脂肪肝と肝臓の線維化を改善する新ホルモン、その鍵は「脳」にあった

近年、脳に働きかけて食欲を抑え、血糖値を下げる「GLP-1作動薬」が肥満や糖尿病の治療薬として大きな注目を集めています。では、もし同じように「脳」に信号を送ることで、現代人の多くが抱える健康問題「脂肪肝」を根本から改善できるホルモンがあるとしたら、どうでしょうか?この度、期待の新薬候補として開発が進むあるホルモンが、まさに脳を介して肝臓の脂肪を減らし、さらには病的な状態を改善する、その驚くべきメカニズムが明らかになりました。 脂肪肝を改善するホルモン「FGF21」、その鍵は脳へのシグナルにあった 2025年5月13日に学術誌Cell Metabolismに発表された画期的な研究は、線維芽細胞増殖因子21(FGF21: fibroblast growth factor 21)というホルモンが、マウスにおいて脂肪肝疾患の影響をいかにして改善するかを詳述しています。このホルモンは、主に脳に信号を送ることで肝機能を改善します。オクラホマ大学の研究者であるマシュー・ポットホフ博士(Matthew Potthoff, PhD)が筆頭著者を務めたこの研究は、第3相臨床試験の段階にある待望の新薬クラスの標的であるこのホルモンの作用機序について、貴重な洞察を提供するものです。この論文は、「FGF21 Reverses MASH Through Coordinated Actions on the CNS and Liver(FGF21は中枢神経系と肝臓への協調的な作用を通じてMASHを改善する)」と題されています。 「脂肪肝疾患、すなわち代謝機能障害関連脂肪性肝疾患は、肝臓に脂肪が蓄積する状態です。これは、線維化、そして最終的には肝硬変が起こりうる代謝機能障害関連脂肪肝炎に進行する可能性があります。MASLDは米国で非常に大きな問題となっており、世界人口の40%が罹患している一方
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Edited by Michael D. O'Neill
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