重篤な症状を呈する骨の感染症、骨髄炎の病原体は主に黄色ブドウ球菌 (“staph”、スタフ) であり、その治療は非常に厄介である。しかし、Vanderbiltの微生物学者、Eric Skaar, Ph.D., M.P.H.と同僚のチームは、骨髄炎の有効な治療薬になるかもしれない抗黄色ブドウ球菌化合物を発見、さらに、その化合物の試験と新しい治療手段を確立するために新しいマウス・モデルも開発した。

 

Pediatric Infectious Diseasesの特別研究員、James Cassat, M.D., Ph.D.は、小児骨感染症の治療法改善を研究しており、また、マウス・モデルの研究指導も引き受けている。Dr. Cassatは、Vanderbilt Center for Bone BiologyとVanderbilt University Institute of Imaging Scienceの同僚研究者との共同研究で、外科的に植え付けた骨感染が広がる様子を映像化するmicro-computed tomography (マイクロCT) 撮影技術を開発した。Ernest W. Goodpasture Professor of PathologyのDr. Skaarは、「マイクロCTで、骨に与えられた損傷をかなり優れた解像力の映像で捉えることができた。


研究の結果、黄色ブドウ球菌は単に骨を破壊するだけでなく、新しい骨の再生を促すことも突き止められた。黄色ブドウ球菌は、骨の作り替えにかなりの変化を引き起こしている」と述べている。それだけでなく、Dr. Cassatは、感染した骨から細菌を回収し、数える手段も編み出した。

Dr. Skaarは、「治療法開発の視点から言えば、このモデルは、黄色ブドウ球菌その他、骨髄炎を引き起こす細菌による骨感染症に対する新開発化合物の効力を試験するために使えるということだ」と述べている。Dr. Skaarの研究チームは、新しい骨感染モデルでの化合物試験に関する報告を2013年6月12日付「Cell Host & Microbe」に発表しており、すでに製薬会社数社が問い合わせてきている。研究チームは、このモデルを使って、黄色ブドウ球菌が排出する特定のタンパク質が骨髄炎の病因に決定的な役割を果たしていることを実証した。Dr. Skaarは、「感染時の骨の損傷と形成を促す特定の細菌の働きと骨細胞信号を理解することで骨の形成と維持のバランスを回復する治療法を確立することができるかも知れない。たとえ細菌を殺すことができなくとも骨の形成や損傷を制御する化合物は医療的な利益が考えられる」と述べている。

Dr. Skaarは今でも感染をなくす治療の開発を目指している。骨髄炎その他の難治性の感染症 (肺感染や嚢胞性線維症など) は、しばしば黄色ブドウ球菌の中で「小コロニー変異体」に分類されているが、Dr. Skaarは、「このような黄色ブドウ球菌変異体が徐々に成長し、骨や肺の感染症治療に用いられる一般的な抗生物質すべてに耐性を獲得する」と述べている。黄色ブドウ球菌が抗生物質耐性小コロニー変異体になる過程で、エネルギー生成の方法を巧みに変化させることが突き止められている。細菌は呼吸作用に代えて発酵作用を行うことで抗生物質の侵入を阻止し、細菌繁殖を遅らせるのである。ヘム・センサー細菌経路を活性化する化合物の高スループット・スクリーニング作業で、Laura Mike大学院生が発酵作用黄色ブドウ球菌を殺す化合物を突き止めた。この発見は、2013年4月29日付PNASオンライン版に紹介されている。

Dr. Skaarは、「これまでにまったく知られていなかった分子活性だ。発酵細菌に対して毒性のある分子は他に全く知らない」と述べている。この化合物と、Gary Sulikowski, Ph.D.の研究チームが合成した誘導体は、黄色ブドウ球菌小コロニー変異体の治療あるいはその発生そのものを防止するために有用になるのではないかと期待されている。研究チームは、培養器の中で黄色ブドウ球菌を抗生物質のゲンタマイシンで処理すると細菌が小コロニー変異体になり、発酵を始めた。一方、ゲンタマイシンに新しい化合物を加えた培養器では黄色ブドウ球菌が耐性を持つのを防ぎ、最終的にすべての細菌が死滅した。Dr. Skaarは、「私たちは、この化合物を使って非常に面白い医療方法が考えられるのではないかと考えている。既存の抗生物質と合わせてこの化合物を投与すれば、細菌が抗生物質耐性を獲得することを妨げ、抗生物質の効力を強化することができるのではないか。少なくとも既存の抗生物質の効力をもうしばらく伸ばすことができるはず」と述べている。

これは、従来のペニシリン系抗生物質に細菌の耐性獲得を阻止する化合物を合わせた医薬オーグメンチンに似たものになると考えられる。研究チームは、この新しい化合物を骨髄炎のマウス・モデルでテストすることに期待をかけている。チームはまずマウスにゲンタマイシンを投与し、黄色ブドウ球菌が小コロニー変異体を形成するかどうかを調べる。もし変異体が形成されれば、新規化合物を合わせて投与し、細菌に耐性ができるかどうかを試験する他、慢性的な感染に対してもこの組み合わせの効力を評価することになっている。

Dr. Skaarは、Vanderbiltの共同研究の風土があればこそこの研究も可能になったと強調している。骨感染モデルを開発する上でVanderbilt Center for Bone BiologyのDaniel Perrien, Ph.D.とFlorent Elefteriou, Ph.D.やVanderbilt University Institute of Imaging Scienceの同僚研究者の存在は不可欠だった。また、Vanderbilt Institute of Chemical Biology (VICB) のDr. Sulikowskiその他の同僚のおかげでこの化学物質開発が可能になった。Dr. Skaarは、「これこそVICBが推進している作業の典型的な姿といえる。私のような生物学者が化学者と共同で研究し、新しい治療薬を開発することができるのだ」と述べている。

■原著へのリンクは英語版をご覧ください:Scientists Identify Staph-Killing Compound That May Be Effective in Osteomyelitis

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