自己免疫疾患の発見から新薬開発へ:TLR8阻害低分子を合成

自己免疫疾患の発見から新薬開発へ:TLR8阻害低分子を合成

University of Colorado (UC) Boulderの研究チームは、身体の自己組織攻撃の原因となるタンパク質を阻害する有望な薬物に似た化合物を発見した。この化合物はいつかリューマチ様関節炎その他の自己免疫疾患の治療に一大改革をもたらすかもしれない。


 
2017年11月20日付Nature Chemical Biologyに掲載された研究論文の筆頭著者で、BioFrontiers Instituteの生化学教授を務めるDr. Hang Hubert Yinは、「私達は、このタンパク質を休眠状態に閉じ込めるカギを見つけた。これはパラダイム・シフトになる可能性もある」と述べている。この論文は、「Small-Molecule Inhibition of TLR8 Through Stabilization of Its Resting State (TLR8休眠状態の安定化でその働きを阻害する低分子)」と題されている。リューマチ様関節炎、強皮症、あるいは過剰な免疫反応が痛み、炎症、皮膚疾患その他の慢性的な健康障害を引き起こす全身性紅斑性狼瘡など自己免疫疾患に悩むアメリカ国民は2,350万人を超える。
 
アメリカ国内でもっとも売れている医薬5品目のうち3品目までが自己免疫疾患の症状緩和を目的としている。しかし、自己免疫疾患を完治させる治療法はなく、対症療法も高価なうえに副作用がある。Dr. Yinは、「この疾患の患者が多いことから代わりの治療法の研究もよく行われている」と述べている。長年、研究者は、Toll様受容体8 (TLR8) と呼ばれるタンパク質が先天免疫反応に重要な役割を果たしているのではないかと疑っていた。TLR8はウイルスや細菌の存在を感知するといくつかの段階を経て受動状態から能動状態に変化し、侵入異物を撃退するために一連の炎症シグナルを送り出す。しかし、Dr. Yinの述べるように、「反応も過剰になると疾患を引き起こすため、いわば両刃の剣」になる可能性がある。


TLR8は独特な分子構造をしており、細胞の表面ではなく、細胞内のごく微小な泡のようなエンドソーム内に潜んでいるため、これを標的とする医薬の開発は難しい。Dr. Yinも、「長年、これを標的とする治療の開発が試みられてきたがほとんど成功していない」と述べている。しかし、彼の研究で、CU-CPT8mと名付けられた、薬物に似た化合物がTLR8に結合し、阻害した上に、関節炎、変形性関節症や、まれな自己免疫疾患の一つであるスティル病などの患者で抗炎症効果を持つことが示された。


研究のためにYin博士とその共同研究者は、ハイスループットスクリーニングを用いて14,000を超える小分子化合物を調べ、それらがTLR8に結合する正しい化学構造を有するかどうかを決定した。
彼らは、同様の構造を共有している4つを特定しました。
この構造をモデルとしてTLR8に完全に結合し、阻害するために、何百もの新規化合物を化学合成しました。

タンパク質を標的とする以前の努力は、それが活性状態にあるときにそれを停止することに焦点を当てていた。
しかし、Yin博士の発見した化合物はTLR8が依然として受身状態にある間に活性化するのを防ぎます。
前に、人々はドアを閉じてドアを閉めようとしていましたが、開けないようにドアを内側からロックする鍵を見つけました。
もっと多くの研究が必要ですがそれは単に症状を治療するよりも自己免疫疾患の根本原因に打ち勝つ治療につながる可能性があります。
CUの技術移転局の助けを借りてYin博士は既に特許出願を提出しており今後2年以内に動物研究と臨床試験に移行することを希望しています。
その間新しい化合物はTLR8と他の9つのトール様受容体が体内で何をするのかを正確に理解するための最初の種類のツールとして役立ちます。
「私たちの研究は、このタンパク質を遮断してその病因を理解することができる最初の小分子ツールを提供する」とDr. Yinは述べた。

東京大学、清華大学、北京の北京医科大学病院の研究者がこの研究に貢献した。

画像は結合されていないTLR8の構造を示す。

BioQuick News:Autoimmune Disease Discovery Could Spark New Treatments; Scientists Synthesize Small Molecule Inhibitor of Toll-Like Receptor 8 (TLR8)

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Edited by Michael D. O'Neill

Michael D. O'Neill

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