらすことを知っているのでトレーニングが認知機能に効果があると聞いても驚くことはないだろう。しかし、これまでのところ、その根底にある神経生物学を説明し支持するための研究はほとんどなされていなかった。 2019年3月23日から26日にサンフランシスコで開催されCognitive Neuroscience Society(CNS)で、運動が脳に及ぼす影響について、1回のトレーニングの後に起こる脳の変化は、長期にわたる継続的な身体トレーニングで起こることを予測できることが報告された。CNSでこのトピックに関するシンポジウムを主催したニューヨーク大学(NYU)の神経科学教授であるWendy Suzuki博士 は、「身体活動とあなたの脳がどのように機能するかには強い直接的な関係がある。」と語った。この論文は「ヒトにおける運動の即時的および長期的な影響のイメージング」と題されている。1500人以上の科学者がCNS年次総会に参加し、このシンポジウムでは、Michelle Voss博士とMichelle Carlson博士、そしてMichael Yassa博士とEmrah Duzel博士が講演を行った。「人々はまだ身体的健康を脳や認知的健康に結びつけていない。彼らは痩せることに関心が向いている。」しかし、さまざまなタイプ、量、強度の身体活動が脳機能をどのように改善するかを明らかにする新研究が出てくるにつれて、認知神経科学者は、社会経済的に恵まれない地域社会において、身体活動のプラスの影響についての一般世論に大きな変化をもたらすことを期待している。2回目のシンポジウムで話題になった新研究では、「通常、短期的および長期的の影響は異なる研究で検討されているため、エクササイズミラーによる即時

心筋の強化や他の疾患を治療する幹細胞療法は、ヒト臨床試験で有望視され始めている。 しかし、臨床成果の観察以外に、標的臓器内の移植細胞の有効性を評価するうえで再現性の欠如や使用期限、非侵襲的なツールの欠如は、幹細胞分野の進歩を遅らせてきた。 メリーランド大学医学部(UMSOM)、ペンシルバニア大学、およびエモリー大学の研究者らは、移植された幹細胞の有効性を追跡するのに血液検査が使用できると理論づけた。 彼らは、移植幹細胞からレシピエントの血液に分泌される エクソソーム と呼ばれる微小な細胞成分を分析した。 研究者らは、2種類のヒト心臓幹細胞を移植し、循環するエクソソームをモニターした後、げっ歯類の心臓発作モデルまたは心筋梗塞モデルで自らの理論を検証した。この研究者らは、循環するエクソソームが細胞成分を標的の心筋細胞に送達し、心臓の修復をもたらすことを発見した。 彼らの研究成果は、2019年5月22日にScience Translational Medicineにオンラインで発表された。 この論文は「移植された前駆細胞由来の循環エクソソームが虚血性心筋の機能回復を助ける(Circulating Exosomes Derived from Transplanted Progenitor Cells Aid the Functional Recovery of Ischemic Myocardium.)」と題されている。 「エクソソームには由来する細胞のシグナルを含んでいる - タンパク質、核酸やマイクロリボ核酸(miRNA) - 受容体細胞に影響を及ぼし、我々が標的としている臓器を改変または再生する。」と共著者であるUMSOMの外科教授およびメリーランド大学小児病院の小児心臓外科のディレクターであるSunjay Kaushal博士は述べた。「我々は現在、心臓だけでなく、他の臓

レイク・エリー大学オステオパシー医学部の研究者らは、3匹のビーグル犬が肺癌を匂いで識別できることを明らかにした。これは、この病気特有のバイオマーカーを識別するための最初のステップだ。研究者らは、犬の能力が集団癌検診のための効果的で安全で安価な手段の開発につながるかもしれないと言う。   8週間の訓練の後、その優れた嗅覚受容体遺伝子で選択されたビーグル犬は、悪性肺癌患者から採取した血清サンプルと健常対照者を97%の精度で識別することができた。 この二重盲検法は2019年6月17日にThe Journal of the American Osteopathic Associationに掲載された。 このオープンアクセスの論文は、「犬の嗅覚による血中の非小細胞肺癌の検出精度(Accuracy of Canine Scent Detection of Non–Small Cell Lung Cancer in Blood Serum.)」と題されている。「我々は犬を使い、紛れもないバイオマーカーを特定するまで匂いの層を分類している」とレイク・エリー大学オステオパシー医学部の教授であり、この研究の主著者であるThomas Quinn博士は述べています。 「まだまだたくさんの仕事があるが、我々は良い進歩を遂げている。」犬を鼻の位置で血清サンプルを入れた部屋に導いた。 いくつかのサンプルは非小細胞肺癌の患者由来だ。 他のものは健常者のコントロールから採取した。 サンプルを徹底的に嗅いだ後、犬は癌の陽性所見を示すために座り、また何も検出されなかった場合は移動した。 Quinn博士と彼のチームは、この研究の2回目の再現に近づいている。 今回の犬は、患者がフェイスマスクで呼吸することによって収集された患者の呼吸のサンプルを使用し、肺癌、乳癌、および結腸直腸癌を識別するために働いた。調査結

時折エンジンルームの中を覗かないと、車の修理が必要かどうかを予測することは困難だ。 同様に、予防心臓専門医は、現在治療を受けていない人の初期段階の心臓病を検出する方法を探している。 テキサス大学(UT)サウスウェスタンメディカルセンターの予防心臓病研究者は、タンパク質バイオマーカーの新しい血液検査でこれらの個人を特定できると考えている。 2019年11月11日にCirculationでオンラインで公開された彼らの新しい研究では、多民族の合計13,000人近くを含む3つの主要な患者集団からなる患者データを蓄積した。 研究チームは、2つのバイオマーカー(血中タンパク質)のレベルを測定することで、治療が必要な人を特定できるかどうかを調べた。 研究者は、現在治療に推奨されていない軽度の高血圧の成人の約3分の1が、これら2つのバイオマーカーのいずれかが僅かに上昇していることを発見した。 これらの個人は、今後10年間で心臓発作、脳卒中、またはうっ血性心不全を発症する可能性が高くなった。 言い換えれば、これらの患者は「レーダーの下を飛んで」おり、心血管イベントのリスクが高いことを知らない。このCirculationの論文は、「2017 ACC / AHA高血圧ガイドラインによるプールされたコホート分析による降圧薬の配分のためのリスク評価へのバイオマーカーの組み込み(Incorporation of Biomarkers Into Risk Assessment for Allocation of Antihypertensive Medication According to the 2017 ACC/AHA High Blood Pressure Guideline: A Pooled Cohort Analysis.)」と題されている。Ambarish Pandey博士(写真左)と

敗血症の発見と治療は数十年に渡りほとんど進歩していないが、やっと前進するかもしれない。敗血症は身体全体に病原体感染の急増をもたらす致命的な医学的合併症だ。 シンシナティ小児病院医療センターの研究者は、5つのバイオマーカーを測定し、どの患者が敗血症(血液中毒とも呼ばれる)による死亡における低・中または高リスクであるかを正確に予測する新しい高速血液アッセイを開発し、テストが成功したことを報告している。 この研究の上級調査員でシンシナティ・チルドレンズのクリティカルケア医学部長である Hector Wong 博士(写真)によると、このPERSEVEREと呼ばれるこの新しい検査法により、医師は敗血症を早期に発見して層別化することができるという。どの5つのタンパク質/遺伝子がアッセイの血液パネルの5つのバイオマーカーを構成するかを知ることにより、医師ははるかに早く、より正確に医療介入を開始できる様になる。患者を低リスク、中リスク、高リスクのグループに階層化できるだけでなく、バイオマーカー検査により、医師は特定の患者に対して適切な介入を選択できる。Science Translational Medicine誌の2019年11月13日号に掲載されたこの論文は「小児敗血症バイオマーカーリスクモデルの前向き臨床試験と実験的検証(Prospective Clinical Testing and Experimental Validation of the Pediatric Sepsis Biomarker Risk Model.)」と題されている。 「PERSEVEREプラットフォームは、診断ではなく、層別化と予後診断に焦点を当てている」とWong博士は述べている。 「予後の改善は精密医療の基本ツールだ。個人の病気の経過と進行を予測し、異なるグループの患者や個人に合わせて治療を調整するこ

英国のフランシスクリック研究所とシャリテー – ベルリン医科大学の研究者、および他機関の同僚は、 COVID-19 の患者が重症になる可能性が高いかどうかの予測に使用できる27のタンパク質バイオマーカーを特定した。COVID-19を引き起こすRNAウイルスであるSARS-CoV-2に感染した人々は、異なる反応を示す。 この病気は症状が出ない人もいれば、入院が必要な致命的な人もいる。この研究では、2020年6月1日にCell Systems誌でオンラインで公開され、COVID-19患者のさまざまな症状の重症度に応じた、27のバイオマーカー候補を発見したことが発表された。このバイオマーカーは、医師が患者の病気を予測し、科学者に医薬品開発の新しいターゲットを提供するのに役立つ。 このオープンアクセスCell Systemsの論文は「超ハイスループットの臨床プロテオミクスがCOVID-19感染の分類子を明らかにする(Ultra-High-Throughput Clinical Proteomics Reveals Classifiers of COVID-19 Infection.)」と題されている。 研究者らは、血漿中のさまざまなタンパク質の存在と量を迅速にテストするために、質量分析(MS)法を改良した。 このMSプラットフォームはフランシスクリック研究所で開発され、シャリテー – ベルリン医科大学で31人のCOVID-19患者の血清分析に適用された。 この結果は、同じ病院でCOVID-19の追加の17人の患者と15人の健康な人々でさらに検証された。 研究者らは、彼らの発見がCOVID-19患者のこれらのタンパク質の1つまたはいくつかのレベルをチェックするための簡単なルーチンテストの開発につながることを期待している。 このような検査の結果は、医師がどのような治療を行うかを

香港科学技術大学(HKUST)の科学者チームは最近、SARS-CoV-2コロナウイルスの潜在的なワクチンターゲットのセットを特定する重要な発見を行い、ウイルスによって引き起こされた新規肺炎(COVID-19)に対するワクチン開発に向けた実験的取り組みを導く重要なガイダンスを提供した。2003年にSARS(重症急性呼吸器症候群)の大流行を引き起こしたSARS-CoVと同様に、SARS-CoV-2は同じベータコロナウイルス属に属している。SARS-CoV-2とSARS-CoVの遺伝的類似性を検討することにより、チームは実験的に決定された免疫学的データを活用して、SARS-CoV-2に完全に一致するSARS-CoV由来B細胞およびT細胞エピトープのセットを特定した。 エピトープは、ウイルスに対するアクションをトリガーするために免疫系によって認識されるバイオマーカーだ。 利用可能なSARS-CoV-2遺伝子配列の中で同定されたエピトープに変異は観察されていないため、これらのエピトープの免疫ターゲティングは、新規肺炎COVID-19に対する防御に役立つ可能性がある。 データ科学者のMatthew McKay 教授とAhmed Abdul Quadeer 博士が率いるチームは、彼らの研究がSARS-CoV-2に対する効果的なワクチンの開発に向けた実験的研究を導く助けになると期待した。 McKay 教授は、HKUSTの電子コンピューター工学および化学および生物工学の学部の教授である。 Quadeer博士は、同じくHKUSTの電子コンピューター工学科のポスドク研究員だ。彼らの調査結果は、2020年2月25日にオープンアクセスジャーナルVirusesにオンラインで公開された。 この論文は、「SARS-CoV免疫学的研究に基づいたCOVID-19コロナウイルス(SARS-CoV-2)の潜在的

膵臓の持続性炎症(慢性膵炎)は、米国で3番目に致命的な癌である膵臓癌を発症する既知の危険因子だ。 房細胞(通常、腸や気道で見られる化学的変化に敏感な細胞)は以前に膵臓で発見されていたが、その機能はほとんど謎のままだった。現在、ソーク研究所のGeoffrey Wahl 博士、およびスタッフの科学者であるKathleen DelGiorno 博士が率いる研究チームは、膵炎のマウスモデルを用いて、膵炎における房細胞の形成と免疫における房細胞の驚くべき役割を明らかにした。2020年2月14日に Frontiers in Physiology のオンラインで公開された研究結果は、膵炎および膵臓癌をテストするための新しいバイオマーカーの開発につながる可能性がある。このオープンアクセス論文は、「タフト細胞の形成は膵臓損傷における上皮可塑性を反映する:ヒト膵炎のモデル化への影響(Tuft Cell Formation Reflects Epithelial Plasticity in Pancreatic Injury: Implications for Modeling Human Pancreatitis.)」と題されている。   「膵臓疾患のこれらの初期段階を理解することにより、我々の研究が膵炎と膵臓癌を早期に診断および治療するための新しい戦略の開発につながることを願っている」 とソークの遺伝子発現研究所の共著者であるWahl 博士は述べた。膵臓は、消化と血糖調節に役割を果たす腹部の臓器だ。 それでも、科学者は膵臓が膵炎などの損傷からどのように回復するか、または膵臓癌を撃退する方法についてほとんど知らない。 膵臓のほとんどは、消化酵素を生成および分泌する腺房細胞で構成されている。腺房細胞は、房細胞と呼ばれる別の種類の細胞に形質転換する能力も持っている。 科学者は房細胞のすべての機

マウントサイナイ医科大学の研究者は、筋萎縮性側索硬化症(ALS)やルーゲーリック病と呼ばれる、退行性でしばしば致命的な神経疾患について、小児期に見られるバイオマーカーを同定したと2020年5月21日に米国科学誌「Annals of Clinical and Translational Neurology」のオンラインで発表した。このオープンアクセスの論文は、「筋萎縮性側索硬化症における早期生命金属異常調節(Early Life Metal Dysregulation in Amyotrophic Lateral Sclerosis.)」と題されている。 研究者らは、成人になってALSを発症した患者の「歯」にバイオマーカーを発見した。 彼らはレーザーを使用して毎日歯に形成される年輪をマッピングし、ALSの患者がそうでない患者と比べ、出生時および生後10年以内に異なる方法で金属を代謝したことを示す年輪の形成をエビデンスとして発見した。ALSは通常、50代または60代で発症することが多い。 原因は不明であり、発症を予測する検査もない。 遺伝子研究はまだ多くを明らかにしておらず、専門家が環境要因が病気の発症に重要な役割を果たすと信じていたが、どれがそうなのか明確な兆候もなかった。「これは、出生時および人生の最初の10年以内に、疾患の臨床的兆候または症状のかなり前に明確な兆候を示した最初の研究だ」と、筆頭著者であるマウントサイナイ医科大学のManish Arora博士は述べた。 「大規模な研究でこの作業を検証した後、長期的には、これが予防戦略につながることを願っている。 この研究のエキサイティングなところは、医薬品開発によって変更できるバイオロジカルパスウエイに目を向けていることだ。」この研究では、31人の対照群と比較して36人のALS患者において、亜鉛や銅、鉛やスズなどの毒素を

