Case Western Reserve Universityの研究チームは、単一で2つの疾患に対して別個の役割を果たす遺伝子を発見した。この遺伝子は乳がんの発生と広がりを抑制するだけでなく、心臓の健康増進にも役立っている。2012年、同大学の医学部研究チームは、マウスのモデルでHEXIM1という遺伝子に乳がんを抑制する効果があることを発見していた。
しかし、今度は同じ遺伝子が心臓の血管の数や密度を増強することを突き止めた。これは心臓の健康さを示すものだ。研究チームがマウス成体の心臓にHEXIM1遺伝子を再発現させたところ、運動をしていないのにも関わらず心臓が重くなりかつ大きくなり、さらに休憩状態での心拍数も下がった。心拍数の低下は心臓の効率が向上していることを示しており、遺伝子転換した心臓の心拍ごとの血流量が増えていることでも裏付けられている。また、遺伝子転換マウスは、訓練されていないにもかかわらず、遺伝子転換していないマウスに比べて2倍も長く走れるようになった。Case Comprehensive Cancer Centerのメンバーで薬理学の准教授を務めるMonica Montano, Ph.D.は、「私たちの研究で、HEXIM1が我が国の二大死因である心臓病とがんの双方を抑え込む役割を果たすのではないかと期待している」と述べている。Monica Montano, Ph.D.は、心臓とがんの研究のためにこのマウスを作り出した人であり、この研究を指導してきた人だ。
高血圧とそれに伴う心不全は、必要心拍数では血管が心筋の酸素・栄養必要量を運びきれないことが特徴であり、その不足を補うために心臓が肥大したり、逆に心臓が弱まり、最終的に停止に至ることになる。この研究では、HEXIM1量を人為的に強化した結果、心機能が全般に向上したことが示されており、将来的にHEXIM1が心臓病医薬開発のターゲットになると予想される。
2013年4月11日付オンライン版「Cardiovascular Research」に掲載されたこの研究論文は、Dr. Montanoと、Case Western Reserve School of Medicineの小児医学、遺伝子学、解剖学の教授、Rainbow Babies and Children's HospitalのPediatric Cardiology Fellowship Research部長を務めるMichiko Watanabe, Ph.D.の研究チームが出版する6件目の論文である。この2人の共同研究は、2004年に、HEXIM1の突然変異を発現したマウスが胎児期に心不全を起こすのはなぜかという原因究明から始まった。
2人の研究チームは、その遺伝子が心臓血管の発育に重要で、胎児期の数か月の間は体内に豊富にあることを突き止めた。その研究成果から、HEXIM1量を増やすことで血管の成長を促進し、心臓血管疾患を抑制することができるのではないかという研究テーマにつながった。Dr. Watanabeは、「クリーブランドの共同研究チームは、HEXIM1量を増やすことで一般人レベルの心臓機能を運動選手レベルにまで高めることができた。そうなれば、心臓も各種の心臓血管疾患の攻撃に耐えることができるのだろう」と述べている。
ところが、昨年、研究チームはHEXIM1の量を増やすと乳がんの成長を抑制することを突き止めた。研究チームは、ごく一般的な転移乳がんのマウス・モデルを使った実験で、FDA認可のポリマーを用い、局部的にヘキサメチレンビスアセトアミドを送り込み、遺伝子の発現を誘導した。その結果、局部的なHEXIM1の量が増え、乳がんの広がりを抑えることが確認された。
研究チームは、もっと可能性の高い薬品の開発を研究しており、2,3年以内に臨床治験に移りたいとしている。Case Western Reserve School of MedicineのCase Cardiovascular Research InstituteのEllery Sedgwick Jr. Chairと理事を務める医学教授、Mukesh K. Jain, M.D., F.A.H.A.は、「心臓に悪いがん治療薬が多すぎる。心臓に副作用をもたらさないどころか、心機能を増強するようながん治療薬があればどれほどありがたいことか」と語っている。
現在、Case Western Reserve大学研究者の主導する研究チームは、HEXIM1が心臓血管疾患を持ったマウスの健康状態を改善することができるかどうかに焦点を絞って研究を続けている。その一つとして、心臓マヒによる心臓の損傷を医薬によって軽減することができるかどうかということがある。
同研究チームの他のメンバーには、同じ大学のDr. Xin Yu、Dr. Margaret Chandler、Dr. Thomas Dick、Dr. Julian Stelzer, Dr. Brian Hoitらの他、大学病院、MetroHealth Medical Center, Cleveland Clinic、Cleveland State University大学など、いくつかのクリーブランドの研究機関が並んでいる。
■原著へのリンクは英語版をご覧ください:Same Gene Inhibits Breast Cancer and Strengthens Heart in Animal Model



