メキシコ東部原産のサソリの毒液は、単なる毒素以上のものかもしれない。 スタンフォード大学とメキシコ国立大学の研究者らは、この毒には細菌感染と戦うのを助ける2色に変わる化合物も含まれていることを発見した。 チームはサソリの毒から化合物を分離するだけでなく、それらを実験室で合成し、実験室で作られた毒が組織サンプルとマウスでブドウ球菌と薬剤耐性結核菌を殺すことを確認した。

 

PNASで2019年6月10日にオンラインで発表された調査結果は、サソリ、ヘビ、カタツムリ、および他の有毒な生き物の毒素における潜在的な薬理学的価値を強調している。 このPNASの論文は「サソリ毒由来の黄色ブドウ球菌および結核菌に対する1,4-ベンゾキノン系抗菌剤(1,4-Benzoquinone Antimicrobial Agents Against Staphylococcus Aureus and Mycobacterium tuberculosis Derived from Scorpion Venom.)」と題されている。

「ボリューム当たりで言えば、サソリの毒は世界で最も貴重な物質の1つだ。それを1ガロン生産するのに3900万ドルもかかる。」とスタンフォード大学のグループを率いた主任研究者のRichard Zare博士は述べた。「それを生産するためにサソリからだけに頼っていたら、誰もそれを扱おうとしなかっただろう。重要な成分が何であるかを識別し、それらを合成できることが重要だ。」

Zare博士は、メキシコ国立大学の分子医学の教授であるLourival Possani博士を含むメキシコの彼の同僚と協力し、サソリDiplocentrus meliciの標本を研究のために捕獲した。「この種のサソリの捕獲は困難だ。冬と乾季にはサソリが埋まっているので、雨季にしか見つけられない。」とPossani博士は述べた。

過去45年間、Possani博士はサソリ毒の薬理学的可能性を持つ化合物の同定に焦点を当ててきた。 彼のグループは以前、クモの毒に隠れている強力な抗生物質、殺虫剤、および抗マラリア剤を発見した。

メキシコの研究者たちが、サソリの毒液を弱い電気刺激で採取したとき、毒液が空気にさらされると色が透明から褐色に変化することに気付いた。
Possani博士と彼の研究室がこの色の変化を調査したとき、彼らは関連性がある2つの化合物を見つけた。 一方の化合物は空気に触れると赤くなり、もう一方の化合物は青に変わった。


これらの化合物について詳しく知るために、Possani博士は化学物質を識別して合成することに定評があるスタンフォード大学のZare博士のグループに連絡を取った。

スタンフォード大学の博士研究員であるShibdas Banerjee博士とGnanamani Elumalai博士は、2種類の化合物の分子構造を解明した。
スタンフォード大学人文科学部の自然科学のMarguerite Blake Wilbur教授であるZare博士は、次のように述べている。「これは蚊が1回で吸うであろう血液量の10分の1だ。」

スタンフォード大学の科学者たちは、さまざまな化学分析技術によって得られた手がかりを使い、毒の中の色が変わる成分は2つの未知のベンゾキノンであると結論付けた。

サソリ毒中のベンゾキノンは互いにほぼ同一であるように見えた。 「2つの化合物は構造的に関連しているが、赤いものは一方のブランチに酸素原子を持ち、青いものは硫黄原子を持つ」とBanerjee博士は述べた。
このグループは、多くの試行錯誤を経て、化合物の構造を確認した。 スタンフォード大学の大学院生Shyam Sathyamoorthi博士は次のように述べている。 「紙に書いた反応の多くは、実験室で試しても実際には上手くいかないので、忍耐強く、さまざまなアイデアを練る必要がある。」

薬としての可能性

Zare博士の研究室は、メキシコシティのSalvadorZubirán国立健康科学栄養研究所の病理学者であるRogelioHernández-Pando博士に、新たに合成されたベンゾキノンのバッチを送り、研究室で作られた化合物の生物活性の測定を依頼した。

Hernández-Pando博士のグループは、赤色のベンゾキノンが高感染性黄色ブドウ球菌の殺菌に特に効果的である一方で、青色のベンゾキノンは結核菌の結核菌の普通株と多剤耐性株の両方に致死性であることを発見した。
「我々はこれらの化合物がバクテリアを殺すことを発見した。次に疑問に思ったのは、これらの化合物が人も殺すのか?だった。そしてその答えはノーだ。Hernández-Pando博士のグループは、青い化合物は結核菌を殺すが、マウスの肺の内膜は無傷のままであることを示した。」とZare博士は述べた。

合成が天下分け目

Possani博士は、Zare博士のグループが合成法を考え出していなかったのであれば、その化合物の抗菌特性は発見されなかったかもしれないと語った。 「動物から得ることができる毒成分の量は非常に少ない」とPossani博士。 「この化合物の合成は、この研究の成功にとって決定的なものであった。」

スタンフォード大学とメキシコ国立大学の科学者らは、単離された毒化合物を薬物に変えることができるかどうか、そしてそもそもなぜそれらが毒液に存在するのかを決定するためのさらなる共同研究を計画している。

まだミステリーが残る

「これらの化合物は毒液の有毒な成分ではないかもしれない」とZare博士は述べた。 「サソリがなぜこれらの化合物を作るのか、私たちには分からない。まだ謎がある。」

Zare博士は、スタンフォード大学Bio-X、Wu Tsai Neurosciences Institute、スタンフォード大学Woods Environment for the Institute、およびスタンフォード大学ChEM-Hの教員でもある。

BioQuick News:Scorpion Venom Toxins Found to Have Components with Anti-Bacterial Activity; Stanford Scientists Synthesize These Components in the Lab; May Point Way to New Weapons Against Increasingly Drug-Resistant Bacteria

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