テキサス大学メディカルブランチ(UTMB)のRamkumar Menon博士が率いる研究者グループは、まだ確実ではないが分娩のタイミングにおけるキープレイヤーについて新たな洞察を見出した。この新しい情報によって、科学者たちは早産を防ぐことができるようになるかもしれない。 この研究は2019年1月24日にScientific Reportsにオンラインで発表された。 このオープンアクセスの論文は「 エクソソーム はマウスで早産を引き起こす:妊娠中の傍分泌シグナル伝達の証拠(Exosomes Cause Preterm Birth in Mice: Evidence for Paracrine Signaling in Pregnancy.)」と題されている。世界保健機関(WHO)によると、推定1500万人の乳児が毎年早すぎる時期に生まれている。早産による合併症は、5歳未満の子供の主な死亡原因であり、世界中で毎年約100万人が死亡している。米国では、2017年に乳児10人に約1人が早産している。女性が妊娠の終わりになると、胎児が出産のために十分成熟したことを知らせる化学物質が放出される。この化学物質の放出は母親のホルモンレベルをシフトさせ、それが子宮内の炎症を増やし、分娩と出産が始まる。 UTMBの准教授であり婦人科のMenon博士は、次のように述べている。「妊娠中にこのタイプのシグナル伝達が何をするのかについてはほとんど分かっていないので、分娩と出産のタイミングにおけるエクソソームによって運ばれる傍分泌(パラクリン)の役割を調べた。」研究者らは妊娠中のマウスから血漿サンプルを集め、エクソソームを単離した。 妊娠初期または妊娠後期のいずれかに収集されたエクソソームを、ヒトの妊娠第三期に相当する時期に、別の群の妊娠マウスに注射した。「我々は、高濃度の妊娠後期エクソソーム

2017年10月9日、ASEMV(American Society for Exosomes and Microvesicles) 年次大会の2日目、Harvard Univesityの1年生、Indrani Dasさん (18) が自身のエキソソーム研究を発表し、200名の名声のある研究者達を釘付けにした。この研究にはRegeneron 2017 United States Science Talent Search Grand Prizeと賞金$250,000が贈られている。   この賞自体、高校上級生を対象とする科学数学のコンペティションとしてアメリカでもっとも歴史が古く、またもっとも栄誉とされる賞であり、過去にはWestinghouse社やIntel社もスポンサーを務めたことがある。写真は受賞当日のIndraniさん。 アシロマーでのIndraniさんのプレゼンテーションに対して研究者達は「素晴らしい」、「パワフル」、「信じられない」など最高級の賛辞を口にしている。彼女の受賞研究は、「Exosomal MicroRNA-124s: Novel Translational Reactive Astrocyte Repair in Vitro (エキソソーム由来のMicroRNA-124: 反応性アストロサイトの新しいトランスレーショナルなin vitro修復法)」と題されている。 当初、Indraniは神経変性疾患や脳外傷の治療に関心を持っていたが、その際にエキソソームと呼ばれる小胞が血液脳関門を通り抜けることとこの小胞で脳外傷の部位にまで医薬を運べる可能性を知り、高校で4年間にわたりエキソソームを研究するきっかけになった。また、脳卒中、脳外傷、アルツハイマー病、パーキンソン病などがいずれもグリア細胞の動きを極端に変化させること、特に反応性アストログリオーシスと

University of SydneyのBrain and Mind CentreとRoyal Prince Alfred Hospitalが中心となって行った画期的な研究で、多発性硬化症 (MS) の患者の血液中に疾患特有の物質が含まれていることを発見、若年成人の神経障害としてはもっとも一般的なこの疾患を確実に診断するバイオマーカーになるという結果を得た。2017年10月30日付Scientific Reportsオンライン版に掲載された研究論文は、簡単な血液検査だけで、「調節異常」のmicro-RNAの微小分子を発見し、それによってMSを正確に診断し、また患者の疾患の段階の違いも判定できたと記述している。 オープンアクセス論文として掲載されたこの論文は、「Exosomal MicroRNA Signatures in Multiple Sclerosis Reflect Disease Status (多発性硬化症固有のエキソソーム由来MicroRNAが疾患状態の指標に)」と題されている。現在のところ、MSを確実に発見する検査法はなく、疾患の診断と観察は、臨床診察、MRI、脳脊髄液検査、電気生理検査などに頼っている。MSは慢性疾患であり、しかも現行の診断、観察検査は金がかかる上に疾患の異なる段階を判定するにもその能力には限界がある。同研究チームは、健康人とMS患者を識別するバイオマーカーを発見しただけでなく、再発寛解型多発性硬化症 (RRMS) と進行型多発性硬化症という2種のMS亜型を判別する9種の固有なmicro-RNA分子を見つけている。MS患者の70%ほどが再発寛解型多発性硬化症 (RRMS) であり、これはしばしば二次進行型MSに発達することがある。MS患者の10%から15%は、発症当初から進行型と診断される一次性進行型MSである。研究チームはさらに研究の

スペインのマドリッドにあるカルロス3世 国立循環器研究センター(CNIC)の研究者らは、ウイルスやバクテリアなどの病原体に早期に対応する免疫システムの防御機構に関する貴重な情報を提供している。2018年7月9日にネイチャーコミュニケーションズのオンラインで公開されたこの研究データは、免疫系の異なる細胞コンポーネントがどのようにして病原体に効果的な反応を起こすかを説明している。 CNICの研究者らは、ある種のナノベシクルに含まれるミトコンドリアDNAが、抗ウイルス遺伝子プログラムの活性化を引き起こすレセプター細胞に警戒状態を引き起こすと特定した。エキソソームとして知られるこれらのナノベシクルは、Tリンパ球によって産生され、細胞間接触を介して樹状細胞によって捕捉される。病原体に対する免疫応答は、Tリンパ球と抗原提示細胞、特に樹状細胞との間の特異的相互作用を必要とし、免疫シナプスとして知られるプロセスである。 この過程で、細胞表面に存在するレセプター結合とそのリガンド、およびエキソソームの移動の両方によって、細胞間情報が交換されることが、研究者らによって説明されている。今まで、免疫シナプス後のT細胞における活性化経路が研究されてきた。 しかしながら、受容されたシグナルの同一性および樹状細胞に対するそれらの機能的効果は、あまり注目されてこなかった。プリンセサ病院長、マドリード自治大学免疫学教授であるCNICの細胞間コミュニケーショングループのFrancisco Sánchez-Madridk教授は、以前、免疫シナプスの間にエキソソームを樹状細胞に転移させるT細胞の能力を述していた。この論文は、「抗原接触を介した活性化T細胞からのDNA含有細胞外ベシクルによる樹状細胞のプライミング(Priming of Dendritic Cells by DNA-Containing Extra

癌細胞は、制御不能になっている細胞の塊ではない。 彼らは自分の生存のために免疫システムとの積極的な戦闘に参加する。免疫系を回避できることは癌の特徴である。 ペンシルベニア大学(Penn)の研究者によると、癌細胞は、血液中を循環する生物学的な"ドローン"であるエキソソームとPD-L1と呼ばれるタンパク質により、腫瘍に到達して戦いをする前にT細胞を疲弊させることを報告した。 2018年8月8日Natureに掲載されたこの研究は、School of Arts and Sciences生物学のWei Guo博士とPerelman School of Medicine病理学研究所のXiaowei Xu博士の共同研究である。主に転移性メラノーマに焦点を当てていたが、チームは乳癌と肺癌もPD-L1を持つエキソソームを放出することを発見した。この論文は、「Exosomal PD-L1は免疫抑制に寄与し、抗PD-1応答に関連する(Exosomal PD-L1 Contributes to Immunosuppression and Is Associated with Anti-PD-1 Response.)」と題されている。 この研究は、癌が免疫系を抑制するために全身的にどのようにアプローチするかについてのパラダイムシフトの絵を提供する。さらに、それはまた、腫瘍と戦うために免疫抑制を中断する抗PD1療法にどの癌患者が応答するかを予測する新たな方法を指し示し、その有効性を追跡する手段となる。「免疫療法は転移性メラノーマ患者の多くにとっての救命措置ですが、これらの患者の約70%が反応しません。」「これらの治療法は費用がかかり、毒性の副作用があるため、どの患者が反応するのかを知ることは非常に有益である。血流中のバイオマーカーを同定することで、どの患者が反応するかを早期に予測でき、 患者さんとそ

細菌は、私たちが呼吸するあらゆる空気の中に存在する。気道がこれらの細菌の感染からどのように保護されるのか、今まで謎のままだった。細菌を吸入すると、細菌を直接攻撃する細胞から直ちに エクソソーム が分泌され、鼻の前部から気道に沿って抗菌タンパク質を送り、細菌が体の奥に入る前に防御する。 マサチューセッツEye and Earの研究チームは、2018年11月12日にJournal of Allergy and Clinical Immunology(JACI)にオンラインで公開された論文でこの新メカニズムについて説明している。この発見は、私たちの免疫システムに新たな光をもたらし、また、ある細胞群から別の細胞群へのこの自然輸送過程を利用する薬物送達技術の開発に役立つ。この論文は、「エクソソーム群は気道病原体を排除し、酸化窒素を介して受動的な上皮免疫防御を提供する(Exosome Swarms Eliminate Airway Pathogens and Provide Passive Epithelial Immunoprotection Through Nitric Oxide.)」と題されている。「スズメバチの巣を蹴るのと同じように、鼻は数十億個のエクソソームを最初の細菌侵入の徴候で粘液に放出し、細菌を殺し、気道のいたるところで細胞を自然かつ強力に防御する」と、筆頭著者のマサチューセッツ Eye and Earの副鼻腔外科医、ハーバード大学医学部耳鼻咽喉科の准教授であるBenjamin S. Bleier医学博士は語った。「これは、エクソソーム集団が、細菌に対し気道をワクチン接種しているようなものだ。」このJACIの研究は、数年前にBleier博士の研究室が行なった発見が複雑だったため行うことになった。副鼻腔炎の研究では、研究者らは、鼻腔の細胞内のタンパク質が患者の鼻

2018年9月5日にParkinson's Disease Todayに掲載された研究コラムニストのAlice Melao氏の記事によれば、血液中を自然循環するエクソソームは脳を含む中枢神経系に効果的に薬を運搬することができ、マウスでの初期の研究ではパーキンソン病の影響を受けた脳の特定の領域にドーパミンを直接的に送達することができたことを示唆しているという。 中国の四川大学の研究者らによるこの論文は、「パーキンソン病のより良い治療のために脳にターゲティングされたドーパミン負荷血液エクソソーム(Dopamine-Loaded Blood Exosomes Targeted to Brain for Better Treatment of Parkinson’s Disease)」と題され、Journal of Controlled Releaseの2018年10月10日号に掲載された。パーキンソン病は、ドーパミンを産生する脳における神経細胞(ドーパミン作動性ニューロンと呼ばれる)の進行性変性および死によって特徴付けられる。 ドーパミンは、脳細胞の活性および機能を調節する重要なシグナル伝達分子である。Melao氏は、この病気の進歩的な性質を考えると、ドーパミン作動性ニューロンの死滅を防ぐ方法や、脳のドーパミンレベルを回復させる方法の研究に焦点を当てているという。しかし、主要な課題は、脳を保護する半透過性の膜である血液脳関門を越えて標的治療領域に到達する可能性のある治療薬を獲得することであった。四川大学の研究者らは、 エクソソーム をドーパミン輸送手段として使用する可能性について検討した。 チームはマウスの血液からエクソソームを単離して精製し、それらを容易に追跡できるように緑色の蛍光タグで標識した。 研究者らは、実験室で増殖させたマウス脳細胞でこれらのエクソソームを使用したとき

Cell Host&Microbeに発表された研究において、ケンタッキー州のルイビル大学微生物免疫学部 James Graham Brown癌センターの研究者らは、植物由来 エクソソーム 様ナノ粒子(ELNs: exosome-like nanoparticles)が腸内微生物叢によって取り込まれ、マイクロバイオーム組成および宿主の生理機能を変化させるRNAを含むことをマウスで実証した。2018年11月14日号に掲載されたこの論文は「植物由来エクソソームMicroRNAが腸内微生物叢を形成する(Plant-Derived Exosomal MicroRNAs Shape the Gut Microbiota.)」と題されている。 著者らは、ショウガELN(GELN)について、GELN脂質依存的にラクトバチルス科によって優先的に取り込まれ、そしてラクトバチルスラムノサス(Lactobacillus rhamnosus,LGG)内の様々な遺伝子を標的とするマイクロRNA(miRNA)を含むことを示した。特に、著者らは、LGGモノオキシゲナーゼycnEのGELN mdo-miR7267-3p仲介ターゲティングがインドール-3-カルボキシアルデヒド(I 3 A)の増加をもたらすことに注目した。アリール炭化水素受容体のリガンドであるGELN-RNAまたはI 3Aは、バリア機能の改善に関連するIL-22の産生を誘導する。著者によれば、GELN-RNAのこれらの機能は、IL-22依存性メカニズムを介してマウス大腸炎を改善することができるとしており、植物製品とそのマイクロバイオームへの影響を利用して特定の宿主プロセスを標的にして病気を改善できると結論している。画像は論文の要旨から取得したものであり、要旨のページ(下のリンクから)で詳細を確認することができる。【BioQuick Ne

乳癌患者の中には、腫瘍が手術で取り除かれる前に化学療法を受ける人もいる。 ネオアジュバント療法と呼ばれるこのアプローチは、乳房温存手術を容易にするために腫瘍のサイズを縮小するのを助け、外科医が除去するための癌性細胞をほとんどまたは全く残さずに腫瘍を根絶することさえできる。 そのような場合、患者は手術後の生涯に渡り癌のないまま過ごせる可能性が高い。 しかし、すべての腫瘍が化学療法で縮小するわけではない。 腫瘍が術前療法に抵抗すると、転移性疾患を発症するリスクが高くなる可能性がある。これは、腫瘍が骨や肺などの他の臓器に再発することを意味している。化学療法に抵抗し、原発腫瘍を治療する間に他の臓器に広がる癌性細胞が原因の可能性がある。スイスのEPFL(Ecole Polytechnique FédéraleDe Lausann)のMichele De Palma博士が率いる国際研究者チームが、このプロセスに新たな光を投げかけている。 腫瘍モデルを用いて、研究者らは、患者に頻繁に使用される2つの化学療法薬、パクリタキセルとドキソルビシンが、乳腺腫瘍を誘発して エクソソーム を放出することを発見した。 化学療法の下では、エクソソームはタンパク質アネキシンA6を含み、これは未治療の腫瘍から放出されたエクソソームには存在しない。「アネキシンA6のエクソソームへのローディングは化学療法に反応して有意に増強されるようだ」と筆頭著者のIoanna Keklikoglou博士は説明する。エクソソームは化学療法治療を受けた腫瘍から放出された後、血中を循環する。 肺に到達すると、エクソソームはアネキシンA6を含むそれらの内容物を放出する。 これは肺細胞を刺激して、単球と呼ばれる免疫細胞を引き付ける別のタンパク質CCL2を放出させる。 単球が肺における癌性細胞の生存および増殖を促進する可能性があること

