「切らない」ゲノム編集がCAR-T療法を革新。塩基編集ツールがCRISPRを超える安全性と効果を実証

がん治療の切り札として期待されるCAR-T細胞療法。しかし、もっと安全で、もっと効果的な治療法は実現できないのでしょうか?ゲノム編集の常識を覆すかもしれない、ある画期的な研究が発表されました。DNAを“切る”のではなく、たった一文字を精密に“書き換える”新技術が、未来の他家免疫療法の扉を開くかもしれません。このオープンアクセスの研究は、塩基編集が他家免疫療法において、より安全で効果的な未来を提供する可能性を示唆しています。 ゲノム編集の常識を再考する:切断に頼らない精密さ 2025年5月5日に米国科学アカデミー紀要で発表された画期的なオープンアクセス研究において、ペンシルベニア大学の研究者たち(免疫療法のパイオニアであるカール・H・ジューン博士(Dr. Carl H. June)が主導)は、アデニン塩基編集ツールが、治療用T細胞の操作において従来のCRISPR/Cas9ヌクレアーゼよりも優れているという強力な証拠を提示しました。 この研究は、「「Quadruple Adenine Base–Edited Allogeneic CAR T Cells Outperform CRISPR/Cas9 Nuclease–Engineered T Cells(4重アデニン塩基編集された他家CAR-T細胞はCRISPR/Cas9ヌクレアーゼで操作されたT細胞を凌駕する)」」と題され、他家キメラ抗原受容体(CAR: chimeric antigen receptor)T細胞の製造という文脈で、両編集プラットフォームの直接的な徹底比較を行っています。 チームは、移植片対宿主病と免疫拒絶を防ぐために最適化された汎用型CAR-T細胞を設計するため、CD3EまたはTRAC、B2M、CIITA、そしてPVRという4つの主要な遺伝子を標的にしました。この研究では、in vitro、i
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Edited by Michael D. O'Neill
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