蜂毒から作る血液脳関門通過薬
サイエンス出版部 発行書籍
血液脳関門(BBB : blood-brain barrier)は循環系と脳脊髄液を隔てる選択的を有する膜で、医薬品のほとんどはこのBBBを通過することが出来ない。しかし、動物の毒液中にある特定のペプチドはBBBを通過して損傷を与えることがある。そこで現在、蜂毒ペプチドであるアパミン(apamin)に基づいた薬剤BBB通過戦略に注目する研究グループがある。 この研究は4月2日に開催された第253回全米科学会(ACS : the American Chemical Society)の全国総会(2017年)で発表された。世界最大の科学会であるACSは、サンフランシスコで4月2日から4月6日まで開催され、14,000件以上の多種多様な科学分野におけるプレゼンテーションが行われた。スペイン・バルセロナのInstitute for Research in Biomedicine のErnest Giralt博士はこう語る。「一部の動物の毒は中枢神経系にダメージを与えるため、これらはBBBを通過する能力をもち、薬を運ぶ役割も担えるのではないかと考えたのです。」アパミンはミツバチに刺されたヒトの中枢神経系に蓄積することが知られているが、アパミンペプチド自体を使用する事に関してはいくつかの欠点が存在した。 「毒性があるため、アパミンを直接使用することができないことを私たちは知っていました。しかし、毒性の起源もよくわかっていたので、毒性のみ排除しつつトランスポーターとしての機能は失わないようアパミンを改変することが出来るかもしれないと考えたのです。」と、Giralt博士は説明する。アパミンの毒性は、神経細胞中のカリウムチャネルとの相互作用に起因する。陽電気を帯びたアパミン分子基はカリウムイオンを模倣し、結合するとカリウムチャネルを遮断する。毒性を排除するために、Giralt博士率い
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