超音波で体内に直接3Dプリント!再生医療とドラッグデリバリーに革命を起こす新技術

もし、医師が拍動する心臓の「内部」を覗きながら、組織の修復に必要な細胞を詰めたマイクロカプセルを、まるでSF映画のようにピンポイントで“印刷”できるとしたら…。そんな未来の医療が、もうすぐそこまで来ています。カリフォルニア工科大学が主導する科学者チームが、生きた動物の体の奥深く、特定の場所に高分子を3Dプリンティングする手法を開発し、この究極の目標に向けて大きな一歩を踏み出しました。この技術は音(超音波)を使って位置を特定するもので、すでに薬剤を標的の場所に届けるためのポリマーカプセルの印刷や、体内の傷を塞ぐ接着剤のようなポリマーの形成にも使用されています。 これまでも、赤外光を使って生体内でポリマーの基本単位(モノマー)を結合させる重合を誘発する試みはありましたが、「赤外光の到達範囲は非常に限られており、皮膚のすぐ下までしか届きません」と、Caltechの医用生体工学教授であり、ヘリテージ医学研究所の研究員でもあるウェイ・ガオ博士(Wei Gao, PhD)は語ります。「私たちの新技術は深部組織にまで到達し、優れた生体適合性を維持しながら、幅広い用途のために多様な材料を印刷することができます」。 ガオ博士らのチームは、この新しい生体内3Dプリンティング技術について、2025年5月8日発行の学術誌「Science」で報告しました。この論文では、生体接着性ゲルや薬物・細胞送達用のポリマーに加え、心電図のように体内の生理的なバイタルサインを監視するための導電性材料を埋め込んだポリマーである、生体電子ヒドロゲルの印刷にもこの技術が利用できることが述べられています。この研究の筆頭著者は、ユタ大学機械工学部の助教であるエルハム・ダボディ博士(Elham Davoodi, PhD)で、彼女はCaltechの博士研究員時代にこの研究を完成させました。Science誌の論文タイトル
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Edited by Michael D. O'Neill
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