画期的な注射可能な皮膚フィラーが糖尿病創傷治療を革新—組織再生を促進する新技術

 テラサキ生体医療イノベーション研究所(Terasaki Institute for Biomedical Innovation, TIBI) の研究チームは、糖尿病創傷の治療法を大きく変える可能性のある画期的な注射可能な顆粒状フィラー を開発しました。この研究成果は、2024年10月2日付のACS Nano に掲載され、「Granular Porous Nanofibrous Microspheres Enhance Cellular Infiltration for Diabetic Wound Healing(顆粒状多孔質ナノファイバーマイクロスフェアが細胞浸潤を促進し糖尿病創傷治癒を加速)」 というタイトルで発表されました。

 新技術の概要:ナノファイバーマイクロスフェアによる創傷治療

 本研究は、TIBIとネブラスカ大学医療センター(UNMC) の研究者らによる共同開発であり、エレクトロスピニング(electrospinning) と エレクトロスプレー(electrospraying) の技術を組み合わせ、多孔質の顆粒状ナノファイバーマイクロスフェア(NMs) を生成する新手法を確立しました。

 このマイクロスフェアは、ポリ乳酸-グリコール酸(PLGA) とゼラチン などの生体適合性材料で作られており、患部に簡単に注入できるため、治療が最小限の侵襲で済む のが特徴です。

 

研究の主な成果と期待される臨床応用

 本研究の成果として、この新しい皮膚フィラーが以下の点で優れた創傷治癒効果を示した ことが明らかになりました。

 細胞の移動促進と肉芽組織形成:特殊な多孔質構造が、創傷部位への細胞の浸潤を促し、組織再生を加速。

新生血管の形成(ネオバスキュラリゼーション):血流を改善し、創傷の治癒を早める効果が確認された。

フィラーの強度と形状保持:注射時の形状維持能力に優れ、長期間安定して組織内に留まることが可能。

「この技術は、糖尿病患者の創傷治療における大きなブレークスルーとなる可能性があります」 と、本研究の主任研究者であるジョンソン・ジョン博士(Dr. Johnson John) は述べています。「現行の治療法と比べて、より低侵襲で効果的な治療アプローチを提供できる可能性があります。」

また、TIBIのCEOであるアリ・カデムホセイニ博士(Dr. Ali Khademhosseini) は、「糖尿病性足潰瘍の治療法として、このような臨床応用に直結する技術が必要とされています。本研究は、先進的なバイオマテリアル科学と実際の臨床応用を結びつけるものです。」 と述べ、今後の実用化に向けた期待を示しました。

 

糖尿病創傷治療における新たな展望 

本研究の最も重要なポイントは、糖尿病創傷の治癒における3つの重要なプロセスを促進する可能性がある という点です。

 宿主細胞の浸潤(ホストセルインフィルトレーション)

新生血管の形成(ネオバスキュラリゼーション)

皮膚の再生(スキンリジェネレーション)

これらのメカニズムが活性化されることで、従来の治療法よりも早期の創傷閉鎖 や 組織再生の改善 が期待されます。

本技術は、糖尿病性足潰瘍などの慢性創傷治療において、従来の治療法では対処が難しかったケースにも適用できる可能性 があり、将来的には外科的処置の必要性を減らし、患者の生活の質(QOL)を向上させること も目指しています。

現在、研究チームはさらなる前臨床試験と臨床試験 を計画しており、今回の技術の臨床応用に向けた開発を加速させています。本研究は、米国国立糖尿病・消化器・腎疾患研究所(NIDDK) のRO1助成金による支援を受けています。

画像:糖尿病性創傷の拡大画像は以下を参照。

[News release] [ACS Nano abstract

この記事の続きは会員限定です