アリの世界では、多くの場合、カースト(階級)がその一生の運命を決定します。女王は大きく育ち、翅を伸ばして卵を産むことに専念し、働きアリは小さいままで翅も持たず、ひたすら働き続けます。しかし、このカーストがどのようにして発達し、若いアリの将来が遺伝と環境によってどう決まるのかは、これまで明確ではありませんでした。この「生まれ」と「育ち」の謎に、最新の研究が光を当てました。
新しい研究は、アリの体の大きさとカーストが密接に関連していることを示唆しています。一般的に、大きいアリは女王になり、小さいアリは働きアリになります。そして、アリがどれだけ大きく成長するかには、遺伝子と環境の両方が影響します。しかし、2025年7月22日に米国科学アカデミー紀要(PNAS)に掲載されたこの研究は、女王になるための「大きさの境界線」は遺伝子だけで決まることも示唆しています。同じ環境で育った、同じ大きさの遺伝的に異なるアリたちが、カーストに関連する形態において違いを見せることがあるのです。これらの結果は、遺伝子が単に大きさに影響を与えるだけでなく、その「大きさ」がコロニーにとって持つ意味そのものを変えることを示しています。比較的小さな2匹のアリが、女王になる確率は全く異なる可能性があるのです。このオープンアクセスの論文は、「Static Allometries of Caste-Associated Traits Vary with Genotype But Not Environment in the Clonal Raider Ant(クローン性ツノヒメサスライアリにおいて、カースト関連形質の静的アロメトリーは環境ではなく遺伝子型によって変化する)」と題されています。
「私たちの目標の一つは、昆虫社会がどのように機能するかを理解することです」と、ロックフェラー大学のスタンレー S. & シドニー R. シューマン記念講座教授であるダニエル・クラウナウアー博士(Daniel Kronauer, PhD)は語ります。「コロニー内で個体がどのように分化するかを研究することは、何千種ものアリで進化してきた、女王から働きアリ、兵隊アリに至るまでのカーストシステムの種類についての理解を深めることにつながります。」
生まれか、育ちか
女王は単に大きな働きアリというわけではありません。女王は体が大きいことに加え、通常は翅、より発達した視覚器、そして産卵のための大きな卵巣を持ちますが、働きアリは翅がなく、小さく、通常は繁殖を控えます。遺伝的に同一の個体間に見られるこのような著しい違いは、発生可塑性の典型的な例であり、雌アリは単一の遺伝子型が劇的に異なる表現型を生み出す仕組みを研究するための優れたモデルなのです。
一部の科学者たちは、体の大きさとアリが女王になるかどうかは切り離せると考えていました。この理論は理にかなっているように思えました。ショウジョウバエや他の昆虫では、身体的特徴は一般的に体の大きさとはある程度独立して環境要因によって調節されるからです。しかし最近の研究では、他の昆虫とは異なり、アリではカーストに関連する特徴が常に体の大きさと連動していることが示唆されていました。
「少なくともアリの生物学者の間では、熱く議論されているトピックです」と、クラウナウアー研究室の博士研究員であるパトリック・ピエカルスキ(Patrick Piekarski)博士は言います。「私たちは、体の大きさを卵巣の発達や目の発達といったものから切り離すことが可能なのかを明らかにすることで、この問題を解決したいと考えました。」
研究チームは、クローン性ツノヒメサスライアリに注目しました。このアリはクローン繁殖(単為生殖)を行い、ライフサイクルが同調しているため、遺伝的および環境的変数を精密に制御できる強力なモデル生物です。クローン性ツノヒメサスライアリには通常の女王はいませんが、「中間カースト」として知られる個体が発生学的に女王と相同であると考えられています。彼女たちはより大きく成長し、大きな卵巣、痕跡的な目、そしてごくわずかな翅の痕跡を発達させます。このような体の大きさと一連の女王関連形質との関連は、アリ全体に広く見られます。
「私たちがこの珍しいアリ種を扱うのは、そうでなければアリの遺伝子型を制御することができないからです」とクラウナウアー博士は言います。「クローン性ツノヒメサスライアリを使えば、環境が成体の表現型にどのような影響を与えるかを決定するために、大規模な一卵性双生児研究に相当することを行えるのです。」
大きさが支配する
この研究で、研究者たちはまず幼虫の遺伝子型を一定に保ち、飼育環境を操作することから始めました。先行研究では、餌の量、温度、そして幼虫の世話をするアリの遺伝子型がすべてカーストの発達に影響を与える可能性が示されていました。彼らの実験でも、これらの要因が確かに結果に影響を与えることがわかりましたが、それは幼虫の最終的な体の大きさを変えることによってのみでした。例えば、遺伝的に同一の幼虫を少ない餌で育てると、彼女たちは小さくなり、女王のような特徴を持つ確率が低下しました。しかし、もしその幼虫たちが餌不足にもかかわらずある一定の大きさに達することができれば、やはり女王のような特徴を発達させたのです。最終的に、カーストは大きさに連動しており、大きさだけで発達の結果をほぼ完璧に予測できました。
次にチームは、異なる遺伝子型の幼虫を同様の環境条件下で飼育し、遺伝的な違いが体の大きさとカースト形質を結びつける根本的な関係を変えることができるかどうかを調べました。その結果、遺伝子は大きさに影響を与える一方で、女王のような特徴が現れ始める「大きさ」自体も変えることができることを見出しました。「M」と名付けられた遺伝系統のアリは、同一の環境条件で飼育されても、「A」系統のアリよりも一貫して平均体サイズが小さくなりました。しかし、同じ体サイズで比較した場合、M系統のアリの方が女王のような特徴を発達させる可能性が高かったのです。つまり、M系統とA系統の小さなアリ2匹がいた場合、飼育環境に関係なく、女王になる確率は全く異なる可能性がありました。
このことは、遺伝的変異が2つの方法でカーストの形態に影響を与えうることを示唆しています。一つはアリがどれだけ大きく成長するかに影響を与え、もう一つは女王のような特徴が発現する大きさを変えるという方法です。「その興味深い一例として、より小さい体サイズで女王らしくなり始める特定の遺伝子型が存在するのです」とピエカルスキ博士は言います。
ピエカルスキ博士にとって、この研究の主な結論は、「何らかの環境要因がカーストに影響を与える場合、それは大きさにも影響を与えます。片方だけを変化させ、もう一方を変化させないということはできません。私たちが調べた限り、どの環境変数を操作しても、アリの体の大きさとカーストの関係は変わらず、それは遺伝的にコードされているのです」ということです。
クラウナウアー博士にとって、この研究の意義はカースト決定にとどまりません。彼の研究室はアリのコロニーを、遺伝的に同一の個体が組織内の細胞のように劇的に異なる役割を担う複雑な生物システム、すなわち超個体として研究しています。クラウナウアー博士はアリをモデルとして、発生生物学の研究を、行動や社会組織の研究と結びつけています。
「女王と働きアリの脳は全く異なり、これは行動の著しい違いと相関しています」とクラウナウアー博士は説明します。「働きアリは巣を離れて餌を探し、幼虫の世話をし、巣を建設・拡大します。女王はほとんど交尾と産卵だけを行います。ですから、体の大きさがカーストにどう関係するかを理解することは、単なる形態の問題ではありません。それは、社会的な役割、脳機能、そしてコロニーのダイナミクスがどのように共に発達し、進化していくのかを理解する扉を開くのです。」



