インフルエンザウイルスの広範なペプチド阻害剤を開発

2017
10月 18
(水)
11:00
微生物/ウイルス研究のライフサイエンスニュース

インフルエンザウイルスの広範なペプチド阻害剤を開発

Scripps Research Institute (TSRI) とJanssen Research & Development (Janssen) の研究チームは、広いスペクトルのインフルエンザ・ウイルス株を中和する人工ペプチド分子を開発した。ペプチドはアミノ酸の短い鎖であり、タンパク質と似ているがもっと小さくて単純な構造である。この人工ペプチド分子はインフルエンザを標的とする医薬になる可能性を秘めている。

毎年、世界中で50万人がインフルエンザで亡くなっており、アメリカ経済にとって病気欠勤日と生産性の損失で年間何十億ドルもの負担になっている。新しく開発されたペプチドは、アジア地域で何百人もの人に感染し、死者さえ出した鳥インフルエンザ株のH5N1や、2009年から2010年にかけて世界的に蔓延した豚インフルエンザのH1N1などを含め、世界的にもっとも一般的なグループ1のインフルエンザA型ウイルスの伝染力をブロックするものである。

同チームは、最近発見された、事実上すべてのインフルエンザA型株を中和できる「スーパー抗体」という酵素がウイルスを捕捉する結合部位を取り入れたペプチドを設計した。抗体は大きなタンパク質であり、つくるのにはコストもかかり、人体への注入も注射か輸液で行わなければならない。しかし、「研究で開発されたペプチドは、将来的には錠剤タイプの医薬として利用できる可能性がある」。TSRIのHansen Professor of Structural Biologyで、共同主任研究員を務めるDr. Ian Wilsonは、「私達の新しい研究成果が示すように、広いスペクトラムでウイルスを中和する大きな分子の抗体と基本的に同じことを小さな分子でやらせるというのは将来性のある楽しみな戦略だ」と述べている。この新しいペプチドに関する研究論文は、2017年9月27日付Science誌オンライン版にFirst Release論文として掲載されており、「Potent Peptidic Fusion Inhibitors of Influenza Virus (インフルエンザ・ウイルスの融合阻害剤に有望なペプチド開発)」と題されている。

このペプチド開発の基礎になった2つのインフルエンザ・スーパー抗体、FI6v3とCR9114はそれぞれ2011年、2012年に発見されており、それ以来、TSRIのDr. Wilson研究室は、Janssenその他の世界各国の構造生物学研究室と提携し、広いスペクトラムのウイルスを中和する抗体がどのようにインフルエンザ・ウイルスと結合するかを原子スケールでマップ化している。

 

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