病気の引き金「ミトコンドリアDNAの損傷」を未然に防ぐ!画期的な分子ツールが開発される

病気の引き金「ミトコンドリアDNAの損傷」を未然に防ぐ!画期的な分子ツールが開発される

私たちの体を蝕む環境ストレス。細胞の中にあるエネルギー工場「ミトコンドリア」が持つ独自のDNAが傷つけられると、それは心臓病や神経変性疾患、そして慢性的な炎症といった、様々な病気の引き金となる負の連鎖を始めることがあります。しかしこの度、その連鎖を根本で断ち切り、病気につながるダメージが深刻化する前にDNAを守る、画期的な化学ツールが開発されました。 カリフォルニア大学リバーサイド校(UC Riverside)で開発されたこの新しい分子に関する研究は、2025年7月15日にドイツ化学会誌Angewandte Chemie International Editionに掲載されました。この研究が焦点を当てたのは、細胞の核に収められているDNAとは別に存在するミトコンドリアDNAです。核のDNAが遺伝コードの大部分を保持しているのに対し、ミトコンドリアはエネルギー生産を含む細胞機能に不可欠な、それ自身の小さなゲノムを持っています。このオープンアクセスの論文のタイトルは、「Mitochondria-Targeting Abasic Site-Reactive Probe (mTAP) Enables the Manipulation of Mitochondrial DNA Levels(ミトコンドリアを標的とするアベイシック部位反応性プローブ(mTAP)によるミトコンドリアDNAレベルの操作)」です。 ミトコンドリアDNAは、1つの細胞内に多数のコピーが存在しますが、損傷が起こると、修復されるよりも分解されてしまうことがよくあります。この分解が放置されると、組織の機能が損なわれ、炎症を引き起こす可能性があります。 研究者たちは、損傷したmtDNAの部位に結合し、その分解につながる酵素の働きをブロックする化学プローブを開発しました。このアプローチは、損傷を「修復」するので

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Edited by Michael D. O'Neill

Michael D. O'Neill

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