米国ルイジアナ州立大学公衆衛生学(LSU Health)のSuresh K Alahari博士は、乳癌細胞の遊走や動きの制御など、さまざまな生物学的プロセスに関与する新規タンパク質、Nischarinを発見した。 彼の研究室は、Nischarinが腫瘍抑制因子として機能することを示した。この研究はより良い癌治療につながるかもしれない。 現在の研究で研究チームは エクソソーム 放出におけるNischarinの機能を調べた。 エクソソームは、タンパク質を含むナノサイズの小胞であり、生理学的および病理学的プロセスの両方に関与する遺伝的および他の物質を含む。腫瘍由来のエクソソームは、腫瘍の進行および癌の転移に関与する細胞間コミュニケーションのための様々なシグナル伝達メッセンジャーを含む。 腫瘍エクソソームは、腫瘍の微小環境内の様々な種類の細胞の相互作用に影響を及ぼし、腫瘍の発生、進行、および転移を制御する。 原発腫瘍はエクソソームを放出し、それが転移性癌細胞の播種および増殖を増強する。この新しい論文は、2019年1月11日にCancer Researchに掲載され「Nischarin発現細胞由来のエクソソームは乳癌細胞の運動性と腫瘍増殖を減少させる(Exosomes from Nischarin-Expressing Cells Reduce Breast Cancer Cell Motility and Tumor Growth)」と題されている。 この研究で、Nischarinは:・細胞接着を調節し、エクソソームの性質を変える。 ・Nischarin陽性細胞由来のエクソソームは、乳癌細胞の運動性および癒着、ならびに腫瘍体積を減少させる。 ・Nischarin陽性細胞はより少ないエクソソームを放出し、細胞生存は減少する。 ・乳癌細胞をNischarin陽性エクソソームと共培養

カンザス大学、カンザス大学癌センター、およびKUメディカルセンターの研究者によって発明された新しい超高感度診断装置は、医師が血液または血漿の小滴から癌を迅速に検出することを可能にし、患者のためのより迅速な対処とより良い結果につながるだろう。この エクソソーム を検出するリキッドバイオプシー(liquid biopsy)分析のためのラボオンチップは、2019年2月25日にNature Biomedical Engineering誌にオンラインで報告された。エクソソームは、すべての細胞から放出されるが、特に癌細胞によって大量に産生される傾向がみられる。 この論文は「3Dナノパターンマイクロ流体チップを用いた循環エクソソームの超高感度検出(Ultrasensitive Detection of Circulating Exosomes with a 3D-Nanopatterned Microfluidic Chip.)」と題されている。 「歴史的に、エクソソームは細胞が不要な細胞内容物を捨てるために使用できるゴミ袋のようなものだと考えられていた。しかし過去10年間で、科学者たちは彼らがメッセージを受け手の細胞に送り、多くの生物学的機能において重要な分子情報を伝達するのに非常に有用であることを認識した。 基本的に、腫瘍はエクソソームを送り出して、親細胞の生物学的特徴を反映する活性分子を包含する。 すべての細胞がエクソソームを産生するが、腫瘍細胞は正常細胞と比較して実際に活性がある。」と、KUのDocking Family Scholarおよび化学准教授のYong Zeng博士は述べた。 この新しいラボオンチップの重要な技術革新は、自然界で一般的に見られるヘリンボーンパターンに基づいて生物学的要素を混合して感知し、「マス転送」と呼ばれるプロセスでエクソ

チェックポイント阻害剤として知られている免疫療法薬は癌の治療に革命をもたらした。最近まで治療不可能と考えられていた悪性腫瘍を持つ多くの患者が長期寛解を経験している。 しかし、多数の患者がこれらの薬には反応せず、特定の癌で他のものより遥かによく効くことに科学者は混乱してきた。現在、カリフォルニア大学サンフランシスコ校(UCSF)の研究者、およびカリフォルニア大学バークレー校の共同研究者は、なぜ多くの癌がこれらの薬に反応しないのかを説明する驚くべき現象を特定し、病気に対する免疫システムを解き放つ新しい戦略を示唆している。 2019年4月4日にCellのオンラインで発表されたこの論文は、「 エクソソーム PD-L1の抑制による全身性抗腫瘍免疫と記憶の誘導(Suppression of Exosomal PD-L1 Induces Systemic Anti-Tumor Immunity and Memory.)」と題されている。「黒色腫のような最善のシナリオでは、免疫チェックポイント阻害剤に反応する患者はわずか20〜30%だが、前立腺癌のように他のケースでは1桁の奏効率しかない。それは患者の大多数が反応していないことを意味する。 その理由を知りたかったのだ。」とRobert Blelloch博士(UCSFの泌尿器科教授および新研究の上級著者)は述べた。悪性組織では、PD-L1と呼ばれるタンパク質が「見えない外套」として機能する。PD-L1をその表面に提示することによって、癌細胞は免疫系による攻撃から身を守る。 最も成功している免疫療法のいくつかは、PD-L1または免疫細胞上に存在するその受容体、PD-1を妨害することによって作用する。PD-L1とPD-1との間の相互作用が遮断されると、腫瘍は免疫系から隠れるそれらの能力を失いそして抗癌免疫攻撃に対して脆弱になる。 いくつか

ジェット機の下から荷降ろしされるたくさん詰め込まれたスーツケースのように、 エクソソーム と呼ばれる生物学的小包は、体内のすべての細胞から継続的に展開され、これらを送り出すことによって細胞はタンパク質および遺伝物質を介して互いに通信をする。 単に細胞の「ゴミ」の微小な袋であると考えられていたエクソソームは、今や我々の健康にとって非常に重要なものであると理解されている。 近年の研究では、癌やアルツハイマー病などの神経変性疾患の蔓延に関連した分子を輸送することを示している。 しかし、最近まで、脳の発達におけるエクソソームの役割は謎のままだった。2019年7月22日にPNASのオンライン発表された新しい研究では、スクリプス研究所のHollis Cline博士(写真)と彼女の同僚は、エクソソームがニューロンや神経回路の発達に不可欠なだけではなく、発達障害の影響を受けた脳細胞の健康を回復することができることを示すことによって知識の溝を埋めようとしている。このオープンアクセスのPNASの論文は、「エクソソームは神経発生と回路構築を調節する(Exosomes Regulate Neurogenesis and Circuit Assembly.)」と題されている。「脳の発達のさまざまな段階において、細胞間のシグナル伝達が不可欠だ。我々は、エクソソームがこれらのシグナルを伝達する方法の1つであることを見出した。」と、スクリプス研究所の神経科学部門の共同議長であり、スクリプス研究所のDorris Neuroscience Centerのディレクターを務めるCline博士は語った。私たちの体は細胞内および細胞間で異なる物質を行き来させるために「ベシクル」と呼ばれる球形の容器を使用している。 エクソソームは、さまざまな生物学的積荷(脂質、タンパク質、RNA)を細胞間で輸送することを目的と

健康な心筋組織を保護することで損傷を減らす心臓発作の直後に服用できる薬があると想像して欲しい。 心臓発作が起きた場合、心臓の専門医は、「時は筋肉なり」と言うと、バージニア工科大学カリリオン心臓医療センター・フラリン生物医学研究所のディレクターであるRobert Gourdie博士(写真)は語った。 血流によって酸素が供給されないと、心臓細胞はすぐに死ぬ。 しかし、心臓発作は血液と酸素を心臓細胞の隔離された部分だけしか減らすことができず低酸素性虚血性傷害を引き起こすが、死にかけている細胞は隣の細胞に信号を送る。「問題は、死にかけている組織の領域は隔離されていないことだ。損傷した心臓細胞は健康な細胞に信号を送り始め、損傷はさらに大きくなる。」そうバージニア工科大学のGourdie博士(心臓再生医学研究、生物医学工学および機械学科の教授)は述べた。科学者は、この損傷信号が近くの健康な組織に広がることを「バイスタンダー効果」と呼ぶ。しかし、もし近くの心筋細胞が無傷のまま、低酸素性虚血性損傷によって直接影響を受けた細胞グループの損傷を局所化して維持する方法があったらどうだろうか?アメリカ心臓学会誌に2019年8月19日にオンラインで公開された研究では、Gourdie博士が率いる研究者チームによって開発された新しい分子が、心臓発作中およびその後でも心臓組織の維持に役立つことが明らかにされた。オープンアクセス論文は、「αカルボキシル末端1ペプチドとコネキシン43カルボキシル末端との相互作用は、虚血再灌流傷害後の左心室機能を維持する。(Interaction of α Carboxyl Terminus 1 Peptide with the Connexin 43 Carboxyl Terminus Preserves Left Ventricular Function After Is

カリフォルニア州オレンジ郡にある非営利の地域医療提供ネットワークのHoag Memorial Hospital Presbyterianは、癌診断、癌の進行、および治療抵抗性の初期疾患マーカーの可能性を特定および特徴付ける研究の開始を発表した。 Exosome Sciences社および、Aethlon Medical社の子会社との提携により、癌の遺伝的リスクが高い癌患者の エクソソーム 研究を開始する。 エクソソームは、癌細胞から豊富に放出されるナノ粒子であり、腫瘍の遺伝的およびタンパク質カーゴのスナップショットを提供できるため、癌の非侵襲的な液体生検の重要な標的となる。Hoag Memorial Hospital PresbyterianのPrecision Medicineのプログラムディレクターであり、Hoagの主任研究者であるMichael Demeure医学博士は、次のように述べている。「液体生検には、癌の早期発見と潜在的な治療の有効性の評価をリアルタイムで実施できる可能性がある。Hoagには、癌を発症するリスクの高い多数の個人および家族を支援する積極的な遺伝性がんプログラムがあり、癌の発見において可能な限り早期かつ最も治療可能な段階でのブレークスルーの達成に取り組んでいる。」 Exosome Sciences社およびAethlon Medical社のCEOであるTimothy Rodell医学博士は、次のように述べている。 「Hoagとのこのパートナーシップは、エクソソームベースの液体生検の開発を大幅に加速し、癌患者とその家族の発見、進行、治療オプションに関する深い洞察を提供する可能性がある。 このプロジェクトでDemeure 博士とHoagのチームが協力する機会を得たことを嬉しく思う。」 Hoagの遺伝性癌プログラムと癌研究の多くの面は、慈善活動によってサ

以前から研究者は、侵襲性の強いタイプの乳がん患者のがん細胞にはミトコンドリアDNAが少ないという観察結果に注目していた。しかし、そのような特徴ががん進行にどのように影響するのかということについては誰にも分からなかった。最近になってようやく、University of Pennsylvaniaの研究チームが、ミトコンドリアDNAの減少で人間の乳がん細胞が侵襲性の強い転移性を獲得することを明らかにした。   2013年11月4日付オンライン版Oncogene誌に掲載されたこの研究論文は、なぜ一部のがんは他のがんに比べて進行も広がりも速いのかという疑問を解明する新しい手がかりを与えており、臨床医にとっては特に侵襲性の強いがんの患者を特定するバイオマーカーとして利用でき、治療法の個人化を進める上で役立つと考えられる。この研究は、Penn School of Veterinary Medicineの主任研究員、Dr. Manti Guhaと、Department of Animal BiologyのHarriet Ellison Woodward Professor of Biochemistryを務めるDr. Narayan Avadhaniが指導して進められた。 また、共同研究者として、Penn VetのDr. Satish Srinivasan、Dr. Gordon Ruthel、Dr. Anna K. Kashina、Dr. Thomas Van Winkleが参加しており、その他にもUniversity of Pennsylvania, Perelman School of MedicineのDr. Russ P. Carstens、National Cancer InstituteのDr. Arnulfo Mendoza、Dr. Chand Khannaらが加わって

現在、多発性硬化症 (MS) の治療方法には髄鞘再形成を促進するようなタイプのものはない。しかし、2013年5月10日、サンディエゴで開かれていたSociety for Neuroscience 2013年総会において、取材に対して、University of Chicago Medicine, Director of the Migraine Headache ClinicでProfessor in Neurosciencesを務めるRichard Kraig, M.D., Ph.D.は、「血液中に存在する免疫細胞の一種、樹状細胞を骨髄から採取培養し、刺激を与えることで エクソソーム (画像参照) と呼ばれる小粒子を放出させることができる」と述べた。 このエクソソームを脳に送り込むと、エクソソームは髄鞘形成を著しく促進し、一方、MSなどによる脱髄的な損傷が起きているところでは髄鞘再形成を促した。MSは炎症性の疾患で、希突起膠細胞減少、脱髄、脳の損傷を受けた領域の髄鞘再形成不能などを伴う。中枢神経系の希突起膠細胞は、軸索を取り巻く絶縁体のミエリンを生成し、これは神経信号伝達に不可欠である。希突起膠細胞の損傷と、それに伴って起きるこのミエリンが消失する脱髄は重大な神経障害をもたらすことになる。 髄鞘再形成は、希突起膠細胞前駆細胞を損傷領域に集めることで自動的に始まる修復作業といえる。その後、前駆細胞が希突起膠細胞に分化し、消失したミエリンを補うことができるようになる。一般にMS患者は、初めのうち再発寛解という疾患経過をたどり、不完全な髄鞘再形成による部分的な回復を見せる。しかし、時間経過とともにこの修復能力が衰え、二次性進行型多発性硬化症に至り、疾患経過は着実に悪化していく。現在、アメリカ国内のMS患者は40万人を超えており、医療にとっても非常な重圧になっている。最

Henry Ford Hospitalの研究チームは、動物を使った新しい研究で、卒中発作後に幹細胞から放出される エクソソーム と呼ばれる微小な (50nm) 脂質性の細胞内器官に内包されるRNA (リボ核酸) 塩基配列のごく短いmicroRNAのうち、特定のものが神経的な回復に一役買っていることを突き止めた。研究チームのラットを用いた実験では、この特定のmicroRNAが幹細胞からエクソソームを使って脳細胞に送られ、卒中発作後の機能回復を強化していた。 この研究で、幹細胞が負傷した組織の再生に重要な役割を果たしていることが明らかになってきただけでなく、成人に長期的な障害を引き起こす卒中や神経疾患に新しい治療法を開発できる希望も生まれてきた。この研究論文は、2013年4月30日付オンライン版「Stem Cells」に掲載されている。卒中患者のほとんどは、手など一旦はマヒしていた体の各部分を自分の意思で使えるところまで回復するが、約半数の患者は体の片側が自由に動かない状態が続き、一生障害を抱えることになる人も大勢いる。現在のところ、卒中患者の運動機能を改善したり、回復する治療法はなく、その原因として脳や神経が損傷した後に自ら修復する機序が’まだ謎に包まれていることが挙げられる。この研究論文の首席著者、Henry Ford Neuroscience Instituteの科学部長、Department of Neurology at Henry Ford Hospitalのvice chairmanを務めるMichael Chopp, Ph.D.は、「この研究は、脳が、卒中その他の外傷を受けた後、自分自身を治療する能力があり、それに対して特定の幹細胞がそれぞれ異なる度合いで役割を果たしていることを証明し、これまで謎とされてきた問題の一つを解決に導いた可能性がある」と述べて

