アホロートルの再生力の謎、ついに解明!細胞の「位置記憶」が手足を蘇らせる

ちぎれた手足が、わずか8週間で元通りに生えてくる。そんな驚異的な再生能力を持つ生き物、アホロートル(axolotl、メキシコサラマンダーの一種)。彼らは一体どうやって、失われたのが「腕」なのか「脚」なのか、そしてその「どの部分」なのかを正確に知るのでしょうか?まるでSFのようなこの能力の裏には、細胞が自分の「住所」を記憶し、伝えるための巧妙な分子コードが存在していました。 オーストリアの研究所に所属する日本人研究者らによって、長年の謎だったこの「位置記憶」の仕組みがついに解き明かされました。この発見は、いつか人間の失われた手足を取り戻す夢に繋がるかもしれません。 メキシコシティ周辺の濁った湖に生息し、攻撃的で共食いもする隣人に囲まれたアホロートルは、常に隣人にかじられて手足を失う危険にさらされています。幸いなことに、失われた手足は再生し、わずか8週間で機能するようになります。この偉業を成し遂げるためには、再生する体の部位が、特定の場所に適した正しい構造を再生できるよう、アホロートルの体の中での自身の位置を「知って」いなければなりません。 細胞に自身の場所を伝え、それによって体の部位にアイデンティティを与える、長年探し求められてきたコードが、この度、オーストリア科学アカデミー分子生物工学研究所(IMBA: Institute of Molecular Biotechnology)のサイエンス部門マネージングディレクターであるタナカ エリー博士(Elly Tanaka, PhD)と彼女のグループによって解読されました。2025年5月21日に『Nature』誌に掲載されたこの研究は、細胞がどのようにして自身の位置を「記憶」し、損傷を受けると手足の片側全体に信号を送り、その場所に応じた構造を再生するよう細胞に指示するのかを示しています。 このオープンアクセスの論文は、
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Edited by Michael D. O'Neill
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