2014年8月30日付でNovartis社がスペインのバルセロナのEuropean Society of Cardiology会議において発表し、同時にNew England Journal of Medicineにも掲載されたプレスリリースで、過去最大規模の心不全研究の主要エンドポイントで、同社の心不全治験薬、LCZ696が、ACE阻害薬enalaprilより優れていることが実証されたとしている。PARADIGM-HFで、左室駆出率 (HF-REF) 低下の心不全患者のうち、LCZ696を投与された患者はACE阻害薬enalaprilを投与された患者に比べて生存率も高く、突然の心不全悪化で入院する率も低いという結果が出た。

 

患者は既存の最善の治療を受ける他にLCZ696またはenalaprilの投与を受けた。HF-REF患者のLCZ696投与とenalapril投与の効果の差は統計的にもかなり有意であり、臨床的にも重要であった。この研究では、LCZ696の効果は早くから現れて持続し、しかもサブグループ全体で一貫していた。また、LCZ696は、心血管系死亡リスクを20% (p=0.00004) 減少させ、心不全による入院を21% (p=0.00004) 減少させ、また全死亡率を16% (p=0.0005) 減少させた。


全体として、心血管系死亡または心不全による入院を合わせた測定値は、一次エンドポイントで20%のリスク減少であった (p=0.0000002)。
Novartis Pharmaceuticals, Division HeadのDr. David Epsteinは、「Novartisの新しい心不全医薬LCZ696は、心血管死亡率を大きく引き下げる一方で患者の生活の質も改善しており、過去10年でもっとも重要な心血管治療の前進ともいえる。そのため、私たちとの共同研究に応じられた世界中の優れた心臓学者には、心不全患者の生命を救う新しい治療法開発に向けて邁進する努力に感謝したいと思う」と述べている。

心不全治療薬として研究が続けられているLCZ696は1日2回の服用で独特の作用機序があり、不全を起こしている心臓の緊張を和らげると考えられている。また、心臓の保護的な神経ホルモン系 (NP system) を強化すると同時に有害な系 (RAAS) を抑制するように働く。既存のHF-REF治療薬は、有害な効果を阻害する働きしか持っていない。
そのため、様々な治療法がありながら、死亡率は依然として高く、心不全と診断されてから5年以内に死亡する率は50%にものぼる。
心不全患者の約半数がHF-REFである。
PARADIGM-HFの安全データ分析から、研究の際にも副作用は十分対応できる程度で、副作用のために研究医薬投与を中止した率も、LCZ696で10.7%に対し、enalaprilの12.3% (いずれもp=0.03) と、LCZ696投与患者の方が低かった。
LCZ696グループでは、低血圧やそれほど深刻ではない血管性水腫発症率は高かったが、腎機能障害、高カリウム血症や咳などの率はむしろ低かった。Novartis社では、2014年末までにUS FDAに対して製造認可申請を提出し、2015年初めにはEUに対しても同申請の提出を計画している。

PARADIGM-HFは、ランダム化二重盲検法第III相治験でHF-REF患者8,442人に対してLCZ696対enalapril (広く研究の進んでいるACE阻害薬品) の効果と安全性のプロファイル評価を行った。ベースライン特性から、研究に参加した患者は一般的にHF-REF患者でNYHA ClassII-IV心不全だったことが分かる。PARADIGM-HFは、LCZ696が心血管系死亡率をenalaprilに比して少なくとも15%引き下げることができるかどうかを調べるものだった。患者は既存の最善の治療を受けた上でLCZ696またはenalaprilの投与を受けた。

一次エンドポイントは、心血管系死亡または心不全による入院が最初に起きた時点を総合したもので、心不全研究としては過去最大規模になった。二次エンドポイントは、8か月の心不全症状の臨床要約スコア変化と身体的限界 (Kansas City Cardiomyopathy Questionnaireによって評価)、全死亡率までの時間、新しい心房細動までの時間、腎機能障害発生までの時間となっている。
この試験は2009年12月に始められ、2014年3月には、Data Monitoring Committee (DMC) が、LCZ696を投与された患者の心疾患系死亡率が著しく低下したと確認、試験が予定より早く終了した。DMCは、一次エンドポイントが満たされたことも確認した。

LCZ696は、ARNI (アンジオテンシン受容体neprilysin阻害薬) であり、独特の作用機序があり、不全を起こしている心臓の緊張を和らげると考えられている。LCZ696は、心不全に対する人体の自然な防御機能を利用すると同時にナトリウム排泄増加その他の生体内の血管作用ペプチドのレベルを増強し、また、レニン・アンギオテンシン・アルドステロン系 (RAAS) を阻害する。
心不全は心臓が血液を十分に全身に送り出すことができなくなる疾患で、心身の衰弱をもたらし、命に関わる危険もある。息切れ、疲労、体液貯留などの症状が徐々に現れ、次第に悪化、生活の質に大きな影響をもたらす。
公衆衛生の面で重大な疾患であり、ますます問題が大きくなっている。新しい治療法を必要としていながら未だにその必要が満たされていない。毎年、HFは世界経済に1,080億ドルの損失を与え、治療コストの60%から70%が入院費になっている。欧米だけでも2,600万人が心不全にかかり、死亡率の高さや生活の質の低さに悩む結果になっている。

Novartis社プレスリリース、NEJM記事や論説、大手メディアの記事サマリーを次に挙げる。研究のビデオ・サマリーは、NEJMウエブサイト ( www.nejm.org ) に掲載されている。

■原著へのリンクは英語版をご覧ください: Landmark Study Shows Novartis Experimental Drug Far Superior to ACE Inhibitor Enalapril in Reducing Risk of Death Associated with Heart Failure

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