2013年4月17日から20日までボストンで開かれた年次恒例のInternational Society for Extracellular Vesicles (ISEV)において、アムステルダムのVU University Medical Center、Pathology Departmentの免疫学者、Michiel Pegtel, Ph.D.が、「包括的なディープ・シーケンシングで、特定のRNA小片が腫瘍の エクソソーム に組み込まれていることを突き止めた。この発見から、新しくバイオマーカーとして応用することも考えられる」と口頭発表した。エクソソーム (写真) は、細胞より小さな膜結合性の小胞 (直径30nmから150nm) で、様々なタイプの正常細胞からもがん細胞からも放出され、小胞内に膜タンパク質、細胞タンパク質、microRNA (miRNA)、その他、mRNA断片を含む様々なタイプのRNAを含んでおり、その内容はエクソソームを放出した細胞によって異なる。 このエクソソームは細胞間の情報運搬の役目を担っていると考えられている。たとえば、がん細胞から放出されたエクソソームには免疫系を抑制する物質が含まれており、血管新生を刺激し、それによって腫瘍増殖を促すことになる。 Dr. Pegtelは、BioQuickとのインタビューで、博士の研究においてはディープ・シーケンシングが重要な役割を果たしていることを強調し、「マイクロアレイやRT-PCRアレイなどのように閉じられたプロファイル技術とは対照的に、ディープ・シーケンシングは文字通り、人体のトランスクリプトームの複雑さについて我々の目を開かせてくれるものだ。私たちが以前に個別定量RT-PCRを用いて行った研究で、腫瘍ウイルスのエプスタイン・バー・ウイルス (EBV) に感染したヒトB細胞から放出されたエクソソ

最初の脳卒中薬が承認されてからほぼ四半世紀が経つが、現在承認されている薬は1つだけだ。2019年12月6日にTranslational Stroke Researchで公開されたオープンアクセスの論文で、NIHの資金提供を受けた動物科学者は、重度の脳卒中の人に見られるのと同じ神経変性パターンでモデル化されたブタの完全な回復をサポートした新しい脳卒中治療の脳画像データを提示した。このオープンアクセスの論文は、「神経幹細胞の細胞外小胞がブタの虚血性脳卒中モデルにおける正中線シフトの予測結果を分裂させる。(Neural Stem Cell Extracellular Vesicles Disrupt Midline Shift Predictive Outcomes in Porcine Ischemic Stroke Model.) 」と題されている。 ジョージア大学(UGA)農業環境科学大学のブルックス特別教授で、ジョージア・リサーチ・アライアンスの著名な学者であるSteven Stice 博士は、次のように述べている。Stice博士はArunA Biomedical Inc.の最高科学責任者でもあり、UGAに入る前は、Advanced Cell Technologyの共同設立者であり、CSOとその会社のCEOを務めていた。 「恐らく最も奇なる発見は、 エクソソーム 治療後に回復することができたことだ。」Stice博士とUGAの再生バイオサイエンスセンター(RBC)の同僚は、脳が片側に押しやられている正中線シフト中の最初の観察証拠を報告し、低侵襲および非手術のエクソソーム治療が現在のところ重度の脳卒中による損傷を修復できることを示唆している。エクソソームは、腫瘍と隣接細胞の挙動を変えることができる長距離の細胞間コミュニケーションの強力なメディエーターであると考えられている。

世界牛乳の日(6月1日)に、米国農務省(USDA)は、ネブラスカ大学リンカーン校栄養健康科学部・分子栄養学のJanos Zempleni博士のコメントを発表した。Zempleni博士は乳児用調合乳に、牛乳からの小さく利益が豊富なナノ粒子( エクソソーム )を補うことの潜在的な利点について主張している。以下、Zempleni博士のコメントを紹介する。USDAの経済調査サービスのデータによると、米国では牛乳の平均年間消費量は1人あたり約64リットルである。牛乳は生後6か月までの乳児にとって唯一の栄養源であるため、子供のうち大部分は乳児が占めている。 牛乳にはもともと感染症に対抗する性質があるが、通常、市販の乳児用調製粉乳にはない。 USDAの国立食品農業研究所およびその他のスポンサーからの資金提供により、粉ミルクのサプリメントとして栄養を高め、感染を防ぐことができる可能性がある牛乳の要素を探ることができた。牛乳の栄養の重要性について尋ねると、カルシウムやビタミンDなどの栄養素が思い浮かぶかもしれない。 しかし、もっとある。私は2014年に牛乳に含まれる新しい生理活性化合物の探索を開始し、牛乳1液量オンスあたり「エクソソーム」と呼ばれる6兆もの天然ナノ粒子が含まれていることを発見した。牛乳を飲むと、ミルクエクソソームが体内に入り、さまざまなタンパク質、脂質、RNA、DNAを、肝臓、脳、胎盤、腸に届ける。 エクソソームとその内包物は魔法を働かせ、学習と記憶、免疫系、生殖などの重要な機能をサポートする。 牛乳を摂取したすべてのエクソソームが人間の組織に到達するわけではない。 「腸内細菌叢」と呼ばれる環境で腸内にとどまり、細菌と相互作用する人もいる。私の研究には、ミルクエクソソームと腸の微生物叢の相互作用の研究が含まれている。 私の調査結果は、ミルクエクソソームが細菌の遺伝子

2020年6月17日にNature Outlookでオンラインで公開された記事で、 イェール大学医学部のリウマチ学および臨床免疫学およびイェール大学医学部の元アレルギーおよび臨床免疫学のチーフであるPhilip Askenase教授(写真)は、「エクソソームはセンセーショナルな生物学的発見である」と述べている。膜に囲まれた小さな細胞内小胞は、研究されてきたすべての動物種のすべての細胞によって生産・分泌され、植物や細菌によっても放出される。 オープンアクセスのNatureの記事は「人工ナノ粒子は本物ほど良くない(Artificial Nanoparticles Are Not As Good As The Real Thing.)」と題されている。 Askenase博士によれば、エクソソームの主な機能は、血流を通過した後、近くまたは全身に他の細胞に入り、最も重要なのはアクセプター細胞のDNAに変化を引き起こす可能性があるマイクロRNA(miRNA)である貨物を運ぶことだ。発現は、タンパク質機能の変化につながり、最終的にはアクセプター細胞の挙動の変化につなががる。Askenase博士は、「エクソソームは、これまでに発見されていない生物学的プロセスを媒介し、細胞や生物全体の分子経路や代謝経路を変える可能性がある予期しないユニバーサル・ナノ粒子だ」と述べている。彼は、エクソソームは医学的に非常に重要であると信じている。 「それらは、研究者に疾患メカニズムのより良い理解を提供し、新しい診断テストにつながり、そしておそらく最も重要なことは、新しい治療法を提供するための天然ナノ粒子手段を提供するだろう」とAskenase博士は言う。 しかし、これは研究者がエクソソームをより集中的に研究した場合にのみ起こると彼は信じている。Askenase博士は、残念ながらこれまで生物医学のエンジニアは

VIB-UGent Center for Inflammation Researchとゲント大学の研究グループによる共同研究により大腸癌を引き起こす新しいメカニズムが明らかになった。 研究者らは、タンパク質Zeb2(ジンクフィンガーEボックス結合ホメオボックス2)の異常な発現が、腸壁または『上皮』の完全性に影響を与えることを発見した。この上皮は通常、腸内微生物による浸潤を防ぐバリアとして機能する。 Zeb2はこの障壁を弱め、浸潤性細菌が癌の進行を引き起こす炎症を引き起こすことを可能にする。 科学者らは免疫系の操作または微生物相の除去が癌の発生を防ぐことができることを実証した。 これらの調査結果は新しい治療法につながる可能性がある。   2020年6月15日にNature Cancerに掲載されたこの論文は「Zeb2が侵襲性Aad微生物叢依存性結腸癌を促進する(Zeb2 Drives Invasive Aad Microbiota-Dependent Colon Carcinoma.)」と題されている。Geert van Loo教授、Lars Vereecke教授、Geert Berx教授の研究グループ間の共同研究により、タンパク質Zeb2が結腸直腸癌の考えられる原因であることが確認された。 彼らは、マウスの腸の上皮細胞におけるこのタンパク質の異常な発現が結腸直腸癌を誘発する可能性があることを示した。 Zeb2は、腸壁の完全性を不安定にし、細菌が組織に浸透して炎症反応を引き起こすことを可能にする。 これは上皮細胞の異常増殖を引き起こし、最終的には悪性腸腫瘍の発生につながる。 重要なのは、腸内細菌を殺すために広域抗生物質でマウスを治療することによって、または完全な無菌状態でマウスを飼育することによって、癌の発症を完全に防ぐことができるということだ。Berx教授(CRIG /

ロシアのウラジオストクにある極東連邦大学(FEFU:Far Eastern Federal University)の科学者は、ドイツおよびロシアの同僚とともに、化学療法抵抗性の前立腺癌と戦うためのリード化合物を開発した。 アイディアは、ウニの色素とグルコース分子を組み合わせた生物活性分子で、活性原薬を腫瘍細胞に送達することから生まれた。この論文は、Marine Drugs誌で最高の研究論文として認められた。 2020年5月11日にオンラインで公開たこの論文は「ウニにインスパイアされた:前立腺癌における新規合成非グリコシド11,4-Naphthoquinone-6S-Glucose コンジュゲートのWarburg効果媒介選択性(Inspired by Sea Urchins: Warburg Effect Mediated Selectivity of Novel Synthetic Non-Glycoside 1,4-Naphthoquinone-6S-Glucose Conjugates in Prostate Cancer.)」と題されている。   前立腺癌の治療法を開発するための研究において、科学者は腫瘍細胞が大量の「糖」を消費する傾向、つまりグルコース化合物をより集中的に消費する傾向に使用される用語であるワールブルグ効果を利用することを決定した [編集者注:腫瘍細胞による高糖消費の現象は、ワールブルグ効果として知られている。これは、好気性条件下でも腫瘍が優先代謝経路として使用する高解糖率に起因する。">研究者らは、糖結合細胞毒性化合物を腫瘍細胞に特異的に送達するためにワールブルグ効果を標的とすることが、新しい選択的薬物を作成するための有望なアプローチであると信じていた。Marine Drugs の論文の概要は次のとおり。「我々は、新規6-S-(1,4-na

食物アレルギーや薬物アレルギーのある人にとって、生命を脅かすアナフィラキシーショックのリスクは隅々に潜んでいる。 新しいNorthwestern Medicineの研究は、原因に関わらず、軽度から生命を脅かすアナフィラキシーまでを予防するために、予防的に服用できる錠剤があるかもしれないことを示している。この新しい研究の成果は、2020年6月2日にJournal of Clinical Investigationのオンラインで発表された。 この論文は、「ブルトン型チロシンキナーゼ阻害は、ヒトIgE媒介アナフィラキシーを効果的に保護する。(Bruton’s Tyrosine Kinase Inhibition Effectively Protects Against Human IgE-Mediated Anaphylaxis.)」と題されている。 アナフィラキシーは、アレルゲンへの暴露から数秒または数分以内に発生する可能性のある、重篤で生命にかかわる可能性がある全身性アレルギー反応だ。 アメリカの喘息およびアレルギー財団によると、それはアメリカ人の約50人に1人に発生するが、多くの人はその率はより高いと考えている(20人に1人)。 アナフィラキシーの間に血圧が非常に低くなるか、気道が閉じて臓器に十分な酸素を得ることができない場合、アナフィラキシーショックに至る。この研究で使用される薬はBTK阻害剤として知られている。 BTKは、マスト細胞を含む細胞内に見られるブルトン型チロシンキナーゼ(画像)と呼ばれる酵素の略だ。 BTK阻害剤がアレルギー反応を阻止するように機能する理由は、BTK酵素を阻害または阻止することにより、マスト細胞がアレルゲンおよびアレルギー性抗体によって誘発されてヒスタミンおよび他のアレルギー性メディエーターを放出できないためだ。 研究では、3つの異なるBT

最初は肺炎の形で肺に大きく影響すると考えられていた COVID-19 だが、2020年4月にCOVID-19に起因する多くの謎の症状の1つとして血栓が浮上した。 この直後、コロナウイルス関連の脳卒中が原因で若者が亡くなったという報告が出され、その次に、COVIDつま先という、痛みを伴う赤または紫の指が報告された。これらの症状のすべてに共通するものは何か? 血液循環の障害だ。 COVID-19による死亡の40%が心血管合併症に関連しており、純粋な呼吸器疾患の代わりに、この疾患が血管感染症のように見え始めた。パンデミックの数か月後、新型コロナウイルスが血管に感染し、血栓、脳卒中、心臓発作の高い有病率について、頭から足の指の症状に対するさまざまな答えを提供しうる理論を支持する証拠が増えている。「これらのCOVID関連の合併症はすべて謎だった。血液凝固、腎臓の損傷、心臓の炎症、脳卒中、脳炎[脳の腫れ">が見られる。」と Angiogenesis Foundationの会長であるWilliam Li 医学博士は述べた。 「SARSやH1N1または率直に言って、ほとんどの感染症で通常見られない現象だ。」「出現しているすべてのデータをまとめ始めた場合、このウイルスはおそらく血管指向性ウイルスであることがわかる。つまり、それは血管に影響を及ぼす」とブリガムアンドウーマンズのメディカルディレクターでありボストンの病院心臓血管センターのMandeep Mehra医師は述べている。2020年4月20日にThe Lancetのオンラインで発表された論文で、Mehra博士とそのチームは、SARS-CoV-2ウイルスが血管の内側を覆う内皮細胞に感染する可能性があることを発見した。内皮細胞は心血管系を保護し、血液凝固から免疫反応まですべてに影響を与えるタンパク質を放出する。 ランセット紙で

健康な脳細胞を破壊するアルツハイマー病の有毒な粒子を特定する抗体の設計法が発見された。この悲惨な病気との戦いにおける潜在的な進歩と言える。 新しい方法は、アミロイドベータオリゴマーとして知られている有毒な粒子を認識できる(画像はアミロイドベータペプチド1-42の溶液での形を示している)。この抗体はアルツハイマー病および他の形態の認知症の新しい診断方法の開発につながる可能性がある。ケンブリッジ大学、ロンドン大学ユニバーシティカレッジ、およびルンド大学のチームは、毒性のあるオリゴマーの検出とその数の定量化において非常に正確な抗体を設計した。 この結果はPNASで報告された。 「オリゴマーを認識する定量的方法の緊急のアンメットニーズがある-これはアルツハイマー病で主要な役割を果たすが、標準的な抗体発見戦略にはとらえどころのないものだ」と英国で研究を主導したケンブリッジのミスフォールディング病センターのMichele Vendruscolo 博士は述べた。 「我々は革新的な設計戦略を通じて、これらの毒性粒子を認識する抗体を発見した。」認知症は英国の主要な死因の1つであり、毎年260億ポンド(約3.4兆円)以上の費用がかかる。これは、今後25年間で2倍以上になると予測されている。 推定によれば、世界経済に対する現在のコストは年間1兆ポンド近く(約131兆円)とされている。認知症の最も一般的な形態であるアルツハイマー病は、脳全体の神経細胞の死および組織の喪失を引き起こし、その結果、記憶障害、人格の変化、および日常的な活動を行う際の問題を引き起こす。 オリゴマーと呼ばれるタンパク質の異常な塊は、認知症の原因として科学者に認識されている。 アミロイド仮説によると、タンパク質は通常、重要な細胞プロセスを担っているが、人々がアルツハイマー病を患っている場合、これらのタンパク質(特に、アミロイ

