デューク大学で新しいクラスの鎮痛剤候補化合物を発見

デューク大学で新しいクラスの鎮痛剤候補化合物を発見

デューク大学の研究チームと同僚研究者が、痛みの治療で焦点になっていた2つの標的を同時にブロックする有望な新しいクラスの低分子薬剤を発見した。この概念実証実験は、皮膚の刺激感やかゆみ、頭痛、顎痛、膵臓や結腸を原因とする腹痛などの症状を緩和する新薬の開発に結びつく可能性がある。


2016年6月1日付Scientific Reportsオンライン版に掲載されたオープンアクセスのこの研究論文は、「Small Molecule Dual-Inhibitors of TRPV4 and TRPA1 for Attenuation of Inflammation and Pain (TRPV4とTRPA1の低分子二重阻害剤で炎症と痛みを緩和)」と題されている。Institute of Medicineの報告によると、アメリカでは1億人以上の人が慢性的な痛みに悩んでおり、新しい医薬を是非とも必要としている。

デューク大学医学部の神経学、麻酔学、神経生物学教授を務めるWolfgang Liedtke, M.D., Ph.D.は、頭痛、顔面痛その他の感覚障害患者の治療にあたっており、「非常に有望な話の第一章ともいうべきこの展開をうれしく思う。
この化合物を人間や動物の臨床治療に使えるようにしたい」と述べている。


同研究チームのこれまでの研究で、TRPV4 (写真) という分子が日焼けに伴う皮膚の不快感、頭や顔からの痛覚を伝達することを突き止めており、今回の研究ではそのTRPV4をより効果的に阻害する物質の開発を目指していた。Dr. Liedtkeと、彼のデューク大学での共同研究者、Farshid Guilakが行った2009年の研究では、TRPV4阻害剤のプロトタイプを用い、その後、さらに効果の高い化合物の開発に進んだ。プロトタイプと比べると、「16-8」と呼ばれる新しい候補薬物は、骨関節症の進行のカギを握る活性型TRPV4の存在する細胞で10倍の効力がある。また、神経細胞損傷、卒中、てんかんなどに見られる細胞タイプでも効力を発揮している。ところが16-8の特異性評価試験中に、研究チームは驚いたことに16-8がTRPA1も阻害することを突き止めた。これは痛みとかゆみの研究を進める上で標的として有望なものだった。

Dr. Liedtkeは、「自分自身も医師であり、治療薬として二重標的分子は非常に有利であり、その化合物が大きな可能性を秘めていることをすぐに悟った」と述べている。TRPV4もTRPA1もTRPイオン・チャネル・ファミリーのタンパク質であり、痛覚刺激を直接感受する感覚神経細胞内で機能している。他の研究グループも鎮痛作用の臨床治験でこれらのチャネルを標的にしている。

この研究では、薬剤16-8は、膵炎を患ったマウスの腹痛など、動物生体の痛みを緩和する効果が見られた。この研究の共同著者を務めたRodger Liddle, M.D.は、デューク大学医学部所属で、デューク大学脳科学研究所(Duke Institute for Brain Sciences)のメンバーでもある。その彼は、「いわゆる膵炎は激しい痛みを伴い、治療も難しい。しかも世界的に新発症例が増えている」と述べている。

Dr. Liedtkeは、「薬剤16-8は、骨関節症などの関節痛、頭痛、顔面痛、顎痛などの治療に効果があるのではないか」とみており、一般的には、内臓から発散される痛み、および神経細胞損傷による痛みに効果がある。研究グループは、今後、臨床前の研究として、このような症状に対するこの化合物の用途を理解し、またその作用の仕方を突き止めることに的を絞っており、その他にも、身体、皮膚の各所にある粘膜への局所適用についても研究することを考えている。

原著へのリンクは英語版をご覧ください
Scientists Discover and Test New Class of Pain Relievers

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Edited by Michael D. O'Neill

Michael D. O'Neill

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