幹細胞から「ミニ羊膜」を作ることに成功!初期流産の謎に迫る

生命の始まりは、神秘に満ちたブラックボックスです。特に、母親の胎内で胎児を包み、守り、育む「羊膜」は、妊娠のごく初期に形成されるため、その仕組みを詳しく知ることはこれまで非常に困難でした。もし、この生命のゆりかごを、研究室でゼロから再現できたとしたらどうでしょう。英国フランシス・クリック研究所の科学者たちが、ヒトの幹細胞だけを用いて、羊膜が自ら形作られていく様子を精密に再現する3Dモデルの開発に成功しました。これは、初期流産の原因解明や、薬の安全性を確かめる新しい方法など、私たちの未来に繋がる画期的な成果です。 クリック研究所チーム、原腸形成後のヒト胚体外組織の3D自己組織化モデルを開発し、初期発生研究に変革をもたらす 2025年5月15日に『Cell』誌で発表された画期的な研究で、フランシス・クリック研究所(英国)のボルゾ・ガリビ博士(Dr. Borzo Gharibi)、シルビア・D・M・サントス教授(Prof. Silvia D.M. Santos)らは、ヒト胚体外発生の重要な段階を忠実に再現する幹細胞由来の3Dモデルを発表しました。このオープンアクセス論文「Post-Gastrulation Amnioids As a Stem Cell-Derived Model of Human Extra-Embryonic Development(ヒト胚体外発生の幹細胞由来モデルとしての原腸形成後アムニオイド)」は、原腸形成後アムニオイドの作製を報告しています。PGAは、妊娠2週から4週のヒト羊膜嚢の形態と機能を模倣した、液体で満たされた二層構造の組織です。完全にヒト胚性幹細胞から作られたPGAは、羊膜外胚葉と胚体外中胚葉からなる嚢へと自己組織化し、初期発生の構造を驚くべき忠実度で再現します。 かつては手の届かなかったモデル 妊娠初期における中心的な役割
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Edited by Michael D. O'Neill
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