2020年5月21日、シンガポールのAustrianova社とチリのCells for Cells社は、カプセル化された間葉系幹細胞(mesenchymal stem cells :MSC)から細胞外小胞(extracellular vesicles :EV)を生成するための、コストと時間を節約する方法についての、新規で画期的な査読済み科学論文を学術パートナーと共に発表した。 これらの細胞外小胞は、幹細胞治療効果に寄与することが知られている。著者は、Cells for Cellsの独自の間葉系幹細胞を使用して実証し、Austrianova独自のCell-in-a-Box®カプセル化技術を使用して、カプセル化された間葉系幹細胞から細胞外小胞を製造および提供できることを示している。 この論文は、チリのアンデス大学とオーストリア・ウィーンの獣医学大学の学術パートナーと共同執筆したもので、2020年5月21日にFrontiers in Pharmacologyに掲載された。 このオープンアクセス論文は、「半透過性セルロースビーズにより、カプセル化された細胞からの小さな細胞外小胞の選択的かつ継続的な放出を可能にする(Semipermeable Cellulose Beads Allow Selective and Continuous Release of Small Extracellular Vesicles from Encapsulated Cells.)」と題されている。 現在、細胞外小胞は、GMP条件下で実行するのが難しく、面倒で費用がかかり、時間のかかるプロトコルを使用して、細胞培養条件培地から精製する必要がある。 Cell-in-a-Box®カプセル化技術は、半透孔を介してカプセル化された細胞から放出されるため、細胞外小胞を高濃度で効率的に濃縮できる。これにより、

2020年5月15日、英国政府は迅速な COVID-19 の非侵襲的検査が行える特別に訓練されたバイオ検出犬を見つけ出するために、500,000ポンド(約6500万円)以上を研究チームに授与したことを発表した。臨床試験の第1フェーズでは、ロンドン医療衛生熱帯大学(LSHTM:London School of Hygiene & Tropical Medicine)の世界をリードする疾患管理の専門家がMedical Detection Dogsおよび 英国のダーラム大学と協力して、犬が臭気サンプルから人間のコロナウイルスを検出できるかどうかを判断することを目指している。 このチームは以前にも協力して、犬がマラリアに感染した人間の臭いを、世界保健機関(WHO)の診断基準を超えて非常に高い精度で検出できることを実証した。 この新しい試験では、人々が無症候性であっても、犬がコロナウイルスを検出するように訓練できるかどうかを調べる。 試験で十分な証拠が得られれば、最初の犬のチームを6か月以内に英国への入国の主要ポイントに配置して、海外から旅行する人々の迅速なスクリーニングを支援することができる。 成功した場合、これらの犬は、英国政府の堅牢な5本の柱の検査戦略とともに、1時間あたり最大250人をスクリーニングする迅速で非侵襲的な検出方法を提供できる可能性がある。これは、ウイルスに対し政府の対応を可能な限り広範囲にするために検討されている多くの検査手段のうちの1つだ。LSHTMの主任研究者であり、疾病管理部門の責任者であるJames Logan教授は、次のように述べている。 「マラリアに特有の匂いがあることを示し、Medical Detection Dogsを使用して、マラリアを正確に検出するように犬を訓練することに成功した。 このことから、呼吸器疾患が体臭を変化させる可能性があると

視力を失うほとんどの大人にとって、失明は、脳が無傷のままである一方で、目または視神経の損傷が原因となっている。 何十年もの間、研究者たちは、損傷した目を迂回して視覚情報をカメラから脳に直接届けることで視力を回復できるデバイスの開発を提案してきた。2020年5月14日にCellで発表された論文で、テキサス州ヒューストンのベイラー医科大学の調査チームは、彼らがこの目標に一歩近づいていると報告している。 このオープンアクセスの論文は、「視覚皮質の動的刺激によって、視覚障害者と視覚障害者のフォームビジョンが生成される(Dynamic Stimulation of Visual Cortex Produces Form Vision in Sighted and Blind Humans.)」と題されている。著者らは、埋め込まれた電極が動的シーケンスで刺激されるアプローチを説明し、参加者が「見る」ことができた視覚皮質の表面上の形状を本質的に「追跡」した。 「電気刺激を使用して患者の脳の文字を直接動的に追跡したところ、意図した文字の形状を『確認』でき、さまざまな文字を正しく識別できた」と著者であるベイラー医科大学 脳神経外科のDaniel Yoshor医学博士(写真右)は述べた。 「彼らは、飛行機による空中文字のように、光る点や文字を形成する線を見たことを説明した。」視覚皮質を刺激する以前の試みはあまり成功していない。 以前の方法では、各電極を視覚的ディスプレイのピクセルのように扱い、それらの多くを同時に刺激していた。 参加者は光のスポットを検出できたが、視覚的なオブジェクトやフォームを識別するのは困難だった。 「複数の光のスポットから形状を構築するのではなく、輪郭をトレースした」と、筆頭著者のMichael Beauchamp博士は述べている。「我々のインスピレーションは、手紙を

オックスフォード大学、英国王立産婦人科医協会、リーズ大学、バーミンガム大学、キングス・カレッジ・ロンドンの共同研究で、非妊婦より妊婦が COVID-19 重症になる可能性が低いことを示唆する新しい研究成果を発表した。 しかし、重症になった女性の大多数は妊娠後期であり、このグループにとってのソーシャルディスタンスの重要性を強調している。プレプリントとして2020年5月12日に発行されたこの調査では、2020年3月1日から2020年4月14日までに英国の病院に入院した427人の妊婦にCOVID-19が確認され(妊婦1,000人中4.9人) 、妊娠中の女性は深刻な病気を経験するリスクが高くないことを示唆している。 研究のための情報は、コンサルタント主導の産科ユニットを備えた英国の194病院すべてから収集された。 黒人や少数民族の妊娠中の女性は、COVID-19のために入院する可能性が高かった。 ロンドン、ウェストミッドランド、ノースウェストの女性が分析から除外された場合でも、この不均等は変わらなかった。つまり、これらの地域でのCOVID-19感染率の高さで、この違いを説明することはできない。分析ではまた、高齢の妊婦、太りすぎまたは肥満の女性、および高血圧や糖尿病などの既存の医学的問題を抱えていた妊婦が、感染して病院に入院する可能性が高いことも示した。 妊娠中にCOVID-19で入院した女性は、比較の妊婦群よりも喫煙する可能性が低かった。この研究による他の重要な発見には以下を含んでいる。 ・COVID-19で入院した母親から生まれた5人に1人の赤ちゃんが未熟児で生まれ、新生児病棟に入院した。・生まれた赤ちゃんの20人に1人はCOVID-19の検査で陽性だったが、出生直後では半分しかいなかった。入院した女性の60%が出産し、残りの40%はまだ妊娠中だった。 現在、ほとんどの女性は

2020年5月8日にCMAJ(Canadian Medical Association Journal)でオンライン公開された多国間の調査によると、気温と緯度は新型コロナウイルス( COVID-19 )の蔓延とは関連していないようだ。しかし学校の閉鎖やその他の公衆衛生対策がプラスの効果をもたらしているという。 この論文は「COVID-19パンデミックに対する気候と公衆衛生の介入の影響:前向きコホート研究(Impact of climate and public health interventions on the COVID-19 pandemic: A prospective cohort study.)」と題されている。「我々の研究は、COVID-19の流行のグローバルデータを使用して、これらの公衆衛生の介入により流行の成長が減少したことを示す重要な新しい証拠を提供するものだ。 」とトロント大学健康政策・管理・評価研究所、オンタリオ州トロントの聖ミカエル病院の Peter Jüni博士は述べた。 このカナダの研究では、144の地政学的な領域(オーストラリア、米国、カナダおよび世界中のさまざまな国々)を調査し、合計で375,600人を超えるCOVID-19症例が確認された。中国、イタリア、イラン、韓国は除外された。中国の場合、ウイルスは衰退していたため、また他の国は分析時にウイルスが完全に蔓延していたためだ。 流行の成長を推定するために、研究者は3月27日の症例数を2020年3月20日の症例数と比較し、そして、3月の暴露期間中に測定された緯度、温度、湿度、学校の閉鎖、集会の制限およびソーシャルディスタンスの影響を3月7日から3月13日 の期間で測定した。 彼らは、緯度または温度とCOVID-19の流行性増殖との関連がほとんどないか、まったくないこと、および湿度

抗感染物質の豊富なレパートリーを備えた薬用植物は、常に人間が病原菌や寄生虫との戦いを生き残るための鍵となっている。 これが、新しい構造と効果を備えた植物薬の探索が、今日でも天然物研究の大きな課題の1つである理由だ。ドイツのライプチヒ大学(UL)、ライプニッツ植物生化学研究所(IPB)、ドイツ統合生物多様性研究センター(iDiv)の科学者らは、系統関係のデータ分析を使用して、生物活性天然化合物、空間分布および植物の二次代謝産物の検索を大幅に簡素化する方法を示した 。彼らの新しいアプローチは、どの植物群とどの地理的領域が薬効を有する種の高い密度を持っている可能性が高いかを予測することを可能にするものだ。 これにより、将来的には、より的を絞った新しい薬用植物の探索が可能になるという。 現在使用されているすべての抗生物質の70%以上は、植物、真菌、細菌、および海洋生物から得られた天然物質に由来している。 病原体は絶えず変化し、新しい危険な菌株を生産しているため、感染症との戦いでは、人間は特に自然源からの新薬に依存している。同時に、我々は天然資源をまだ使いきれていない。 植物界だけでも、これまでにすべての維管束植物の約10%だけが適切な活性化合物についてスクリーニングされてきた。 現在、科学データベースに保存されている天然産物の構造は約250,000であり、植物だけで推定で最大500,000ある。 しかし、これまでのところ、研究者たちは植物界全体を体系的にテストしていない。 その代わり、一部は既知の薬効を持つ植物で、一部は優先する種または地理的領域で、または使用する検出方法の種類と感度に応じて、薬物の分離検索を実施してきた。さらに、これまでの薬用植物とその活性化合物の知識は一貫して文書化されていない。 植物には地域ごとに異なる名前が付けられているが、植物から分離された代謝産物には、

カナダのサスカチュワン大学(USask)の研究チームは、コウモリが病気になることなく中東呼吸器症候群(MERS)コロナウイルスを運び、ヒトや他の動物にどのようにしてジャンプするのかを解明した。これらのウイルスは深刻な、そしてしばしば致命的な病気を引き起こす可能性があるが、コウモリには無害のようだ。Scientific Reportsで発表されたこのオープンアクセス論文は「中東呼吸器症候群コロナウイルスによる食虫性コウモリ細胞の持続感染時のウイルス変異体の選択」と題されている。 カナダのサスカチュワン大学(USask)の研究チームは、コウモリが病気になることなく中東呼吸器症候群(MERS)コロナウイルスを運び、ヒトや他の動物にどのようにしてジャンプするのかを解明した。MERS、重症急性呼吸器症候群(SARS)、および最近ではCOVID19を引き起こすSARS-CoV-2ウイルスなどのコロナウイルスは、コウモリに由来すると考えられている。 これらのウイルスは深刻な、そしてしばしば致命的な病気を引き起こす可能性があるが、コウモリには無害のようだ。このことは今まで十分に理解されていなかった。「コウモリはウイルスを排除せず、病気にもならない。MERSウイルスがヒトのようにコウモリの免疫応答を遮断しない理由を理解したかった」と、USaskの微生物学者Vikram Misra博士は述べた。Scientific Reportsで発表された研究で、チームは初めて、食虫性ブラウンバットの細胞が、コウモリとウイルスの両方からの重要な適応により、数ヶ月間MERSコロナウイルスに持続的に感染する可能性があることを実証した。このオープンアクセス論文は「中東呼吸器症候群コロナウイルスによる食虫性コウモリ細胞の持続感染時のウイルス変異体の選択(Selection of Viral Variants Du

2020年4月10日に全米科学アカデミー(PNAS)のオンライン抄録で公開された最近の研究で、カリフォルニア大学(UC)サンディエゴ校の研究者は、細胞培養でヘパリンを製造する能力に一歩近づいたことを報告している。 この論文は「ZNF263はヘパリンとヘパラン硫酸の生合成の転写調節因子である。(ZNF263 Is a Transcriptional Regulator of Heparin and Heparan Sulfate Biosynthesis.)」と題されている。ヘパリンは強力な抗凝固剤であり、病院で最も処方されている薬物だが、細胞培養による製造は現在までのところ不可能だ。 特に、研究者らはヘパリン生合成において重要な遺伝子であるZNF263(亜鉛フィンガータンパク質263)を発見した。 研究者たちは、この遺伝子調節因子がヘパリンの工業生産への道における重要な発見であると信じている。   このアイデアは、遺伝子工学を使用して産業細胞株でこのレギュレーターを制御し、十分に制御された細胞培養でヘパリンを安全に工業生産する道を開くことだ。 ヘパリンは現在、豚の腸から薬物を抽出することによって製造されており、安全性、持続可能性、およびセキュリティ上の理由から懸念されている。 毎年数百万頭の豚が人間のニーズを満たすために必要であり、ほとんどの製造は米国外で行われている。 さらに、10年前、ブタ由来の汚染物質により数十人が死亡した。 したがって、持続可能な組換え生産を開発する必要がある。 PNASでの報告は、細胞がヘパリンの合成をどのように制御するかについての正確な洞察を提供する。ヘパリンは、ヘパラン硫酸と呼ばれる、より一般的なクラスの炭水化物の特別なサブタイプであり、人体および細胞培養の両方で広範囲の細胞によって産生される。 しかし、ヘパリンはマスト細胞と呼ばれる特別な

Gilead Sciences社は、世界の保健当局と緊密に協力して、調査用化合物「Remdesivir(レムデシビル)」(画像)の実験的使用を通じ、新型コロナウイルス( COVID-19 )に対応していることを報告した。米国食品医薬品局(FDA)、疾病対策センター(CDC)、保健福祉省(DHHS)、米国立アレルギー感染症研究所(NIAID)、国防総省(DoD)- CBRN Medical、中国CDCおよび国家医療製品管理局(NMPA)、世界保健機関(WHO)、そして個々の研究者と臨床医と共同して、Gilead Sciences社は抗ウイルスの専門知識とリソースを提供し、COVID-19と闘う患者とコミュニティを支援することに焦点を当てている。 Remdesivirは、広域スペクトルの抗ウイルス活性を備えた調査中のヌクレオチドアナログだ。これは、まだ世界中でいかなる用途でも承認されていない。 Remdesivirは、COVID-19と構造的に類似しているウイルス性病原体MERSおよびSARSに対する動物モデルで、in vitroおよびin vivoの活性を示している。 MERSおよびSARSのRemdesivirに関する限られた前臨床データは、RemdesivirがCOVID-19に対して潜在的な活性を有する可能性があることを示している。Gilead社のCOVID-19への対応には、3つの主要な領域がある。先ずは臨床試験だ。Gilead社が開始した試験:Gilead社は、米国食品医薬品局(FDA)の迅速なレビューとGilead社の治験新薬(IND)の承認を受け、COVID-19と診断された成人におけるRemdesivir の安全性と有効性を評価する2つの第3相臨床試験を開始した。これらのランダム化されたオープンラベルの多施設共同研究では、2020年3月から、主にアジア

