うつ病や心的外傷後ストレス障害(PTSD)の画期的な治療法として、今、世界中で「サイケデリック化合物」への期待が高まっています。もし、たった一度の使用で、凝り固まった心を解きほぐし、脳が持つ本来の“しなやかさ”を何週間にもわたって取り戻すことができるとしたら、どうでしょうか。最新の研究が、その驚くべき可能性を科学的に裏付けました。この記事では、サイケデリックが私たちの脳にどのように働きかけるのか、その長期的な効果と今後の医療への応用について詳しく解説します。ミシガン大学の研究者たちは、特定のサイケデリック化合物が、脳の適応能力や新しい概念を柔軟に学ぶ力を長期間にわたって向上させることを発見しました。このような認知の柔軟性は、多くの精神疾患や神経疾患において損なわれている能力です。

「サイケデリック化合物は、うつ病や心的外傷後ストレス障害を治療しようとする現在進行中の臨床試験でテストされています」と語るのは、ミシガン大学心理学部の准教授であり、この最新研究の責任著者であるオマー・アーメッド博士(Omar Ahmed, PhD)です。「これらの疾患やアルツハイマー病は、しばしば認知の柔軟性の低下を伴います。私たちは、サイケデリックの単回投与がマウスの柔軟な学習能力を数週間にわたって高めることを見出しました。これは、これらの化合物が脳に長期的かつ機能的に重要な変化を誘発する能力を浮き彫りにするものです」。

この研究チームは、サイケデリック化合物の一種である25CN-NBOHを一度投与するだけで、マウスがより柔軟に考え、投薬から数週間が経過しても行動テストでより良い成績を収めることを発見しました。この研究成果は、2025年4月22日に学術誌「Psychedelics」に掲載され、サイケデリック薬の臨床試験がうつ病やPTSDを抱える人々に恩恵をもたらす可能性を示しています。このオープンアクセス論文のタイトルは、「Single-Dose Psychedelic Enhances Cognitive Flexibility and Reversal Learning in Mice Weeks After Administration(単回投与のサイケデリック化合物は投与数週間後のマウスの認知の柔軟性と反転学習を強化する)」です。

「うつ病の臨床試験デザインでは、1回か2回の投与しか行われません」と、本研究の筆頭著者であるミシガン大学心理学修士課程のエリザベス・ブラウンズ(Elizabeth Brouns)氏は述べています。「私たちの結果は、マウスモデルにおいて、たった一度のサイケデリック投与でも持続的な利益がもたらされることを示しています。私たちは単回投与から最大3週間後までの柔軟な学習能力を調査し、改善を確認しました。この効果はさらに長く続く可能性もあります」。

今回の研究はげっ歯類モデルを利用したものですが、その結果はヒトにも十分に適用可能であると考えられています。

「マウスの神経系は、サイケデリック薬がどのように機能するかを理解するための優れたモデルシステムです。マウスとヒトの前頭前皮質のニューロンは、サイケデリック薬の主要な標的であるセロトニン2a受容体を発現しています。これらのセロトニン2a受容体は、サイケデリック治療の治療効果にも関与していると考えられています」と、研究の共著者であるミシガン大学心理学部の博士研究員、タイラー・イーキンス博士(Tyler Ekins, PhD)は説明します。

実験では、マウスにサイケデリック化合物または対照としてのプラセボを注射しました。その後、マウスをFED3と呼ばれる自動訓練装置に入れ、正しい順序で特定の穴に鼻先を入れると報酬として餌がもらえるようにしました。

数日間かけてこの順序を習熟させた後、タスクのルールを突然反転させ、マウスが今度は逆の順序で穴を訪れることを学習する必要があるようにしました。サイケデリックを投与されたマウスは、雄雌ともに、対照の注射をされたマウスよりもこの新しいルールを迅速に学習し、その効果はサイケデリックが最初に投与されてから3週間後でさえも認められました。

研究チームが開発したこの自動化されたタスク設計は、科学者が長期にわたって柔軟な学習を研究する方法における進歩を示すものです。認知の適応性を評価するプロセスを効率化するために設計されたこの革新は、研究者の介入を最小限に抑え、サイケデリック化合物が脳に及ぼす影響について、より効率的で正確な研究への扉を開くと研究者たちは述べています。

これらの発見にもかかわらず、アーメッド博士は多くの疑問が残っていると注意を促します。サイケデリック医療はまだ初期段階にありますが、急速に進歩しているとのことです。

「臨床試験で最適な種類と用量のサイケデリック薬が利用されるようにするためには、多くの基礎的・橋渡し研究が必要です」とアーメッド博士は語ります。

例えば、今回の研究は単回投与の長期的な効果に焦点を当てていました。重要な疑問の一つは、数ヶ月にわたって2回、3回、あるいは20回投与した場合に何が起こるかです。追加の投与ごとにより柔軟な学習能力に有益なのか、それとも効果が頭打ちになったり、あるいは多すぎる投与による悪影響があったりするのか。これらは、サイケデリック医療をより合理的でメカニズムに基づいたものにするために、次に答えるべき重要な問いであると彼は締めくくりました。

 

オマー・アーメッド博士(Omar Ahmed, PhD)

[News release] [Psychedelics article]

この記事の続きは会員限定です