動物の複雑さを決定している遺伝子は、それぞれのコードに対応するタンパク質同士の相互作用でクロマチンの構成を動的に調節

動物の複雑さを決定する遺伝子、人間をミバエやウニよりも複雑な生き物にしている遺伝子が初めて突き止められた。ある動物の細胞が他の動物の類似の細胞よりもかなり複雑にできているということがあるのはなぜか、その秘密は特定のタンパク質と、そのタンパク質が細胞核内の動きを調節する能力にあるらしいことが明らかにされた。イギリスのUniversity of Portsmouthの生化学者、Dr. Colin Sharpeと同僚研究者の研究論文は、2017年9月25日付PLoS One誌オンライン版に掲載されている。
このオープンアクセス論文は、「Relating Protein Functional Diversity to Cell Type Number Identifies Genes That Determine Dynamic Aspects of Chromatin Organisation As Potential Contributors to Organismal Complexity (タンパク質の機能多様性を細胞タイプの数と関連させることで、クロマチン構成の動的状態を決定する遺伝子を生物複雑性の要因となる可能性を突き止める)」と題されている。
Dr. Sharpeは、「ほとんどの人が、ほ乳類、特に人間は虫やミバエよりも複雑だという考えにうなずくが、その理由をほんとうに知っている人はいない。長年、私も他の者もその疑問が頭から離れなかった。動物の複雑さを測る一般的な尺度の一つとして細胞の種類の数がある。しかし、遺伝子レベルでどのようにして複雑な生命体が構成されるのかについてはほとんど分かっていない。
多細胞動物では遺伝子総数はわずかな違いしかなく、ゲノム中の遺伝子の数が動物の複雑さを決める因子とは考えられない。そうすると、他の因子を考えなければならない」と述べている。Dr. SharpeとMRes学生のDaniela Lopes Cardosoは、人、マカーク・サルから線虫、ミバエまで9種の動物のゲノム解析データを大量に調査し、それぞれが遺伝子レベルでどれほどの多様性を持っているかを計算した。
その結果、少数のタンパク質が、他のタンパク質や細胞核内のDNAのパッケージであるクロマチンとの相互作用に優れていることに気づいた。Dr. Sharpeは、「その少数のタンパク質こそ、動物の複雑さの度合いが大きく異なる要因として考えられるようだ。私達は、DNAに直接作用して他の遺伝子を調節する遺伝子を見つけられものと予想していたがそうではなかった。実際にはクロマチンと相互作用する遺伝子を見つけたのだった。この研究の結果から、特定のタンパク質が相互作用しあって細胞核中のクロマチンの構成を動的に調節する能力が高くなることが動物の複雑さの決めてであることが示唆されている」と述べている。