メルボルンの研究者らは、オーストラリアで最初の新型コロナウイルス(COVID-19)患者の1人から免疫反応をマッピングし、ウイルスと戦って感染から回復する人体の能力を示した。 メルボルン大学とロイヤルメルボルン病院の合弁会社であるピータードハティ感染症研究所(ドハティ研究所)の研究者らは、COVID-19を呈し、入院を必要とする軽度から中程度の症状があった 40代の健康な女性の4つの異なる時点での血液サンプルをテストすることができた。2020年3月16日にNature Medicineのオンラインで公開されたこの論文は、患者の免疫系がウイルスにどのように反応したかについて詳細に報告している。 このオープンアクセスの論文は、「患者の回復前の付随する免疫応答の幅:重症でないCOVID-19の症例報告(Breadth of Concomitant Immune Responses Prior to Patient Recovery: A Case Report of Non-Severe COVID-19.)」と題されている。 この論文の執筆者の1人である研究員のOanh Nguyen博士は、COVID-19に対する広範な免疫反応が報告されたのは今回が初めてであると述べた。 「インフルエンザで入院した患者の免疫反応を長年にわたって観察してきた知識を使用して、この患者の免疫反応の全体像を調べた」とNguyen博士は述べた。 「患者が入院してから3日後、いくつかの免疫細胞の大きな集団が見られた。これは多くの場合、季節性インフルエンザの感染中に回復の明白な兆候であり、患者は3日間で回復すると予測された。」 ドハティ研究所のロイヤルメルボルン病院の感染症医であるIrani Thevarajan博士が率いるSETREP-ID(Sentinel Travellers and Res

シグナル伝達分子であるインターロイキン-2(IL-2)は、免疫系に強力な効果を及ぼすことが長い間知られているが、治療目的でそれを利用する取り組みは、深刻な副作用によって妨げられてきた。 現在、リオデジャネイロ連邦大学、スタンフォード大学そしてカリフォルニア大学サンタクルーズ校の研究者らは、IL-2と免疫細胞の受容体分子との複雑な相互作用の詳細を解明しており、癌や自己免疫疾患の治療を対象としたより的を絞った治療法を開発するための青写真を提供している。IL-2は、免疫応答中にT細胞集団の増殖を刺激する成長因子として機能する。 異なるタイプのT細胞は異なる役割を果たし、IL-2は、特定の抗原に対する免疫系の攻撃を導くエフェクターT細胞と、脅威がなくなった後に免疫系を抑制する役割を果たすT細胞の両方を刺激できる。   「IL-2は、さまざまな状況で免疫応答のスロットルまたはブレーキとして機能することができる」と、カリフォルニア大学サンタクルーズ校(UC)の化学および生化学の助教授であるNikolaos Sgourakis 博士は述べている。 「我々の調査では、詳細な生物物理学的手法を使用して、これがどのように行われるのかを示した。」Sgourakis博士は、2020年3月17日にPNASでオンラインで公開された新研究の著者だ。 この論文は、「インターロイキン2の薬効性は、ヘリカルキャッピングスイッチによって制御されるグローバルコンフォメーション遷移によって変調される。(Interleukin-2 Druggability Is Modulated by Global Conformational Transitions Controlled by a Helical Capping Switch.)」と題されている。リオデジャネイロ連邦大学の研究室の客員研究者である筆頭著者のV

我々の宇宙の 85%を占める神秘的な暗黒物質がある ように、何十年もの間、科学者を困惑させてきたヒ トゲノムの「暗い」部分がある。2020 年 3 月 6 日に Genome Research のオンライ ンで発表された研究は、これまでこれらの暗くて静 かな領域に隠されていたショウジョウバエのゲノム の新しい部分を特定している。 「Drosophila Genetic Reference Panel の遺伝子発現ネットワー ク(Gene Expression Networks in the Drosophila Genetic Reference Panel)」と題さ れた共同論文は、クレムソン大学の遺伝学者である Trudy Mackay 博士と Robert Anholt 博士による長年の研究の集大成だ。   彼らの画期的な発見は、多くの遺伝性疾患に対する科学の理解を大きく前進させる可能性 がある。 「暗い」部分は、明らかな機能を持たないように見えるゲノムのおよそ 98%を 指す。 ヒトゲノムのたった 2%がタンパク質、私たちの体の構成要素、そして私たちの繁 栄を可能にする化学反応の触媒をコードしている。科学者らは、遺伝子シーケンシング技術が最初に開発された 1970 年代以来、これに戸惑 い、ゲノムの非コード領域に対するコードの比率を明らかにした。 遺伝子は伝統的に RNA に転写されると考えられており、RNA はその後分子生物学の中心的な教義に基づい てタンパク質に翻訳されます。 ただし、「トランスクリプトーム」と呼ばれるゲノム内 の RNA 転写産物の集合全体には、タンパク質のコード化とは別に、他の機能があるよう に見える RNA 種が含まれている。 一部の科学者は、非コード領域に遺伝子発現と染色体 の構造を制御する調節領域が含まれる可能性があると提案したが、

新型コロナウイルス( COVID-19 )と闘う国々は、感染から回復した人々の抗体を使用して症例を治療し、重要な医療従事者に短期免疫(数週間から数ヶ月)を提供することを検討する必要があると米国の2人の感染症専門家が主張している。 ボルティモアにあるジョンズホプキンスブルームバーグ公衆衛生学校の分子微生物学および免疫学科の部長であるArturo Casadevall医学博士とニューヨーク市にあるアルバートアインシュタイン医科大学の感染症部門の責任者であるLiise-anne Pirofski医学博士である。 2020年3月13日にThe Journal of Clinical Investigationでオンライン公開されたオープンアクセスの論文で、Casadevall博士とPirofski博士は、回復期の患者からの抗体含有血清の注入は、感染症に対する一時的な対策として効果的に使用されてきた長い歴史があり、ワクチンが開発・承認され、利用可能になるよりもはるかに早く実施できると述べている。この論文は「COVID-19を含む回復期の血清オプション(The Convalescent Sera Option for Containing COVID-19.)」と題されている。「公衆衛生の封じ込めおよび緩和プロトコルに加えて、これはCOVID-19を治療および予防するための我々の唯一の短期的な選択肢であり、これは数週間から数か月以内に導入を開始できるものだ」とCasadevall博士 と述べた。 これまでに、2019年後半に中国の武漢で発生したと思われる新しいコロナウイルスSARS-CoV-2は、世界中でCOVID-19の発生を引き起こしている。世界保健機関の状況報告によると、3月12日現在、118か国で125,048件の公式に確認された症例があり、ウイルスによる肺炎による死亡

シアナのカイザーパーマネンテワシントン健康研究所(KPWHRI)で、コロナウイルス2019(COVID-19)を予防するために設計された治験ワクチンを評価する第1相臨床試験が始った。国立衛生研究所の一部である国立アレルギー感染症研究所(NIAID)が試験に資金を提供している。KPWHRIはNIAIDの感染症臨床研究コンソーシアムの一部だ。このオープンラベル試験では、18歳から55歳までのシアトルを拠点とする45人の健康な成人ボランティアが約6週間に渡り協力する。2020年3月16日に治験ワクチンを最初の参加者に接種した。この研究では、安全性と参加者に免疫応答を誘発する能力について、実験用ワクチンのさまざまな用量を評価する。これは、ワクチンの潜在的な利点を評価するための臨床試験プロセスにおける複数ステップの最初である。このワクチンはmRNA-1273( COVID-19 スパイクタンパク質をコードするメッセンジャーRNA分子)と呼ばれ、マサチューセッツ州ケンブリッジに拠点を置くバイオテクノロジー企業Moderna社のNIAID科学者とその共同研究者によって開発された。流行準備革新(CEPI:The Coalition for Epidemic Preparedness Innovations)連合は、第1相臨床試験のワクチン候補の製造を支援した。 「SARS-CoV-2による感染を防ぐための安全で効果的なワクチンを見つけることは、公衆衛生上の緊急の優先事項だ」とNIAIDのディレクター、Anthony S. Fauci博士は述べている。「記録的なスピードで開始されたこのフェーズ1の研究は、その目標を達成するための重要な最初のステップだ。」 COVID-19を引き起こすウイルスであるSARS-CoV-2による感染は、軽度から重度の呼吸器疾患を引き起こす可能性があり、発

ジョンズ・ホプキンス・メディスンの科学者らは、研究室で成人のヒト細胞を元の状態に戻すように誘導し、糖尿病によって引き起こされた網膜の血管の損傷を置換および修復する可能性を解き放ち、生物学的な時計の針を元へ戻したと述べた。彼らは、この実験的研究から得られた知見は糖尿病性網膜症や他の失明性疾患の経過を逆転させることを目的とした再生医療技術を進歩させると言う。「我々の研究の結果は、再生医療において幹細胞をより広く使用することに一歩近づいた。そのような細胞を分化させ、癌になることを避けるために我々の分野が経験した歴史的な問題はない」と、ジョンズ・ホプキンス・キンメルがんセンターの腫瘍学およびジョンズ・ホプキンスの細胞工学研究所のメンバー であるElias Zambidis医学博士・准教授は述べた。 ヒト細胞とマウスを使用した実験結果は、2020年3月5日にNature Communicationsでオンラインで公開された。 このオープンアクセスの論文は、「タンキラーゼ阻害剤によって制御されたナイーブ糖尿病ヒトiPSCから生成された血管前駆細胞が虚血性網膜の効率的な血行再建を促進する(Vascular Progenitors Generated from Tankyrase Inhibitor-Regulated Naïve Diabetic Human iPSC Potentiate Efficient Revascularization of Ischemic Retina.)」と題されている。国立眼病研究所によると、糖尿病性網膜症は、米国の成人の失明の主な原因である。 2050年までに約1460万人のアメリカ人がこの状態になり、網膜で異常な血管の成長が起こり、そこで光が視覚に変換されると推定している。 この研究のために、科学者らは、1型糖尿病の人から採取した線維芽細胞(結合組

2020年2月5日にNatureが発行するジャーナルで、全ゲノムシーケンスと癌の統合分析に関するICGC / TCGAコンソーシアムの記念碑的な努力から生まれた21のオープンアクセス研究論文が同時にオンラインで公開された :Nature Communications(8)、Nature(6)、Nature Genetics(5)、Nature Biotechnology(1)、およびCommunications Biology(1)。 この作業は、全ゲノムの汎癌解析(PCAWG)として知られる37か国の1,300人を超える科学者と臨床医の国際協力に基づいている。 この取り組みには、38種類の腫瘍タイプの2,600を超えるゲノム解析が含まれ、原発癌ゲノムの膨大なリソースが作成された。   この中心的論文は、「全ゲノムの汎癌解析(Pan-Cancer Analysis of Whole Genomes.)」と題されている。 今回のBioQuickの投稿は、21の論文のもう1つ「2,658の癌の進化の歴史(The Evolutionary History of 2,658 Cancers)」について説明している。 21の論文すべてのタイトルとリンクは、Evolutionary History の記事の説明に従って記載する。 さらに、社説やNews & Views の記事を含む関連記事が最後に記載する。 EMBLの欧州バイオインフォマティクス研究所(EMBL-EBI)および英国のFrancis Crick Instituteの研究者は、38の異なるがんタイプからの2r、600を超える腫瘍の全ゲノムを分析し、癌の発生中のゲノム変化の年代を決定した。 癌は、ゲノムが時間とともに変化する生涯にわたるプロセスの一部として発生する。加齢に伴い、細胞は細胞分裂後にエラー(変異)を起

赤ちゃんがまだあなたと話すことができなくても、赤ちゃんと遊んでつながりの感覚を感じたことはあるだろうか? 新しい研究は、あなたが文字通り「同じ波長で」同じ脳領域で同様の脳活動を経験しているかもしれないことを示唆している。 これはほとんどの母親が本能的に知っている可能性が高いものだが、今では科学的に非常に詳細に証明されている。 プリンストン大学の研究者チームは、自然な遊びの中で赤ちゃんと大人の脳がどのように相互作用するかについての最初の研究を実施し、彼らの神経活動の測定可能な類似性を発見した。 言い換えれば、赤ちゃんと大人の脳の活動は、おもちゃとアイコンタクトを共有するにつれて、上下した。この研究は、Princeton Baby Labで行われた。大学の研究者は、赤ちゃんが世界を見て、話し、理解する方法を研究している。「以前の研究では、大人の脳は映画を見たり話を聞いたりすると同期することが示されたが、この『神経同期』が人生の最初の数年でどのように発達するかについてはほとんど知られていなかった」 プリンストン・ニューロサイエンス研究所(PNI)の準研究員であり、2019年12月17日にPsychological Scienceでオンライン公開された論文の筆頭著者であるElise Piazza博士はそう述べた。 この論文は「幼児と成人の脳は自然なコミュニケーションのダイナミクスで結びついている。(Infant and Adult Brains Are Coupled to the Dynamics of Natural Communication.)」と題されている。Piazza博士と彼女の共著者ら(PNIの準研究奨学生 のLiat Hasenfratz博士、心理学および神経科学の教授および大学院研究ディレクター のUri Hasson博士、そして心理学の准教授のCasey L

健康な心臓は老化するにつれて、心血管疾患の影響を受けやすくなる。 ピッツバーグ大学の研究者らは、インスリン様ホルモンであるRelaxinが老齢ラットの心房細動(AF)、炎症、および線維症を抑制することを発見した。この論文は「Relaxinは老化した心臓の不適応な変化をWntシグナル伝達によって逆転させる」と題されている。 健康な心臓は老化するにつれて、心血管疾患の影響を受けやすくなる。 ピッツバーグ大学の研究者らは、インスリン様ホルモンであるRelaxinが老齢ラットの心房細動(AF)、炎症、および線維症を抑制することを発見した。これらのメカニズムはまだ解明されていない。ピッツバーグ大学の大学院生であるBrian Martin は、2019年12月6日のScientific Reportsのオンラインで公開されたオープンアクセスの論文で、Relaxinが体のシグナル伝達プロセスとどのように相互作用して、大きな治療可能性を秘めているかもしれない基本的なメカニズムを生み出すかについて議論している。この「Relaxinは老化した心臓の不適応な変化をWntシグナル伝達によって逆転させる(Relaxin Reverses Maladaptive Remodeling of the Aged Heart Through Wnt-Signaling)」と題された論文の研究は、ピッツバーグ大学の医学部教授であるGuy Salama博士と、工学部のスワンソン工学部の大学院生研究者であるMartin氏により行われた。「Relaxin は、20世紀初頭に発見された生殖ホルモンであり、心血管疾患の症状を抑制することが示されている」とMartin氏は述べた。 「この論文では、Relaxin 治療が、Relaxin の利点の背後にある基本的なメカニズムを明らかにする標準的なWntシグナル伝達を活性化

