ヒトゲノムの "ダークマター"から新たな癌治療法を発見。アンチセンスオリゴで特定のロングノンコードRNAを無効化し、癌細胞の分裂を阻害。
サイエンス出版部 発行書籍
スイスでは、癌は死因の第2位を占めている。その中でも、非小細胞肺癌(NSCLC)は、最も多くの患者が亡くなっており、現在もほとんど治癒が不可能な病気だ。残念ながら、新しく承認された治療法でさえ、患者の寿命を数カ月しか延ばすことができず、転移したステージで長期的に生存できる人はごくわずかだ。そのため、新しい方法で癌を攻撃する新しい治療法が求められている。2022年9月14日にCell Genomics誌で発表された研究では、ベルン大学とインゼル病院の研究者が、この癌種に対する薬剤開発のための新たな標的を決定した。この論文は「マルチハルマークのLong Noncoding RNAマップが明らかにする非小細胞肺がんの脆弱性(Multi-Hallmark Long Noncoding RNA Maps Reveal Non-Small Cell Lung Cancer Vulnerabilities)」と題されている。 ゲノムのダークマター 研究チームは、新たな標的として、「long noncoding RNA(リボ核酸)」(lncRNA)と呼ばれる、あまり解明されていない遺伝子群に注目した。lncRNAは、いわゆる「ダークマター」と呼ばれる、ゲノムの大部分を占める非タンパク質コード化DNAに大量に存在する。ヒトのゲノムには約2万個のタンパク質コード遺伝子が存在するが、10万個のlncRNAはその数をはるかにしのぐ。lncRNAの99%は、生物学的機能が不明である。long noncoding RNAという名前が示すように、lncRNAはメッセンジャーRNA(mRNA)とは異なり、タンパク質の設計図をコードしていない。mRNAと同様に、lncRNAの構築指示書は細胞のDNAに含まれている。 ターゲット候補を決定する新ツール NSCLCにおけるlncRNAの役割を調べるため、
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