世界初、ドロップレット・デジタルPCRシステムで胎児の出生前血液検査
サイエンス出版部 発行書籍
胎児のRh血液型、D抗原 (RHD)、性別、遺伝性障害を判定することのできる簡単で正確で低リスクの血液検査開発研究が2015年11月号Clinical Chemistryに掲載された。
この論文は、「Fetal Sex and RHD Genotyping with Digital PCR Demonstrates Greater Sensitivity than Real-time PCR (デジタルPCRの胎児性別、RHD遺伝子判定でリアルタイムのPCRを超える感度を証明)」と題されている。この研究は、イギリスのPlymouth Hospitals NHS TrustとPlymouth Universityの共同で行われた。
NHS(National Health Service)が認めている従来の羊水穿刺は、針を用いる上にわずかながらも流産のリスク(1%)があるのに対して、このDNA検査は、コストが非常に低く、非侵襲的な検査である。新開発のこの検査は、血友病、デュシェンヌ型筋ジストロフィーなどX連鎖劣性遺伝性疾患のリスクのある母体や新生児溶血性疾患のリスクのある母体を対象に実施することができる。
また、女性が妊娠初期に初めて一般開業医や助産婦の診察を受けた時の採血を使えるため、何度も予約を取る必要もなく、時間や設備を有効に使うことができる。
この研究の筆頭責任著者で、Plymouth University School of Biomedical and Healthcare SciencesのProfessor of Molecular Diagnostics and Transfusion Medicineを務めるProfessor Neil Avent, Ph.D.は、「母体の血液を使って、胎児の血液型や性別を判定する検査は過去10年行われてきたことが、この検査法では、胎児のDNAをさらに正確でしかも感度の高い方法で検査することができた。現行の非侵襲的検査法よりはるかに安価なこの検査法を使って、様々な障害の判定ができるようになる可能性がある。
羊水穿刺や胎盤絨毛検査などの侵襲的な検査法も間もなく用いられるなくなるだろう」と述べ、さらに、「このテクニックは、比較的リスクが小さく、様々な障害を早期に発見できる検査法であり、それによって、早期診断や早期治療を助け、母親にとっても新生児にとっても有益な結果をもたらすものだ。このような検査の目的は臨床管理に役立てるということであり、検査の結果、妊娠中絶するということは考えていないということを強調しておかなければならない」と述べている。
また、Plymouth Hospitals NHS Trustの母児医学コンサルタント、Ross Welch, M.D.は、「妊娠を続ける人は先に何が待っているかを知る権利があり、検査を受けるというのは妊娠女性にとって選択肢として手放すことはできない。もちろん、検査は効果的であるだけでなく、母子の健康にとってできるだけリスクが小さくなければならないということも正しい」と述べている。
原著へのリンクは英語版をご覧ください
World’s First Simple, Cheap, Non-Invasive, Low-Risk Prenatal Blood Test for Blood Group, Sex, & Certain Genetic Conditions of Fetus May Signal End to Invasive Amniocentesis & Chorionic Villus Sampling; Droplet Digital PCR Technique Used
同じカテゴリーの記事
Life Science News from Around the Globe
Edited by Michael D. O'Neill
バイオクイックニュースは、サイエンスライターとして30年以上の豊富な経験があるマイケルD. オニールによって発行されている独立系科学ニュースメディアです。世界中のバイオニュース(生命科学・医学研究の動向)をタイムリーにお届けします。バイオクイックニュースは、現在160カ国以上に読者がおり、2010年から6年連続で米国APEX Award for Publication Excellenceを受賞しました。
BioQuick is a trademark of Michael D. O'Neill