細菌は“会話”する?クオラムセンシングの発見が感染症治療の未来を変える

細菌は“会話”する?クオラムセンシングの発見が感染症治療の未来を変える

サイエンス出版部 発行書籍

細菌同士の“会話”が拓く新たな科学の地平——ボニー・バスラー博士が切り拓くクオラムセンシング研究の最前線 30年以上にわたり、ハワード・ヒューズ医学研究所(HHMI)の研究者でありプリンストン大学のボニー・バスラー博士(Bonnie Bassler, PhD)は、細菌の「クオラムセンシング(Quorum Sensing)」という細胞間コミュニケーションの研究を先導してきました。この発見は、細菌が個体としてではなく、集団として行動する仕組みを解明するものであり、抗生物質耐性菌との戦いにおいて画期的な治療法の開発につながる可能性を秘めています。 細菌の存在が科学者によって発見されたのは500年以上前ですが、それらが高度に協調した行動を取ることが明らかになったのは1970年代に入ってからでした。 そして現在、クオラムセンシングの研究は感染症治療や抗生物質の代替戦略の開発に向けた新たな道を切り拓いています。 細菌はどのようにして「協力」するのか? 細菌は自己増殖によって増えていきますが、その過程で「オートインデューサー(autoinducer)」と呼ばれる小さな分子を生成・放出します。細菌の数が増えるにつれてオートインデューサーの濃度も上昇し、一定の閾値を超えると細菌はこのシグナルを感知します。その結果、細菌は個々の存在としてではなく、集団として一斉に行動するのです。 「細菌は小さく、単独では無力ですが、集団で行動すると強力な力を発揮します」 ボニー・バスラー博士はそう言いました。 バスラー博士の研究チームは、クオラムセンシングが細菌の世界では標準的なメカニズムであることを証明しました。さらに、細菌は複数の異なるオートインデューサーを使用し、仲間同士の関係性を判断することができることも明らかにしました。 細菌だけでなく、人間の細胞やウイルスも“会話”

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Edited by Michael D. O'Neill

Michael D. O'Neill

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