失われた聴覚は取り戻せる?ゼブラフィッシュが解き明かす「感覚有毛細胞」再生の謎
一度失うと二度と戻らない――。それが、私たちの聴覚を支える「感覚有毛細胞」の常識でした。しかし、もしこの細胞を再生できたら?魚やカエルが当たり前のように行っているこの「再生」の秘密を、ゼブラフィッシュという小さな熱帯魚が解き明かしてくれるかもしれません。ストワーズ医学研究所の最新研究が、失われた聴覚を取り戻す未来への扉を開く、驚くべき遺伝子の働きを突き止めました。 私たちヒトは、血液や腸の細胞のように定期的に特定の細胞を入れ替えることはできますが、体の他のほとんどの部分を自然に再生することはできません。例えば、内耳にある微小な感覚有毛細胞が損傷すると、その結果は永続的な難聴、聴力損失、あるいは平衡感覚の問題につながることがよくあります。対照的に、魚やカエル、ヒヨコなどの動物は、感覚有毛細胞をいとも簡単に再生します。 今回、ストワーズ医学研究所の科学者たちは、2つの異なる遺伝子がゼブラフィッシュの感覚細胞の再生をどのように導くかを特定しました。この発見は、ゼブラフィッシュにおける再生の仕組みについての私たちの理解を深め、ヒトを含む哺乳類の難聴や再生医療に関する将来の研究の指針となる可能性があります。「私たちのような哺乳類は、内耳の有毛細胞を再生することができません」と、本研究の上級著者であり責任著者でもあるストワーズ研究所の主任研究員、タチアナ・ピオトロフスキー博士(Tatjana Piotrowski, PhD)は述べています。「私たちは年をとったり、長期間の騒音にさらされたりすると、聴覚と平衡感覚を失っていきます。」 2025年7月14日にNature Communications誌に掲載されたピオトロフスキー研究室の新しい研究は、有毛細胞の再生を促進し、かつ幹細胞の安定した供給を維持するために、細胞分裂がどのように調節されているかを理解しようとするものです
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Edited by Michael D. O'Neill

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