健康な脳細胞を守るには?「私を食べて」シグナルを制御する新メカニズム

脳のお掃除係が、なぜか健康な細胞まで攻撃してしまう…アルツハイマー病やパーキンソン病といった神経難病の謎に、小さなショウジョウバエが光を当ててくれました。コーネル大学の研究チームは、脳細胞を保護する役割を持つと考えられていたタンパク質が、実は全く逆の働きも併せ持つ「二つの顔」を持っていることを発見。これは、私たちが脳の病気を理解する方法を根底から変えるかもしれない、驚くべき発見です。このタンパク質「Eato」は、神経細胞(ニューロン)が破壊されるのを防ぐだけでなく、食細胞(ファゴサイト)と呼ばれる他の細胞が損傷した神経細胞を掃除する効率を高めるという、より大きな仕事をしていました。研究者たちが実験に用いたのは、ヒトと多くの基本的な生命現象を共有しているショウジョウバエです。 農学生命科学部およびワイル細胞分子生物学研究所に所属するチュン・ハン博士(Chun Han, PhD)のもとで研究を行う博士課程学生のシンチェン・チェン氏(Xinchen Chen)は、神経細胞からEatoが失われると、その神経細胞が死ぬことを発見しました。しかし、それは自ら死ぬのではなく、食細胞がその神経細胞を殺し、食べてしまうことで引き起こされていました。 アルツハイマー病のような神経変性疾患の新たな治療戦略を示唆する可能性のあるこの研究は、米国国立衛生研究所およびコーネル大学からの助成金によって可能となり、2025年3月12日付の『Science Advances』誌に掲載されました。このオープンアクセス論文のタイトルは、「Phagocytosis-Driven Neurodegeneration Through Opposing Roles of an ABC Transporter in Neurons and Phagocytes.(神経細胞と食細胞におけるABCトランスポーターの相
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