タラゾパリブの第2相試験では、これまで治療の適応とされていなかった乳癌患者の腫瘍を縮小させることが判明した。BRCA1またはBRCA2遺伝子に変異がある乳癌患者の治療に承認された薬剤が、他の遺伝子変異を持つ人々にも有効の可能性がある。テキサス大学サウスウェスタン校(UTサウスウェスタン)の研究者らは、タラゾパリブがPALB2遺伝子に変異のある乳癌患者の腫瘍を縮小させることに成功したと2022年10月17日付のNature Cancerで報告した。この変異を有する患者は、これまでPARP阻害剤として知られる抗癌剤の一種であるタラゾパリブの治療対象にはならなかった。
このオープンアクセス論文は「野生型BRCA1とBRCA2を有し、他の相同組み換え遺伝子に変異を有する患者を対象としたタラゾパリブ単剤治療の第II相試験(A Phase II Study of Talazoparib Monotherapy in Patients with Wild-Type BRCA1 and BRCA2 with a Mutation in Other Homologous Recombination Genes.)」と題されている。
この論文の筆頭著者であり、UTサウスウェスタン内科助教授で、ハロルド・C・シモンズ包括的癌センターのメンバーであるジョシュア・グルーバー医師(写真)は、「これらの患者は、他の治療選択肢が非常に限られている。この研究は、PARP阻害剤の恩恵を受けられる患者層を拡大するものだ。」と述べている。
他のPARP阻害剤と同様に、タラゾパリブは、通常、細胞が損傷したDNAを修復するのを助けるタンパク質を阻害することで作用する。DNAを修復する能力がなければ、癌細胞はダメージを蓄積し、最終的には死滅する。BRCA1/2変異を含む、このプロセスに他の欠陥がある癌では、この薬剤は特に効果的で、DNA修復機構に致命的な二度目の打撃を与えることができる。
2018年の画期的な研究で、研究者は、乳癌患者全体の5%から10%を占めるBRCA変異を持つ進行乳癌患者に着目し、タラゾパリブが生存期間を延長することを明らかにした。食品医薬品局はそのグループに対して同薬を承認し、その後の研究により、タラゾパリブはBRCA変異を持つ前立腺癌や膵臓癌の患者にも効果があることが判明した。
グルーバー博士らは、新しい第2相試験において、DNA修復に関連する遺伝子変異があまり一般的でない進行癌患者を対象に、タラゾパリブの有効性を検証した。これまでのデータでは、全癌の17%以上にそのような変異があることが示唆されている。
グルーバー博士が以前勤務していたスタンフォード大学の試験には、20名の患者が登録した。13人は乳癌、3人は膵臓癌、4人は他の腫瘍型であった。患者は8つのDNA修復遺伝子に変異を有していた。平均して、彼らは毎日タラゾパリブを23.8週間服用した。
全患者の平均生存期間は5.6カ月で、20%の患者で腫瘍の部分的な縮小が認められた。この試験は第2相試験であったため、これらのデータを比較する対照群はなかったが、PALB2変異を有する患者では特に顕著な結果が得られた。平均で6.9カ月生存し、6人(乳癌5人、膵臓癌1人)全員に腫瘍の縮小がみられたのである。
この知見は、癌患者の治療を導くための遺伝子検査の重要性が増していることを強調しているとグルーバー博士は述べている。研究チームは、どのような患者がタラゾパリブの恩恵を最も受けられるかをさらに理解するために、UTサウスウェスタンで追跡試験を計画している。
UTサウスウェスタン メディカルセンターについて
UTサウスウェスタンは、全米屈指の学術医療センターとして、先駆的な生物医学研究と卓越した臨床ケアおよび教育を統合している。同大学の教授陣は6つのノーベル賞を受賞しており、米国科学アカデミー会員24名、米国医学アカデミー会員18名、ハワード・ヒューズ医学研究所研究員14名を擁する。2,900人以上の専任教員は、画期的な医学の進歩に責任を持ち、科学主導の研究を迅速に新しい臨床治療へと繋ぐことに尽力している。UTサウスウェスタンの医師は、80以上の専門分野において、10万人以上の入院患者、36万人以上の救急患者、そして年間約400万人の外来患者の診療に当たっている。



