イスラエルのテルアビブ大学(TAU)は、特殊なハイドロゲルを用いて大きな骨欠損を修正する骨再生技術を開発した。動物モデルでの実験に成功し、今後、臨床試験に進む予定だ。この論文は、2022年9月15日にJournal of Clinical Periodontologyに掲載された。このオープンアクセス論文は「 免疫調節性繊維状ヒアルロン酸-Fmoc-ジフェニルアラニンベースヒドロゲルによる骨再生(Immunomodulatory Fibrous Hyaluronic Acid-Fmoc-Diphenylalanine-Based Hydrogel Induces Bone Regeneration)」と題されている。
この画期的な研究は、リヒ・アドラー・アブラモビッチ教授とミハエル・ハルペリン・シュテルンフェルド博士が率いるテルアビブ大学のモーリス&ガブリエラ・ゴールドシュレガー歯学部の専門家と、イツァーク・ビンダーマン教授、レイチェル・サリグ博士、モラン・アビブ博士、アナーバーのミシガン大学の研究者が共同で行ったものだ。
アドラー・アブラモビッチ教授は、「骨折などの小さな骨欠損は、失われた骨組織を体が復元して自然に治るものだ。問題は、大きな骨欠損の場合だ。多くの場合、腫瘍切除(手術による除去)、物理的外傷、抜歯、歯周病、歯科インプラント周囲の炎症などによって骨が大幅に失われると、骨は自己再生することができなくなるのだ。今回の研究では、骨の細胞外マトリックスに含まれる天然物質を模倣したハイドロゲルを開発し、骨の成長を刺激し、免疫系を再活性化して治癒プロセスを加速させることができた。」と述べている。
この研究者らは、細胞外マトリックスとは、我々の細胞を取り囲み、構造的に支えている物質であると説明している。我々の体内のあらゆる種類の組織は、適切な機械的特性を持つ物質からなる特定の細胞外マトリックスを持っている。この新しいハイドロゲルは、天然の骨の細胞外マトリックスを模倣した繊維状構造を持っている。さらに、硬いので、患者の細胞を骨形成細胞へ分化させることができるという。
アドラー・アブラモビッチ教授は、「予想されるように、我々の骨の細胞外マトリックスは非常に硬いのだ」と言う。「我々の研究では、化学的および物理的特性の両方において、この特殊なマトリックスを模倣したハイドロゲルを作製した。ナノメートルレベルで、細胞はゲルに接着し、構造的な支持を得るとともに、繊維から適切な機械的信号を受け取ることができるのだ。まず、これらの特性を調べるために、ゲルの3Dモデルで細胞を培養した。次に、自然治癒が見込めない大きな骨欠損を持つモデル動物を用いて、ハイドロゲルの影響を調べた。その結果、骨は元の太さを取り戻し、新しい血管が生成されるなど、再生によって骨欠損が完全に修復された。」と説明した。
アドラー・アブラモビッチ教授によると、この革新的なゲルは、整形外科と歯科医学の両方で広範囲な臨床応用が可能だという。「広範囲な損傷や細菌感染によって歯を失うと、標準的な治療法としてインプラントが用いられる。しかし、インプラントは十分な量の骨に固定されなければならず、骨の損失が大きい場合は、医師が体の健康な部分から骨を追加して移植するという複雑な医療処置が必要だ。また、ヒトや動物由来の骨補填材を入れるという方法もあるが、免疫反応が出る可能性がある。将来的には、我々が開発したハイドロゲルによって、より早く、より安全で、よりシンプルな骨修復が可能になることを期待している」と述べている。


