医療用プラスチックが病原菌の“エサ”に?緑膿菌の新たな脅威と可能性

まさか、体内で安全に溶けるはずの医療用プラスチックが、ある細菌にとっては格好の“エサ”となり、その力を増強させてしまうとしたら…。私たちの健康を守るための医療技術が、予期せぬ形で感染症のリスクを高めている可能性を示唆する、驚くべき研究結果が報告されました。この記事では、臨床現場に潜む新たな懸念と、同時に見出された未来のバイオテクノロジーへの希望、その両面を詳しく解説していきます。 2025年5月7日にオープンアクセスジャーナル「Cell Reports」で発表された衝撃的な研究によると、病院でよく見られる一般的な病原菌である緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)が、生分解性の医療用プラスチックを分解し、その副産物を自身の増殖と病原性の向上のために利用できることが明らかになりました。 この研究は、ブルネル大学ロンドンのローナン・R・マッカーシー博士(Ronan R. McCarthy, PhD)が主導したもので、論文タイトルは「Pseudomonas aeruginosa Clinical Isolates Can Encode Plastic-Degrading Enzymes That Allow Survival on Plastic and Augment Biofilm Formation(緑膿菌の臨床分離株はプラスチック分解酵素をコードし、プラスチック上での生存とバイオフィルム形成の増強を可能にする)」です。研究チームは、創傷から分離された臨床株が、広く医療用ポリマーとして使用されるポリカプロラクトン(PCL: polycaprolactone)上で生存するだけでなく、その存在下でより危険な存在になる仕組みを解明しました。この発見は、生分解性バイオマテリアルが臨床現場で意図しないリスクをもたらす可能性について新たな懸念を提起すると同時に、バ
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Edited by Michael D. O'Neill
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