世界の科学界は、癌に対して困難かつ長期にわたる戦争を繰り広げている。 免疫原性細胞死の分野における新研究では、薬物の応用分野を拡大でき、治療後の再発から患者を確実に保護しようとしている。 癌治療は、身体からの腫瘍細胞の除去と化学療法だけではなく、腫瘍細胞が増殖して新しい病気を引き起こすことを防ぐシナリオの提供も医師の努めだ。   ロシアのニジニ・ノヴゴロドにあるロバチェフスキー州立大学とベルギーのゲント大学の科学者は、長年に渡り癌治療後の身体への害を最小限に抑えることを目的とした研究に従事しており、癌患者を治療するための新しいアプローチを探してきた。 ロシア科学財団からの助成金により支援され、ロバチェフスキー大学の生物・生物医学研究所の一流研究者でありゲント大学教授のDmitry Krys'ko 博士が率いるこのプロジェクトは、最初の大きな成果をもたらした。Krys'ko教授によると、既存の抗癌療法(化学療法、放射線療法、光線力学療法)は体全体に大きなダメージを与えるが、彼のチームの研究は免疫原性細胞死の刺激を目的としており、 損傷だけでなく、癌との闘いに身体の資源を関与させることにより、治療の有効性も高めるものだ。「この研究では、光線力学的治療に基づいた抗癌治療薬のいくつかをテストし、それらの新しい免疫原性を調べた。癌と戦うために外部の影響が使用されるだけでなく、身体自体も適応免疫応答の反応を誘発することによって癌との戦いに従事すると言うことができる。免疫原性細胞死(ICD:immunogenic cell death)のコンセプトには、癌細胞のプログラム死と、免疫系に危険信号を与える分子の放出が含まれ、治療およびこれらの薬剤の作用を強化した。」とKrys'ko 教授は述べた。 この研究では、in vitroおよびin vivo実験で使用された多くの方法とアプローチ

糖尿病のインスリンや血友病の凝固因子などの薬は治療用タンパク質であり、研究室で合成するのは困難だ。 そのため科学者は細菌を小さなタンパク質製造工場として加工して使用している。しかし、バクテリアや他の細胞の助けを借りたとしても、医療または商業用途のタンパク質を生産するプロセスは面倒で費用が掛かる。 セントルイスにあるワシントン大学医学部の研究者が、タンパク質生産を最大で1000倍まで高める方法を発見した。 Nature Communicationsで2019年12月18日にオンラインで公開されたこの調査結果は、特定のタンパク質ベースの医薬品、ワクチン、診断薬、および食品、農業、生体材料、バイオエネルギー、化学工業で使用されるタンパク質の生産量を増やし、コストを削減するのに役立つという。このオープンアクセス論文のタイトルは「短い翻訳領域がタンパク質合成の効率を決定する(A Short Translational Ramp Determines the Efficiency of Protein Synthesis.)」と題されている。「医療または商業用途向けのタンパク質の製造プロセスは、複雑で、高価で、時間が掛る可能性がある」と、細胞生物学および生理学の准教授であり本研究論文の著者であるSergej Djuranovic 博士は述べた。 「各細菌が10倍のタンパク質を生産できるようになれば、仕事を完了するのに必要な細菌量は1/10になる。これにより、コストが大幅に削減される。 この手法は、あらゆる種類のタンパク質で機能する。なぜなら、この手法は普遍的なタンパク質合成機構の基本的な特徴だからだ。」タンパク質は、何百ものアミノ酸残基から構成されている。 Djuranovic 博士と筆頭著者である研究室の学部研究者のManasvi Verma氏は、研究者は、特定の遺伝子から生成され

ピンク色をした生まれたてのジャイアントパンダの新生児の出生体重は通常たった約100グラムだ。この重さはバターの棒に相当する。 彼らの母親はそれより900倍も大きい。 長い間研究者はこの異常なサイズの違いに戸惑ってきた。ハリモグラやカンガルーなどの動物のいくつかの例外を除き、他の哺乳類の新生児は母親に比べてそれほど小さくはない。 理由は誰にも分からないが、10種のクマや他の動物の骨に関するデューク大学の研究では、現在の理論のいくつかが支持されていないことが分かる。   デューク大学の生物学の教授であるKathleen Smith 博士と彼女の元教え子の Peishu Li は、この発見をJournal of Anatomyに発表した。 2019年12月2日にオンラインで公開されたこの論文は、「新生児クマ科の比較骨格解剖学とジャイアントパンダの極端な晩成性(Comparative Skeletal Anatomy of Neonatal Ursids and the Extreme Altriciality of the Giant Panda.)」と題されている。赤ちゃんパンダの骸骨は手に入らないが、研究者らはワシントンDCのスミソニアン国立動物園で生まれた赤ちゃんパンダの保存遺体を研究することができた。国立動物園の最初のパンダカップルであるリンリンとシンシンの間には5匹の子が生まれたが、いずれも数日で死亡した。研究者らは、スミソニアン国立自然史博物館とノースカロライナ州立獣医大学から、新生グリズリー、ナマケグマ、ホッキョクグマ、犬、キツネ、およびその他の近縁動物とともに、これらの子の2頭のマイクロCTスキャンを行った。 彼らはスキャンを使用して、出生時の各赤ちゃんの骨の内部の3Dデジタルモデルを作成した。赤ちゃん動物が子宮内で成長および発達するにつれて、その骨および歯も

BioQuick Newsの編集長・MIKE O'NEILLは、Laboratory for Advanced Medicine Inc.(LAM社)の技術部長であるDhruvajyoti Roy博士(写真)にインタビューを行った。LAM社 は簡便な採血からの早期癌検出テストの商業化に焦点を当てたAIヘルスケア企業である。 今回はLAM社 の技術とDNAメチル化分析の分野における最近の進歩について学び、癌の非侵襲的検出のためのDNAメチル化ベースの検査の普及について議論する。 LAM社は、肝臓癌の早期発見と病気の再発の監視に使用できる血液ベースの肝臓癌テストを開発した。 Roy博士は、すべての肝臓癌の75%以上であり肝臓癌の最も一般的な形態である肝細胞癌(HCC)を検出するアッセイの能力について、2019年11月8日から12日までボストンで開催された、米国肝疾患研究協会(AASLD)が主催したThe LiverMeeting 2019でLAM社が実施した検証研究データを発表した。AASLDは、ポスター発表においてLAM社のデータを特別ポスターとして選択した。 特別ポスターは、採点されたポスターの抄録の上位10%に分類される。Roy博士へのインタビューは下記の通り;O'NEILL:なぜあなたのグループは、cfDNAのメチル化にフォーカスすることに決めたのですか?Roy博士:遺伝的変化と後成的変化の両方が、腫瘍の発生に関連していることが知られている。過去10年間、液体生検サンプルからの無細胞DNA(cfDNA)の分析は、腫瘍学において有望で潜在的に変革的で非侵襲的な診断アプローチとして浮上してきた。 cfDNAは、通常は細胞死の結果として、細胞によって血中に放出される断片化されたDNAで構成される。がん患者では、cfDNAの一部は、腫瘍細胞から放出されるDNAで構成され、多く

バクテリオファージ(ファージ)は、細菌を特異的に攻撃および破壊するウイルスだ。 20世紀初頭、研究者らはバクテリア感染を治療するための潜在的な方法としてファージを実験した。 しかし、その後抗生物質が出現し、ファージは不要になった。 しかし、抗生物質耐性感染の増加に伴い、研究者はファージ療法への関心を新たにした。   限られたケースだが、他のすべての選択肢が尽きた生命にかかわる多剤耐性細菌感染症の患者は、実験的なファージ療法で効果を上げている。 カリフォルニア大学サンディエゴ医学部の研究者とその共同研究者たちは、古典的な細菌感染症とは考えられない条件であるアルコール性肝疾患に対して、マウスに初めてファージ療法を適用することに成功した。この論文は、Natureの2019年11月13日号に掲載された。この論文は、「腸内細菌のバクテリオファージターゲティングはアルコール性肝疾患を軽減する(Bacteriophage Targeting of Gut Bacterium Attenuates Alcoholic Liver Disease.)」と題されている。「特定の細菌毒素のアルコール性肝疾患患者の予後不良との関連だけでなく、腸内細菌叢をファージで正確に編集することでそのつながりを断ち切る方法を見つけた」と、UCサンディエゴ医学部、NIHが出資するサンディエゴ消化器病研究センター所長で、医学および消化器内科教授のBernd Schnabl 医学博士は語った。アルコール関連肝疾患の最も深刻な形態である重度のアルコール性肝炎患者の最大75%が診断後90日以内に死亡する。 この症状はコルチコステロイドによる治療が最も一般的だが、これらの薬はあまり効果的ではない。 早期肝移植が唯一の治療法だが、限られた数の患者に対し特定の医療センターでのみ実施される。 実際、アメリカ肝臓財団によると、

スクリプス研究所とスタンフォード大学の研究チームは、リボソームの組み立てにおける重要なステップをリアルタイムで記録することに成功した。これは、細胞内でタンパク質を生成する、すべての生命形態に不可欠な複雑で進化的に古代の「分子機械」である。Cell誌で2019年11月21日に報告されたこの成果は、本質的に粘着性でミスフォールドしやすい細胞分子であるリボ核酸(RNA)の鎖が、リボソームタンパク質によって「シャペロン化」されて適切に折り畳まれ、リボソームの主要コンポーネントの1つを形成することを、前例のないほど詳細に明らかにした。   このCell誌の論文は「一過性タンパク質 - RNA相互作用ガイド新生リボソームRNAフォールディング(Transient Protein-RNA Interactions Guide Nascent Ribosomal RNA Folding)」と題されている。この発見は、リボソームが厳密に制御された段階的なプロセスで組み立てられるという長年の信念を覆すものだ。 「この分野で支配的な理論であったものとは対照的に、はるかに混沌としたプロセスを明らかにした」と、スクリプス研究所の統合構造および計算生物学の教授であるJames R. Williamson博士は言う。「それは、洗練されたデトロイトの自動車組立ラインではなく、ウォール街のトレーディングピットのようなものだ。」この研究のために、Williamson博士の研究室は、スタンフォード大学の教授であるJoseph Puglisi 博士の研究室と協力した。 この研究は基礎細胞生物学の重要な偉業だが、医学の重要な進歩をも可能にするはずだ。たとえば、いくつかの現在の抗生物質は、細菌のリボソームを阻害することで機能する。 この新しい研究により、細菌のリボソームをより高い特異性で標的とする、将来の抗生物質

ニューロン機能を支援する転写因子は、すでに再発した癌をさらに致命的にする可能性のある前立腺の細胞変換を可能にするようだ。 転写因子BRN4は主に中枢神経系と内耳で発現するが、稀であるが神経内分泌前立腺癌の患者でも増幅され過剰発現する最初の証拠がClinical Cancer Researchジャーナルで公開された。 この論文は「BRN4は去勢抵抗性前立腺癌における神経内分泌分化の新規ドライバーであり、BRN2を含む細胞外小胞で選択的に放出される(BRN4 Is a Novel Driver of Neuroendocrine Differentiation in Castration-Resistant Prostate Cancer and Is Selectively Released in Extracellular Vesicles with BRN2.)」と題されている。その名前が示すように、神経内分泌細胞は脳内の方が一般的だが、クルミサイズの前立腺にも少し存在し、強力なホルモン療法に直面するとより致命的なものになる。性ホルモンのアンドロゲンは前立腺癌の主な原因であり「化学療法去勢」と呼ばれるホルモン療法は、前立腺癌またはその受容体を抑制するための標準的な最前線療法だ、とジョージア医科大学 (MCG) 生化学科の癌生物学者である Sharanjot Saini博士(写真左) は語った。 それでも、患者の40%が数年以内に去勢抵抗性前立腺癌を発症する。このより侵攻性の癌は治療が難しく、患者はこの再発性前立腺癌に対して2012年に最初に承認されたエンザルタミドなどのより新しく強力なホルモン療法を受ける可能性がある。 Saini 博士は、前立腺で癌になり易いのは、はるかに一般的な管腔細胞型だと言う。 しかし、この追加のより積極的な治療に直面すると、これらの管腔細胞のサ

CRISPR / Cas9技術を使用してがん患者の免疫細胞を遺伝子編集し、それらの細胞を患者に注入することは、最初の臨床試験からの初期データに基づき米国で安全かつ実現可能であることが発表された。 ペンシルバニア大学アブラムソンがんセンターの研究者は、これまでの試験で3人の参加者(2人は多発性骨髄腫、1人は肉腫)に対し、編集されたT細胞が増加し、深刻な副作用なしに腫瘍標的に結合することを観察した。   調査アプローチに関連します。ペンシルバニア大学は、パーカーがん免疫療法研究所 (PICI)およびTmunity Therapeuticsと協力してこの研究を実施している。「このトライアルは主に3つの疑問に対する答えを提供する。この特定の方法でTセルを編集できるか? その結果T細胞は機能するか? そして、これらの細胞は患者に注入しても安全か? この初期データは、3つの疑問すべてに対する答えがYESである可能性を示唆していると血液悪性腫瘍部のチーフであるEdward A. Stadtmauer 博士は述べた。Stadtmauer博士は、2019年12月7日にオーランドで開催された第61回米国血液学会年次総会で、この調査結果を発表した。この研究のアプローチはCAR-T細胞療法と密接に関連している。CAR-T細胞療法は、患者自身の免疫細胞を操作してがんと闘うが、いくつかの重要な違いがある。 CAR-T細胞と同様に、研究者は採血を通して患者のT細胞を収集することから始める。 ただし、これらの細胞をCD19などの受容体で武装する代わりに、チームは最初にCRISPR / Cas9編集を使用して3つの遺伝子を削除した。 最初の2つの編集では、T細胞の天然の受容体を削除して、免疫細胞ががん細胞の適切な部分に結合するようにした。 3番目の編集は、PD-1を削除した。PD-1は、T細胞のチェック

生細胞内では多くの重要なメッセージがタンパク質間の相互作用を介して伝達されている。これらのシグナルを正確に中継するためには、各タンパク質が特定のパートナーとのみ相互作用し類似のタンパク質との望ましくないクロストークを回避する必要がある。 MIT の新研究では、これらタンパク質間のクロストークを細胞がどのように防いでいるかを明らかにし、また、細胞がシグナル伝達に使用していない膨大な数のタンパク質相互作用が残っていることを示した。 これは、合成生物学者が細胞の既存のシグナル伝達経路に干渉することなく、疾患の診断などのアプリケーション応用可能な新しいタンパク質の組み合わせを選び出せることを意味している。「ハイスループットアプローチを使用すると、特定の相互作用の多くの直交バージョンを生成でき、そのタンパク質複合体のさまざまな独立バージョンをいくつ構築できるかを確認できる」と、MIT の大学院生であり、 この論文の著者の Conor McClune 氏は述べた。2019 年 10 月 23 日に Nature でオンラインで公開されたこの論文は、シグナル伝達タンパク質の新しいペアを作成し、特定の植物ホルモンに遭遇すると黄色の蛍光を発する大腸菌細胞を操作することで、それらがどのように 新しいシグナルを新しい出力にリンクするために使用できるか実証した。 この論文は、「直交シグナル伝達経路を設計することで配列空間の疎な占有を明らかにする。(Engineering Orthogonal Signaling Pathways Reveals the Sparse Occupancy Of Sequence Space.)」と題されている。MIT の生物学教授である Michael Laub 博士(写真)はこの研究の上級著者だ。 その他著者として、Aurora Alvarez-Buylla 氏

