脳卒中リスクを高める遺伝子変異が発見される
サイエンス出版部 発行書籍
一般的な脳卒中のリスクを高める遺伝子変異が、2012年2月5日付けのNature Genetics誌に記載された研究で明らかにされた。これは現在までに発見されている脳卒中関連の数少ない遺伝子変異の一つであり、この発見により新たな治療法の可能性が見えてきた。脳卒中は世界中の死亡原因の第2位(全死亡数の1/10に当たる、年間600万人)にあたり、先進国では慢性的障害の主要原因でもある。 世界的な高齢化に伴い、脳卒中が健康に及ぼす影響はさらに高まるであろう。脳卒中の根底には幾つかの異なるメカニズムが存在する。最も一般的なタイプでは、一つまたは複数の動脈がブロックされることにより血流障害が起こる、大動脈虚血性発作である。これは、全ての脳卒中の3分の1以上にあたる。 セント・ジョージズ(ロンドン大学)およびオックスフォード大学の研究チームは、ヨーロッパ、アメリカ、そしてオーストラリアの研究者達と共に今までで最大規模にあたる脳卒中の遺伝学研究を行い、脳卒中を患ったことのある患者1万人と健常者4万人の遺伝子を比較した。本研究は、ウェルカムトラストによってグラントされた。研究チームは大動脈虚血性発作のリスクを高める遺伝子、HDAC9における変異を発見した。この変異はヒト染色体の約10%程度に発生し、変異のコピーを二つ持つ(それぞれの親から一つずつ継承された)人は、コピーを持たない人に比べてこのタイプの脳卒中のリスクがほぼ倍に上がるのである。HDAC9により生産されたタンパク質が筋肉組織や心臓の発達に貢献することはすでに知られている。しかし、この遺伝子変異が脳卒中リスクを高めるメカニズムは未だ明らかになっていないため、このメカニズムを理解することが、脳卒中を防ぐ、あるいは治療する新薬の開発につながるであろう。しかし、これはまだまだ先の事であると研究チームは考える。「この発見は、脳卒
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