ノーベル賞受賞者、新しいがん研究ターゲットを見つける
コロラド-ボルダー大学バイオフロンティアズ研究所の科学者、トム・チェック博士とレスリー・ラインワンド博士は、Nature誌が2012年10月24日付オンラインで発表した研究論文で、「抗がん薬開発の標的分子は私たちのDNAの末端領域にある」と書いている。2人の科学者の所属するラボの研究者は、特定のアミノ酸パッチを探して共同研究を進めてきた。
染色体内のこのアミノ酸パッチに抗がん薬が結合してブロックするとがん細胞の増殖を妨げるようになるのではないかと考えられている。染色体内のこの位置のアミノ酸パッチは「TELパッチ」と呼ばれ、この部分が変化すると、染色体の末端領域が、がん細胞の成長に必要なテロメラーゼ酵素を活性化することができなくなる。チェック博士は、「これは科学的発見として素晴らしいことで、がんの問題に新しい方向から取り組める道が見つかったと言っていい。すごいのはTELパッチのアミノ酸一つを変化させることでテロメアの成長を抑制できるということだ。この原理をがん治療薬として実現するまでにはまだまだ道は遠いが、この発見から、今までとは違った、できればもっと効果的ながん研究のターゲットが浮かび上がってきた」と語っている。Howard Hughes Medical Investigatorで、1989年ノーベル化学賞受賞者のチェック博士は、バイオフロンティアズ研究所の所長を務めている。
生命科学雑誌バイオクイックニュース: 2024年8月号
同じカテゴリーの記事
Life Science News from Around the Globe
Edited by Michael D. O'Neill
バイオクイックニュースは、サイエンスライターとして30年以上の豊富な経験があるマイケルD. オニールによって発行されている独立系科学ニュースメディアです。世界中のバイオニュース(生命科学・医学研究の動向)をタイムリーにお届けします。バイオクイックニュースは、現在160カ国以上に読者がおり、2010年から6年連続で米国APEX Award for Publication Excellenceを受賞しました。
BioQuick is a trademark of Michael D. O'Neill