ストレスが脳の「糖鎖」を破壊する?うつ病の新たな発症メカニズムを解明
意欲の低下、睡眠障害、社会的引きこもりなどを通じて日常生活を妨げ、時には自殺のリスクも高める深刻な疾患、うつ病。その患者数は年々増加し、2025年時点で世界中で2億8,000万人以上が罹患しています。しかし、既存の治療薬は患者の約半数にしか効果が見られません。この度、韓国の基礎科学研究院(IBS: Institute for Basic Science)の研究者らが、うつ病の診断と治療の新たな手がかりとなる可能性のある、新しい病態メカニズムを発見しました。 C・ジャスティン・リー氏(C. Justin Lee)とイ・ボヨン氏(Boyoung Lee)が率いる研究チームは、タンパク質の異常な糖鎖修飾とうつ様行動を直接結びつける、脳内の新たな分子経路を特定しました。具体的には、慢性的なストレスが前頭前皮質にあるタンパク質に付着した糖鎖(O-グリカン)を破壊し、それによってうつ病が引き起こされるというものです。この研究成果は『Science Advances』誌に掲載され、治療抵抗性うつ病に対する標的療法の新たな可能性を開くものです。 うつ病は、心理的、環境的、遺伝的要因が複雑に絡み合って発症し、これまでにも多くの異なる病態メカニズムが報告されてきました。しかし、臨床で使用されている抗うつ薬のほとんどは、特にセロトニンを中心とした神経伝達物質の調節に焦点を当てています。これらの薬剤は、患者の約半数にしか効果がなく、胃腸障害や不安の悪化といった副作用を伴うこともしばしばです。この限界点が、神経伝達物質シグナル伝達以外の、脳内の新たな分子経路を探索する必要性を浮き彫りにしています。 研究者らは、タンパク質に小さな糖鎖が付着し、その構造と機能を変化させるプロセスである「糖鎖修飾」に注目しました。糖鎖修飾は、がん、ウイルス感染症、神経変性疾患など、様々な疾患における重要なメカニ
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Edited by Michael D. O'Neill

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