老化は人体のすべての機能、特に脳機能に影響を与えるプロセスだが、ライフスタイルの変化(運動、カロリー摂取の制限など)により老化を遅らせることができる。パスツール研究所とCNRS(フランス国立科学研究センター)の研究者は、血液中の分子 GDF11(図)のこれまで知られていなかった特性を解明した。 マウスモデルで GDF11 が、食事療法によるカロリー制限の利点(心血管疾患を減らし、癌を防ぎ、脳の神経発生を高める)を模倣できることを解明した。 この研究の結果は、2019年10月22日にAging Cell誌に掲載された。このオープンアクセスの論文は、「全身GDF11がアディポネクチンの分泌を刺激し高齢マウスのカロリー制限様表現型を誘導(Systemic GDF11 Stimulates the Secretion of Adiponectin and Induces a Calorie Restriction-Like Phenotype in Aged Mice.)」と題されている。今日、長期に健康な脳を維持することは可能だ。 過去30年間、断続的な絶食などの特定の食事制限がいくつかの種の認知能力を改善し、平均寿命を延ばすことができると一般に認められてきた。 また、カロリー制限(栄養の質を維持しながら20%から30%のカロリー摂取量を減らすこと)が心血管疾患や癌のリスクを減らし、脳内の新しいニューロンの生産を増加させることも証明されている。マウスモデルを使用した以前の研究では、研究者は、老齢マウスに若いマウスの血液を注入すると、脳の血管が若返り、その結果、脳の血流が改善し、神経新生と認知が増加することを観察した。知覚記憶ユニット(パスツール研究所/ CNRS)の研究者は、カロリー制限と若い血液の補充が臓器の若返りに効果的であることから、特定のメカニズムが共通している可能性が

癌を早期に発見するための根本的な新しい戦略と技術の開発は、大西洋横断研究アライアンスの大胆な野望であり、癌の早期発見のための国際同盟(Alliance for Cancer Early Detection:ACED)は、Cancer Research UKとのパートナーにより2019年10月21日に発足が発表された。今後5年間で78億円以上の資金が提供される。早期発見は、より多くの人が癌に打ち勝つために不可欠だ。癌が早期に発見され治療されると、患者が病気を生き残るチャンスが劇的に向上する。 早期癌と前癌状態の生物学を理解することで、医師は病気を早期に発見し、必要に応じて効果的に治療する正確な方法を見つけることができる。   そもそも癌の発生を止めることができる「正確な予防」さえ可能になるかもしない。 英国の統計は、達成可能な生存率の大きな改善を強調している。 6種類の異なる癌の5年生存率は、腫瘍が小さくなり限局性を維持するステージ1で診断された場合、癌が大きくなり周囲の組織や他の臓器に侵入し始めるステージ4で診断された場合の生存率と比較して3倍以上高くなる。早期発見技術の進歩は、後期段階の診断を減らし、早期の治療可能な段階で診断される人々の割合を増やすのに役立ち、より多くの患者の将来を確保できる。Cancer Research UKは、英国と米国の科学者チームとの共同研究により、この未開拓の研究分野を開始するための大胆な野望を設定している。 癌の早期発見のための国際同盟 (ACED) は、Cancer Research UK、スタンフォード大学カナリアセンター、 ケンブリッジ大学、オレゴンヘルスアンドサイエンス(OHSU)ナイトキャンサー研究所、ユニバーシティカレッジロンドン(UCL)、マンチェスター大学で構成されている。 腸癌、乳癌、子宮頸癌などの既存のスクリーニン

カナダのトロントにある病気の子供のための病院(SickKids)のフェノゲノミクスセンター科学技術開発部長の Lauryl Nutter博士(写真)を含む研究者らは、CRISPR酵素Cas9の使用を改善し、実験マウスの標的外変異誘発の可能性を減らすための新しい方法を見つけた。 研究者の遺伝子編集に関連する共通の懸念である精度を改善するための新戦略に役立つこの調査結果は、ヒューストンで開催された米国人類遺伝学会2019年次総会(ASHG2019)で2019年10月18日に発表された。   このプレゼンテーションは「全ゲノムシーケンスでCas9の標的外変異誘発を遺伝的浮動環境に入れる(Whole Genome Sequencing Puts Cas9 Off-Target Mutagenesis into the Context Of Genetic Drift.)」と題されている。Nutter博士と複数機関のノックアウトマウスフェノタイピングプロジェクト(KOMP2)の共同研究者は、Cas9と遺伝子編集を定期的に使用して、特定の突然変異を持つ実験用マウスの系統を作り出している。 この研究では、マウス系統での標的外変異誘発の可能性(遺伝子編集プロセスによって導入された意図しない遺伝子変異)にしばしば遭遇する。「我々は標的外変異誘発について、どの程度心配する必要があるのか知りたいと思っていた。」とNutter 博士は述べた。 マウスでの問題の程度を実証することにより、研究室で研究されているヒト細胞株でよりよく評価できるとともに、Cas9ベースの遺伝子編集の精度を改善する新しい方法を生み出したいと考えた。これらの質問に答えるために、Nutter博士のチームは、Cas9とガイドRNAを使用してマウスの胚で58のゲノム編集実験を行い、異なる遺伝子に特定の標的変異を誘発し、それを子

ミネソタ大学の研究者は、アルツハイマー病などの疾患の治療法の研究で、マウス版のアルツハイマー病関連MAPT遺伝子がヒト版の遺伝子に完全に置き換えられたマウスの系統を開発した。 完全な遺伝子置換モデルとしてこの新しい動物モデルは、MAPT遺伝子はヒトと同じように機能し、研究者は遺伝子治療をより正確に開発および評価できるようになる。   この研究は、10月16日にテキサス州ヒューストンで開催された米国人類遺伝学会(ASHG)2019年次総会(10月15〜19日)で発表された。 発表の要旨は、「マウスへのヒト遺伝学の移動:完全なヒト遺伝子置換モデル(Moving Human Genetics into the Mouse: Full Human Gene-Replacement Models.)」と題されている。「研究者は、研究対象のマウスや他の動物モデルの遺伝子の動物バージョンを見つけて操作することで、ヒト遺伝子を長い間研究してきた」とミネソタ大学の准教授であるMichael Koob 博士は説明した。 「しかし、マウスはヒトとは異なる遺伝子を持っている。遺伝子の機能が同じであっても、その配列は異なる」とKoob博士は語った。 このため、動物モデルの研究には通常、多くの試行錯誤が伴い、研究者は、遺伝的変化が観察された変化につながる理由と方法について推測する必要がある。さらに、ヒトにおける遺伝子のヒトバージョンの役割について結論を導き出すこと、そして治療法を開発することはこの知識に基づいて構築することは困難であり、間違いを起こしやすく、研究結果は必ずしもそのまま通用しない。完全な遺伝子置換モデルへのアプローチを開発する中でKoob博士と同僚は、アルツハイマー病で重要な役割を果たすことが知られているが、その関与がよく理解されていない遺伝子であるMAPTに焦点を合わせることにし

最も致命的であるマラリア原虫がゴリラからヒトにジャンプする一連の出来事が発見された。 英国のウェルカムサンガー研究所とフランスのモンペリエ大学の研究者は、熱帯熱マラリア原虫の祖先によって取得された約50,000年前の遺伝子配列を再構築し、ヒト赤血球に感染する能力を与えた。PLOS Biologyで2019年10月15日に公開されたこの論文は、「先祖伝来のRH5侵略リガンドの復活が、ヒトの熱帯熱マラリアの起源の分子的説明を提供する。」と題されている。 最も致命的であるマラリア原虫がゴリラからヒトにジャンプする一連の出来事が発見された。 英国のウェルカムサンガー研究所とフランスのモンペリエ大学の研究者は、熱帯熱マラリア原虫の祖先によって取得された約50,000年前の遺伝子配列を再構築し、ヒト赤血球に感染する能力を与えた。研究者らは、このrh5遺伝子が限られた時間で寄生虫がゴリラとヒトの両方に感染することを可能にし、分子レベルでジャンプがどのように行われたかを発見した。 この研究チームはまた、熱帯熱マラリア原虫をヒトに制限する特定のDNA突然変異を特定した。PLOS Biologyで2019年10月15日に公開されたこの研究は、最も致命的な感染症の1つがどのようにヒトに感染するようになったかについて信憑性のある説明を提供し、病原体が1つの種からどのように飛び出すことができるかを理解するために重要と言える。 この論文は、「先祖伝来のRH5侵略リガンドの復活が、ヒトの熱帯熱マラリアの起源の分子的説明を提供する。(Resurrection of the Ancestral RH5 Invasion Ligand Provides a Molecular Explanation for the Origin of P. Falciparum Malaria In Humans.)」と題

台湾のChang Gung Memorial Hospitalによる新研究は、重度の睡眠時無呼吸が、失明や失明を引き起こす可能性のある糖尿病の合併症である糖尿病性黄斑浮腫を発症する危険因子であることを示している。 糖尿病性黄斑浮腫も、重度の睡眠時無呼吸の患者では治療がより困難であった。 初期の研究では2つの状態の関連性が弱いことが示されていたが、睡眠時無呼吸は基礎疾患を悪化させるという証拠が増えている。   この研究者らは、サンフランシスコで10月12〜15日に開催された第123回米国眼科学会でこの研究成果を発表した。糖尿病の人が血糖値をうまくコントロールできないと、目の後ろの小さな血管が損傷する可能性がある。この状態は糖尿病性網膜症と呼ばれ、米国では失明の主な原因になっている。時には、小さな膨らみが血管から突出し、網膜に液体や血液が漏れることがある。この液体は網膜の領域に腫れや浮腫を引き起こし、はっきりと見ることができる。睡眠時無呼吸は、呼吸が繰り返し停止および開始し、睡眠を妨害し、血中酸素濃度を低下させる睡眠障害である。酸素の低下は、血管を傷つける役割を果たす可能性のある体の多くの変化を解き放つようだ。睡眠時無呼吸の人は、高血圧、心臓発作、脳卒中、2型糖尿病を発症するリスクがある。さて目はどうだろうか? 台湾のChang Gung Memorial Hospitalの研究者らは、睡眠時無呼吸は、インスリン抵抗性を高め、炎症を高め、血圧を上げることにより、糖尿病性網膜症の発症と悪化の一因になると考えている。主任研究者のJuifan Chiang博士および同僚は、8年間にわたって糖尿病性網膜症と診断されたすべての患者のデータを調べた。 研究者は、重度の睡眠時無呼吸の割合が、糖尿病性黄斑浮腫のない患者と比較して、糖尿病性黄斑浮腫のある患者で有意に高いことを発見した(80

脳下帯状回(SCC)と呼ばれる脳の領域への深部脳刺激(DBS)により、 他の治療に反応しなかった最も重度の鬱病患者である治療抵抗性鬱病の患者に長期間強力な抗鬱効果をもたらしたことがAmerican Journal of Psychiatryの2019年10月4日号にオンラインで公開された。この論文は「治療抵抗性うつ病に対する脳梁下帯状回深部脳刺激の長期転帰(Long-Term Outcomes of Subcallosal Cingulate Deep Brain Stimulation for Treatment-Resistant Depression.)」と題されている。   この研究は、エモリー大学の神経学・脳神経外科・精神医学・神経科学の教授であり、ナッシュファミリーアドバンストサーキットセンターの設立ディレクターであるHelen S. Mayberg博士(写真)が率いている。ニューヨーク市マウントシナイのアイカーン医科大学の治療学は、研究チームによって実施された以前の研究を検証し、これらの患者のDBSを改良および最適化するための追加研究の基礎を築いた。本態性振戦、パーキンソン病、てんかん、強迫性障害を治療するために米国食品医薬品局から承認されている脳深部刺激は、神経刺激装置(「脳ペースメーカー」と呼ばれることもある)の配置を伴う神経外科的処置だ。 高周波の電気インパルスを脳の奥深くに埋め込まれた電極を通して各障害の症状の原因となる特定の脳領域に送る。Mayberg博士は、2005年に治療抵抗性鬱病患者を対象に、Brodmann エリア25として知られる脳梁下帯状回白質のDBSの最初の試験を主導し、臨床的有益性があることを実証した。 その後の小規模な非盲検試験でも同様に良好な結果が得られたが、これらの有望な非盲検結果にもかかわらず、指定された6ヶ月で統計的に有

生命を脅かす病気との闘いにおける画期的プロジェクトが、英国で2019年9月11日に始動した。 2億ポンド(約264億円)の全ゲノム配列決定プロジェクトが形成され、英国ストックポートに本拠地を置くUK Biobankで約50万人のボランティアの遺伝子コードを調べ配列決定する。UK Biobankは製薬会社や専門機関とパートナーシップを形成している。 英国のBoris Johnson 首相は次のように述べている。「英国には、国際的な協力と発見の中心に自らを置くという誇りのある歴史がある。 60年以上前、我々は国際的な研究者チームによってケンブリッジでDNAの発見に至ったが、今日はさらに進んでいる。 現在、我々は世界中の専門家を集めて、英国で世界最大の遺伝学研究プロジェクトに取り組み、生命にかかわる病気の治療を改善し、最終的には命を救おうとしている。 この種の突破には、英国で勉強や働くために世界中から集まる最も光り輝く最高の人材に開かれていなければ不可能だ。 だからこそ、留学生が潜在的な可能性を解き放ち、英国でのキャリアを開始するための新ルートを発表する。」ゲノミクス研究は、真に予測可能で、よりパーソナライズされたヘルスケアシステムを作成する可能性があり、英国はこの分野の研究が提供する機会を掴みたいと望んでいる。そのため、政府は2024年までに500万件のDNA分析を行うことを約束した。新しいプロジェクトは、遺伝子研究を通じて健康を改善し、癌、心臓病、糖尿病、関節炎、認知症を含む広範囲の重篤で生命を脅かす病気の予防、診断、治療を改善することを目指している。 Andrea Leadsom 英国商務長官は、次のように述べている。 「本資金支援は、科学的努力と進歩の最前線に留まるという英国の決意を反映しており、これまでに実施された世界で最も野心的な遺伝子配列決定プログラムの1つだ。

セントルイスのワシントン大学医学部の研究者らは、通常3歳前後で発作、発達退行、および死をもたらす小児の致命的な遺伝子障害「クラッベ病」に至る正確な生化学的パスウェイについて、数十年にわたる謎を解決したようだ。このクラッベ病のヒト疾患マウスモデルを用い、この研究者らは可能な治療戦略を見つけ出した。   2019年9月16日にPNASでオンラインで公開されたこの論文は、「クラッベ病における酸性セラミダーゼの遺伝的アブレーションによりサイコシン仮説が確認され、新しい治療標的が特定された。(Genetic Ablation of Acid Ceramidase In Krabbe Disease Confirms the Psychosine Hypothesis and Identifies a New Therapeutic Target.)」と題されている。クラッベ病としても知られる乳児球状細胞白質ジストロフィーの患者は、神経ワイヤーの軸索を絶縁する保護被覆を徐々に失う。この稀な状態(出生100,000人に約1人に影響を及ぼす)は、通常1歳前に診断され、急速に進行する。 研究者らは、サイコシンと呼ばれる有毒化合物の蓄積がこの障害で神経の絶縁が破壊される原因であると長い間疑っていた。 遺伝性疾患の患者は、サイコシンの分解に関与する重要なタンパク質を欠いている。 しかし、クラッベ病のサイコシン源はとらえどころのないものであり、問題を解決することは不可能だ。「幼児期のクラッベ病は常に致命的だ。」と、ワシントン大学医学部の教授である上級著者のMark S. Sands 博士は述べた。 「これは、1世紀以上前に発見された神経変性疾患だが、効果的な治療法はまだない。ほぼ50年間、サイコシンの仮説は正しいと想定されてきた。 しかし、我々はそれを証明することができなかった。」驚くべきこと

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