遺伝子治療のブレークスルー?発現量を"ちょうど良く"制御する新技術「ComMAND」

遺伝子治療のブレークスルー?発現量を"ちょうど良く"制御する新技術「ComMAND」

もし、病気の原因となるたった一つの遺伝子の異常を、正確に「修復」できたら…?そんな夢のような治療法、遺伝子治療の実現を阻む大きな壁がありました。それは、治療用の遺伝子を「ちょうど良い量」だけ細胞に届けることの難しさです。今回、マサチューセッツ工科大学(MIT)の研究チームが、この課題を克服する画期的な遺伝子回路を開発し、脆弱X症候群などの疾患治療に新たな道を拓く可能性がでてきました。多くの疾患は、たった一つの遺伝子が欠損したり、正常に機能しなかったりすることが原因で引き起こされます。 科学者たちは何十年もの間、失われた遺伝子の新しいコピーを患部の細胞に送り届けることで、こうした病気を治療しようと遺伝子治療の研究に取り組んできました。しかし、こうした努力にもかかわらず、米国食品医薬品局(FDA)によって承認された遺伝子治療はごくわずかです。その開発における課題の一つは、新しい遺伝子が細胞内でどれだけ発現するかを精密に制御することの難しさでした。発現量が少なすぎれば効果がなく、多すぎると重篤な副作用を引き起こす可能性があるのです。 この遺伝子治療の精密な制御を実現するため、MITの技術者チームは、遺伝子発現レベルを目標範囲内に維持できる制御回路を調整・応用しました。そして、ヒトの細胞を用いた実験で、この方法を使って脆弱X症候群などの疾患治療に役立つ遺伝子を送り届けられることを示したのです。脆弱X症候群は、知的障害やその他の発達上の問題につながる疾患です。 「理論上は、治療を十分に制御できさえすれば、遺伝子補充によって、非常に多様な単一遺伝子疾患を解決できる可能性があります。これらの疾患は、遺伝子治療による解決策が比較的単純明快だからです」と、今回の新しい研究の責任著者であり、W. M. Keckキャリア開発教授(生物医工学・化学工学)であるケイティ・ギャロウェイ博士(

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Edited by Michael D. O'Neill

Michael D. O'Neill

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