CRISPRを超えてRetronがやってくる。新しい遺伝子編集技術Retronにより、何百万もの遺伝子実験を同時に行うことが可能に。

2021
5月 28
(金)
07:00
遺伝子研究のバイオニュース

CRISPRを超えてRetronがやってくる。新しい遺伝子編集技術Retronにより、何百万もの遺伝子実験を同時に行うことが可能に。

CRISPR-Cas9遺伝子編集システムは、合成生物学における革新的な技術の申し子となっているが、いくつかの大きな限界がある。CRISPR-Cas9は、特定のDNA断片を見つけて切断するようにプログラムされているが、DNAを編集して目的の変異を作り出すには、細胞をだまして新しいDNA断片を使って切断部分を修復する必要がある。Cas9はしばしば意図しない標的外の部位も切断してしまうため、この「ベイト&スイッチ」は操作が複雑で、細胞にとって有害な場合もある。一方、組み換え技術と呼ばれる遺伝子編集技術では、細胞がゲノムを複製している間に別のDNAを導入することで、DNAを切断することなく効率的に遺伝子変異を生じさせることができる。この方法は単純なので、一度に多くの細胞で使用することができ、研究者は複雑な変異のプールを作ることができる。しかし、これらの変異の影響を解明するためには、それぞれの変異体を分離し、配列を決定し、特性を明らかにする必要があるが、これは時間のかかる非現実的な作業である。
ハーバード大学Wyss研究所 Biologically Inspired Engineeringとハーバード・メディカル・スクール(HMS)の研究者は、この作業を容易にするRetron Library Recombineering (RLR)と呼ばれる新しい遺伝子編集ツールを開発した。RLRは、最大で数百万個の変異を同時に生成し、変異細胞を「バーコード」化することで、プール全体を一度にスクリーニングし、大量のデータを簡単に生成・分析することができる。この成果は、バクテリアの細胞で達成されたもので、PNAS誌2021年5月4日号に掲載された論文に記載されている。この論文は「生体内で一本鎖DNAを作製してハイスループットな機能的変異のスクリーニングを行う(High-Throughput Functional Variant Screens Via in Vivo Production of Single-Stranded DNA)」と題されている。


Wyss・コア・ファカルティのGeorge Church博士(写真)の研究室でポスドクをしている共同第一著者のMax Schubert博士は、「RLRは、バクテリアのゲノムをランダムに切り刻み、それらの遺伝子断片をその場で一本鎖のDNAに変え、それを使って何百万もの配列を同時にスクリーニングするという、CRISPRでは不可能なことを可能にしてくれた。RLRは、高度に多重化された実験に使用できる、よりシンプルで柔軟な遺伝子編集ツールであり、CRISPRでしばしば観察される毒性を排除し、研究者がゲノムレベルで変異を探索する能力を向上させることができる」と述べている。


Retron:エニグマからエンジニアリングツールへ

Retronは、バクテリアのDNAの断片で、逆転写を受けて一本鎖DNA(ssDNA)の断片を作り出す。Retronの存在は何十年も前から知られていたが、Retronが生成するssDNAの機能については、1980年代から2020年6月まで科学者たちを当惑させていた。

 

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