癌との闘いの手がかりは銅にあり
サイエンス出版部 発行書籍
癌細胞が増殖し、人体に広がるためには、銅イオンと結合するタンパク質が必要だ。スウェーデンのチャルマース工科大学の研究者らにより、癌に関連するタンパク質がどのように銅と結合し、他のタンパク質とどのように相互作用するかについての新しい研究が行われ、癌と戦うための新しい薬のターゲットの可能性が開かれた。ヒトの細胞は、重要な生物学的プロセスを遂行するために、少量の銅という金属を必要とする。 「研究により、癌患者の腫瘍細胞や血清中の銅のレベルが上昇していることが示されており、癌細胞は健康な細胞よりも多くの銅を必要としているという結論に至っている。銅のレベルが高いということは、銅を結合するタンパク質がより活性化しているということでもある。したがって、これらのタンパク質は、癌の発生を理解する上で非常に重要な研究対象であり、これらに関するより深い知識が、この病気の治療の新しいターゲットにつながるのだ。」と、チャルマース工科大学化学生物学教授のペルニラ・ヴィットゥング・スタフスヘデ博士は語っている。 癌に関連した死亡の多くは、肝臓や肺など体のあちこちに転移(二次的な腫瘍)ができることが原因だ。Memo1と呼ばれるタンパク質は、癌細胞が成長し、体中に広がるためのシグナル伝達システムの一部である。これまでの研究で、乳癌細胞でMemo1の遺伝子を不活性化すると、転移を形成する能力が低下することが分かっている。 チャルマース工科大学の研究グループは、Memo1と銅の関係をより詳しく調べたいと考えた。2022年9月6日にPNASに掲載された新しい研究で、この研究者らは一連の試験管実験を通じて、Memo1タンパク質の銅イオン結合能力を調べた。このオープンアクセス論文は「Memo1 は還元型銅イオンに結合し、銅シャペロンAtox1と相互作用し、銅による酸化還元活動から守る(Memo1 Bi
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