エピジェネティック治療で損傷後の脊髄再生が改善されることをマウスを用いた研究で発見。遺伝子活性化により軸索伸長、再生シグナル、シナプス可塑性が増加。
サイエンス出版部 発行書籍
現在、脊髄損傷には有効な治療法がなく、物理的なリハビリテーションによってある程度の運動能力を取り戻すことができるが、重症の場合、損傷後に脊髄神経細胞が自然に再生されないため、その成果は極めて限られたものとなっている。しかし、英国インペリアル・カレッジ・ロンドンのシモーネ・ディ・ジョバンニ博士率いる研究チームは、エピジェネティック活性化剤を毎週投与すると、重傷から12週間後のマウスに脊髄の感覚・運動ニューロンの再生を支援できることを示している。 2022年9月20日にオープンアクセス誌PLoS Biologyに掲載されたこの論文は「重度の障害を伴う慢性実験的脊髄損傷において、CBP/p300活性化が軸索成長、萌芽、シナプス可塑性を促進する。(CBP/p300 Activotes Promotes Axon Growth, Sprouting, and Synaptic Plasticity In Chronic Experimental Spinal Cord Injury with Severe Disability)」と題されている。 この研究者らは、これまでの成果を踏まえ、TTK21という低分子を用いて、神経細胞の軸索再生を誘導する遺伝子プログラミングを活性化させた。TTK21は、共活性化タンパク質のCBP/p300ファミリーを活性化することにより、遺伝子のエピジェネティックな状態を変化させるものだ。この研究チームは、重篤な脊髄損傷モデルマウスを用いて、TTK21による治療を検証した。マウスは、ヒトの患者に奨励されているように、体を動かす機会を与えられ充実した環境で生活した。 治療は重度の脊髄損傷から12週間後に開始され、10週間続いた。研究者らは、TTK21治療後に、対照治療と比較していくつかの改善を発見した。最も顕著な効果は、脊髄の軸索の発芽が増加したことであ
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